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2021年9月29日水曜日

主張 COVID-19後をにらむエアライン業界は危機前水準への復帰ではなく、リセットの機会として新たな方向性を模索すべきだ

 COVID-19は世界各地のエアライン各社に等しく大きな影響を与えましたが、対応は各社それぞれでした。日本のエアライン各社が機材をどこまで整理したのか定かではありませんが、一過性の事態なので需要もそのうち再開するとみていたのではないでしょうか。再開はいつ化すると思いますが、採算性を冷徹に見て大胆な手を打ったエアライン他社とは業績の差が広がりそうです。この二年の決断の差が大きな意味をもってきそうですね。空運株は買うべきではないでしょう。

 

 

際航空運送協会(IATA)が二年ぶりに対面方式の年次総会を開催するが、米国外からの参加者にとっては移動自体が複雑な作業となる。ヨーロッパは米国からの渡航者に今年早々に門戸を開き、同様の措置が米国で生まれるよう期待したものの、米国は扉を閉ざしたままコロナの新規感染を封じ込めようとしている。

 

中国からの渡航者がCOVID-19を初めて拡げた事実とは別に、包括的な旅行制限を各国政府が実施してきたもののウイルス封じ込めに効果があったのかは疑問だ。節度ある行動(マスク着用、ソーシャルディスタンス等)が各地で鍵を握っているとの証拠がある。旅行を制限したままにしていいのか、各地でワクチン接種が普及してきた今、根拠はさらに弱くなっている。

 

米国と欧州間の航空移動はもっと早く再開できたはずだ。ワクチン接種の義務化がその根拠だ。ワクチン接種を入国条件とする国はこれまでもあった。COVID-19の渡航措置も早晩その他の措置と同様になろう。

 

包括的渡航禁止はもっと早く撤廃されていておかしくない。パンデミックで業界にはあまりにも経済的損害が大きかった。米国の新展開でワクチン接種済み旅行者(同時にテストも受けていることが条件)に入国を認める発表が出たが、業績回復への道はまだ遠い。

 

9月19日に措置が発表されると、エアライン各社や旅行代理店から需要急増が伝えられ、その他旅行関連サービス等へも一気に注文が入った。処理できないほどの照会があったといわれる。嬉しい大変さではないか。

 

大西洋横断路線では朗報のようだが、その他長距離路線特にアジア向けは再開されておらず、需要は低いままだ。18カ月も旅行できないままの旅行客がしびれを切らしている状況は想像に難くない。

 

旅行需要がコロナ前水準に復帰するか疑問に思う向きが多い。戻るとして問題はいつになるかだ。だがこの疑問自体が愚問だろう。業界は2019年水準の業務への復帰をめざすべきではない。むしろそれは不可能であり、高機齢機材多数が運航を終了し、すでに売却されるかその途中にある。こうした機体が運航再開することはない。一部にはマーケットシェアのため運航されるものがあろうが、利益が出ない。またエアラインの多くでダウンサイズが進み、元に戻ることは容易ではない。また環境政策もある。業界は責任を理解している状況を示す必要に迫られている。旅行需要がエアラインの業務を後押しするだろうが、エアライン側は以前よりきびしく行動を律し、サステナビリティ目標の達成をめざすべきだ。

 

そこでIATA総会だが、IATAが示すべきメッセージとは業界が直面する危機状況が従来になく深刻な中、業界をリセットする機会とすべきだろう。機材は新しくなり、路線網も見直し、環境経営双方でサステナビリティへの姿勢を示し、強化すべきだ。

 

IATA Director General Willie Walsh

IATA事務局長 Willie Walsh

Credit: IATA

 

次の段階へ進むべき時が来た。ボストンが出発点となる。またウィリー・ウォルシュがIATA事務局長に就任し初の総会となる。適任の人物といえよう。ウォルシュは International Consolidated Airlines Group (IAG)のCEOとしてエアライン関連企業多数の利益水準を前例ないレベルに引き上げるにとどまらず、これまでにない環境目標も設定した。その姿勢を新たに示すのが本人の課題だ。

 

勢いがついてきた。世界経済フォーラムのClean Skies for Tomorrow構想では航空業界の燃料消費の10%を2030年までにサステナブル燃料に切り替える目標を発表している。従来よりも大胆な目標設定であり、欧州委員会の想定をも上回る。エアライン企業部会としては良好な目標設定といえよう。IATAが業界全体での実施を働きかけるべき時が来た。■

 

 

Commentary: Airlines Must Use Crisis To Reset Fundamentally

Jens Flottau September 24, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/airlines-lessors/commentary-airlines-must-use-crisis-reset-fundamentally

 

Jens Flottau

Based in Frankfurt, Germany, Jens leads Aviation Week’s global commercial coverage. He covers program updates and developments at Airbus, and as a frequent long-haul traveler, he often writes in-depth airline profiles worldwide.


2021年9月26日日曜日

COVID-19で機材早期退役、部品回収、貨物機需要の高まり、コスト削減でPMA中古部品需要が高まっている

 Atlas

Credit: Getty Images/S3studio

 

エンジンMRO企業で中古再利用可能部材(USM)取り扱いを専門とする各社がワイドボディ機向け需要が上向いてきたことに注目している。その理由に航空貨物需要が高まってきたことがある。

 

エアライン側も部品製造者承認ずみ parts manufacturer approval(PMA)部材でコスト削減をしながら、パンデミックの長期化に対応しようとしている。

 

Aviation Week はMROアジア太平洋イベントをオンラインで開催し、AARのアジア太平洋地区営業担当副社長コリン・グレゴリーは席上でここ数カ月で同地区で「高成長」があったと述べた。それによると貨物輸送需要が上向きでボーイング747F、757F、767Fの稼働率が高まっているという。その結果、エンジン部品を求める声が増えており、特にプラット&ホイットニーPW2000シリーズ、PW4000シリーズで部品が手に入りにくくなっているという。

 

グレゴリーは中国でUSM需要が「大きく伸びている」とし、COVID-19からの早期回復が背景にあるという。別要因として中国国内でエンジン解体の認証業者が増えていることがある。

 

これに対し、StandardAero’s Airlines & Fleetsのアジア太平洋担当営業部長マリオ・ロマノは使用済みエンジンから回収した部品は耐用年数が短い点を強調した。つまり、残存価値が少ない。キャッシュが潤沢でないエアライン側は機材を早期退役させ、新規機材を路線投入している。

 

 SGI Aviationの技術担当副社長フランチェスコ・バカラニも同じ論調で、さらに中国やインドのような厳しい環境で運用された機材から回収した部品は状態が悪く不合格となることが多いと付け加えた。USM価格は新品カタログ価格の65-70%が普通だが、機材退役で出てくる余剰部品により60%まで価格が下がると指摘した。

 

グレゴリーもエアラインにPMA部品需要が増えているのはコスト削減策だとしながらも、エアライン側は部品交換より修理を好む傾向があると指摘した。さらに機材の所有権がエアラインにあるかが重要で、リース会社はPMAを自社所有機材に搭載するのを承認しないと述べた。■


USM Demand Swings To Widebody Engines

Chen Chuanren September 22, 2021

https://aviationweek.com/shows-events/mro-asia/usm-demand-swings-widebody-engines


2021年9月19日日曜日

主張 国際航空旅行の制限を見直す時が来た。

 


 

 

airport testing center sign

Credit: Daneil Leal-Olivas/AFP/Getty Images

 

年コロナウィルス大量感染が爆発的に発生し、各国政府は直ちに国境を封鎖した。中国発のウィルスの世界規模の拡散を止めるねらいがあった。ウィルスを止めるのが不可能と判明すると、時間を稼ぎワクチン接種を待つ作戦だった。

18カ月が経過した今、航空業界は政府による制約を受けたままで、意味のない施策も見受けられる。例としてEUからの旅客入国を禁じる米国方針を見てみよう。欧州では米国発の利用客に入国を再開しているが、米国は欧州からの旅行客の入国を依然認めていない。ヨーロッパでのワクチン接種率がなかなか増えない間は意味があったが、今やヨーロッパの接種率が米国を上回り一カ月以上となり、ヨーロッパのCOVID-19感染率ははるかに低い。

もうひとつある。ヨーロッパ委員会は米国内の感染状況が高いことを受け、「不急不要の」米国渡航者の制限強化を提言している。オランダは米国人の渡航を「非常に高いリスク」とし、米疾病管理センターは米国民にイタリア渡航はコロナウィルスのため再検討するよう推奨している。

こうした中で不満がたまるが、ICAOが提唱する公衆衛生回廊構想ではリスク低減策を大幅に増やすとある。旅行客にワクチン接種を義務化し、COVID-19テスト結果で陰性証明を求め、マスク着用は機内、空港内で続ければリスクは大幅に減る。同構想は急に出てきたわけではない。これまでも入国時に黄熱病などでワクチン接種証明を求める国があった。

COVID-19ワクチンの登場前にも学術研究によりウィルスが航空旅行を介して広がる可能性は低いとされてきた。旅行者に厳しい制限が課されているためだ。感染が発生するのは家族友人同僚とマスクやソーシャルディスタンスなしで面会する場合だ。

COVID-19の地球上での撲滅が可能としても、数年かかるだろう。エアライン業界の立場を支持する。政府はリスクを皆無にするのではなく最小限に管理すべきという視点だ。ワクチン接種により深刻な症状悪化には歯止めが生まれ、レストランでの外食やコンサート鑑賞など基本的な自由を再び享受できるようになった。次は移動の自由で、この回復だけ例外扱いにはできないはずだ。■

Editorial: It Is Time To Revisit Travel Bans

September 10, 2021

Editorial: It Is Time To Revisit Travel Bans


2021年9月11日土曜日

主張 航空旅行需要はいつ回復するのか。変異種の動き、ワクチン接種率を見るとコロナ共存の道を考えたほうが賢明だ。

airport terminal sign

Credit: Patrick T. Fallon/AFP/Getty Images

 

空旅行需要がCOVID以前の状態に戻るのはいつになるのか。

 

航空産業は同じ疑問をここ18ヶ月問い続けてきた。

2020年のAeroDynamic Advisory調査では、2023年末に平常に戻るとの評価が出た。この悲観的な見解に当時驚く向きもあったが、おおむねは消極的にこれを認めていた。筆者も再検討してみたが、楽観的過ぎたと考えるに至った。

 

デルタ変異種が世界各地で主流になって状況を一変させている。一人感染すれば5-9名にひろがるというのは、COVID-19当初の2-3名への感染力より強い。このため、集団免疫もワクチン接種率が90%にならないと実現しない。ちなみに当初のCOVID-19では70%だった。また世界各地の病院が新患で満員となり医療システム全体が危険となる。世界全体でワクチン接種は80億回必要となる。アジア、ラテンアメリカ、アフリカの大部分で深刻な状況が数年間も続きそうなのは、ワクチン接種が広まらないためだ。デルタ変異種の強力な感染力もあるが、新変異種がいつ現れないとも限らず、現行のワクチンが効果を出せなくなるかもしれない。

 

こうした背景から航空旅行の復活シナリオを考えてみよう。2019年の有償旅客キロ(RPK)は8.7兆でうち65%が国際線だったが、国際線需要は死んだままだ。

 

各国政府は航空業界向け支援策を講じ、ワクチン接種、検査、隔離など展開している。一部国は国際線利用そのものを止めており、渡航者にバブルを課す国もある。また渡航は認めても隔離措置を求める国もある。ワクチン接種履歴を渡航条件に採用している国は皆無に近い。世界各地のワクチン接種記録で標準化ができていないためだ。そのため各国で方策を各自組み合わせているのが現状だ。欧州連合では米国出発の渡航者への制限を加盟27か国に推奨し、米国内のデルタ変異種感染の高まりに警戒している。

 

このため国際旅行に面倒な要因がついてまわる。企業幹部は国別で異なるテスト要件を逐次満足する以外に隔離へ時間を取られるリスクに直面している。料金に敏感な観光客だが、数回にわたる検査料金が航空券価格に近づく上に隔離のリスクも覚悟しなければならない。

 

世界全体のRPKの残り35%を占める国内線利用でも影響が出ている。ワクチン接種率が高い中国でさえ、デルタ変異種の登場で減少が止まらない。8月初旬の座席提供数は32パーセント減となり、政府はCOVID-19撲滅をまず進めてから再開をねらうようだ。ロシアは50万人をすでに失っているが、ワクチン接種が進まず、7月の死亡数が記録を破ったという。

 

明るいニュースもある。今年に入り米国内需要が急上昇しており、需要の底堅さは確実だ。世界全体のワクチン製造規模は2022年に150億回分になる。うち三分の一が画期的なmRNA技術によるもので、ブースター接種で早く効果を発揮する、あるいは今後登場する変異種にも対応する期待がある。ワクチン接種義務化に動く国もある。またワクチン接種済み住民に死亡率や入院措置の必要度が非接種者より低いのが明らかになってきた。今後の各国政府はCOVID-19撲滅をめざすのではなく、共存の道を選択するはずで、英米両国がすでにこれを始めている。

 

では航空需要は2023年に回復するだろうか。可能ではあるが、世界規模のワクチン接種がどこまで広がるか、政府の渡航方針がどこまで改善されか、さらに変異種で運が良ければ、という条件が必要だ。航空業界で戦略を検討するなら悲観的なシナリオを使うほうがよいだろう。「パンデミックや伝染病には歴史を一変させる力があるが、生き残ったものには効果がすぐ見えない」とカナダの文化人類学者ウェイド・デイヴィスの言葉を贈りたい。■

 

Opinion: Why Air Travel's Recovery May Be Years Away

Kevin Michaels September 07, 2021

 

The views expressed are not necessarily those of Aviation Week.

 

Kevin Michaels

Contributing columnist Kevin Michaels is managing director of AeroDynamic Advisory in Ann Arbor, Michigan.

 

2021年7月26日月曜日

米国、中国、欧州のエアラインビジネスの回復は渡航制限のない国内移動に助けられた格好だ。日本は自粛をしすぎたのではないか。

 前回の記事の続きです。グラフがすべてを語ってくれますね。

アジア太平洋の弱点は変化への対応スピードでしょうかね。

 

 

国際線には利用客がまだ戻っていないが、米国系エアラインの利用率は世界最上位にある。COVID-19前の8割程度にまで回復しているが、大部分は国内線によるものだ。ヨーロッパは5割程度にとどまっているが、一時の閑古鳥が鳴く状況からここまで回復してきた。両地区は今年夏の旅行シーズンでさらに拡大を示すと期待されている。

中東、ラテンアメリカも回復基調だが、ここ数カ月の回復は微増にとどまっている。

他方で中国やアジア太平洋地区の回復ぶりは症例の急増、渡航制限の再開で大打撃を受けている。それでも中国は唯一パンデミック前水準に復帰した国で、ここも国内路線の活況に助けられている。■

 

U.S., Europe Leading Utilization Recovery

July 22, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/us-europe-leading-utilization-recovery

 


2021年7月23日金曜日

2021年夏の状況。北米、欧州の回復ぶりに対してアジア太平洋が落ち込んだままの状況が航空業界の心配のたね。中国国内は堅調だが国際路線は依然として制限したまま。

 数カ月にわたる米国内の進展ぶりに業界は安堵の感を強めている。

他地区より早い回復が北米で発生している。米国国内線の実績がかなり良好になってきた。6月の運行座席数は2019年実績の12パーセント減だったが、今後は差が縮まる。

大型発注の動きが楽観的な見通しを後押ししている。ユナイテッドエアラインズボーイングエアバス両社からナローボディ機270機を発注したが、サウスウェストエアラインズも737-700の後継機に737 MAX発注を増やしている。2020年3月から運行停止中のポーターエアラインズでさえエンブラエル195-E2を大量発注しようとしている。

業界では北米はもはや問題地区ではないことが忘れられがちだ。ヨーロッパも同様で米国より回復のペースは遅れるが、落ち込んだ利用客も夏の休暇シーズンを機に増えつつある。COVID-19ワクチン接種の動きがヨーロッパで勢いをつけて望ましい効果を上げているようだ。ただし感染力が高いデルタ変種のCOVID-19が勢いをつけている。

parked aircraft

Credit: Steve Strike/Getty Images


エアライン業界、航空機業界ともに現実の問題はアジアの状況で、望ましくない要因の複合が強く働いている。ワクチン接種率が低い、あるいは極めて低い中で国際航空移動の制限が残ったままだ。

エアバスの確定発注機数でアジア太平洋は37パーセントを占め、ボーイングでは31パーセントになっている。これに対し北米はそれぞれ16パーセント、18パーセントだ。予想外の回復が突如として現実とならない限り、両社の受注残で相当の部分がリスクにさらされたままとなる。

アナリスト陣、国際航空運輸協会(IATA)はともに中国の状況に注目している。ダグラス・ハーネド(バーンステインリサーチ)は中国国内路線の運航座席数は2020年9月に2019年実績を超え、成長モードに入ったが例外は2021年2月で政府が中国新年の休暇中に旅行自粛をもとめたためだ。関係者にはうれしいニュースだ。

だがアジア圏内の運行実績は中国国内線を勘定に入れないと異なる様相を示している。2020年4月は73.6パーセント減となり、一時的に縮小幅が減ったものの、今年6月実績は2019年より72パーセント減で、7月は69パーセント減となる。ハーネドは2022年2月冬季オリンピックより以前に中国が国境を解放するとは予測していない。

アジア内の移動需要は2021年8月は2019年実績の54.4%減、9月は46.9%減となる予想が現在の運行予定から見える。

アジアを出発点、到着点とする長距離路線でも状況は似ており、2021年6月のヨーロッパアジア間路線は66%、アジア北米間は77%減となっている。北米ヨーロッパも71%減で、ロードファクターとなると悲惨な実績になっている。

現在の交通量のまま回復が最重要市場で見られないと機材引き渡しはさらに減速しそうだ。アジア系エアラインはすでに大規模な負債に直面しており、政府援助を受ける会社も多いが、借入返済に資金を回す必要がある。各国政府がどこまで財政支援をするのか、できるのかも不透明だ。

すでに影響が表れている。ハーネドはエアバスのナローボディ機部門では2019年並み引き渡し数に回復するのは2024年、上回るのは2025年と見ている。ボーイングは2018年ナローボディ機引き渡し実績に並ぶのは2022年と予想しているが、そもそも2019年実績は737 MAXの飛行停止措置の影響を受けていた。

ワイドボディ機となると状況は一変する。エアバスは2019年に173機を引き渡しており、2025年はこれが116機に減る予想が出ている。ボーイングは2019年の254機引き渡しが2025年に178機になる。それぞれ危機前の67%、70%の水準だ。ただし、見通しは機種により異なる。エアバスは2025年にA330neoはわずか26機になるが、A350は88機引き渡しする。ボーイングでは787は96機、777Xは36機との予想になっている。■

 

Opinion: Asia-Pacific Region Is Slowing Global Air Transport Recovery

Jens Flottau July 21, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/airlines-lessors/opinion-asia-pacific-region-slowing-global-air-transport-recovery


2021年6月20日日曜日

Covid感染防止策で根拠を示せさないままの英政府にライアンエア等が訴訟を起こした。渡航制限の根拠を開示せよ、透明性ある科学を根拠とする政策を要求。

 こうした訴訟は日本では無理でしょうね。長いものに巻かれろ、お上には逆らうな、という姿勢が航空業界にしみついていますからね. しかし、根拠を示せないままの政策に不満がたまる一方ですので、こうした行動を取る動きがいつ出てもおかしくないのですが。

Manchester Airport

マンチェスター空港グループ、ライアンエア両社はCovid流行を理由とする移動制限が航空運輸業界を不当に混乱させていると主張する。(Photo: Manchester Airport Group)


英国で一部航空会社、空港運営事業体とCovid大量流行を理由とする英政府の旅行制限措置の違法性を訴える訴訟をおこしている。制限の根拠となる理由を開示し透明性を求めると、低運賃キャリアのライアンエアマンチェスター空港グループが高等裁判所に政府の政策に対する司法判断を求めた。両社によれば他の英キャリアにも訴えに同調する動きがあるという。


法曹界には英国が導入した旅行需要軽減策として旅行客の出発国リスクを緑、黄色、赤の区分にわけ、新型コロナ検査及び隔離措置の対象としたのは科学的措置とは言えず、不合理な損失を航空業界に与えているとの意見がある。この区分で米国および欧州内の大部分の国が黄色区分とされており、訴訟の背後にある企業は大きな影響を受けている。


理論上は英国民は黄色区分国への渡航が可能だが、同時に英政府は渡航は必要不可欠なものに限るとしているため、不必要な混乱を招いているとの批判が絶えない。また、英国への入国者は全員渡航前にCovid検査を受け、到着後も二回検査の対象となり、同時に10日間の隔離措置を受けるのは旅行コストを上昇させ意欲を下げる措置だとの批判がある。ワクチン接種済みの利用客も措置が適用される。これに対し、EU加盟27か国は7月1日を目標に、ワクチン接種済み外国人旅行者客向け制約の撤廃に向け動いている。逆に英政府は6月21日に予定していた国内向け制約の解除を取消した。デルタ変種のまん延で制限措置の延長が必要なためだ。


裁判所は英運輸相グラント・シャップスおよび保健相マット・ハンコックを被告人とする訴訟の準備に入った。原告は政府に今回の国分類に至った過程の説明を求めるとともに根拠となるデータの開示を要求する。また、非常に短い告知で分類を変化した決定のいきさつも問いただすという。


ライアンエアCEOのマイケル・オリアリーは「目まぐるしく変更されてきた政策により航空業界は多大な損失を計上し、英国国民多数に休暇旅行の計画で不満と混乱が生まれたのはすべて政府の国際渡航措置の失敗のせいだ」「ボリス・ジョンソン首相には一連の措置の科学的根拠の説明を求めるとともにデータをもとにした透明性ある政策を基本にしてもらい、業績を左右する夏の旅行シーズンを控える中で信頼性回復につとめてもらいたい」


マンチェスター空港グループはマンチェスター、ロンドン・スタンステッド、イースト・ミッドランドの各空港を運営しており、政府の政策で旅行業界は継続が困難になっていると主張している。「政府の姿勢がオープンではなく、業界の企画立案の基礎となる政府決定がどう形成されたのかちっとも見えてこず、利用客も旅行予約できず困っている」とCEOチャーリー・コーニッシュは「大部分の国は今回の措置で黄色分類のままだが理由は開示されていない。各国の感染状況は英国より低いのだが」と語っている。


今回の法的手続き開始発表に際し英政府からは反応は出ていない。■


Airlines, Airports Sue UK Government Over Covid Travel Rules

by Charles Alcock

 - June 17, 2021, 9:27 AM


2021年5月23日日曜日

シアトル空港が保安検査場の混雑解消とチェックインのタッチレス化でデジタル技術を試行中

 空港の保安検査の混雑にストレスを感じ、タッチパッドに指をあてたくない旅行客のニーズにこたえようという試みです。日本にも早晩同じ流れが来るでしょう。デジタル行列というのはよくわからないのですが。


Credit: Photo credit: SEA


アトル-タコマ国際空港(SEA)が実証事業二点を試行中で、保安検査場の混雑解消とタッチレスのチェックイン・荷物預入を目指している。


運輸保安庁(TSA)の保安検査現場で「SEAスポットセイバー」と呼ぶテストで待ち時間と混雑を解消しながら適正な物理的間隔を維持できるかをデジタル行列で試行している。


SEAスポットセイバーにはふたつの方法がある。ひとつはアラスカエアラインズ利用客向けのTSA検査ポイント5で保安警備企業Pangiamが行う。もう一つはデルタエアラインズ他の利用客向けの検査ポイント2でVHT社の技術を試す。


実証は今年8月31日まで上記検査場で毎日行われ、午前4時から正午までのSEAで利用客が一番多い時間帯を対象とする。


SEAによれば旅行繁忙期には「点検場に午前11時までに一日の4割から5割の利用者が集中する。保安検査場が一番混雑し、常に密な状況になっている」という。


今年夏に実証が終了すると、SEAは利用客、業者の反応をまとめ、効果を評価する。「成功と判定されれば、全体に適用し、保安検査手続きの効率化を推し進めたい」とSEAが発表している。


happyhoverPhoto credit: Changi Airport Group


さらにSEAはタッチレス技術でHappymeterの「happyhover」技術の評価を続けている。これは電子スクリーン上の指の動きを探知するもので、エアカナダフロンティアJetBlueエアウェイズ大韓航空スピリットエアラインズヴォラリス(メキシコ)の専用カウンターで先行採用されている。


Happyhoverを使うタッチレス・チェックインカウンターはシンガポールのチャンギ空港が2020年7月に世界で初めて採用した。


SEAでは検証用のハードウェアを設置し、赤外線を応用する。空中で光線を遮ることでタッチスクリーン操作を再現する。これにより利用客はチェックイン時のタッチスクリーンに不必要に触る必要がなくなる。


シアトル港管理組合長のサム・チョーSam Choは「タッチレス技術により旅行者のストレス軽減が実現します。空港は安全かつ効率を今後向上できます。利用客、エアライン双方のご協力で実証を進め、ともにメリットが生まれるのを確認します」と述べている。■


Seattle Airport Trials Digital Queuing, Touchless Kiosks

Linda Blachly May 05, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/airports-routes/seattle-airport-trials-digital-queuing-touchless-kiosks


2021年5月1日土曜日

ルフトハンザは今年の利用率を40%と予測。ワクチン接種の広がりでパンデミック影響は徐々に減り、夏季旅行シーズンに期待するが、旅行制限の緩和を注視している模様。

Lufthansa Airbus A321neo wing

Source: Lufthansa


フトハンザグループは今年の業績をコロナウィルス危機前実績の40パーセント程度と見ており、調整済みEBIT(利息及び税金控除前利益)は11億ユーロ(13億ドル)の赤字と予測する。第1四半期もパンデミックで低利用率に終始した。


利用率40パーセントとの予測はルフトハンザが発表していた40-50パーセントの予測幅の下位に相当し、渡航制限解除が予想より遅れていることを反映している。グループ全体の収益は1-3月で前年同時期より60パーセント減となった。調整済みEBIT損失は1億ユーロの改善し、前年同四半期は12億ユーロ赤字だった。


ルフトハンザグループCEOカーステン・シュポアは「一貫してコスト削減を行った結果、前年を上回る実績となった。グループ全体で実行中の変革が効果を現してきた。今の動きを緩めることなくルフトハンザグループを更新し、無駄をはぶき、効率を高め、世界をリードするエアライン各社の一画を占めていきたい」と語った。


グループのキャッシュバーンレートは3億ユーロ予想を下回る平均2.35億ユーロになった。同社は原因を運送部門、MRO部門の成果が予想を上回ったためとする。月間の平均キャッシュドレインは2億ユーロに縮小する予想が第2四半期にある。


ルフトハンザグループの利用率は1-3月はコロナウィルス危機前の21パーセントで3百万人を運んだが、2019年実績の10パーセントにすぎず、ロードファクターは三分の一減り、45%になった。


同社は第2四半期も引き続き需要回復のペースは遅くなるとみており、移動制限が引き続き実施されているためとするものの、下半期に回復に転じるとみている。


「危機が長く続けば、それだけ旅行熱が高まる」とシュポアは述べた。「規制が弱まり旅行が可能となれば予約が増える。ワクチン接種率が大きく伸びて夏季から需要が急増するとみている。EU委員会からワクチン接種済みなら米国からヨーロッパ旅行を認めると発表があったが、元気づけられるニュースだ」


同グループ傘下のキャリア各社は観光路線で需要が回復すると見て提供座席数を増やしている。ルフトハンザはコロナウィルス危機前の7割程度までの座席数を提供できるとする。■


Lufthansa to operate 40% capacity this year

after posting €1.1bn Q1 loss


By Graham Dunn29 April 2021




2021年4月30日金曜日

エアバスは単通路機増産を強気で進める一方、地域別のリスクも意識。次世代機開発を視野に入れたグループ再編とともに内製化テコ入れをする模様。

 


 

 

 

アバスCEOジローム・フォーリは航空業界の回復の中で各地に見られる「確実性の欠如」に警戒している。ただし、2021年の第一四半期業績は比較的堅調に推移した。

 

「一部地方で国内需要の回復が期待できる兆しが見えてきた」とフォーリは第一四半期業績発表の席上で述べた。

 

ただ、渡航制限解除が一律でなく、COVID-19パンデミックが残ったままのヨーロッパは「他地区より状況は悪い」と見ている。そのため、ヨーロッパはエアバスにとって「懸念地区」であり、インドも大幅な感染増加がここ数週間連続し、心配な地区だという。ただし、インドの危機状況から直接の影響は同社にまだ出ていない。

 

発注元との関係は「かなり差がある」と述べ、中国は「かなり改善した」が、米国は「強気市場」と表現した。一部の米エアラインでは機材引き取りを2023年2024年に先送りする傾向があるという。

 

エアバス収益は105億ユーロ(127億ドル)を第一四半期に計上したが、昨年同期は106億ユーロだった。民生機材は72億ユーロ、エアバスへリコプターが11億ユーロ、エアバスディフェンスアンドスペースが21億ユーロだった。グループとして営業利益462百万ユーロを計上し、純利益は362百万ユーロだった。12億ユーロのキャッシュフローが生まれ、2020年同期の80億ユーロ赤字から大きく反転した。昨年はCOVID-19パンデミックの影響をもろに受けたことに加え、贈賄事件解決へ36億ユーロで処理していた。これに対し2021年Q1は財務最高責任者ドミニク・アサムも「一歩抜きんでた」と評する業績になった。民生機材の収益は4パーセント減となったが、事業部として営業利益は57百万ユーロから343百万ユーロへと大きく伸びた。

 

同期の納入は125機で、昨年同期比で3機増えた。内訳はA220が9機、A320ファミリーが105機、A330neo1機、A350が10機だった。同期中の受注は39機にとどまり、昨年同期の356機から大幅減となった。今年の受注は38機が単通路機だった。ただし正味の受注規模がマイナス61機となったのは同期中に予約取り消し100機が発生したためだ。

 

フォーリによれば、エアバスは単通路機の増産を続けるのは、「マーケットの準備が加速化しそう」なためとする。単通路機は第三四半期に現行の40機を月産43機に増やす。第四四半期に45機にするのは以前の計画通りだ。新型A321XLRの投入時期に変更はなく、2023年だ。

 

またフォーリは単通路機の納入ペースが2022年に急増すると明らかにしている。「サプライチェーンで対応が完了している兆候がある」としたが、正確な数字はまだ発表できないとした。

 

単通路機とは対照的にワイドボディ機生産は「相当長期にわたり低迷する」とみており、長距離機需要は「なるべく早く損益分岐点までもっていきたい」とする。エアバスはA350で月産5機未満、A330neoは月産2-3機程度と半減させており、A380生産は今年終了する。

 

また、エアバスは「将来の産業システムの準備に入った」とし、新型大型案件向け企業をドイツ、フランスに設立し、新システムの中核に据えたいとする。新規立ち上げ企業は「現在の機材と異なる構造を有する次世代航空機」の実現で核となる。エアバス内で組織再編が進行中で、デジタルデザイン製造サービシズ(DDMS)のデジタル体制で次期製品は各面で「見える化」を進めるとする。生産水準を一新し「変革を加速する機会」を生みたいとフォーリは述べた。

 

また外注作業で内製化を進めると明らかにしたが、現行体制の再編とは無関係とフォーリは解説した。内製あるいは外注の方針変更なのかとの問いにフォーリは「内製化を相当進めるが購入も続ける」と述べた。結局、各製品別に変更は決まるのだろう。

 

パンデミック発生後のリスクが発注側に残るが、エアバスは状況は変化しつつあると見る。「今後の大きなリスクはサプライチェーンだ」とフォーリは発言。「ローラーコースターのような状況は管理が非常に厄介」とし、エンジンが増産のボトルネックと指摘している。そこで、エアバスは生産計画で慎重な姿勢を崩さず、特定企業の動向を監視する専門部隊を配している。「サプライ側に課題が見えてきた。危機が増大する前に解決が必要だ」

 

フォーリは貨物機需要に「もっと積極的に」対応すると発言し、ワイドボディ機での対応を想定している。「貨物機で消極的なままでいたくない。対応するのが一社だけという状況は望ましくない」とし、エアバスがA350貨物型の検討に入っていることが知られているが、フォーリは最終決定は時期尚早とした。■

 

Airbus Prepares Single-Aisle Ramp Up Despite ‘Lack Of Predictability’

Jens Flottau April 29, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/airbus-prepares-single-aisle-ramp-despite-lack-predictability

 


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