2021年11月23日火曜日

737MAX:悲惨な事故二例のもととなったAOA迎角誤表示問題の解決のためボーイングはフライトテストを継続中。ストレッチ型737-10から順次新型センサー構成に切り替え。

 時間がかかりましたが、貴重な犠牲のもとにより安全な運航が実現すれば、

進歩となります。ボーイングにはあと一歩頑張ってもらいたいところです。

 

Enhanced angle-of-attack system tests will take place on a Boeing 737-10 in 2022.

Credit: Boeing

 

ーイングは ストレッチ型737-10で迎角 (AOA) 増大システムを搭載した 737 MAXのフライトテストを2022年に開始する。

 

737-8墜落事故でAOAデータの誤りが見つかり、MAXの運航は2019年3月から停止された。2020年末に運航再開が認められたものの、既存機のAOAシステム改修並びに長期にわたる性能改修作業の実施が条件だ。

 

墜落事故二件は機体制御機能増強システム(MCAS)のソフトウェアに原因があったとされ、MCASの作動にはAOAデータが元となり、MAXも先に出た737NGと同様の機体操縦性の実現が目的だった。

 

墜落事件のうちライオンエア610便が2018年10月、エチオピア航空302便が2019年3月ともにMCASがAOAデータをもとに離陸後から機首が上を向きすぎていると伝えていた。両機のパイロットはボーイングが想定していた緊急時対応通りの行動をせず、ともに機体は制御不可能な急降下に陥り墜落した。MCASが繰り返し作動したことが引き金となった。

 

FAAが求めた変更要求でボーイングはMCASではAOAデータをセンサー二基から得て比較対照させることとし、かつ差が5.5度以内となってから機首下げスタビライザーの入力が可能となるようにした。欧州連合航空安全局(EASA)は三基目のセンサー搭載を主張して、さらなるデータ補正効果を期待したが、その後、ボーイングが「合成」センサーAOAデータを別手段で実現すると述べたため、主張を取り下げた。

 

「モニターを増設し、AOAの誤データを早期発見できるようにし、スイッチ操作も可能とします」とマイク・フレミング Mike Fleming上席副社長(民生顧客サポート・民間派生型事業担当)が737 MAX運航再開に際し語っていた。「追加搭載したモニター全部が仮にAOAデータを誤表示したとしても、失速警報器が失速が近いことを教えてくれるのでパイロットはスイッチをオフにできます」

 

改装後のシステムではデータが正しいのか誤っているのかの判断につながるパラメータ5種類を見守る設計だと部レミングはドバイ航空ショー会場で説明し、ボーイングの進展ぶりを紹介した。「データが誤りとわかれば、その部分を使わず、問題は起こりません」

 

改良後のシステムは737-10で2022年にフライトテストする。また完成済みのMAXにもストレッチ型の型式証明が2023年に交付され次第、後付け装着する。基本形となる737-10のフライトテストは6月18日初飛行の後に開始されており、今のところ順調に進んでいるとフレミングは紹介。テスト用3号機は客室内のシステム類を主眼とし、完成済み2機に加わるという。

 

ボーイングは機体短縮型の737-7でもフライトテストを完了しており、「FAAによる新規型式証明に必要な書類作成を完了しており、当社としては準備が整ったが、判断するのは規制当局の側であり、さらなる情報開示を求めらえる場合もある。当社としては型式証明取得と機体引き渡しを2022年という当初予定どおり実現したいと考えています」と語った。■

 

Enhanced Angle-Of-Attack System Set For 737-10 Flight Tests

Guy Norris November 18, 2021

https://aviationweek.com/shownews/dubai-airshow/enhanced-angle-attack-system-set-737-10-flight-tests


2021年11月20日土曜日

ドバイ航空ショーの注目は貨物機新世代型。A350Fが初受注獲得した一方、ボーイングはまだ明確な姿を打ち出せない。一方、777-9型式証明は遅れたままだ。

  

A350Fはボーイングの人気機種777Fとまともに競合するサイズになった。Credit: Airbus concept

 

物機が高価格体の旅客型より注目されるとはまれなことだが、ワイドボディ機市場はパンデミックで一変しており、COVID-19発生後初の大規模航空ショーとなったドバイで新規貨物型の開発案件がを見出しを飾っている。

 

 

双通路機の新規発注が事実上停止している中で貨物部門は記録的な高需要を集めており、エアバスボーイング両社の新世代大型貨物機へ関心が集まっている。需要面の変化を反映した新型機構想がドバイ航空ショーに展示されており、エアバスはさっそく新規案件のA350Fへ初受注を集めた一方、ボーイングも777Xの貨物型で追いつこうとしている。

 

  • Air Lease Corp. がA350F発注に踏み切った

  • 777XFは777-8原型に方向転換

A350Fの初受注はエアリースCorp(ALC)によるもので、エアバス機各型109機の一斉発注の一部として7機受注に成功した。ALCはA220-300(23機)、A321neo(55機)、A321-XLR(20機)、A330-900(4機)も合わせて発注した。このうちA350FはALCで初導入となるが、ALCの執行会長スティーヴン・アドヴァーヘイジーは新型貨物型の需要が高いとし、この型式の機材にも手を広げることにしたと述べている。

 

A350FはA350-1000が原型で機体はフレーム5個分短縮したが、それでもA350-900より長く、ボーイングの777F(777-200LR派生型)に競合する。エアバスが発表した新情報ではA350Fの最大ペイロードを240,300ポンドで飛行距離を4,700nmとある。さらに急送便仕様では貨物209,400 lb、6,000nmになる。

 

ただし、A350Fが明確な姿を発表した一方で、ボーイング777XFはあいまいなままだ。少なくとも社外に対しては。ドバイショー前は、777XFは777-8と777-9の中間サイズになるとの観測があったが、同社は777-8旅客型の派生機種にするようだ。この変更は各社にヒアリングしてみたところ大キャパシティの777-8のほうが貨物機として最適サイズとの意見が多いと判明したためだ。

 

大型の777-8を原型とする方針は製造コストの観点では意味があるが、同時に短い方の777X二型式への関心も高める効果もある。777-8は全長229 ft.、777-9は252 ft.になるが、機体長はこれまでの想定より長くなり、最大離陸重量(MTOW)もこれまでの775,000 lb、788,000 lb想定より増え、777XFではさらに大きなキャパシティが実現しそうだ。業界筋にはMTOWは805,000 lbが目標との声もあり、現行の777Fの766,800lbより増えるという。

 

「実機製造まではスペックに縛られたくない」とボーイングの製品マーケティング担当重役トム・サンダーソンが述べている。「貨物型での課題はペイロードと容積のバランスに尽きる。高密度路線では高付加価値になりそうだが、長距離貨物便では重量が重宝がられる。この場合は機体全長はそこまで問題にならない。その前に機体重量の限界が立ちふさがるから」

 

さらにサンダーソンはeコマース市場の成長で逆に低密度貨物輸送がカギになると述べている。「貨物容積がもっと重要になります。またこの方向で業績が伸びます。現在はこうした検討を行っており、双方の間のどこかで合理的な結論を出したいです」

 

とはいえ、カタールを除けば777-8を発注している唯一のエアライン、エミレイツからボーイングが777XFと777-8の機体長を共通化して当初より大型化する動きに懸念の声が出ている。エミレイツ社長ティム・クラークは「これは問題になる。-9に近いサイズの別の機体をだれが買うのか」と一石を投じている。

 

エミレイツは777Xを2013年に大量発注し、777-9(115機)、777-8(35機)を導入するとしたが、ボーイングから777-9型式証明取得が2023年7月目標と聞かされ、エミレイツは777-8発注をこのまま続けることに疑問を感じ、16機に下方修正し、かわりに787-9を30機導入することにした。

 

エミレイツが777-8発注をゼロにした場合、同型の将来は一気に不安定になる。同社の姿勢が一気に消えれば、ボーイングに残るのはカタールエアウェイズの10機のみとなり、エミレイツの動きからカタールも何らかの対応を示してもおかしくない。

 

他方でエミレイツは機材構成を再考中で、「777Xの納入遅れ三年の影響は大きい。各機の路線就航開始日に合わせすべて計画している」とクラークは述べており、777-9の就航が一年遅れる場合も考慮している。クラークはしっかりした予定表を早期に示すようボーイングに求めたという。他方で「座して待っているわけにはいかない」とも述べている。

 

ボーイングは777-9では規制当局から要求された飛行制御系の変更が未搭載だが、あと2年間あれば型式証明取得できると自信たっぷりで、2023年第四四半期に引き渡し開始できるとボーイングは見ている。

 

エミレイツの見方より保守的な見通しで777-9初飛行(ボーイングは2020年1月)から数えて44カ月の2023年10月に型式証明が下りるとみている。

 

ただし、実際の型式証明取得のタイミングは規制当局次第だ。四機ある試験機のひとつがドバイで展示されており、各機合計で1700時間のフライトテストを実施している。最終的に3,500時間程度のフライトテストになる見込みだ。ボーイングは2023年中の型式証明取得と引き渡し開始の見込みを堅持している。■

 

New-Generation Large Freighters Form Focus At Dubai Airshow

https://aviationweek.com/shownews/dubai-airshow/new-generation-large-freighters-form-focus-dubai-airshow


Guy Norris Jens Flottau November 19, 2021


2021年11月18日木曜日

オットーエイビエーションのセレラ500Lが空の世界に革命を巻き起こす? 2025年量産開始を狙う同機は低コスト運用で排出量も格段に低い画期的な性能をめざす。

 


  • ターミナル1、2共通記事です。これだけの画期的な性能がピストンエンジン一基で実現するのなら本当に革命的です。米国民のエアライン、空港への不満ぶりは相当のようで、手が届く料金なら各地へ直行するエアタクシーになるのではないでしょうか。軍用となると連絡機、それとも特殊作戦の移動用でしょうか。

Otto Aviation's prototype Celera 500L aircraft.OTTO AVIATION

 

 

ットーエイビエーションOtto Aviationはセレラ500Lのフライトテストで野心的な目標達成のめどがついたとする。

オットーエイビエーションによればセレラ500Lのフライトテスト第一段階が完了し、革命的といえるほどの高性能を発揮したという。同機は昨年発表されていた。試作機は計51時間のフライトを実施し、時速250マイル、高度15千フィートを記録したという。

同機は涙滴型形状、推進式プロペラ構造が特徴的で、2017年にカリフォーニア州ヴィクターヴィル空港で同機の姿が流出して以来注目されてきた。

「テストフライト第一段階で得たデータから目指す性能達成に向け順調に向かっていることがわかる」とオットーエイビエーションCEOウィリアム・オットーJrが声明文を発表した。「2025年の量産機製造目標に近づいており、これ以上の興奮はない。次のフライト段階では飛行高度、速度を上げていく」

オットーはセレラ500Lの設計の特徴である涙滴型の「層流」を最適化した形状、長い主翼、高効率複数燃料使用エンジンはすべて革命的な低コスト航空移動の実現にむけたものとする。同機ウェブサイトでは「エアタクシーモデル」を提唱している。

OTTO AVIATION CAPTURE

 

「フライトテストでは層流の状況をチェイス機の赤外線カメラで記録したが、機体表面の空気の流れの制御機能を確認できた。主翼と機体上の層流はしっかりしており、追加テストデータを得られたので、生産仕様機の実現に役立てる」

なお同機にはレイフリンエアクラフトエンジンディベロップメント(RED)のA03V12ピストンエンジンが搭載される。

「フライトでは高度15千フィートで250mph超の速力に達し、めざすのは50千フィート、460mphだ」と同社発表にある。これまで同社は最低でも4,500マイルの航続距離、航空燃料ガロンあたり18から25マイル、飛行時間コスト目標を328ドルと現在飛行中のターボプロップ機やビジネスジェットの数分の一の水準にしたいとしてきた。

OTTO AVIATION

セレラ500Lと同サイズのビジネスジェットを比較している

 

「これまでの航空機の世界は0.5%の改良をあちこちに加えてきたようなものだ」とオットーエイビエーションの最高技術責任者デイヴィッド・ボーグが今年はじめ Air & Space Magazine に語っていた。ボーグはボーイングで737-700の実現に尽力した人物だ。「だがこの機体では400%の改良をねらう。まさしく驚異的な結果となる」

効率化を狙った革命的な性能ながら利用者にやさしい機体にするのがねらいだ。「フライトテスト結果を見るとセレラ500Lは同サイズの機体より排出量を80%減らせることが分かった」(同社による2020年12月報道資料)

OTTO AVIATION

 

セレラ500Lは試作機だが、オットーエイビエーションでは大型のセレラ1000Lの企画を進めており、貨物機並びに軍用機への発展を話題にしている。同社ウェブサイトでは無人型やハイブリッド電動機の構想も紹介している。

同社は今もセレラ500Lの量産型を実現することを最初に目指しており、小型ターボプロップ旅客機やビジネスジェットの代替需要を狙う。

OTTO AVIATION

セレラ500L量産型の想像図.

OTTO AVIATION

量産型セレラ500Lの客室内はビジネスジェット並みになる。

「キャビン高は6'2"(188センチ) あり、機内をそのまま歩ける。ラバトリーもつける。中型ビジネスジェットと全く同じレベルになる」とオットーはCNNで語っている。機体外観は「ガルフストリームに慣れた企業幹部の目には魅力的に映らないかもしれないが、エアラインでの移動で空港や保安検査で列を作り延々と待たされるのに閉口している人は多い」

オットーエイビエーションがここまで野心的な目標を達成できるか注目される。同社の目標の実現は不可能ではないもの難易度が高いと見る専門家もいる。

実現できれば、セレラ500Lさらにその後続く後継モデル各機は一夜にして空の利用を一変させる存在になる。■

 

BY JOSEPH TREVITHICK NOVEMBER 17, 2021



2021年11月16日火曜日

2021年ドバイ航空ショー: ボーイング777-8の行方に赤信号。大手発注先エミレイツがボーイングの引き渡し遅れに不満。機材計画の変更を強いられていることから。

  

 

777-9が2021年ドバイ航空ショーに展示されている。

Credit: Mark Wagner/Aviation Images


 

ドバイ----エミレイツエアラインボーイングから777-9の型式証明が2023年7月に取得予定だが引き渡しには不確定さが残ると聞き、同社が発注済みの777-8の今後に一層疑念を募らせている。

 

エミレイツエアライン社長ティム・クラークTim Clarkはドバイ航空ショー会場で11月16日に「ボーイングとはやるべき仕事の実効で合意ができていたが、来年なかばまでに日程を再調整する必要がある」と述べた。

 

エミレイツは777X計115機を発注しており、うち16機が-8型とみられる。当初は150機発注でうち35機が-8だったが、下方修正し、代わりに787-9を30機発注した。

 

とはいえ、クラークは同社が777-8の進捗に納得していないと述べており、「さらに遅延の可能性があり、貨物型が先に出るのではないか」

 

クラークは-8をやや大型化し貨物機型の原型に使おうというボーイング構想に懸念を隠せない。「-8が-9に近いサイズなら導入する必要があるのだろうか」

 

エミレイツが777-8発注を取り消せば、同型の将来は暗くなる。同社分を除くと確定発注はわずか10機になる。すべてカタールエアウェイズの発注だ。エミレイツが動けば、同じ湾岸地区のライバルたるカタールにも影響が出よう。-8に発注ゼロとなる事態となれば、ボーイングには777-9と貨物型しか残らないことになる。

 

他方でエミレイツは機材構成の再検討に入っている。「777X引き渡しが3年遅れている影響は大きい」とクラークは述べ、「路線就航を前提にすべてを計画していた」という。検討作業では777-9においても遅延が発生する場合を考慮して、さらに787-9の引き渡しも1年遅れる場合を想定する。クラークによればボーイングにはしっかりした計画を火球的かつ速やかに出すよう求めたという。他方で「黙って座っているわけにはいかない」という。

 

エミレイツはそのため「旧型ER多数」を予定より長く供用し、2030年代としたエアバスA380の順次退役計画も変更を余儀なくされる。同社は機材の運用期間を延長することにした。また777-300ER、A380ではキャビン改修を実施する。53機の777と52機あるA380にはプレミアムエコノミーキャビンが追加される。また777では新しいビジネスクラスキャビンとして1-2-1レイアウトを導入する。こうした改装作業は2022年末から開始し、18カ月以内に完了させる。

 

エミレイツ向けに納期を守れなかったのはボーイングだけではない。エミレイツのA380最終発注機材の二機は10月に引き渡し予定だったが、11月にエミレイツはエアバスに12月10日の最終引き渡し日程を確認させたものの、エアバスCEOジローム・フォーリからクラークに12月16日も実行不可能だと伝えてきたという。■

 

Emirates Casts More Doubt On Future Of Boeing 777-8

Jens Flottau November 16, 2021

https://aviationweek.com/shownews/dubai-airshow/emirates-casts-more-doubt-future-boeing-777-8


2021年11月15日月曜日

ドバイ航空ショーの話題:ボーイングは777X貨物型を777-8原型で開発立ち上げを発表か。

 ドバイ航空ショーが開幕し、いろいろな話題が出てきました。Aviation Weekからボーイングが777Xで早くも貨物機を立ち上げるという話題です。777Xは型式証明が下りておらず、まだ民間エアラインへの引き渡しも始まっていない機体なのですが。

 

Credit: Mark Wagner/Aviation Images

ボーイングは貨物専門エアライン各社との話合いを経て777-8を原型とする貨物専用型の選択に狙いを狭めたようだ。

 

ーイングが777XF貨物型を777-8と-9の間のサイズで発表するとの観測がある。エアバスがA350-950Fとして先に発表しており、A350-900と-1000の中間のサイズとしたが、ボーイングはより大型の777-8旅客型を原型にするようだ。この背景に民間運航者側から777-8を原型にするのが望ましいとの声が大きいことが分かったからだ。

「実際に機体開発を開始するまでは性能諸元についてお話しできません」とトム・サンダーソンTom Sanderson製品マーケティング部長が述べている。同部長は787製品開発とともにボーイングの Confident Travel Initiativeも担当する。「貨物機の課題は常にペイロードと容積のバランスだ。高密度路線は高価値の輸送になり、長距離貨物路線では重量が重視され、機体サイズより最大重量が決定要因となります」

ただしサンダーソンはeコマースの成長で低密度輸送も重要になってきたと指摘している。「貨物容積がこの場合もっと重要になる」

777-8は全長229フィートで777-9は242フィートだが777-8を若干延長し最大離陸重量(MTOW)は従来話題になっていた775,000 lbあるいは788,000 lbより増える。777XFは輸送能力を増やして登場する可能性がある。貨物運航業者筋からはMTOWが805,000 lb.にまで増えるとの期待がある。ちなみに777-200LR派生型の777Fは766,800 lb.だ。

一方でボーイングからは規制当局から777-9の飛行制御系で変更を求められているが、実機への搭載・試験はまだ行われていないが、777-9の型式証明取得はあと二年で達成できると自信たっぷりの発言があった。引き渡し開始を2023年第四四半期に想定している。

777-9初飛行が2020年1月だったので44カ月で2023年10月ごろに型式証明取得をめざすわけだ。これは777、787でそれぞれ10カ月、20カ月だったのと対照的だ。

ただし実際の型式証明発行は規制当局の事情により左右されるのであり、マイク・フレミング Mike Fleming 737MAX運航再開担当の上席副社長兼民生部門顧客サポート及びコマーシャル派生製品事業担当は「これまで同機のフライト業務に多大な時間をかけてきた。どんな問題にも対応できる」と述べ、「今年初めは777Xの大日程に気鋭踏力側の変化を織り込み慎重に日程を組み替えていた」としている。

テスト用機材4機の合計フライト時間は1,700時間に上っており、テストでは3,500時間を狙う。フレミングは「現状の立ち位置は2023年に型式証明を取得し、同年末にお客様へ引き渡し開始する目論見に変更はない」としている。

FAAから型式検査証明 (TIA) を取得すればその段階から飛行テスト時間は型式証明取得にカウントされる。TIA取得はまだだがフレミングはボーイングは「必要な書式の記入に懸命に取り組んでおり、規制当局への提出を急ぎ、最終的な検査証明取得を目指していると述べた。ただし、地上型式試験にはTIAは不要で、テスト機材の少なくとも一機が地上テストに投入されているようだ。■

Boeing Studies Larger 777-8 As Baseline For 777XF

Guy Norris November 14, 2021

https://aviationweek.com/shownews/dubai-airshow/boeing-studies-larger-777-8-baseline-777xf


2021年11月13日土曜日

中型長距離機新開発の開始に踏み切れないボーイング。一方でA320XLRがナローボディ長距離線機材需要を独占して今いそうな勢い。ボーイングは新技術の熟成まで待つ気なのか。

  

エアライン、リース元はボーイングに「新しい757」を開発し、エアバスA321XLRへの対抗機種とするよう求めている。Credit: Joepriesaviation.net

 

ボーイングは新型ナローボディ機開発に踏み切るべきか、この質問をエアラインに向ければ、「すぐ始めて欲しい」というのが答えだ。これは Aviation Week Network/Bank of America Global Researchの共同調査で900社から回答を得た結果で、エアラインやリース会社多数を含む。業界はシンガポールの2020年ショー以来久しぶりの本格的航空ショーのあるドバイに集結しつつある。

 

「ボーイングが何らかの動きを示すべきだろう」とバンクオブアメリカのアナリスト、ロン・エプスタインが解説している。「だが同社はバランスシートを改善してから次に移る構えだ」新型中型機(NMA)の検討は2020年初めまで続いていたが、ボーイングは既存機種の生産安定化を優先し、COVID-19による歴史的規模の影響、さらに20カ月続いた 737 MAXの飛行停止措置、787引き渡し中断による影響からの回復が2022年第一四半期まで続くとしている。

 

ボーイング社内のNMA研究の一環として-5Xコンセプトが2020年末に流出しており、エアバスA321XLRに対抗しつつ757後継機がないニッチを埋めるとしていたが、同社はその後787引き渡し再開、777X型式証明へ注力し始めた。新型機投入の大日程を示す兆候は出ていない。

 

社内の新型機立ち上げへ向けた準備が低調なまま、ボーイングはタイミングを見定めようというのだろう。新型機開発業務には専門部署立ち上げから新技術の飛行実証等があり、統合製品チーム(IPT)でデジタルデザイン製造へ道を開き新型機の実現をめざすだろう。近年の軍用機事業で得た知見を投入するはずだ。

 

顧客側の回答でIPTでボーイングは次期機体の実現をきたいしており、73%はボーイングに高性能長距離性能があり座席数が多いナローボディー機でコスト削減の実現を期待している。顧客が期待する新型機は現行の737 MAXより大型の想定で、29%は座席数180から250のファミリー構成を希望。回答の半数以上が4,500カイリ以上とエアバスA321XLRを除けば、現行機のいずれよりも長い航続距離を望んでいる。

 

各社の要望は極めて高く、とはいえ必ずしも非現実的でもなく、運航経費低下を望んでおり、60%は15%削減で十分としつつ、20%削減が望ましいと85%が回答している。

 

調査結果で明らかになったのはエアラインやリース会社がボーイングにエアバスA321XLRの対抗機種の実現を望んでいることで、長距離型A321neoの納入開始が2023年に迫っており、確定発注がすでに500機になっているとの予測がある。エアバスは正確な受注数を公表していない。

 

ボーイング757と同様にXLRはエアライン多数が長距離路線用として大西洋横断あるいはラテンアメリカ路線に投入するだろう。ユナイテッドエアラインズCEOスコット・カービーScott KirbyはAviation Weekに対しXLRをニューアーク、ニュージャージー、ワシントンの参加者で運用すると述べ、北アフリカ路線も視野に入れる。

 

A320neoファミリー生産の半数がA321neoに間もなく切り替えれると、長距離単通路機市場でエアバスの優位性が確立される。この分野がエアバス収益の大きな柱になっており、ボーイングの737-9や-10では競争力が発揮できず苦戦となりそうだ。

 

対照的にに737-8販売がA320neo相手に善戦し、ボーイングに新型機開発の余裕が生まれると見る向きがエプスタインはじめアナリストに多い。

 

環境持続性が今回の回答で重要な視点となったのは驚くに当たらない。71%がこの問題をとても重要あるいは重要と回答した。またボーイングに迅速な対応を期待していることが明白となった。2026年の新型機引き渡しを期待し、29%が2027年、22%が2028年、19%が2030年だった。各社ともボーイングに時間を無駄にする余裕はないと見ている。

 

一つ問題がある。新型エンジン技術だ。回答のほぼ三分の二が新型オープンローター、水素あるいはハイブリッドエンジンの実用化を待つとし、多数がオープンローターに期待している。CFMインターナショナルが画期的イノベーション技術持続可能エンジン(RISE)の研究が進展しており、次世代機への採用が期待される。

 

このRISEでCFMはオープンファン実証を行う。克服すべき騒音と性能の課題がオープンファンにあり、技術設計上でどう解決するかが問題だ。

 

今年に出た同社発表では目標を燃料消費、CO2排出量で20%削減に置き、ベンチマーク対象のLeap 1ターボファンの20-35千ポンド推力クラスに置く。実証で一段式ギア駆動ファンにアクティブステーターをつけ2024年から25年にフライトテスト実施をめざす。

 

これに対しボーイングの製品開発担当副社長マイク・シネットMike SinnettはRISEにより同社の考える次期新型機の実現時期や方向性が左右されることなないとし、「あくまでも技術実証であり、CFMにはその他の検討対象となる別の技術もあるし、一つにまとめたテストもある」「同社はまだRISEを事業としておらず、ソリューションとしても認識していないが、各種の技術を試すチャンスとなる」と述べている。

 

「自分の視点並びにチームの視点では機体設計に投入可能なツールに映る。興味深い技術もある。タイミングが合う技術もあるが、合わないものもある。最終的なソリューションにつながるかに関心がある」

 

回答の58%がボーイング新型機のエンジンメーカーは一社限定が望ましいとしたが、737MAXでボーイングはエンジンの選択肢は提供していない。

 

ボーイング社内でNMAや派生型-5Xの検討が進んでいた時点で同社にはナローボディあるいは小型ワイドボディの選択があった。回答の四分の三が小型ワイドボディ機を望ましいとしたが、機体構造から抗力が増えてもいいとしたのには二つ理由がある。乗客の乗降時間が短くなる。また折り返し時間も大型ナローボディ機で問題となっており、757-300では前後のドアを使って乗客を移動させている。もう一つの理由として貨物輸送の収入が重要になっている。貨物収入は一程度必要だ。A321XLRの弱点は長距離路線運航で客席が満席となると貨物用スペースが実質的になくなることだ。

 

ボーイング社内ではコンセプト検討が続いている。ボーイングは業界の意見を集め、NASA向け提案として単通路持続可能飛行実証機(SFD)に盛り込むべき内容を把握しようとしている。Xプレーンの70年に及ぶ歴史でも最大規模となる専用試験機事業は各社競合となるが、NASAは持続可能飛行国家連携に政府機関、業界、学界の英知を集める。

 

将来の単通路機として2035年登場を想定する機体の中核技術の実証、成熟化を狙うNASAのXプレーンは2026年に飛行開始の予想で、低排出高効率のエアライナーとして2030年代に現行737の後継機となることが期待される。ただし、これはボーイングが事業化に成功した場合だ。ボーイング案は遷音速トラス構造主翼機で画期的な高アスペクト比の主翼を特徴にし、同社はこの構造を十年以上かけて研究している。

 

2026年末にXプレーンを飛行開始させ、NASAはSFDにより将来の亜音速機の性能目標の実現をめざすべく、地上テスト、飛行試験でデータを集めたいとする。■


Survey Shows Airlines Want New Boeing Aircraft

Survey Shows Airlines Want New Boeing Aircraft


Jens Flottau Guy Norris November 12, 2021


2021年11月12日金曜日

遠心力で小型衛星を地球周回軌道に打ち上げる画期的な技術を米新興企業が公開。実用化されれば宇宙利用の構図が大きく変わりそう。

 Spin

SPINLAUNCH

 

運動エナジーだけで小型衛星を安く迅速に打ち上げ可能とする新興企業SpinLaunchにペンタゴンも関心を寄せている。

 

新興企業が運動エネルギーによる宇宙機の軌道打ち上げシステムを公開した。SpinLaunch社の構想では真空密閉した遠心機を回転させ、音速の数倍まで加速してから上方に放出し、大気圏上層部に到達させるものっで、究極的には地球周回軌道に乗せる。同社はカリフォーニア州ロングビーチにあり、従来からのロケットによるペイロード宇宙打ち上げ方式に真っ向から挑戦する構えだ。

 

試作型の初飛行はニューメキシコの宇宙港アメリカで10月22日に実施されたが、同社は昨日になりやっとこれを発表した。

 

同社システムでは真空容器を使い、内部に回転部分があり、対象を超高速に加速し、抗力を打ち消す。その後「1ミリ秒以内に」扉を解放し空中に放出する。バランスを取るため錘が反対方向に回転する。真空密閉は打ち上げ対象が発射管上部の膜を破るまで維持する。

 

SPINLAUNCH.

準周回軌道を目指す発射体が加速器から飛び出した瞬間を捉えた写真

 

 

コンセプトは至極簡単に聞こえるが、作動させるためには課題が多く、しかも連続して作動させるのが最大の難関だったという。

 

「画期的な加速方法で発射体や打ち上げ機を超音速に加速させるため地上システムを作った」とSpinLaunchのCEOジョナサン・イエニーJonathan YaneyがCNBCに述べている。

 

ヤンリーは同社を2014年に創業したが、これまで同社は目立たない存在で同CEOによればこれが効果を上げて

「大胆かつ尋常でない」宇宙打ち上げ方式の開発に功を奏したという。

 

 

準周回軌道を目指す加速器がSpinLaunchの初回テストで使われたが、最終的なハードウェアは全高300フィートとなる見込みでこの3分の1の縮小版だとイエニーは述べた。

 

初回テストに使った準周回軌道用の発射体は全長10フィートで「時速数千マイル」まで加速されたが、加速器の能力の約20%を使っただけだという。

 

同社によれば10月のテストは基本コンセプトの正しさを証明することが主眼で航空力学と放出機構を確認したという。まだテストとしては開始段階のため、発射体は「数万フィート」に放出されたに過ぎない。

 

SPINLAUNCH

加速器の全体像

 

 

発射体はその後回収されたといわれる。再利用可能な構造がSpinLaunch社のコンセプトの重要部分だ。だが、発射シークエンスでは発射体をどうやって回収するのか明らかにしていない。とくに打ち上げ時の解説ビデオでは発射体が2つに分離する様子が見られる。回収システムを加えれば重量がかさみ機構が複雑になるが、超高速かつ摩擦熱に耐える素材の価格を考えると回収する価値があるのだろう。

 

同社の今後の予定ではロケットモーターを発射体につけて軌道飛行を実現するとある。その場合はロケットブースターが発射体と打ち上げ体の分離直後に点火する。以前の報道では発射体は無動力で約1分間移動してからロケットが点火で高度200,000フィートに到達するとあった。

 

ロケットは軌道に乗せるため不可欠ではないと同社は説明している。「運動エナジーで打ち上げた衛星は大ロケットなしで気圏脱出が可能で、SpinLaunchは衛星多数ほか宇宙ペイロードを排出ガスゼロで大気圏に悪影響を与えずに打ち上げる」

 

同社の説明によればこうした飛行は今すぐにも実行可能で、今後六カ月から八カ月で合計30回程度の準周回軌道テスト飛行を行う。その後、同社は軌道打ち上げに挑む。

 

現時点で同社によれば実寸大システムのリスク低減策を90%まで実施済みで最終設計に向かっているという。

 

同社の構想はたしかに「大胆かつ尋常でない」が、成熟化すれば従来の宇宙打ち上げ方法を一変させる可能性を秘めている。今日のロケットによるペイロード運搬では大量の燃料が必要でペイロードのサイズを小さくしている。

 

これに対しSpinLaunchでははるかに小型ロケットを使い、燃料搭載量が少なくなるものの比較上は大きなペイロードを運搬できる。同社はペイロード400ポンド程度までの打ち上げが将来実現すると見ている。

 

SPINLAUNCH

加速器につながる発射管を上から見たところ。高さは300フィートに達する。

 

 

軌道打ち上げ体が完成すれば宇宙港アメリカを離れ、海岸沿いに打ち上げ施設を確保し、「一日数十回」の打ち上げを可能にするとイエニーは述べている。大型で複雑なロケットが不要のためここまで迅速に打ち上げが実施できれば、打ち上げ費用の低下が実現する。加速器で実現する速度により軌道打ち上げ用燃料は四分の一、コストは十分の一に下がるという。

 

これと同じ発想の打ち上げ方法がGreen Launch 社の構想で、地上に「インパルス打ち上げ機」を置き、従来のロケット一段目の代わりとする別のアプローチを採用している。今夏に同社は米陸軍のユマ試験場(アリゾナ)で1960年代の高高度研究プロジェクト(HARP)の残り物も使い、実証実験を行った。

 

SpinLaunchはこれまで110百万ドルを投資機関から集めており、商用運航を目指しているが、技術が本当に成熟化すれば軍用にも使えそうだ。すでにペンタゴンが同社に関心を寄せており、国防イノベーション部が2019年に同社と契約を結んでいる。

 

SPINLAUNCH

.SpinLaunchは沿岸部に施設を確保し、軌道打ち上げを恒常的に行なう

とする

 

 

同システムで運用可能な重量に制限があることからSpinLaunchは大型ペイロードの打ち上げには限度がある。従来型のロケット打ち上げがトン単位の打ち上げを可能にしている。にもかかわらずSpinLaunchは米空軍の要望に多く答えられそうだし、宇宙軍やミサイル防衛庁も同様で、従来より小型化した衛星の宇宙打ち上げがここにきて必要になっているからだ。

 

加えて、短時間に多くの打ち上げが可能となれば軍にとって魅力的となる。大型衛星が各種脅威にさらされ脆弱になっているためで、超大国同士の武力衝突となればSpinLaunchの構想は小型でそこまで複雑でない衛星を迅速に軌道打ち上げするのに理想的な選択肢となる。供用中の衛星多数が機能不全になったり破壊される事態が想定されている。また数千機もの小型衛星で地球全体を網の目のように覆うのがDoDの考えるこれからの衛星運用の姿に合致する。同じことは民生用の宇宙利用にもあてはまる。

 

DIA

国防情報局の公開資料で衛星が一回の運動エナジー攻撃で使用不能あるいは破壊される各種場合が示されている

 

また同社コンセプトには別の軍用用途が考えられる。超長距離砲撃や攻撃任務で遠距離から短時間で標的に命中させる必要が米軍の優先事項トップになっている。この実現に同社技術が利用できることは容易に想像できる。弾頭部分を長距離移動させることだ。SpinLaunchがこの用途をそのまま構想しているかは定かではないが、武器に転用できることは非常に魅力的に映るはずだ。

 

国防総省内関心が高まり軍事装備を軌道へ送り込む画期的な方法として可能性を検分しているが、SpinLaunch意外にも新規企業が存在する。たとえばエーヴァムがオンラインでロールアウト式典を行ったレイヴンX自律打ち上げ機がある。これは再利用可能無人機で衛星など小型ペイロードを軌道上に運ぶ構想だ。

 

だがS;inLaunch、エーヴァム両社のコンセプトはともに簡易、安価かつ柔軟度において従来型ロケット打ち上げより優れると両社は主張している。あきらかに両社は空中打ち上げ方式のノースロップ・グラマンのスターゲイザーやヴァージンオービットのローンチャーワンよりも打ち上げ費用が安くなる。空中発射式では改装旅客機が母機で小型衛星の打ち上げを目指す。ペンタゴンはスターゲイザーをすでに利用しており、実験用あるいは極秘のペイロードを打ち上げている。もちろんSpinLaunchでは打ち上げ施設が地上にある点で、従来型の打ち上げ施設と変わらないが、空中発射式の機動性や柔軟度にはかなわない。SppinLaunchによれば初の顧客向け発射実施を2024年末に行うとある。

 

突然出現し、あたかもSFの世界のような技術コンセプトを持ちだしたSpinLaunchの実行力には疑念も残るが、同社は画期的コンセプトを用いて小型衛星を低コストで軌道に乗せようとしている。

 

果たして同社の巨大な円盤状施設がこれからの宇宙移動手段の中心になるのか近くわかりそうだ。■

 

Space Launch Start-Up Just Used A Giant Centrifuge To Fling A Projectile Into The Upper Atmosphere

BY THOMAS NEWDICK AND TYLER ROGOWAY NOVEMBER 10, 2021

  • THE WAR ZONE

  • この記事はターミナル2で先に公開しました。


お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。