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2019年12月29日日曜日

ボーイングの危機状況でもエアバスの商機につながっていない事情とは


Airbus Not Benefiting From Boeing’s MAX Crisis, Exec Says


Helen Massy-Beresford December 18, 2019

ーイングが737 MAXの苦境から脱しない中、状況はエアバスにとって有利ではないと同社の民生部門最高責任者クリスティアン・シュレアChristian Schererが語っている。 
「ボーイングの苦戦でエアバスが有利になっているのかとの質問ですが、あきらかに否です。当社は成長産業の一角ですが、2社独占状態の中で一方が傾くと業界全体に極めて大きな影響が生まれるのです」とシュレアは12月18日フランスの航空宇宙報道記者会合で語った。
シュレアによればA320ファミリーの受注状況が好調とはいえ、エアバスはボーイング発注分を「棚ぼた」で獲得できていないという。またボーイングの苦境で業界全体が利益を増やしているともいえず、逆にこれだけ売れている機種で問題が起こると業界全体に悪影響が出ていると社会は受け止めるという。
エアバス自身もA320neoファミリーで納期遅れの問題に直面中だが、シュレアは同社が 最終組立ライン(FAL)一本の追加を検討中と明らかにした。「とくにA321で若干の納期遅れが発生しており、新型ACFキャビン搭載のA321で顕著だ。現在遅れを最小限にすべく全力をあげている。(A321での)FAL追加の噂があるが現実に検討はしているものの決定はまだだ」
エアバスはA320ファミリーの生産問題は2年間以内に解決したいと考えているという。
また今年の業績見込みとして11月末で940機受注となっており、いよいよ1,000機が視野に入り、好調だったと総括。2019年のエアバスは創業以来総計2万機という大台も達成している。
シュレアによれば輸入関税引き上げが業界に悪いニュースだという。「米国の輸入税が深刻な問題で当社の顧客各社に影響が大きい。極度に競争が激しい業界で10%の関税引き上げは大きな障害だし、破滅的効果となる」
関税戦争が進んで保護主義の動きが強まると業界に何もよい話にならないとエアバスは見ているという。「米国欧州双方に関税戦争がこれ以上進まないよう求めたい。双方の当局には協議の上合意に進んでもらいたいものです」。■


2019年12月21日土曜日

エアラインの構造変化:ワイドボディ機需要は低下、ナローボディ機の長距離路線投入が主流になる


Widebody Market Weakness Shows Signs Of Permanent Structural Change

ワイドボディ機需要の弱さは恒久的構造変化の印だ
Jens Flottau Michael Bruno December 11, 2019

ーイングからワイドボディ機をドバイ航空ショーで大規模受注したと発表があったが、実は大規模でも新規でもなかったことに注目すべきだ。
以前受注した777Xの150機受注の一部が787-9など小型機に変更された。エアバスユナイテッドエアラインズがA321XLRを50機発注したと発表し、ボーイングにショックを与えたが、同様に手痛い結果も受けた。同じユナイテッドがA350発注を5年間先送りすると発表したのだ。
ふたつの事象から今後の動向悪化につながる兆候を両社は見ている。ワイドボディ機の需要が弱い。影響は両社の最新製品A350、787、777Xに直結する。両社にはこの傾向が一時的と受け止める時間の余裕があるものの、構造的転換を進め、調整期間に備える必要は避けられそうもない。
複数の事態が同時進行中だ。エアライン側はナローボディのA321XLRで小規模設備投資でリスクも低いまま長距離路線の運行が可能と気づいた。エアバスによれば2019年パリ航空ショーでの発表以来の同機受注は予定も含め400機を超えている。これに対しエアバス、ボーイングの合計ワイドボディ機受注は407機、ただしこれは2年間の合計で、エアバス122機、ボーイング285機だ。
湾岸三大キャリアが市場の低調さを補うシェルターの役目を果たしていない。ボーイングは2014年に777X確定受注277機を記録したが以後この規模は超えていない。さらにエミレイツ発注分を除くと127機になり、カタールエティハド両社も除けば42機しかないる。
ここ五年間で航空運輸は大幅な成長をとげたが、拡大基調に減速が現れており、成長分も短距離路線やLCCによるものだ。貿易戦争から国際ビジネス出張に悪影響が出ている。短中期的に見ると不確実性しかない。さらにA330からA330neoへ、777から777Xへの移行はエアバス、ボーイングの予想よりずっと遅い。
エアバスではワイドボディ機の売れ筋のはずのA350-900で純受注は5年間で157機だ。大型の-1000型は同時期でわずか18機が実質受注分だ。エアバスでA330neoがこの五年間でワイドボディ機の最大の売れ筋で2014年1月から2019年11月にかけ299機を受注した。第1世代のA330がこれに続き178機受注。A380は受注が全てキャンセルされており、同機は2021年に生産終了となる。
ボーイングでも事情はさして変わらない。747-8FではUPS発注分で数年間生き延びているに過ぎない。事態を反転させるだけの引き合いも期待できない。一方でベテランの767にまとまった発注があり、ボーイングは同機でエンジン換装の可能性を検討し始めたところだ。
777と787が大口顧客特に湾岸各社の戦略変更の犠牲だ。エティハドは2013年ドバイ航空ショーでの発注分をほぼ全機キャンセルし、キャンセルできなかったA350-1000は長期間保存機材とする。エミレイツは787発注分をやっと確定したが、2013年に発注した777Xの一部をキャンセルしている。同社は受領機数を2割減らす意向でエティハドは発注済み25機をすべてキャンセルしたいとする。すでに同社は787の発注残を51機から20機減らしており、A350では今年はじめに62機だったが今や20機に減らしている。
2019年に発注取り消しが新規受注を上回った。2018年には77新規受注はゼロで2015年から2017年合わせて30機しか無い。777-9の185機、777-8の35機という2014年実績はすべて湾岸キャリア各社の発注だった。
787がボーイングのワイドボディ機の中心だが、よく見ると全体としての成功の中心は787-9だとわかる。787-8では5年間で19機減で、2014年からでは787-10は55機、787-9が371機受注となっている。
不確実性はさらに拡大している。 Agency Partners の試算ではA350受注残の三分の一は不安定で、イランエアやリビアンエアラインズは機体を受領しないかもしれない。「ユナイテッドがA350発注を取り消す可能性が増えてきた」とする。同社の発注は9年前のものでその後数回に渡り内容を変更している。ユナイテッドは長距離路線にナローボディ機を投入する好機がきたと見るエアラインの一画で、A321XLRは757-200の後継機とみなしている。
この結果はメーカー側に厳しく響く。ボーイングは787を月産14機から12機に減らす。777から777Xへの転換は予想以上に時間がかかる見込みなのはエンジン開発などの問題のせいだが、ルフトハンザ、エミレイツへの引き渡し開始は2021年に延期となった。777X採用を決めたのは9社にすぎず、その後が続かないのはエアライン側が大型機の747-8やA380で苦労していることも影響している。
今年の夏に入りボーイングからサプライヤー各社、投資機関その他に対し米中貿易の悪化で航空機販売の行方に悪影響が出るとし、とくに777、787で顕著と伝えるメッセージが出た。
Jefferiesの12月レポートではワイドボデイは中国市場でのシェアは29%で国内長距離路線に投入されているとある。実際にアジア各地では短距離路線にナローボディ、ワイドボディーがともに投入されることが多く、東京札幌線、東京福岡線ではボーイング777と737NGが運行されている。Jefferiesによればワイドボディ機投入のトップ25路線の平均距離は917カイリだという。
だが世界第一位第二位の経済大国が「フェーズ1」の貿易休戦に向かおうと苦戦する中、中国からの発注の復活は未だ先の話のようだ。ボーイングは10月に787月産を12機に減らすと発表したが、その実施は「2020年後半」とし早くとも2021年と見ていたアナリスト予測を裏切った。
エアバスはA350の初期増産体制を月産10機にしたが、市場の不確実性を理由に当面これ以上増やさないとしている。「A350で現れつつあるギャップはボーイング787でも同様で新規発注分の単価が低下しA350の収益性が圧縮される」とAgency Partnersパートナーのサッシュ・チューサが記している。それによるとA350月産規模は2022年末に減産を余儀なくされ、このまま状況に変化が無いと2024年には7機にまで減るという。
A321XLRの成功が現行ワイドボディ機のみならずボーイングが構想中の新型中間規模機(NMA)にも影響を与えている。NMAは小型ワイドボディ機となるといわれる。「A321XLRの販売好調でNMAは実現の芽を奪われそうだ」とBloomberg Intelligenceが12月レポートで記している。
「ナローボディ機は小型のため小規模都市間路線に適す一方、大型機は経費利益ともに不利になる」「また路線組み合わせの柔軟性につながりエアラインの機動性が高まる」(Bloomberg)
今後登場するボーイングのナローボディ機は現在より席数が増え200席程度が中心となり、A321XLRより長い航続距離を実現するだろう。Bloombergはその実現時期を最短で2020年代後半、開発費用は100億ドル規模と見積もる。「NMAはナローボディに変更されMAXの飛行停止で実現時期が先送りになるのではないか」という。
Jefferiesも同じ見方だ。「ボーイングはNMAの最終決断を下していないが、737MAXの飛行停止で決断を先送りしながら目標価格の実現に必要な条件も同時に先送りできる」■

Based in Frankfurt, Germany, Jens leads Aviation Week’s global commercial coverage. He covers program updates and developments at Airbus, and as a frequent long-haul traveler, he often writes in-depth airline profiles worldwide.
Based in Washington, Michael Bruno is Aviation Week Network’s Senior Business Editor and Community and Conference Content Manager. He covers aviation, aerospace and defense businesses, their supply chains and related issues.

2019年12月16日月曜日

ユナイテッドがA321XLR発注に走り、ボーイングNMAの行方に暗雲?

Boeing NMA future doubted after United orders 50 Airbus A321XLRs

By Jon Hemmerdinger, Boston11 December 2019
nma-ga
Source: FlightGlobal
ーイングが提案中の新型中間規模機(NMA)の今後が見えなくなってきた。ユナイテッドエアラインズエアバスの競合機種A321XLRを発注したためだ。
今回の発注でNMAへの影響は専門家で見方が割れており、ボーイングがNMA投入を断念するとの意見もある。
「ユナイテッドのA321XLR採用でボーイングからの新型機登場の可能性は潰れた」とブルームバーグは12月5日に伝えた。
ただ航空宇宙コンサルタント企業AIRのアナリスト、マイケル・メルゾーはA321XLRが成功していることこそボーイングにNMAが必要な理由と述べ、開発開始につながると見る。
「NMAについては肯定的に見ている。ボーイングの新型中型機の存在意義が確認された」
「機体製造の戦略を見るとNMAがないままだとボーイング社の重要顧客を失うのはほぼ確実だ」とし、デルタエアラインズが念頭にあるようだ。
NMAには業界で「797」の名称がついているが、ボーイングは数年前から構想をねっているもののその実現ははっきりしていない。
説明通りなら同機はワイドボディ機で270名、4千から5千カイリ(7,400-9,300km)の性能で737 Maxと787の中間機種となり、大西洋横断路線に最適な機体となる。別の言い方をすれば同機は旧型757や767の後継機種となる。
ボーイングはかねてからNMAの市場投入を2020年代中ごろとしており、機材更新が必要なエアラインにギリギリで間に合うとしてきた。
米国のレガシー3社のアメリカンエアラインズ、デルタ、ユナイテッドが大口需要客とアナリスト陣は見ており、この三社で757・767が383機が運行中だ。
三社はそれぞれNMAに関心を示しており、特にデルタが目立つ。
737 Maxで二件目の墜落事故が発生するまではNMA立ち上げは時間の問題と見る向きが強かった。
だがMaxが状況を変え、ボーイングは同機の運行再開に注力せざるを得なかった。Maxは現在も飛行再開が許されていない。
当社は737 Maxの復帰に全力を投入していますが、NMAの事業化検討も続けており、Maxで目処がつけばNMA開発の可否を決定します」とボーイングはFlightGlobalに伝えてきた。「以前の機種での事業化決定のプロセスと何ら変わるものではありません」

エアバスがA321XLRで受注をさらう 

NMAが先に進まない間にエアバスが受注を集めており、A321XLRは6月のパリ航空ショーで発表した。244名を4,700カイリ運び、路線就航は2023年と同社は発表。
A321XLRは早速受注を集めており、450機の確定発注、発注意向となっている。
これはエアライン側が中間規模機材を求めている証拠であり、180席程度のナローボディ機需要から200席超の規模へのシフトも明示しているとアナリスト陣は指摘する。
「生産機種の大規模変更が発生しています。市場の中心が321です」(メルゾー)
アメリカンA321XLRを50機パリで発注した。ただし、これは以前の購入権で機種変更したもので想定内のものだった。
業界筋ではユナイテッドがA321XLRの50機発注を12月3日に発表したことのほうがNMAへの影響が大きいと見る。ユナイテッドは737 Maxを発注しておりA320neoファミリー発注は皆無だった。
「ユナイテッドはNMAの有望な顧客と見られており、A321neo発注は今後に有望な証とは言えません」とTeal グループの航空宇宙アナリストのリチャード・アブラフィアが12月6日のForbesに寄稿している。「ボーイングの新型中型機提案に暗雲です」
A321XLR United Airlines (artists impression)
Source: Airbus
United signaled an alignment with Airbus when it ordered 50 A321XLRs, a type represented in this digital rendering
アブラフィアはかねてからワイドボディ機は製造コスト、座席あたり運行経費がナローボディより高くなると指摘しており、NMAがA321XLRより優位になるか不明としてきた。
アメリカン、ユナイテッドの発注で757旅客型運用三大エアライン中2社がエアバスに鞍替えしたことになる。
ただボーイングが中型機市場を放棄すると考えるアナリストはいない。ボーイングがNMAを737後継機種に位置づけ、まず757に匹敵する機種を立ち上げると見ている。
「最終的にボーイングにとってこの規模の機種の投入が最適な選択となるのではないか」とアブラフィアは述べている。
ブルームバーグは「NMAは既存設計を手直ししたナローボディになると見ていたが...新型機は大型ナローボディで200席が中心になりそうだ」という。

NMAはボーイングにやはり重要な存在だ 

メルゾーはこれまでの経緯を違う読み方をしておりNMAはボーイングの今後重要な存在と見ている。
ただ737 Maxの次の機種に進む準備が同社にできているとは見ておらず、Maxの販売、整備で得る資金が今後の機体開発の原資になるという。
またNMAはかねてから737後継機種の立ち上げに先だち生産機種を近代化するための「つなぎ」と言われてきた。「今もその位置づけに変化はない」「NMAは変革の一部にすぎない」
またA321XLRで中間市場需要全部への対応は無理とも指摘している。757後継機にはなっても767と同等の機能はなく、米国中部・西部からヨーロッパ、アジアへの直行便運用はできないという。
NMAは「西海岸からヨーロッパ各地を結べる機体」と想定しているという。
このためレガシーキャリアで唯一A321XRL発注に動いていないデルタがNMAを選択肢として望ましいとするとメルゾーはいう。
デルタは767を77機、757を127機運行中だ。767はアトランタからヨーロッパに飛ばし、西部各地からアジア路線にも投入している。

「NMAがないとデルタ発注を逸します」「機体価格が上昇しても中間市場で標準型の機体になるでしょう」とメルゾーは述べている。■

2019年10月13日日曜日

ボーイングが767-X開発を構想中、NMA安価版になればいよいよ737後継機の開発が始まるのか

Boeing examines GEnx-powered 767-X for cargo and passenger roles


10 OCTOBER, 2019
 SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
https://www.flightglobal.com/news/articles/boeing-examines-genx-powered-767-x-for-cargo-and-pa-461386/

Asset Image
767の新規製造はUPS、FedEx向け貨物型で今も続いている。
UPS Airlines


ボーイングがエンジン換装型767を検討している。主に貨物輸送需要を想定し、2020年代中頃の路線就航を期待する。

検討では旅客機型も含まれており、同社が提案中の新型中間市場機(NMA)の安価版になる可能性もある。

FlighGlobalは検討内容を入手し、767-XFの名称で767-400ERを原型としGEエイビエーションのGEnxエンジンを搭載するとある。大口径ファンエンジン搭載のため降着装置が拡大され地上高を稼ぐ。

検討は貨物機需要への対応が中心だ。ボーイングは767-300貨物機をFedEXUPS両社向けに新規生産中で、確定発注残も60機ある。767-XFは-300Fの前方貨物扉を流用する。

エンジン換装と降着装置を除けば、767-XF検討で想定する変更点はわずかで従来の設計を使えるとする。想定する路線就航は2025年頃になっている。

事情に詳しい筋からボーイングは旅客型767-X開発も想定し、実現すれば安価かつ低リスクのNMA機材になるという。NMAでは完全新型機で次世代エンジンを搭載するとされてきた。

ボーイングから767発展型についてコメントはないが、「絶えず市場動向を研究しており、顧客に一番役立つ策を模索している」とのみ伝えてきた。また同社からは昨年の貨物機受注(新規及び改装機含む)は124機で新記録となったと発言があり、うちわけは767が新規製造機材と改装機合わせ32機で「767Fの需要が底堅いことがわかる」としている。

ボーイングは「中間市場」需要への対応およびエアバスのA321LRとA330neo派生型による攻勢への対応策を検討中。767-X派生型がNMA機材になれば同社は財務・技術面の資源を「次世代小型機」開発に振り向けることが可能となる。そうなれば737 Maxの後継機となる完全新型単通路機の開発が早まりそうだ。

767はユナイテッドエアラインズで初の路線就航を1982年にし、これまで1,165機が納入されている。現時点でも受注残が105機あり、767-300Fの60機、767-2C給油機(米国および日本向け)が45機となっている。■

2019年8月18日日曜日

737MAX問題の負担から777-X開発にも影響が出ているボーイング

Aviation Daily

Boeing Delays Development Of Longer-Range 777X Variant

Aug 15, 2019Guy Norris and Adrian Schofield | Aviation Daily

ーイングが777-8開発のペースを落とすと認めた。777-9のフライトテストが遅れ型式証明取得に影響がでているためだ。さらに737 MAXの緊急事態に技術資源をつぎ込んでいることもあり、777-8派生型の長距離機材の引き渡し開始が2023年以降にずれ込むのはほぼ確実だ。
「開発日程を見直し、777Xの顧客ニーズも再検討し日程変更することにした」と同社は述べ、「この調整により開発作業のリスクが減る一方で777-8への切り替えがスムーズに進む」としている。
777-8は乗客365名を8,690カイリまで運ぶ性能があるが受注はわずか45機に留まっている。(エミレイツ30機、カタールエアウェイズ10機)一方で大型版の777-9(414席)には325機の発注があるが、エンジン問題のため初飛行は2020年初頭に先送りされている。ボーイングは777-9の引き渡し開始を2020年末にできるとまだ希望を持っている。
777-8の派生型は超長距離用でカンタスの要望に答えるものだ。カンタスはオーストラリア東海岸からロンドンやニューヨークへのノンストップ便運用が可能な機材を選定したいとする。777-8の遅延についてボーイングは「現在の顧客今後の顧客ともに当社は各社の機材需要に答えていく。カンタスは大事なお客様だ」としている。
カンタスは2022年に引き渡し可能な機材を選ぶとしており、エアバスからは超長距離型A350ファミリーの提案が出ていた。今回のボーイング発表で777-8運用開始が遅れるとわかり、カンタスは「エアバス、ボーイング両社と協力し新機材調達を進めていく。両社から最終提案内容を頂いており、社内検討で精査していく」とし、同社としては今年末に決定する方針を堅持しているという。
777-8遅延があってもカンタスはボーイングを有力視しているようだ。業界筋によればボーイングは採用を期待しており競合から降りるつもりはなく、納期変更を考慮し「魅力溢れたオプション」を提示しているという。
777-8が成功作になる保証はない。また以前の長距離型の777-200LRや747SPのような特殊機材より多く売れるかも不明だ。777-200LRが原型の777F貨物機に代わる新型機が今すぐに必要とは言えない。777Fは依然として好調な売上を記録し、むしろ増産に向かっている。■

. – Guy Norris, guy.norris@aviationweek.com, and Adrian Schofield, adrian.schofield@informa.com

2019年6月11日火曜日

2019パリ航空ショーにボーイングはどう臨むつもりなのか。

How will Boeing approach the Paris air show?

ターミナル2と同時掲載します。

10 JUNE, 2019
 SOURCE: FLIGHT INTERNATIONAL
 BY: JON HEMMERDINGER
 BOSTON
https://www.flightglobal.com/news/articles/how-will-boeing-approach-the-paris-air-show-458252

像してもらいたい。737 Maxの墜落事故二件がなければ、346名死亡が発生していなければ、規制当局により運行停止措置が下りていなければボーイングは今年のパリ航空ショーに堂々と乗り込み737 Maxの成功を高らかに宣伝していたはずだ。
 現実は別だ。同社は会場で新型中規模機(NMA)の発表をする、あるいはワイドボディ機受注をとつけるかもしれないが、737 Maxの事故が全てに影をさしている。
 737 Maxの飛行再開時期をみんな知りたがっている。ボーイングはおそらく答えることができないだろう。各国の規制当局が決めることであり、ボーイングのソフトウェア変更内容を承認する必要がある。これだけ不確実さがある中でボーイングは今年の航空ショーにどう対応するのだろうか。
 「考え方は2つですね」とコンサルタント会社Airの航空宇宙部長マイケル・マールゾは言う。「ひとつは低姿勢を貫くことです」これで二件の墜落事故へ謙虚な姿勢を示せる。実際にボーイングは3月のエチオピア航空機事故以来この状態にある。
 もうひとつは前向きなビジネスの話にもっていくことで、サービス産業の成長性や軍事航空関係の好調な販売状況を取り上げることだとマールゾは言う。
同社の軍用機部門に良いニュースが多い。KC-46ではつまづいているが、2018年には大型案件が相次いで同社のものとなった。米空軍向けにはT-X351機を関連機材含め97億ドルで受注に成功しており、T-Xは1,000機規模の事業になるとみる向きもある。
 さらに海軍向けにはMQ-25A無人給油機をまず4機製造する契約を805百万ドルで受注し空軍にはMH-139ヘリコプター84機を24億ドルで納入する。
 ボーイングの2018年度実績では国防・宇宙、安全保障関連売上は13パーセント増で232億ドルになった。.
 他方で航空機関連サービス事業の拡大を積極的に進め、グローバルサービシズ部門として独立させている。CEOデニス・ムイレンバーグは一連のリストラ策が功を奏し10年以内に500億ドル企業をめざすという。
 同社は目標からまだ遠いがサービス関連事業は急成長しており、ソフトウェア企業ForeFlightや部品供給業者KLXの買収が一役買っている。またサフランとは補助動力をめぐり共同事業を立ち上げており、アーデント・エアロスペースとも機内シート事業を開始している。各社の買収によりボーイングのグローバル・サービシズの2018年売上は17%増で170億ドルになった。
 とはいえこれだけでは737 Maxを覆う陰鬱な空気を一変させるだけの迫力はない。ボーイングは同機で4,620機の受注残をかかえ、今後の売上を左右する大きな部分になっている。
 同社幹部はパリ会場で 737 Max 関連の質問を浴びる覚悟をしており、トラブル続きの機体制御補強システム(MCAS)でも多数の質問が出るだろう。ただし正式調査が続く中で簡単に答えが述べられる問題ではない。
ライオン・エア機の事故がまず発生してから同社は質問に積極的に答えていないが、MCASで批判が相次いでおり、またそもそもMCASの存在をエアラインパイロットに開示していなかった。連邦航空局も同機の型式証明交付で大きな批判の矢面に立たされた。
4月にごく短い記者会見を行ったムイレンバーグは悔恨の念こそ示したものの同社設計内容を擁護しさらにMCASはさらに高性能になると豪語。
 ボーイングはソフトウェア改良作業を完了しており、MCASはセンサー2基を利用し急な機種下げ入力を防止する。事故二件でこの現象が発生していた。問題は規制当局が新ソフトウェアをいつ承認するかだが、未定のままだ。
 他方でパリ会場で同社が民間機事業の発表を行うかも未定だ。会場で受注が実現するのは確実だが、737 Maxの新規受注は当然ながら失速状態にあり4月にもインドのジェット・エアウェイズの運行停止を受けて737で196機の受注を取り消している。
 一方で他機種でもボーイングの受注は低調でついに4月は新規発注がなくなった。787は受注残584機でヒット作のままだが、開発中の777Xでは思ったより受注が伸びていない。
2013年のドバイ航空ショーでお披露目された777X事業は予定通り今年中の初飛行でその後型式証明と初納入が待つ。777-9がまず登場しその後777-8が続く。
 777Xは新設計の複合材主翼、大型化した客室窓、客室の拡大、GEエイビエーションGE9Xエンジンが特徴でとくに同エンジンは民間機用で最大径となる。ダッシュ9は乗客425名を7,525カイリ(13,940キロ)はこび、777-8は375名で8,690カイリの性能となるとボーイングは発表。
 4月時点で777Xの受注は344機でうち281機が777-9となっている。発注エアラインには中東、アジアのグローバルエアラインのエミレイツANAキャセイ・パシフィックエティハドカタールエアウェイズシンガポールエアラインズに加えブリティッシュ・エアウェイズルフトハンザも名を連ねる。
 777Xは優秀な性能でA350には手強い競争相手になるとの見方が外部にある。特に長距離性能とペイロードは超長距離路線投入に最適だ。ただ産業ウォッチャーには777Xは時代の先に行き過ぎた機体との見方もある。ワイドボディ機の更新をすませたエアラインが多いこと。777-300ERの様な機体にまだまだ供用期間が残っていることを指摘する。
 777Xはボーイングの新型だが、もっと大きな疑問への答えが見えない。ボーイングの次代をひっぱる機体はどれか。ここ数年に渡りボーイングは200-270席双発で4千から5千カイリの性能のNMAが757後継機としてさらに生産システムの変換で大きな役割をにない次代の大型案件につなぎたいと述べてきた。大型案件とは737後継機であろうと関係者は見る。今年早々にボーイングがNMAに乗り気になっている兆候が出ていた。NMAの立ち上げ決定は今年中としても正式な事業開始は来年で路線就航は2025年となろう。
 737 Max事故、飛行停止措置でNMAにも不確実性が増えた。ボーイング幹部の口からNエチオピア機事故以来MAの話題はめっきり減っている。ムイレンバーグはNMAでは順調に進捗中とするものの優先順位はMaxであるのは明らかだ。「疑いなく最大の優先事項はMaxの運行再開だ。これにしたがい社内体制も対応しており、NMAは平行して作業する」
 ボーイングはその他にもブラジルのエンブラエルと共同事業の二案件を進めており、民間、軍用それそれだ。民生部門ではエンブラエルの民間機部門の80%を42億ドルで買収する。軍用機部門ではエンブラエルのKC-390輸送機の販売促進、開発を進める。両社は年末までに合意をまとめるという。■


2019年4月21日日曜日

ボーイング737MAXのMCAS改修作業の進捗、型式証明取得に向け近づく

Aviation Daily

Boeing Completes MCAS Pre-Certification Flight Testing

Apr 18, 2019Guy Norris and Sean Broderick | Aviation Daily

Boeing

ーイングは737 MAXのMCAS機体制御特性補強システムのソフトウェア改修に向け大きく近づいており、MAXの飛行再開への道を「順調に進んでいる」と同社は表現している。
同社はMCASソフトウェア改修の効果を試す最終テスト飛行を4月16日ワシントン州西部で行い、FAAによる型式証明取得テストのリハーサルとした。テストには737 MAX開発用の1E001を使い、主に15千フィート程度で時速200ノットから400ノットで試した。
その際にピッチ設定9通り以上で、MCAS12.1.1ソフトウェアの効果を確認した。
同日の飛行は「最終テスト飛行であり、(FAAの)型式証明取得飛行に備える」とボーイングCEOデニス・ムイレンバーグが翌日発言した。「型式証明に向け順調に進んでいる」
その前日4月15日にも同様のフライトを実施し、1E001機はシアトル南方のボーイング・フィールドを離陸し1時間20分飛行した。
ボーイングはソフトウェア改訂版を搭載した機体でテスト飛行120回200時間をB1フライトつまり顧客向け機体の製造後飛行のパターン中心で行った。
ボーイングもFAAもMCASの性能試験日程を公表していないが、消息筋によれば来週にも行われるという。
ボーイングはソフトウェアの完成に向け作業中でFAA他規制当局への提出用の訓練キットの完成も未完成だが、MAX運航停止措置の早期解除をめざしたいとする。ただ運行再開のめどは見えない。エアラインの多くが北半球の夏季繁忙期まで同機運航を断念している。
規制当局はボーイング対応を見る上でMCAS訓練を最重要視しており、737パイロット含むFAA主催の検討委員会では737NGから737MAXへの機種転換にシミュレーター訓練は不要との結論を出した。タブレット含むコンピュータ訓練で十分というのだ。同委員会報告書は4月いっぱいパブリックコメントを募集している。
一部規制当局やエアラインにはシミュレーター訓練でMCASが作動不良となった場合に備えるべきとの主張がある。カナダ運輸相マーク・ガモーは4月17日にカナダもその意見に賛成すると述べた。「iPadで一時間ほど操作しただけでいいのか疑問だ。シミュレーターが最善の訓練方法であり、現実の状況で訓練出来る」

MCASは737NG同様の飛行特性を実現することを目的に開発されたmのであり、MAX 8で二回発生した重大事故の核心部分でもある。ボーイングのソフトウェア改修ならびに関連訓練の狙いはシステム信頼度の引き上げと必要な場合のみに作動させることにあり、パイロットには理解しやすくさせ、必要なら無効にさせることをめざしている。■

2019年3月16日土曜日

737Max6千億ドル受注は事故でどんな影響を受けるのか



Boeing’s 737 Max Problems Put $600 Billion in Orders at Risk

ボーイング737 Maxの事故で受注6千億ドルが危機に

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2019年3月14日 14:35 JST Updated on 2019年3月14日 18:51 JST
Lion Air Boeing Max 8 Aircraft At Soekarno-Hatta International Airport As Airline Suspends Taking Delivery Of 4 Max Jets
Lion Air’s Boeing 737 Max 8s.
Photographer: Dimas Ardian/Bloomberg
ーイングの737 Max受注6千億ドル超に衝撃が走った。大口発注元に再考の動きが出ており、もちろんこれは10月以来二件目となったエチオピアエアランズ機の墜落事故がきっかけだ。
ヴィエトジェットエイビエーションJSCは先月発注を250億ドルに倍増したばかりだが、今後の発注は事故原因の究明を待って検討すると表明。ケニアエアウェイズPlcはMax導入を考え直し、エアバスSEのA320に変更するかもしれない。ロシアのUltairエイビエーションPJSCは発注済み30機の納入前に安全運行保証を求めている。
インドネシアのライオン・エアも220億ドル相当の発注で737よりエアバスを選ぶと消息筋が述べている。これとは別にガルーダインドネシアはボーイング機発注を減らすとし、サウジアラビアンエアラインズの59億ドル発注も宙に浮いている。
737は1960年代末に路線就航したベストセラー機でありボーイングの稼ぎ頭だ。エンジン換装型のMaxには5.000機6千億ドルの受注があり、一部は引き渡し済みだ。
ボーイング株は今週11パーセント下落し、5ヶ月間に最新ナロウボディ機で墜落事件二例が発生し財務リスクが拡大するおそれがある。
エチオピア機墜落事故は昨年10月29日のライオン・エア機墜落から5ヶ月後に発生した。ボーイングはライオンの整備問題や乗員エラーが原因と指摘しライオン・エアはボーイングとの関係が悪化した。ただ事実は事故機パイロット二名はセンサーの作動不良後にコンピュータ制御と格闘していた。
エチオピアエアラインズ機事故では157名が死亡し、先のライオン・エア機事故と類似性が浮かび上がり、改良で安全になったというMaxの操縦が逆に難しくなったとの懸念が出ている。.
同型機が世界各地で運行停止となりボーイングは危機状況にある。米当局も世界の流れに今週水曜日に加わり、インドネシア事故と今回のエチオピア事故に共通の問題が発生している可能性を根拠とした。
「737Maxの運行停止が広がる中、事態改善までボーイングの状況は悪化するだろう」とCowen & CoのアナリストCai von Rumohrは見る。ただし同社が飛行制御ソフトウェア改修に向かっており「リスクは長期化しないのではないか」という。
ヴィエトジェットは状況を注視し、ヴィエトナム民間航空局の公式結論を待って発注を進めるか決めたいとする。
Ultairはエチオピア機事故調査結果を聞いてから30機発注中の737 Max30機の受領に移りたいとノーボスチ通信に述べ、ボーイングから保証が欲しいとする。
サウジアラビアンエアラインズ傘下のFlyadealは昨年12月えあばすからボーイングに変更し、737 Maxを50機発注するとし、契約条件を詰めていたが、やはり事故調査結果を待つとしている。
ライオン・エアはボーイング機発注を取り消そうとしており、去年10月の事故で189名の犠牲者が出たところに今回の惨事が加わり共同設立者ルスディ・キラナは契約取り消しの意を固くしていると言われる。
ケニアエアウェイズはエアバスへの切り替えか旧型737発注への変更を検討しそうで、旧型なら問題になっているシステムは搭載しておらずMaxへのこだわりはないという。同社は路線網拡大をめざし、Max10機を12億ドルで導入を検討した。
アディスアベバ郊外に離陸6分後に墜落したエチオピア機にはケニア国籍の32名が乗っており単一国として最大だった。■

— With assistance by David Malingha Doya, and David Herbling

2019年3月15日金曜日

ボーイングが静かに777-9をロールアウトした

Aviation Daily

Boeing Unveils 777-9 In Low-Key Event

Mar 14, 2019Guy Norris | Aviation Daily

Boeing

ーイングは777Xファミリーの第一弾777-9を報道陣を招かず3月13日ワシントン州エヴァレットで同社従業員向けに静かに披露した。.
737 MAX全機がエチオピア航空302便墜落事故をうけ飛行禁止になり公式発表に影をさしたが、新型機には密度の濃い地上テストが控えており、初飛行に備える。初飛行日程は地上テストの進捗次第だがボーイングは4月末を目標にしているようだ。
全長252フィートの777-9は双発機では最大で、25年前に同じ工場で生まれた777-200より43フィート長い。フライトテスト用一号機WH001は昨年11月に機体接合を終え、その後電装テストを行い12月から2月までフライトテスト用機材、配線の取付作業を行っていた。
今年末には777-9が4機そろい、フライトテストと型式証明に投入され、引き渡し一号はエミレイツ向けで2020年5月が予定。胴体を短縮した777-8は航続距離を延長し2020年に生産開始する。777-8のフライトテストには2機を使い2022年の型式証明取得、納入開始を予定する。
一号機の見ものはなんといっても折りたたみ式主翼端で引き上げた状態にある。折りたたみ部分は長さ12フィートで主翼幅を235 ft. 5 in.から 212 ft. 8 inに変化させる。
原型の777-200が1994年にロールアウトした時点で確定発注は147機あったが、新世代機には358機発注があり、最新発注がブリティッシュ・エアウェイズの777-9確定18機オプション24機で2月28日のこと。ローンチカスタマーにはエミレイツの他、ルフトハンザANAキャセイパシフィックエティハドカタールエアウェイズシンガポールエアラインズがある。■

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