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2019年12月15日日曜日

視点 環境負荷で非難の的のエアライン業界が取るべき正しい対応とは

How are airlines handling scrutiny of their environmental impact? 

環境負荷への批判にエアライン業界の対応とは

By Lewis Harper13 December 2019
Extinction rebellion
の一年で突如としてエアライン各社は環境負荷緩和の圧力にさらされ、対応を迫られている。
エアライン各社による環境影響が驚くべきペースで関心事となったのが2019年であった。
環境団体等が勢いを強める背景には「空を飛ぶのは恥」との意識やこのままでは人類の存続が危ういと公然と反旗を翻すグレタ・ツゥンバーグの様な存在がある。
特にヨーロッパで環境議論が強まっており、次代の利用客や政策決定層が航空事業に全く違う視点をとる見通しが強まってきた。
だが人類の存続をかけたともいわれる議論に業界は正しく対応しているだろうか。

一番目立つ対応に環境負荷緩和への努力の説明がある。
「乗客一人あたりCO2排出量は1990年比較で50%超削減された」とIATAが12月12日発表したのはこの動きを念頭においている。「業界が燃料消費効率向上に努めた結果で2009年以来に2.3%改良したが目標より0.8ポイント高い」
「乗客一人あたりCO2排出量」が業界で流行表現になっており、たしかに朗報である。ただし、利用客が増えればCO2排出総量が増える点は関係者も無視できない。交通量は今後も増加の見通しだからだ。外部はこの点をついてくるはずだ。
IATAは新型機や持続可能な航空燃料の肯定的効果を取り上げる。ICAOがすすめるCORSIA(グローバル相殺対策)や運行の改善効果もある。
だが航空業界全体の環境戦略の売り込みとしては成約がつく。
燃料効率を引き上げた機体を運用するのは確かにいいのだが、「新世代」機の多くは運用開始して数年経過しており、効率改善効果は目新しくなく、更に業界努力を求める勢力に訴求力がない。持続可能燃料も穀物生産への影響など規模拡大が可能か疑問が解消しておらず、メリットがはっきりしない。
CORSIAは大きな成果を残したが排出量増加を相殺するのが狙いで、根本削減ではない。こうしてみるとCORSIAをより大きなパッケージの一部と見る関係者多数の意見は正しいのだろう。

不公平な負担感?

IATA、域内業界団体やエアライン各社は環境対策が適正と世間に見られるにはどうしたらよいかとの難問に取り組んでおり、一方で不当な負担につながると判断される措置には反対している。
「各国政府が炭素税を追加してCORSIAの効果が削がれている」とIATAは主張。「航空旅行税導入の決定や提言が現れており、フランス、ドイツ、オランダ、スイスで現実になっている」
同様の課税措置の導入阻止に向け今後数年に渡りロビー活動が必要だろう。しっかりした理由がある。航空旅行が一部富裕層限定に戻る危険があるからだ。また航空業界が環境負荷対策に及び腰との印象がつくのは絶対に避けなければならない。
その他、一部関係者からエアライン業界は世界全体のCO2排出量の「わずか」2-3%にすぎないとの意見がある。
こうした主張には民間航空輸送の恩恵が世界に拡散する中で社会経済効果を強調する点では正しい。だがこの論調に頼りすぎると緩和努力は十分と業界が考えているとの印象が生まれかねない。
海運セクターのCO2排出量が航空業界を上回っているとの主張も業界にあるが、反証はうけていないようだ。
こうした主張は「そっちこそどうなんだ」の域を超えない。同様あるいは少し悪い現象を非難することで批判をかわそうというものだ。
また個別エアラインには「環境対応」証明を取得して自らの立場を守ろうとする動きがあり、他力本願と言わざるを得ない。
このやり方だとこの手の環境対策を業界全体で取り組んでいると受け止められかねない。あるエアラインが「優れた」対応をして他社は悪者扱いにしようとしていると一般に映るはずだ。

短所をしっかり把握する

2019年を通じ環境圧力に効果が一番高い対応をしたキャリアー各社は業界の欠点を認識しつつ現実的かつ前向きな対応で解決を求めた。
オランダのKLMと同社の「空を飛ぶ責任」広報は今年一番大きな変化となった。自社利用客の願う姿をエアラインが真剣に考え、かつ航空旅行の長所を取り上げつつ環境負荷の緩和に向け業界の目指す方向性を好意的に示した。
カンタスなどもよく練り上げられた環境方針を公表している。
つきつめれば、利用客が伸び続けるエアライン業界に向けられている厳しい圧力では解決策はかんたんに見つからないだろう。電動推進方式など画期的な解決策の登場はかなり先になりそうだ。

このため、各社・業界団体は有効な対策とそうでないものを区別すべきだし、将来に対する前向きな視点を提示しつつ防御にまわりたくなる誘惑に打ち勝つべきだ。■

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