2021年2月24日水曜日

ユナイテッド328便インシデントを受け、FAAによる新点検手順制定までPW4000エンジン搭載機の運行は停止中。一方でプラット社内の検査工程の妥当性に疑問が発生。

 Engine Failure Prompts Immediate Action For Pratt-Powered 777s

Sean Broderick Guy Norris February 22, 2021

United Airlines 777

Credit: Hayden Smith

 

国の規制当局ならびに運行会社がプラット・アンド・ホイットニーエンジンを搭載したボーイング777で再度インシデントが発生したのを受け、迅速にリスク低減策を実行に移し、運行停止命令または自主的運行停止を出し、FAA、ボーイング、プラットは緊急点検手順を作成中だ。

 

2月20日に発生したインシデントはユナイテッドエアラインズ328便でデンバー国際空港を離陸直後に右(第2)エンジンで発生した。同機はPW4077を搭載の 777-200 でデンバー国際空港に緊急着陸を迫られた。米国家運輸安全委員会(NTSB) は翌日にファンブレード二枚の破損を発見したほか、その他の損傷を調査すべく公式調査を開始した。

 

「初期段階の情報から点検間隔を狭め同型エンジン特有の中空構造のファンブレードを点検することにした」とFAA長官スティーブ・ディクソンが発表した。その前に発生した、やはりこれもユナイテッドの777-200のインシデントを受けて点検手順が2019年に改定された。

 

70機ほどの同型機があり、規制当局ならびに運行会社はさっそく対策を展開している。米国で同型機を運行するのはユナイテッドのみだが、ただちに同型機24機の運航を停止した。残る機材を運航するアジア太平洋のエアライン各社も同じ措置をとった。

 

運行停止措置を発した規制当局には日本の国土交通省、英国の民間航空局も含まれる。EASAは同型機はヨーロッパではすでに運航を停止しているか、「一時的に定期運行を中止しており、今後の耐空指示が出るのを待っている」とする。

 

ボーイングもこうした流れに賛成しており、PW4000を搭載した777の-200型、-200ER型、-300型は米当局の次の動きまで路線から外すべきとする。「NTSB調査はまだ終わっていないが、当社は運航中69機、保管中59機のプラット・アンド・ホイットニー4000-112エンジン搭載の777機材の運航は当面中止することを勧奨する。これはFAAが適正な点検手順を発表するまでの措置」と同社は2月21日に発表した。

 

ボーイングの声明文の前に唯一の米運行会社ユナイテッドエアラインズは保有する24機を路線運航から外し、日本の規制当局も国内エアライン各社に運行停止を指示した。

 

今回のインシデントが発生した機材は1994年製造で、インシデントは上昇段階で発生した。第2エンジンのデブリはコロラド州ブルームフィールドに落下した。

 

NTSBは2月21日の追加情報でファンブレード二枚に損傷がみつかったとした。一枚は「根本近く」で破断し、「隣のファンブレードは半ばで破断していた」とある。調査ではブレードの一枚がエンジン格納リングに突き刺さっており、「残りのブレードは先端等に損傷が見つかった」とある。機体の損傷は「軽微」だという。地元テレビ局CBS4 Denverが撮った映像ではウィングボックスや主翼胴体接合部から機体下部右側に損傷が見られる。

 

今回のインシデントはコロラドで発生したが、おどろくほど似通った事例がPW4077のファンブレード関連で見つかっている。2018年2月13日のインシデントでカウリング部分が脱落している。これもユナイテッドの777-200で第2エンジンが着陸30分前で異常となった。

 

2018年事案ではNTSBはプラット社内の熱聴音画像化 (TAI) 点検工程の不備を指摘しており、プラットはPW4000の112インチファンブレード破断が過去二件あったと報告している。2008年10月と2010年4月で、ブレード5枚に亀裂を見つけており、このうち一枚は目視で、残り4枚はTAIで検知した。

 

2018年のインシデントを受けて、FAAは2019年3月の耐空指示で112インチのPW4000ファンブレードの緊急点検とその後継続検査を求めた。PW4000のその他型ではチタン合金の中空構造はなく、同じ112インチサイズのシュラウドレスファンブレードを採用した747、767、エアバスA330に影響はない。今回のユナイテッド328便の機材が同様の検査を受けていたかは不明だ。

 

もっと最近では2020年12月4日に日本航空777-200の第一エンジンでファンブレード一枚が離陸直後に脱落している。同機は沖縄から東京へ向かっていた。日本の運輸安全委員会が本件を調査中である。■

 

この記事は以下を再構成し、人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください

 

 


2021年2月20日土曜日

ボーイングはマクダネル・ダグラスと同じ道をたどるのか

 Opinion: Will Boeing Become The Next McDonnell Douglas?

Richard Aboulafia February 16, 2021

 

AW&ST covers

 

グラス航空機は1967年にマクダネルと合併し、消滅に向かう30年の歴史をスタートした。マクダネル経営陣は軍用機事業を優先し、民間ジェット旅客機事業に必要な投資に消極的だった。ボーイングに吸収された時点でダグラスのジェット旅客機は商品力を失っていた。

 

ボーイングとマクダネル・ダグラス合併から25年になる。ボーイングの技術力低下、事業執行上で抱える問題、株主配当の重視、今後の製品ロードマップが不明確な点、さらに低下傾向の市場シェアから、ボーイング商用機(BCA)もダグラスと同じ運命をたどるのか考えるべき段階に入ったようだ。以下3つが鍵となる。

 

1. 技術開発予算。ボーイングはBCAの自社負担研究開発費 (IR&D)を約25%削減すると発表しており、2020年実績でほぼこの通り前年より下がっている。

とはいえ直近の10年間でBCAはIR&Dに223億ドルを支出しており、同時期の同社収益比で平均4.8%に相当する。これに対しマクダネルダグラスは1993年から96年にかけ、IR&Dへ毎年3億ドルを支出していた。ただし、ここには国防及び宇宙関連を含む。マクダネルのIR&D3分の2が民間機向けだったと仮定すれば、BCAの支出規模は10倍の規模に相当する。.

ただし、BCAの研究開発予算は大部分が787と737MAXの欠陥対策で、ボーイングは2004年以来は完全新型機を投入していない。ダグラスは30年間新型機を投入しなかったが、ボーイングは17年間だ。

 

2. 市場占有率。ダグラスは全方位の商品ぞろえができず、双通路機など新しい分野で対応が遅れ、単通路機でもMD-90はファミリー構成に発展できなかった。BCAはそれよりは広範な品揃えでエアバスに大きく劣らない。だが、中型機セグメントが大きな問題になってきた。A321neoは737 MAX 9/10に5対1と大きく差をつけている。つまり、今後市場シェアで差が開いてくる。

 

 

 

3. 製品開発。マクダネル・ダグラスは市場投入を狙った機体数例を開発中止した。MD-XX高性能3発機、MD-XX双発機、MD-12四発機などだ。MD-90は単通路機としてファミリー構成に発展を期待されたが、150席の−30型のみ生産され、-10、-40、-50/55型は結局実現しなかった。

ボーイングで中止例は少ないものの、影響はずっと大きい。ここ5年にわたり、新型中型機(NMA)に相当の技術資源を投じている。ここにきてNMAが再び実現に向かう兆しが出てきた。だが、筆者は双通路機で単通路機に対抗するのは健全な策ではないとかねてから主張しており、既存機種の手直しとして737 MAX拡大版、787縮小版あるいは再設計767をあてるのはもっと悪い選択だ。ボーイングには新型大型単通路機の新規開発が必要だ。

 

上記三点から見るかぎり、BCAの前途は多難だ。とはいえ、新型機開発に乗り出さなくてもBCAは当面残存する、あるいは消滅が先送りされよう。ダグラス航空機のゆるやかな消滅に30年かかった。当時のダグラスには強力な競争企業二社があり、それぞれ積極的に未来投資していた。エアバスが新型機投入をせず、60-65%の市場シェアで十分と考えた場合、ボーイングは新型機を投入しなくても現在の地位を数十年維持できよう。ただし、この場合は新規企業の参入が著しく困難な市場が生まれる。

だが、新規企業が登場すれば、BCAの生彩を欠く商品構成が格好の標的となる。逆に、エアバスは737 MAX 8をねらいA220のストレッチ型を、787を狙い完全新型機で開発投資してくるかもしれない。

 

ボーイングがひとりよがりな考え方をとれば、未来をにらんだ戦略や投資のかわりとしてひどく程度が低くなる。同社がダグラスと同じ運命をたどれば航空産業界全体の悲劇となる。■

 

Richard Aboulafia

Contributing columnist Richard Aboulafia is vice president of analysis at Teal Group. He is based in Washington.


2021年2月11日木曜日

ボーイングの逆襲が始まるのか。エアバスのヒット商品A321XLRに対抗し、いよいよ中型新型機の開発がスタートする模様。

 

エアバス321XLRが長距離路線用に高い人気を集めていますが、キャリアには効率がよい機体でも、単通路で狭苦しいキャビンでは旅客が不満を出すのは時間の問題でしょう。これに対しボーイングは双通路機で経済性を実現するという欲張りな構想です。対応は大幅に遅れましたが、デジタルエンジニアリングの威力で意外に早く姿を表す可能性もあります。ただ、10年近く対抗機種がないのはボーイングにとって痛いところで、エアバスからリードを奪い返すのは困難となるでしょうね。

 

building

Credit: Boeing

 

ーイングエアバスA321XLRに対抗する完全新型旅客機実現にむけ第一歩を進めることとした。ただし、財務、市場動向両面で同社に向かい風の状況だ。

 

新型機には-5Xの呼称といわれ、棚上げされていた新型中韓市場機材(NMA)として2クラス仕様で250-275席規模の双通路機となる。757-200/300後継機として5千カイリ程度の航続距離で、2020年代末の路線就航をめざす。

 

業界筋は設計の簡素化と低コストが目標と見ている。開発費用を最小限にし最短で路線就航するべく、既存の各種システムや推進手段を活用するとあり、すでに多くがNMAで検討済みだ。ボーイングは仕様について論評を避けているが、1月27日に同社CEOデイヴ・キャルホーンが2020年第4四半期営業報告でA321程度の機体の競合機種について開発が順調に進んでおり、時がくれば差別化商品として投入できると述べていた。

 

CEO発言からボーイングが想定する重点対象が中距離市場に特化した機種だと裏付けされた格好で、噂された737MAX後継機の新型小型機材(NSA)ではないことがわかった。同社はA321XLRの需要を追う機材としてNMAの実現を目指していたが、需要家の反応がいまいちのため開発工程を一時棚上げしていた。

 

NMAファミリーの基本形は当初757後継機を狙い、その後767後継機の想定も加わった。2019年に入るとNMAは225席のNMA-6X、275席のNMA-7Xの2型式に絞られ、-7Xを先に開発するとしていた。だが、エアライン各社に打診中に737 MAX事故が発生し、同機は世界各地で運行停止となってしまった。

 

NMAの中心はA321XLRを狙い、双通路で5千カイリ飛べる機体を単通路機と同じ生産コストで実現することにある。ただし、COVID-19の世界的流行で当初の大日程は完全に変わってしまった。当初はNMA大型版を社内呼称7K7-7Xとして2025年就航を想定していた。現在の新日程では-5Xを2020年代末の就航を目指すが、2022年ないし2023年の正式開始を前提としている。

 

当初の構想同様に新型機も複合材の主翼、機体構造とし、50千ポンド高バイパス比エンジンをジェネラルエレクトリック-サフランCFM共同事業体およびプラット&ホイットニーが提案済みのエンジンから採用する。就航時期が先送りになったのでロールスロイスのアルトラファンにも参入チャンスが生まれた。同社は当初の日提案では対応が難しいと断念していたが、再考するのではないか。アルトラファン初号基が組み立てに入っており、2022年はじめに運転可能となる。

 

2020年にボーイングは120億ドル近くの記録的な赤字を計上したが、業界筋は新型機の研究開発経費は年間負担が20-30億ドル程度なら十分負担できると見ている。

 

MAXの生産、納品が今後拡大すれば、ボーイングのキャッシュ状況は好転し、新型機開発費用を捻出できるキャッシュフローが生まれると予想される。■

 

この記事は以下を再構成し、人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください

 

Boeing Makes Moves On Airbus A321XLR Competitor Plan

Guy Norris February 02, 2021


2021年2月7日日曜日

アエロフロートの2020年業績は13億ドル赤字に。

 



Aeroflot fleet

Source: Aeroflot


シアのフラッグキャリア、アエロフロートの2020年は旅客収入が落ち込み業績不振のまま純損失で終わった。


「航空史上で最大規模の危機に直面し、第2第3四半期は国際線運行がほぼ全面停止となり、感染予防措置がロシア各地で実施される中で需要が大幅に落ち込み、年間業績は965億ルーブル(13億ドル)の純損失となった」とスカイチーム加盟の同社が発表した。なお、2019年は逆に53億ルーブルの黒字だった。昨年の運行収入は前年の5,520億ルーブルが2,280億ルーブルとほぼ半減となった。


アエロフロートは運行席数を大幅削減したことに加え、コスト削減、貨物需要の追加収益で危機状況の悪影響を「一部にせよ最小化」できたと総括している。


危機状態の初期数週間で利用がほぼ全壊したが、利用客は第2四半期に年率85%減となった。第3四半期は67%減と緩和され、第4四半期は59%減まで回復した。国際線では運行回数増加と運行再開により収益が増え、第4四半期では前の四半期より94%もの運航便増となったが、旅客利用は伸び悩み、増加は56%にとどまった。


貨物売上は年率換算78%増を第4四半期に記録した。「貨物輸送量、郵便輸送量が2020年Q4で55.6%増だったのは、国際線の貨物需要が130.7%増になったのが大きい」(同社)


経費は対前年比で39%削減したが、相殺したのがルーブルの対ドル11%、対ユーロで14%の値下がりで、支出総額で149億ルーブルの追加となった。


「大型経費適正化措置、リース支払い予定の見直し、取引先向け支払いの最適化に運行規模削減の効果が加わり、固定費変動費ともに引き下げることができた」と同社は発表している。■


この記事は以下を再構成し、人力翻訳でお送りしています。市況価格より2-3割安い翻訳をご入用の方はaviationbusiness2021@gmail.comへご連絡ください


​Aeroflot losses hit $1.3 billion in 2020

By Cirium6 February 2021

https://www.flightglobal.com/airlines/aeroflot-losses-hit-13-billion-in-2020/142311.article


2021年2月4日木曜日

大韓航空が2020年に営業利益を計上した。貨物輸送、経費節減が大きく効果を発揮。さらにアシアナ統合に向け市場から資金を確保する。

 コロナ禍でも大韓航空は踏ん張っているようです。FlightGlobal記事からご紹介。


Korean Air A330 being loaded with air cargo

Source: Korean Air

大韓航空が通年で営業利益を計上できたのは貨物輸送の好調と全社的経費節減によるものだ。



韓航空は2020年に営業利益2,383億ウォン(2.13億ドル)を計上し、2019年比で17%減となったが、貨物部門の好成績と全社あげての経費節減策が功を奏した。


Covid-19のため旅客需要は年率40%減で売上も7.4兆ウォンに落ちたが、韓国フラッグキャリアの同社は本日取締会を開催し同時に財務状況を公表した。


運行経費総額が年換算で40%減になったのは旅客需要の落ち込みを反映しており、施設利用料や人件費も圧縮できた。2021年も大韓航空社員はローテーションで自宅待機を続ける。2020年4月からこの状態が続いている。


一方で貨物収入は66%増加し、貨物業務に23機をフル回転で投入しており、一部余剰旅客機材まで活用している。大韓航空はCovid-19診断キット、自動車部品の輸送が増え、海上輸送から空輸に切り替える動きもあったと総括。


だが、最終的に2.281億ウォンの赤字となったのは金利支払いが大きく響いたが、赤字幅は2019年の純損5,687億ウォンより圧縮された。


2020年に同社は新規株式発行で1.1兆ウォンを市場から集めたほか、機内食調理部門、免税販売部門を9,817億ウォンで売却した。非中核資産の売却も狙い、子会社KALリムジン、ワンサンレジャー開発がリストに上がっており、ハンジン・インターナショナルの持ち株売却やソウル市内の所有不動産をソウル市に売却する。


また3月には3.3兆ウォン相当の株式を発行するのはアシアナ取得もにらんだものだ。アシアナ合併後は予定通り統合をすすめるという。同社はアシアナを吸収合併は不可避として決断したとし、競争力強化により公的資金注入を最小限にすることにつながる、と説明している。


IATAは2021年予測で航空利用客はパンデミック前の5割のままだが、貨物需要は2019年並みになるとしている。


同社は路線利用は徐々に回復するものの、2021年末までは現在の水準のままだが「Covid-19ワクチンで市場が回復する」と見ている。


当面は貨物輸送力を強化しつつ柔軟な運行を続けるとしている。


同社は「貨物営業の専門部隊と専任の貨物輸送機材を揃えた当社は、今年第2四半期以降急増する予想のワクチン輸送に対応する準備ができている」と発表している。■


Korean Air reports $213 million operating profit for 2020

By Cirium4 February 2021

https://www.flightglobal.com/airlines/korean-air-reports-213-million-operating-profit-for-2020/142285.article


お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。