2021年2月20日土曜日

ボーイングはマクダネル・ダグラスと同じ道をたどるのか

 Opinion: Will Boeing Become The Next McDonnell Douglas?

Richard Aboulafia February 16, 2021

 

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グラス航空機は1967年にマクダネルと合併し、消滅に向かう30年の歴史をスタートした。マクダネル経営陣は軍用機事業を優先し、民間ジェット旅客機事業に必要な投資に消極的だった。ボーイングに吸収された時点でダグラスのジェット旅客機は商品力を失っていた。

 

ボーイングとマクダネル・ダグラス合併から25年になる。ボーイングの技術力低下、事業執行上で抱える問題、株主配当の重視、今後の製品ロードマップが不明確な点、さらに低下傾向の市場シェアから、ボーイング商用機(BCA)もダグラスと同じ運命をたどるのか考えるべき段階に入ったようだ。以下3つが鍵となる。

 

1. 技術開発予算。ボーイングはBCAの自社負担研究開発費 (IR&D)を約25%削減すると発表しており、2020年実績でほぼこの通り前年より下がっている。

とはいえ直近の10年間でBCAはIR&Dに223億ドルを支出しており、同時期の同社収益比で平均4.8%に相当する。これに対しマクダネルダグラスは1993年から96年にかけ、IR&Dへ毎年3億ドルを支出していた。ただし、ここには国防及び宇宙関連を含む。マクダネルのIR&D3分の2が民間機向けだったと仮定すれば、BCAの支出規模は10倍の規模に相当する。.

ただし、BCAの研究開発予算は大部分が787と737MAXの欠陥対策で、ボーイングは2004年以来は完全新型機を投入していない。ダグラスは30年間新型機を投入しなかったが、ボーイングは17年間だ。

 

2. 市場占有率。ダグラスは全方位の商品ぞろえができず、双通路機など新しい分野で対応が遅れ、単通路機でもMD-90はファミリー構成に発展できなかった。BCAはそれよりは広範な品揃えでエアバスに大きく劣らない。だが、中型機セグメントが大きな問題になってきた。A321neoは737 MAX 9/10に5対1と大きく差をつけている。つまり、今後市場シェアで差が開いてくる。

 

 

 

3. 製品開発。マクダネル・ダグラスは市場投入を狙った機体数例を開発中止した。MD-XX高性能3発機、MD-XX双発機、MD-12四発機などだ。MD-90は単通路機としてファミリー構成に発展を期待されたが、150席の−30型のみ生産され、-10、-40、-50/55型は結局実現しなかった。

ボーイングで中止例は少ないものの、影響はずっと大きい。ここ5年にわたり、新型中型機(NMA)に相当の技術資源を投じている。ここにきてNMAが再び実現に向かう兆しが出てきた。だが、筆者は双通路機で単通路機に対抗するのは健全な策ではないとかねてから主張しており、既存機種の手直しとして737 MAX拡大版、787縮小版あるいは再設計767をあてるのはもっと悪い選択だ。ボーイングには新型大型単通路機の新規開発が必要だ。

 

上記三点から見るかぎり、BCAの前途は多難だ。とはいえ、新型機開発に乗り出さなくてもBCAは当面残存する、あるいは消滅が先送りされよう。ダグラス航空機のゆるやかな消滅に30年かかった。当時のダグラスには強力な競争企業二社があり、それぞれ積極的に未来投資していた。エアバスが新型機投入をせず、60-65%の市場シェアで十分と考えた場合、ボーイングは新型機を投入しなくても現在の地位を数十年維持できよう。ただし、この場合は新規企業の参入が著しく困難な市場が生まれる。

だが、新規企業が登場すれば、BCAの生彩を欠く商品構成が格好の標的となる。逆に、エアバスは737 MAX 8をねらいA220のストレッチ型を、787を狙い完全新型機で開発投資してくるかもしれない。

 

ボーイングがひとりよがりな考え方をとれば、未来をにらんだ戦略や投資のかわりとしてひどく程度が低くなる。同社がダグラスと同じ運命をたどれば航空産業界全体の悲劇となる。■

 

Richard Aboulafia

Contributing columnist Richard Aboulafia is vice president of analysis at Teal Group. He is based in Washington.


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