2021年10月27日水曜日

エアバス サービス部門でも首位の座を狙う。デジタル化を武器にMROや訓練の様相を一変させる。

  

aircraft in MRO hangar

各地ですでに10,000機がエアバスのSkywiseデジタルプラットフォームに接続されている。

Credit: Exm Company/H. Gousse/Airbus


  • デジタル化がカギとなる

  • 定期点検の全廃が目標

 

エアバスはデジタルサービス内容を拡げ、データ活用の強化を図る。デジタル化により新しい可能性が特にメンテナンスと訓練で開けており、同社はこの傾向により持続可能なビジネスに弾みがつくと期待している。

 

COVID-19の影響は完全に把握できていないが、一つコンセンサスがある。デジタルツールの採用が業界で広がったことだ。

 

 

この動きを受け、データ分析とエアバスの持つ運航効率化のノウハウの利用拡大も加わり、同社は機体整備、補修、完全点検(MRO)で中心的な存在となるのをめざし、ルフトハンザ・テクニークSTエンジニアリングの地位を奪おうとしている。

 

航空業界はまだ完全なデジタル産業になっていない。にもかかわらず転換が進んでおり、2025年には様相を一変するとエアバスでカスタマーサービスを統括するクラウス・ローウィが解説している。

 

「ビジネスモデルが一変する」とエアバスでカスタマーサービスのイノベーション並びにデジタルソリューションを統括する上席副社長ライオネル・ラウビーが述べている。「コロナ危機で心理的ハードルが取り除かれ、デジタルツールを日常業務に使えるようになった」

 

新技術、新構想の登場の背後で業績がパンデミック危機から回復しつつある。整備需要は2020年に40パーセント縮小し、機材更新はさらに大きく減り、業務は三分の二消えた。訓練も同様でフライトシミュレーター利用は半減した。

 

訓練の増加はまだこれからだが、予測以上のスピードで発生しているとローウィは見ている。機材の路線復帰が需要を生んでいる。さらにエアライン各社の計画からパイロットや整備要員の定年退職や離職が読み取れる。今後5年でパイロット10万名、整備員17.5万名が必要となるとエアバスは見ている。

 

仮想現実(VR)を定型的な訓練に大規模に使うことになりそうだ。「パイロット向けには移動型地上訓練をソリューションとして提供する」とエアバスの訓練・運航サービス担当上席副社長ヴァレリー・マニングが述べている。

 

その狙いは訓練手法の向上と経費削減だ。エアバスは市販部材のVRゴーグルなどを使い仮想環境を実現している。

 

パイロットは一人での訓練も可能となる。他の乗務員もシミュレーションで再現し、教官もシミュレーションで可能となる。あるいはパイロット二名が別々の場所からリモート訓練を受けることも可能だ。

 

VRによる定型的訓練の導入時期は不明だが、開発は着実に進んでいる。

 

この考えは整備士のエンジン点検にも応用できる。整備士はエンジン始動、地上走行、エンジンの静止テストの資格取得が前提だ。マニングによればこの発想はエールフランスインダストリーズが出したもので、エアバスがA320に応用しており、まもなくA350にも適用する。

 

年間420億ドルが非効率な業務のため無駄になっているというのがエアバスによる2019年グローバルマーケット予測の内容だ。デジタル化がこの解決となり、100億ドルの節減が可能となる。そのうち30億ドルが燃料消費の改善で、エアバスの「descent profile optimization」コックピット改良がこの助けとなる。

 

Skywiseデータ共有分析プラットフォームがエアバスの目指すデジタルトランスフォーメーションの柱だ。各国のエアライン140社がSkywiseの基本合意に賛同し、1万機が接続されている。(ラウビー)データ共有が増えれば、分析の質が高まる。当然データの匿名化が前提だ。

 

エアラインあるいはMROサービス提供企業や部品サプライヤー企業は参加レベルを選択できる。レベル2以上で予知保全が可能となる。

 

レベル3からエアラインの情報技術システムで「パートナー企業」認証が使えるようになる。Skywiseでは各社にあわせたサービスが提供される。その他にSkywiseアプリケーションストアがある。ICAOの国際航空運輸カーボンオフセット削減スキーム(Corsia)アプリでエアラインはCO2排出報告に仮想ツールが利用可能となる。

 

MROでは想定外の発生があるが、エアバスはデルタエアラインズとデジタルアライアンスを二年前に立ち上げ、ここにきてGEデジタルも巻き込んでいる。計画外の整備を一掃するのが狙いだ。

 

このスキームではエアバス以外の機体も対象とする。各社が開発するデジタルソリューション、分析技術、予測モデルを統合するのがねらいだ。「失敗モデルをこれまでより迅速かつ多彩に対象にできる」とラウビーは述べる。エアバス以外の機体の分析はデルタとGEデジタルから提供され、予知保全ソリューション統合が可能となる。デルタは今年末に同システム利用を開始する。■


Airbus Covets Central Role In Services

Thierry Dubois October 19, 2021

https://aviationweek.com/aerospace/airbus-covets-central-role-services


2021年10月17日日曜日

787納入部品にボーイング基準不適合部品が見つかる。イタリア下請け企業の品質問題。レオナルドが納入しており、エアバスにも波及する可能性。

  

 

Boeing 787 Charleston facilityBoeing 787 Charleston facility

Credit: Sean Broderick/AWST

 

ボーイング787向けに下部協力企業が製造しレオナルド経由で納品されたチタン製部品がボーイング設計基準に適合せず、再加工が必要となっている。ボーイングが10月14日に発表した。

 

問題の部品は床面のビームとフレイムをつなぐ部分、ブラケット、クリップ等で、内部に詳しい筋がAviationweekに明らかにしてくれた。すべてイタリアのManufacturing Processes Specification S.r.l. (MPS)社が製造しており、レオナルドの契約企業だ。レオナルドは787中央部セクション44、46のほか水平安定板部品を担当する。問題はレオナルドが見つけ、ボーイングに通報してきた。

 

「サプライヤーから連絡を受け、787部品の製造が正しくないと知らされた」とボーイングは発表、「社内調査を続け、稼働中の機材の運行上で今直ちに安全の障害となることはないと判明した。今後納入する機体では引渡し前に再加工を行う。運用中の機材の処置については社内審査手続きおよびFAAと確認の上可否を決定する」

 

レオナルドも問題を認識し、MPSとの契約を解消した。

 

「レオナルドからは問題はMPS社が原因であると連絡が入った。同社はボーイングが協力企業として認定したものである」「同社には検察が捜査を入れている。レオナルドが損害を受けた形で、今回の事態で発生する損害費用の責は負わない」

 

現時点でMPSが他社にも不適合部品を供給していたかは明らかではない。エアバスに問い合わせをしたが、まだ回答がない。■

 


Non-Conforming 787 Titanium Parts Flagged By Leonardo

Sean Broderick October 14, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/non-conforming-787-titanium-parts-flagged-leonardo

 


2021年10月11日月曜日

米軍支援に動員される予備航空輸送隊民間エアライン機の活動範囲が変わる。米軍の中東からの活動軸足変更に伴う変化か。

 

アフガニスタンを脱出した人々がドイツのラムスタイン航空基地に民間予備航空輸送隊として投入されたデルタ航空機材で到着した。Aug. 30, 2021.U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Donald Darnec

 

国の軍事活動支援に民間エアライン企業が協力してきたが、今後は送り込まれる範囲で変更が生まれそうだ。米輸送司令部が10月7日に報道陣に変更の可能性を示した。

 

民間予備航空輸送隊(CRAF)とは米エアライン機材を契約ベースで国防総省が利用する事業で、軍用輸送機では足りなくなる事態に民間機を借り上げる仕組みだ。2021年8月時点でエアライン24社の450機がCRAFに登録されている。(米空軍調べ)

 

 Civil Reserve Air Fleet

 

ただ、米国の脅威環境の重点が中東から離れつつあり、米輸送司令部のコーリー・マーティン少将は軍が民間機を送り込む対象地も変わると述べている。

 

「脅威の強さが場所により変わるので軍民関係にも変化がついてくる。民間エアライン機材を派遣する仕向け地も変わる」

 

 マーティン少将はCRAFは低脅威度地区に投入されることに変わりはないと強調している。民間機材を投入する場所の決定では該当地が米本土からどれだけ遠いのか、また軍用機並みの防御装備がない民間機で輸送効果がどこで活用できるかを検討して決まるとした。

 

同少将は最終決定にはエアライン各社も関与するとし、各社は安全が確保できないと判断すれば決定を拒否する余地が認められているという。

 

今年8月、CRAFが発動され、国務省による米市民や高リスク住民をアフガニスタンからの脱出作戦を支援した。マーティン少将は軍民の強固な関係の延長線で実施できたと称賛している。同作戦では民間協力企業が18機を提供し米輸送本部のカブール空港からの人員搬送を支援した。■

Changing Threats Could Alter Civilian Aircraft Operations

10/7/2021

By Mikayla Easley


記事はどこが変わるのか明示していませんが、アジア太平洋をにらんだ文脈であることは明らかですね。

2021年10月3日日曜日

A350で問題発生か。カタールエアウェイズが運航停止し、A380を引っ張り出し需要増に応えようとしている。「塗装表面下で加速的に進行している」現象は何なのか、情報が不足している。

 

Qatar Airways Airbus A380

Credit: Airbus

 

カタールエアウェイズエアバスA380の運行を再開する。A350機材の運行停止措置による輸送力不足を埋めるためだ。

 

同社では13機あるA350を8月初旬から定期運航から外している。同社によれば機体表面で見つかった問題のため。

 

A350の機体表面の塗装下で「加速的な劣化」が進んでいるとし、エアバスが解決策を提示するまで運航を停止したと同社は発表。

 

「当社はエアバス社に根本原因ならびに不可逆的解決策を期待し、当社並びに規制当局の不安を取り除いてからA350の納入を受け付ける」と同社CEOアクバル・アル=バカーが述べている。

 

カタールエアウェイズではパンデミック初期段階でA380の18機を飛行停止措置にしていた。燃料消費効率が劣る上、排出ガス問題では最悪の機材とアル=バカーが述べている。また、5機のみ運行再開し、残りは廃止するとの同CEO発言も2021年1月にあった。

 

ただし、A350で問題が発生したため同社は見直しを余儀なくされている。

 

「カタールエアウェイズではA350多数が飛行停止措置となったため、A380機材の一部を運行再開せざるを得なくなった」と同社は声明文を発表している。「あくまでも現在の機材不足を緩和するためであり、冬季運航計画で想定する需要増に応えるためでもある」

 

ただし、同社は詳細について説明を拒んでいる。■


Grounded Airbus A350s Force Qatar Airways Into U-Turn On A380s

Alan Dron September 30, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/airlines-lessors/grounded-airbus-a350s-force-qatar-airways-u-turn-a380s


 

2021年10月2日土曜日

成層圏疑似衛星技術に注力するソフトバンクが高高度飛行関連特許200点を取得。ねらいはネットワーク未整備の遠隔地向けインターネット配信サービスか


フトバンクが高高度飛行装備に関する出願済み及び出願中特許およそ200点を成層圏飛行気球の開発企業ルーンLoonから取得した。ソフトバンクは携帯電話会社HAPSMobileを所有する。


ルーンはグーグル親会社アルファベットが立ち上げ、インターネットを遠隔地に対し高高度気球から行うとしていたが、今年1月に業務を停止していた。

Loon helium balloon c Loon

Source: Loon

ルーンは高高度気球によりインターネットサービスを地上に送信する構想だった。


HAPSMobileはソフトバンクが株式多数を保有し、少数保有のエアロヴェイロンメント Aerovironmentが太陽光動力の高高度疑似衛星 (HAPS)を製作する事業体として発足し、HAPSに電動全翼機を想定する。


ソフトバンクはルーンから取得の特許内容について「ネットワークの技術、サービス、運用、HAPS機材に関連する」とのみ述べている。


2020年、ルーンは HAPSMobileとともに共同開発した長期間進化型(LTE)ブロードバンド装備をHAPSMobileのサングライダーUAVに搭載する実証を行っていた。


このサングライダーは高度65千フィート上空の成層圏を飛行する全翼機で翼幅80m、滞空期間を数カ月と想定する。


Sunglider UAV c Aerovironment

Source: HAPSMobile

サングライダーUAVは数カ月滞空する想定だ。

 

長期滞空性能により同機を疑似通信衛星とし、インターネット接続のない遠隔地向け配信を可能にするとHAPSMobileは説明していた。サングライダーによるインターネット配信は200km範囲に及ぶ。


通信疑似衛星構想は市場投入が期待されている技術だ。ソフトバンクはHAPSMobileとともに所有する知財を活用し業界内での標準作りをめざしている。ルーンはHAPSMobileとHAPSアライアンスを2020年に立ち上げ、通信、航空宇宙、携帯電話企業を集め、疑似衛星の活用を促進するとしていた。■


SoftBank buys 200 patents from Alphabet’s Loon for its pseudo-satellite

https://www.flightglobal.com/civil-uavs/softbank-buys-200-patents-from-alphabets-loon-for-its-pseudo-satellite/145742.article


By Garrett Reim2 October 2021


お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。