ラベル バイオ航空燃料 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル バイオ航空燃料 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019年4月30日火曜日

バイオ航空燃料市場が立ち上がる転換点がいよいよ近づいてきた

Aviation Week & Space Technology

Biofuel Market Is Nearing A Tipping Point

転換点に近づくバイオ燃料市場


Apr 26, 2019Kerry Reals | Aviation Week & Space Technology


イオ燃料はこれまでも話題になっており、実証フライトでジェット燃料に代わる選択肢として航空業界の持続的発展に役立つと期待されてきたが意味のある生産量消費量が伴う市場への転換点にいよいよ近づいてきたようだ
エアライン業界も炭素ガス排出対策に乗り出しているが、バイオ燃料が大きな影響を及ぼすまでの道が長いのも事実だ。とはいえエアライン、機体製造企業、燃料製造業がタッグを組み有利な一気に加速しそうだ。
環境団体や一部業界内部にもフライト回数を減らすべきとの主張があるが、エアライン側には受け入れがたい。だが社会の圧力は高まっており、特に欧州では気候変動に抗議するExtinction Rebellionのような団体が活発に動いており、エアライン側も化石燃料離れが長期的に有利な選択になると理解し始めている。
航空用バイオ燃料製造に出資あるいは低炭素燃料の一定量購入に動くエアラインもある。ユナイテッド・エアラインズは2015年に家庭ごみからバイオ燃料に転換するフルクラム・バイオエナジーFulcrum BioEnergyに30百万ドル出資した。キャセイパシフィック・エアウェイズもフルクラム出資で合意しており、ジェットブルー・エアウェイズは2016年にSGプレストンSG Prestonと調印した10年間供給契約で再生可能ジェット燃料供給を間もなく開始する。
さらにカンタス・エアウェイズはSGプレストンのバイオ燃料でロサンジェルス-オーストラリア路線の燃料を50対50の混合比で2020年から使用する。ヴァージン・アトランティックランザテック LanzaTechと製鉄所排ガスから燃料抽出し通常使用する。ブリティッシュ・エアウェイズヴェロシスVelocysと組んで家庭ごみを再生可能ジェット燃料に転換する製造施設を立ち上げる。
1月にエティハド・エアウェイズが砂漠で育つアッケシソウSalicornia抽出のバイオ燃料を部分的に使う有償運航を初めて開始した。同社はボーイングやアブダビのファリファ科学技術大と共同で持続可能バイオエナジー研究コンソーシアム (SBRC)の出資を得てUAEでこの産業を育てようとしている。
「初フライトを見ましたが一回きりではなく通常の形にしていきます。4-5年前からエアライン業界は購買力をてこに新規製造プラントを作らせてきました」とオランダのSkyNRGのCEOマーテン・ファン・ディジックは述べる。同社は出資元のKLM他20社に供給している。「決定打となる製品はないのですが、将来を見据えたエアラインにはサプライチェーンの構築の必要性が理解できるはずです」


biofuels
アブダビではボーイング、エティハド、サフラン等の協力を得て塩水に耐えられる植生耕作の研究が砂漠の中で進められ航空燃料の生産が期待されている。Credit: Boeing


こうした萌芽は充分に成果を上げていないとデジックは指摘する。「トップ・マネジメントを本当に巻き込む」形のバイオ燃料サプライチェーン構築は「保守的な業界」で「きわめて限られた」動きだというのだ。
「(エアライン業界は)責任を取る必要があります。より大きな構図の問題で自らの役割を果たすべきと理解する....しかし(航空燃料)課税の話題が出ると叫びわめき始めるのが現状です」
ユナイテッドがフルクラム出資を決めた背景には社会圧力があり、同社はは2050年までに炭素ガス排出を半減する公約を発表したが、実は国際航空運送協会(IATA)が10年も前に設定した目標にあわせただけだ。
「この分野に出資するべき理由は数々あります。当社のお客様からは持続的成長に資する企業になるよう求められております」とアーロン・ロビンソン(ユナイテッドの環境戦略・持続的成長上級部長)は述べる。同社の動きは航空環境税のような立法措置が始まったスウェーデンやノーウェイにならう動きが出る前に先手を打つ意味もある。
「ユナイテッドのブランド価値が上がり業務を守る意味もあります。課題は成果がでるまで長期間待たされる点です」(ロビンソン)
ユナイテッドはフルクラムへの30百万ドル出資で同社のハブ空港近くにバイオ燃料製造拠点5箇所を共同開発し年間90百万ガロン(約410百万リットル)の再生航空燃料をフルクラムから最低10年間購入する。
フルクラムは昨年12月にインディアナ州ゲーリーにバイオ燃料工場二箇所目を建設すると発表していた。ユナイテッドのシカゴ・オヘア国際空港ハブから30マイルほどの場所だ。廃棄物を燃料へ転換する初の商業ベース施設がネヴァダ州リノ近くで創業を来年早々開始するが、ジェット燃料は製造しない。インディアナ施設が2020年起工し2年程度で完工すると年間33百万ガロン生産の半分がジェット燃料となる。

man with branch
アッケシソウの耕作は拡大しており航空燃料への転用が期待される Credit: Boeing

「当社は製造分を全量購入する予定です」とロビンソンは述べる。ユナイテッド昨年の年間燃料消費は合計41億ガロンで、うちおよそ4億ガロンがシカゴで消費分と明らかにした。「道は長いです」とロビンソンも認め、「共同事業者がもっと多く必要になります」と付け加えた。
フルクラムはユナイテッドには二番目のバイオ燃料共同事業者だ。アルト・エアフュエルズAltAir Fuelsと組んでロサンジェルス国際空港起点のフライト一日150便ほどの燃料を一部バイオ燃料としている。アルトエアは昨年ワールドエナジーに買収されたが年間100万ガロンのバイオ燃料を供給しているものの、ロサンジェルスでの同社消費航空燃料年間1.75億ガロンの「0.5パーセント」にしかならない。
それでもアルトエアを買収したワールドエナジーから製造量を増やす発表が出ている。ロビンソンからはさらにバイオ燃料共同事業者を模索中でワールドエナジーとの共同発表が間もなく出ると述べた。
「共同事業は重要です。相手先をふやしたいし、各地での供給体制を確立し、技術や原料は多様化したいのですが、供給が安定した燃料がほしいのです」
「有望な各種原料がありますが、戦略として廃棄物に目をつけています。5年ないし10年前には穀物に注目が集まっていましたが当社は廃棄物系原料に軸足を移しました。コスト効果が高いですからね」
ユナイテッドが共同事業相手を多数模索するのは原料で各地に違いが有るためでボーイングも同じ動きをとっている。
「解決策は一つだけとは見ていません。各地に特色ある原料があり、地域別の戦略ロードマップを作りました」とボーイング・コマーシャルエアプレーンズで環境戦略部長のショーン・ニューサムが語る。
地元の太平洋岸北西部でボーイングが展開するバイオ燃料ロードマップにはオーストラリア、ブラジル、中国、南アフリカ、中東の各国が含まれ各国別に有望な原料がなにか、航空業界の要求内容にどこまで合致するかを検討済みという。


seeds
バイオ燃料は穀物を消費せず、かつ森林破壊を産まずに精製できる。ただし持続的発展を厳格に守る事が条件と専門家は語る。Credit: Boeing

エティハドやファリファ大との共同事業でボーイングは海水で栽培される砂漠植物が原料のジェット燃料製造を実証中で、今後200ヘクタール(494エーカー)まで規模拡大しUAEで展開する。
エティハドは研究を三年間しボーイング787-9でアブダビからアムステルダムまでジェネラル・エレクトリックGEnx-1Bエンジンに部分的にアッケシソウ由来のバイオ燃料を使い1月に飛行させた。アッケシソウはアブダビの海水エナジー養殖システムの施設で海水栽培した。施設で肥料となる魚やエビは食料ともなり、排水はマングローブにも供給し、研究者によれば「自然の形でろ過した排水は海に戻し貴重な炭素換算節約効果が生まれる」とのことだ。
SBRCコンソーシアムニはこの他UOP-ハネウェルサフラン、GE、ADNOC(アブダビ国営石油公社)、バウアーリソーシズBauer Resourcesが加わる。エティハド実証フライトでアブダビの気候変動環境大臣タニ・ビン・アーメド・アル・ゼヨウディが地域単位のバイオ燃料産業育成に各方面の共同作業が重要だと力説し、「従来の枠組みを超えた官民連携が研究開発で画期的な技術革新を生み持続可能な将来の実現に必須だ」と述べた。
ボーイングの次の目標はグリーンディーゼルを植物油、料理油、動物性脂肪の廃棄分から生成することで、地上交通機関で使用が始まっている。2014年に同社はテストフライトとしてEcoDemonstrator 787 をグリーンディーゼル15パーセント混合で左エンジンを稼働させた。
グリーンディーゼルは「まだASTM認証が降りておらず」「テストを昨年から初めている」が民間航空向け認証が出るかは見えていないとロビンソンは述べた。
ボーイングがテストに使ったのはフィンランドのネステNesteが精製した燃料で、両社は民生用使用認証に向け共同歩調を取ると合意済みだ。

airplane
ユナイテッドエアラインズはアルトエア・フュエルズと共同で飛行させたほか、ハブ空港近辺にバイオ燃料精製施設五ヶ所を建設する。Credit: United Airlines



ネステは昨年12月に発表し、再生燃料製造能力を拡大するという。同社は14億ユーロ(16億ドル)で同社のNexBTL再生ディーゼル・ジェット燃料生産を年産4.5百万立方メートル(5百万トン)に2022年までに増強する。同社によれば現在の生産能力2.7百万トンはシンガポール、ロッテルダム、ポルヴォノ(フィンランド)の合計だが2020年には製造工程改良で3百万トンに増える。
ネステはパーム油を原料にしているが、環境NGOのBiofuelwatchはパーム油原料が森林破壊と無関係との保証を同社が示していないと批判している。同社シンガポール施設は世界最大のパーム油製造地域の中心に位置する。
ネステは同社が使用するパーム油は環境に優しいと認証を受けており、低品質廃棄物や原材料の残滓で再生燃料を製造していると強調。ボーイングのニューサムはパーム油は「環境持続性の要求に合わないかぎり航空使用は対象外」とする。
ネステはパーム油を使うがその他企業はこれを回避している。SkyNRGは未精製パーム油は原材料に使わないと公約し、同社CEOのファン・デジックはパーム油を「当社として使えない」とし、使用は業界に「大きなジレンマを招く」という。
「バイオ燃料では配慮が必要ですが、正しく扱えば効果も高いです」とデジックは述べ、雇用創出効果や経済発展を再生燃料産業の肯定面と捉える。新規原料の採用前にSkyNRGは「厳しい」工程で環境への影響を検討し採用可否を決めるという。
「新産業を作り出すのですから厳しく内容を吟味すべきです」とデジックは言う。SkyNPGでは使用済み調理油を原料に使うが、中国の調理油には「手を出さない」のだという。理由は「サプライチェーンに虚偽の疑い」があるためだという。
「原料よりサプライチェーンが重要なんです。一部原料にはサプライチェーンがおかしいものがあります」
機体メーカーからはエアライン顧客に対してバイオ燃料を使った機体納入フライトを提示し、地域別に編成した代替燃料供給サプライチェーンの実効性の実証とする動きがある。エアバスからは2017年にキャセイパシフィック向けA350-900の15号機をツールーズからフェリー飛行させた際に代替燃料を10パーセント混合し、Totalと共同で構築したサプライチェーンが「正しく機能した」と述べた。同社はハンブルグ、モービル(アラバマ州)からの納入フライトでも同じ動きを始めると発表。
ボーイングも3月に同じ対応をし、同社製造機の納入時に燃料タンクに再生燃料を混合する選択肢を提示し、ワールドエナジーがカリフォーニアで精製した農業廃棄物原料のバイオ燃料を使う。アラスカ・エアラインズが今年中に初の試行例となる。
「これまで10年かけて再生燃料使用を民生航空部門に進めてきましたが、これは大きな一歩となります」とボーイング・コマーシャルエアプレーンズで戦略担当副社長のシーラ・レメスが語る。「この新しい選択肢でアラスカ初め各社が当社が進める炭素ガス排出量削減の動きを実感出来ると思います」
同社はバイオ燃料でのフライトテストセンターがボーイング・フィールドにあるのでこれを活用し、サクスカロライナの納入センターも顧客に提供する。EPICフュエルズEPIC Fuelsは従来型ジェット燃料をボーイング向けに供給しており、ボーイング納入センターにもバイオ燃料供給を始める。現在のところバイオ燃料は「トラック輸送で機体へ」運んでいるがロビンソンによれば「EPICと燃料補給工程を簡略化する」作業に入っているという。
バイオ燃料の供給施設を併設する空港はまだ少数だが増える兆しがある。オスロ空港がはじめてエアBP、ノーウェイ空港運営会社アヴィノール、SkyNRGとの共同作業で先鞭を切った。
航空バイオ燃料の普及は相当の時間がかかっているとみられるが、専門家にはバイオ燃料による初の商業飛行から8年でここまで来たとの見方もある。ただし障害は資金や原油価格の下落傾向だと指摘する。
「環境に優しい燃料市場の成長が遅いとの見方にあえて異議を申し上げたい。意外に短い間に大きな進歩を示しています」とニューサムは言う。「石油燃料はまるまる1世紀かけて基盤をつくってきたのですよ。それに真っ向から対決出来る製品です。成長が遅いとは思いません」
ただし以下注意喚起してくれた。「精製方法はまだ多数を試していません」、またエアラインとの大口供給契約もまだ生まれていない。
「転換点に近づきつつあります。航空業界で長期課題となりますが、必ず実現します。基盤はすでにできました」■

コメント 航空需要の大きな部分を占めるアジア太平洋の出番が見えてきませんね。とくに中国は今後大きな責任を果たす必要があるのでは。保守的な業界というのはいまの形態で利益を最大限確保するビジネスモデルになっているので変化を嫌う傾向なのかもしれません。しかしいまは当たり前のデイリー運航や路線新規開設が一切できなくなれば大変なことなのでぜひ業界では真剣に燃料問題を考えてもらいたいものです。記事では出てきませんがアルジェやジャトロファはどうなったのでしょうかね。

お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。