2021年1月30日土曜日

アメリカンエアラインズが機材、人員の合理化効果を期待。ただし、需要回復の道筋が見えない中、社員処遇は連邦政府援助頼みという状況だ。

  

 

American Airlines Boeing 737 MAX 8

American Airlines Boeing 737 MAX 8

Credit: Boeing

 

メリカンエアラインズは昨年に機材、人員を整理した結果が需要が上向きになり効果を上げると自信たっぷりだが、回復の道筋が見えないことが問題だ。

 

同社の運行は今年末までに2019年実績水準に完全復帰する予定だが、機材数は10%減とし新型大型機を増やす。2020年に旧式機材中心に150機以上を整理し、機材構成を以前の9種類から四種類に統合した。その結果平均機齢が11.2年に下がり、業界中で一番低くなったと同社は述べている。

 

FAAが21ヶ月間の飛行停止措置を解除したのを受け、アメリカンは2020年第4四半期にボーイング737-8を10機受領した。2021年も737-8は9機、787(19機)、エアバスA321neo(16機)が加わるとCFOデレク・カーが説明している。2022年にはA321neoを26機受領するという。

 

「四種類に整理し、機材稼働率を引き上げ、未活用機材を減らしたい」(カー)

 

カーによれば管理職を2020年に三分の一削減し5億ドルの節減効果が生まれるという。連邦政府による給与支払い支援が2020年秋に終了し、

米系エアラインで最大規模の現業部門19千名を自宅待機としているが、政府がエアライン向け支援を昨年12月に延長したため、自宅待機中の従業員は3月31日までに復帰させる。

 

ただし、2021年第1四半期の需要動向は2020年同時期からほぼ変化がなく、CEOダグ・パーカーは政府が給与支払い支援を再延長しない場合、4月1日以降は自宅待機措置の再開を余儀なくされると述べている。

 

「4月1日がちかづき、需要が好転しないと、この措置が必要となる」とパーカーは述べ、同社組合はエアライン支援を景気刺激策の一環として強化してほしいとバイデン政権に要望している。パーカーもこの動きを支援しているという。

 

アメリカンの業績は2020年Q4で21億ドル純損失で収益は年間ベースで64%減だった。今年Q1の回復はわずかとの予想で収益は対前年比で60から65%減となる予想がある。Q1の運行規模は2019年実績から45%減となり、2020年Q4からの変化はごくわずかだ。

 

2020年の通年純損失が90億ドル近くになるとの発表があったが、同社株価は1月28日に50%近く上昇した。

 

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American Airlines Plans Leaner Business Following Pandemic

Ben Goldstein January 28, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/airlines-lessors/american-airlines-plans-leaner-business-following-pandemic


2021年1月24日日曜日

主張 ビジネル利用客需要のコロナウィルス前への回復が困難になり、レガシーエアラインの収益構造に大きな影響が出る。逆にLCCには成長の機会が待っている。

 Opinion: Why Business Travel Could Change Forever

Kevin Michaels January 18, 2021

airport terminal

Credit: Grant Faint/Getty Images

 

空旅行需要はいつCOVID-19前の水準に戻るかが今一番多い話題だ。意見は大きく分かれ、大部分はワクチンの大量接種が始まれば、レジャー客が一気に増えると需要増に期待をふくらませる。だが、出張需要はどうなのか、エアライン収益の4割5割を占める利用客は?一気に増えず、構造変化で出張旅行の回復は遅れると筆者は見ており、業界には大きな誤算となりそうだ。

COVID-19の出張需要への影響を評価するため、グローバルビジネストラベルアソシエーション(GBTA)が760社の社用出張管理部門や旅行業界に12月中頃に調査した結果がある。結果に驚かされる。出張旅行支出は2021年に2019年実績を46パーセント下回るとある。この結果はその他機関の調査とも合致する。またCNBCによるグローバルCFO協議会調査では最高財務責任者の半数近くが出張旅行がCOVID-19以前の水準に戻ることはないと見ている。

では影響が最大となる出張旅行形態はどれか。出張を大きく2つに区分する。まず、顧客や業界関係と直接会うための出張で、営業会議や顧客打ち合わせ、現地視察、業界会議などがある。二番目は社内完結型で社内会議、研修、通勤などだ。

GBTA調査では顧客似合うための出張への影響が最小で、同時に顧客支援や個別営業も影響は少ない。これは理屈にあう。営業訪問や関係構築はZOOMでは実施できないからだ。

対照的なのが社内出張で61%減となると調査結果にある。COVID-19による危機状況庭をかけたのがチームズやZOOMといったツールだ。同じ会社の社員が価値観や考え方を共有できればわざわざ出張する必要が減り、社員自身も楽になるが、会社の決算にも好影響となる。社内出張は25ないし30%の構成比で構造的な変化により影響を受ける。

そこまで激減ではないが影響を受ける出張形態がある。COVID-19以前ののボーイング777-300大西洋横断便を想像してもらいたい。国際航空運輸協会調べではCOVID-19前の収益は一便あたり130千ドルで上級クラス利用が45%だった。この際の純利益は10千ドルだった。これが今は収益77千ドルで上級クラス利用客が減り、25千ドルの純損になっている。機体下部に搭載する貨物が増えている状態でこの数字だ。

出張需要での構造的変化の影響は大きい。まず、航空需要全体のCOVID−19前水準への復帰が遅れる。出張旅行予算の引き締めは観光客よりも厳しい。各社CFOは2022年度支出計画をまもなく作成するが、多くは支出削減に向かう。航空旅行需要がCOVID-19前水準に戻るのは早くて2023年末だろう。

二番目に、路線網を広く持つエアライン各社の収支改善は予想以上に遅れる。というのは出張需要が各社の利益で大きな存在になっているからだ。反対に低運賃エアライン部門は出張需要へ依存度が遥かに低く、機材数を増やしマーケットシェアを伸ばしそうだ。

三番目に、出張需要減少で機材小型化に拍車がかかる。同時に長距離路線の細分化が強まり、恩恵が期待されるのがボーイング787やエアバスのA350ならびに今後登場するA321XLRで、大型機の777XやA350-1000には逆風となる。双通路機の生産は当面は低水準のままだろう。

四番目に新型中型機の製造がボーイングにプレッシャーとなる。理想的な機体は単通路で200−240席程度でエアバスA321XLRの競合機となる。遅かれ早かれこの規模の機体の需要が現実となる、あるいはボーイングのシェアが40%を割り込む事態が現実になる。ボーイングの債務水準が高いことを考えると、リスク分担してくれる提携先と一緒に120億ドルから150億ドルの完全新型機になるのではないか。これは既存の大手サプライヤーとの取引関係が終わることを意味する。

サプライヤー各社にも出張需要減少の影響が感じられるはずだ。原材料や内装のサプライヤー企業各社は双通路機への依存度が高く、取引規模をこれまで拡大してきた。ロールスロイスはこの種類の機体に完全依存しており、このため同社の見通しが厳しくなっている。機体整備専門企業の多くも高価格双通路大型機の重整備や改修に大きく依存している。

では出張旅行の変化は永続するのか、それとも調査結果は危機的状況によくある過剰反応を拾っただけなのだろうか。答えを出すのは時期尚早だが、社内出張の減少の背景に興味をひかれる。賢明な企業ならこの機会を活用した企画を立てるだろう。

The views expressed are not necessarily those of Aviation Week.


2021年1月8日金曜日

2020年最も安全だったエアライン20リスト発表。JAL、ANAはランク外に脱落

 *ターミナル1・4同時掲載記事。T4 https://airaccidentsdisaster.blogspot.com/

の旅では安全がすべてだ。事故が起こらないよう乗客は祈る。

 

AirlineRatings.comによるエアライン405社のまとめで2020年の安全実績の最優秀社を見てみよう。

 

カンタスが2014年-2017年に連続でトップの座にあり、2018年は AirlineRatings.comは優劣つけがたいとして20社をABC順で発表した。しかし、カンタスが今回は再びトップに戻った。

 

ランク付けは航空当局や政府による監査結果、墜落含む深刻なインシデントの発生件数、機材の経年数、財務力、パイロット訓練、社内価値観を考慮している。

 

小規模インシデントは考慮に入れない。エアライン各社で毎日発生しているから、というのが理由だ。だが乗務員がインシデントをどう処理するかで安全・非安全の違いが生まれるという。

 

カンタスは60年にわたり、あらゆる面で安全を追求し、ジェット機材の時代になり死亡事故は一回も発生していない。

 

二位はエアニュージーランド、台湾のEVA エアが三位だった。アブダビのエティハドがいきなり四位になった。

 

残るトップ10はカタールエアウェイズシンガポールエアラインズエミレイツアラスカエアラインズキャセイパシフィックヴァージンオーストラリアだった。

 

10位から20位にはハワイアンエアラインズヴァージンアトランティックTAPエアポーチュガルSASロイヤルジョーダニアンスイスルフトハンザKLMが入った。

 

リストに入っていないエアラインで目立つのがブリティッシュエアウェイズANAアメリカンエアラインズユナイテッドの各社でそれぞれ昨年の20位圏から脱落した。日本航空デルタもはランク入りできなかった。

 

ブリティッシュ・エアウェイズは「機材経年数が平均13.8年でインシデント発生件数では乗客の生命に危険はなかったものの、同規模他社より頻度が高いことが組み合わさり」リスト外となった。

 

パイロットの酩酊状態が見つかったユナイテッド、アメリカン、JAL、ANAは圏外となった。

 

他方で、カンタスの画期的な実績を評価しており、ボーイング787によるノンストップ便がパースからロンドンに飛んだこと、さらに最近になりロンドン-シドニー線、ニューヨーク-シドニー線のテスト飛行を実施している点を評価している。同社はエアバスA350を12機発注しており、こうしたノンストップ便運航に投入する。

 

 AirlineRatings.comはトップ10各社間での違いは少ないものの、10位以下ではギャップが広がってきたと指摘している。

 

Low-cost safety

同時に確約航空会社部門の安全ランク付けも発表しており、ここでは実績に大差ないとしてABC順に記載している。Air Arabia、 Flybe、 Frontier、 HK Express、 IndiGo、 Jetblue、 Volaris、 Vueling、 Westjet、Wizz Airの各社だった。

 

World's safest airlines

1: Qantas

2: Air New Zealand

3: EVA Air

4: Etihad Airways

5: Qatar Airways

6: Singapore Airlines

7: Emirates

8: Alaska Airlines

9: Cathay Pacific

10: Virgin Australia

11: Hawaiian Airlines

12: Virgin Atlantic

13: TAP Air Portugal

14: SAS

15: Royal Jordanian

16: Swiss

17: Finnair

18: Lufthansa

19: Aer Lingus

20: KLM


この記事は以下を再構成したものです。日本航空、ANAにはぜひ雪辱を果たして来年のリストに復帰してもらいたいものです。


The world's safest airlines for 2020

Julia Buckley、 CNN • Updated 3rd January 2020

http://edition.cnn.com/travel/article/worlds-safest-airlines-2020-airlineratings



2021年1月4日月曜日

主張 厳しい冬が続くエアライン業界はこの時期どうすごすべきか。利用客の利便性を真剣に考え、あえて構造改革に使うべきだ。その先の将来は明るい。

 EDITORIAL: Airlines' bleakest winter

Karen Walker December 16, 2020

Chicago O'Hare International Airport

Credit: Michael Sanborn

 

年に入ったが、ここ三ヶ月の運航に必要なキャッシュにも事欠くエアラインが多数ある。ワクチン発送はこうした各社に朗報とならず、航空需要が即回復する兆候はない。2020年は政府支援が航空業界にあったが、二回目では規模は限られ、申請も難しくなる。不毛の冬となり、破綻する会社も出るだろう。

 

冬でも希望はある。ワクチン配送は予想より早く始まったが、パンデミックの苦労が長期化すればCOVID-19の解明もそれだけ充実するはずで情報も入るはずだ。

 

エアライン業界も今回の危機状況から学ぶところは多い。固定費と運行経費の比率が高い産業であり、キャッシュが最低水準では無謀と言わざるを得ない。パンデミックによる業務縮小と経費節約からエアライン各社は状況に適応し、痛みのない縮小あるいは成長の方法を体得する必要に迫られている。

 

もっと大きな課題がサービス提供業者としての向上だ。生き残り第一の環境でキャッシュは王様であり、各社は必死にその確保に努めている。だが回復段階がはかどらず、利用客が移動方法を検討すれば、顧客が今度は主導権を握る。エアライン各社は顧客向けサービスの模範生ではなかった。とくに供給を上回る高需要の時期にあてはまった。顧客サービスを一貫して真剣に考えてきたごく少数のエアラインでも飛行移動再開となり顧客から確実に指名されるとはいえない。何ヶ月も利用できなかった顧客や得意先には選択の幅が広いからだ。最終的に利用客、業界双方によい結果が生まれるだろう。エアライン側はマイレージプログラムにあぐらをかき、サービス水準向上を二の次とする状態があまりにも長く続いた。

 

別の言い方をすれば、業界はこの危機的状況から復興し、以前よりよくなれる。一部エアラインはICAOが進めるCORSIA排出ガス対策目標以上の水準をあえて選択している。

 

ユナイテッドエアラインズの2050年完全カーボンニュートラル宣言は利用客、利用企業、投資機関がエアラインに環境への責任を求めているためだ。旧型機を早期引退させ、旅行需要の落ち込みに対応すれば、エアライン各社は持続可能な将来によりよく対応できる。

 

昨年末にIATAのチーフエコノミスト、ブライアン・ピアースは「危機的状況やショックから良い成果が生まれるものだ。ちゃんと考えれば、通常なら実施困難な構造改革が可能となる」と述べていた。

 

大変な一年が終わり、冬が続くが、業界は一層力強く再興できる。■


お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。