2023年1月12日木曜日

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2021年12月17日金曜日

A380最終号機の引き渡しで同機生産も終了。エアバスは巨額の開発費用を回収できなかったが、品ぞろえの点で優位に立ったのが同機の功績。巨人機の時代は終わった。

 A380_Emirates_Hamburg

AIRBUS

 

 

アバスA380の最終号機が納入され、世界最大のエアライナーの製造が「スーパージャンボ」の当初の期待を裏切る形で終焉を迎えた。つまるところ、エアライン業界の変化によりA380生産は想定より早く終了し、251機製造で終わった。これはロッキードのL-1011トライスターより一機多いだけだ。

 

その最終製造機、MSN272がドイツ・ハンブルグを離陸し、発注元ドバイのエミレイツに向かった。出発にファンファーレも流れず、エアバスはCOVID-19のため式典を省略したとするが、大きな野心作の退場を祝う気になれなかったのだろう。

 

A380開発は2000年12月に正式開始され、すべてが大規模だった。エンジン四発の同機は全長238フィートで翼幅262フィート、634トンの機体を空に飛ばした。上下二階の客室に最大853席を設定でき、ボーイング747-8インターコンティネンタルの410席に大きく差をつけた。ただし、大部分のエアラインは545席、4クラス仕様を選択した。

 

AIRBUS

A380 MSN 272が別のエミレイツ機とハンブルグのエアバス社施設に並んだ 

 

2005年4月にツールーズで初飛行し、シンガポールエアラインズが2007年10月に商業飛行を開始した。スーパージャンボには14社の発注が集まり、中でもエミレイツがほぼ半分を占める大規模発注元となった。とはいえ、発注総数は期待を大きく下回った。エアバスは1,200機の受注を当初期待していた。

 

その中でA380の乗客は飛行体験を賞賛した。普通の乗客にとっても同機のサイズは快適な旅となり、余裕のある乗客はエティハドのファーストクラスの「アパートメントスイート」を楽しめた。エティハド、エミレイツはともにアラブ首長国連邦の二大フラッグキャリアである。

 

乗務員もA380の操縦特性を高く評価している。「A380は小型のA320と同じ感覚で操縦できるようにエアバスは技術を投入した」とA380の元機長が語っている。「驚くほど機敏に操縦反応があり、とても600トンの機体を操縦している感じはなかった」

 

だがA380のビジネスはとても成功したものと言えなかった。

 

9/11以前には航空輸送は巨大ハブ空港の出現を求める動きが強かった。エアバスの解決策は幹線に大型機を投入することで飛行回数を減らすことだった。A380は巨体ながら世界各地400地点の空港での運用が可能だが、基本ハブアンドスポーク運用で小型機を接続便に投入する構想だった。

 

だが事態は別の方向に進んだ。民間航空には燃料消費率の優れた双発機が君臨し、A380や747は大きすぎる機体になってしまった。新型双発機は長距離路線で経済効果を大きく発揮できる。エンジン技術の進展が背後にあり、複合材製の機体や空力設計の改良で777の長距離型にその後787ドリームライナーやA350が登場すると、人気を博したのは機体価格とともに運航経費がエアバス巨人機より低くなったためだ。

 

AIRBUS

エアバスワイドボディの三型式、A330、A350XWBとA380が編隊飛行している

 

A380では機材引き渡しが遅れたことも事業の推移に悪影響を与えた。運航投入されると今度は旧世代エンジンと機の素材のため早くも陳腐化してしまった。

 

A380引き渡し開始時点のエアライン大部分は787ドリームライナーとA350に関心を示していたのだった。新世代機で路線需要に応じ柔軟な運用が可能で、経済性に優れ利益を実現しながら長距離路線の開設が可能となるからだった。

 

2019年にエアバスはA380生産を2021年末で終了すると発表した。ボーイングも2020年に747の製造終了を発表した。A380はもともと747へ対抗するべく生まれた機体だが、両機を比較すると明らかに747に軍配が下る。1,550機が製造され、各型に発展し、50年にわたり生産されたからである。

AIRBUS

An Airbus infographic from March 2017, around two years before the company announced plans to end production.

 

A380開発の250億ドルは回収できなかった。

 

他方でエアバスは貴重な教訓を得た。構造部品はヨーロッパ各地で精算され陸路、海路で輸送された。同社のA330改装版のベルーガXL貨物機でも搭載できなかったのである。「エアバスの今日のリーダーとしての地位は同機があって初めて実現したものだ」と同社は声明文を発表している。「製品ラインアップを完成させ、競合他社に優位性を確立できた」

 

メーカーの立場としては商業的に失敗作となったものの、導入したエアライン各社はまだ当面同機を運用する。中でもエミレイツはA380運用で利益の85パーセントをパンデミック前に稼ぎ出していた。

 

エールフランスとルフトハンザもA380運航を段階的に縮小している一方で、アシアナ、ブリティッシュエアウェイズ、中国南方航空、エミレイツ、エティハド、大韓航空、マレイシアエアラインズ、カンタス、カタールエアウェイズ、シンガポールエアラインズ、タイエアウェイズ、ANAは同機運航を継続している。

 

エミレイツはA380を123機発注し、高需要かつ長距離路線網向け機材として活用している。当初想定した空の旅の革命は発生しなかったものの、スーパージャンボは航空業界のニッチを埋めた。なかでも最大の驚きはエミレイツが同機を世界最短のドバイ‐マスカット線に投入していることで、わずか217マイルで1時間未満のフライトだ。

 

それでもA380がエミレイツの成功を実現したのだが、同社もその他エアラインにならいCOVID-19の中で同型機を地上待機させた。スーパージャンボのうち7機はほぼ新造機だったがスクラップ送りとなった。同機の中古機に買い手が見つからず、ここにもA380登場後の業界がいかに変化してしまったかがわかる。

 

だが少なくともエミレイツがいるおかげでA380は当面残る。同社は2030年中ごろまで同機を運行したいとする。世界のエアラインの尺度でいうとA380型各機は小規模で、機体の維持が今後問題になりそうだが、エミレイツは整備会社Spairlinersと契約を結び、修理部品を確保している。とはいえ、同社もボーイング777Xをスーパージャンボ一部の代替機材と見ている。

 

「A380も最終的に供用を終了することになるが、777Xがその後継機として燃料消費効率が優れ、環境にやさしい機体となるが、当社ネットワークの就航先は今後30パーセント増える」とエミレイツ社長ティム・クラークTim Clark が今年初めに語っていた。

 

エミレイツはA380運用を今後も続けるべく、客室内の模様替えを行っている途中で、シンガポールエアラインズ、カンタスの両社も同じ方向を狙っている。

 

製造が終了したことで、終焉が始まったのは不可避の事実で、A380は徐々に姿を消していくだろう。

 

現在の状況では超大型機に残された時間は少ない。ただし、A380の刻んだ物語からは民間航空の世界では変化がいかにも早いことがわかる。これを念頭に、将来にスーパージャンボ構想が復活する可能性は極めて少ないことを心に刻もう。■

 

Airbus Just Delivered The Last A380 Super Jumbo Jet | 

BY THOMAS NEWDICK DECEMBER 16, 2021


2021年12月11日土曜日

ヴィエトナムが海外旅行客の入国を再開し、積極的に国際線運航を再スタートするヴィエトジェットの動きに注目。

 


 

ィエトナムのヴィエトジェットは11月に南朝鮮からヴィエトナムの観光地フーコック島へ二年にわたる国境閉鎖状態を経て初の民間便を飛ばした。同社はこれで国際線運航を再開した。利用客数でヴィエトナム最大のエアラインとなった同社は今回ソウルからフーコックへ初の「COVID-19ワクチンパスポート」事業で200名超を運んだ。ヴィエトジェットは旅客数でヴィエトナム最大のエアラインとなっている。

 

 

歓迎式でヴィエトジェット社長ディン・ヴィエト・フォンDinh Viet Phuongは「ヴィエトナムで始まった『精一杯生きよう』キャンペーンの一環で当社は国際線運航を完全再開し、観光客をヴィエトナムへ招き寄せる。今までにないサービスと旅行体験を各フライトで実現していく」と述べた。

 

パンデミックに対応し、同社は新規ビジネスソリューションを投入し、付加価値を加味した収益増加策を将来をにらんで立ち上げた。航空サービスの開発とともに貨物輸送を強化している。またパッケージ商品サービスも開発し、航空券を観光旅行と一体化し、同社フライト利用客向けに健康保険の販売も開始した。

 

これまでも同社ではフライト時間に合わせて運行コストを最適化すべく各種試行を実施しており、航空機材メーカーやリース会社と交渉し、市場動向に応じ支払い条件の変更を求めてきた。その成果として関係先も満足する形での変更を実現できた。今後オ積極的に各債権先に公平かつ公正に支払い条件を提示しつつ安定した業績の回復にあわせていく。

 

ヴィエトナムの航空市場は2021年12月に完全開放される予定絵、パンデミック期間を通じ、ヴィエトジェットはITやデジタルトランスフォーメーションに投資してきた。モバイルアプリを立ち上げ、ウェブサイト上で利用客は検査結果やワクチン注射の情報を提示できるようになった。テスト証明もウェブサイト上で利用可能となった。QRコードでのチェックインが導入され健康モニタリングのガイドラインが導入され、大量感染の予防に努めている。さらに、同社国内線フライトではヨガ体操に加え消毒衛生対策を導入し乗客を守っている。■

 

Vietjet Prepares To Recapture International Market Share

https://aviationweek.com/air-transport/vietjet-prepares-recapture-international-market-share


Sponsored By Vietjet November 26, 2021

 


2021年12月10日金曜日

737の貨物機改装を急ピッチで進めるボーイングは中国等に改装ラインを多数確保している。需要規模は大きいとの計算から。

 Aviation Week の記事からです。

737といえば手ごろな貨物機というイメージが今後定着するのでしょうか。それまでにボーイングは新型機を市場に導入できるでしょうか。それにしても737-800はまだまだ第一線で活躍中の機体だと思っていましたが。

 

STAECO はボーイング737-800BCF改装ライン7本を整備する。

Credit: Boeing

 

空貨物輸送の需要がいまだかつてない規模に拡大しつつあり、ボーイング山东太古飞机工程有限公司Taikoo (Shandong) Aircraft Engineering (STAECO)と737-800を貨物型へ改装するボーイング貨物機転換Boeing Converted Freighter (BCF) 専用ラインを二基増設する。

両社の合意内容が12月7日北京で発表されたのは中国民間航空局が 737 MAX の耐空証明を発行し、2018年から19に年にかけ発生した人身事故を受けて運行停止措置となっていた。同型機の運行再開が可能となった直後のことだ。

今回の追加ラインは2022年にSTAECOの山東省斎南市に完成し、うちひとつは2022年第一四半期、のこるひとつも同年中ごろに稼働開始する。すべてそろうとSTAECOには合計7ラインを稼働し、737-800BCFへの改装が実現するとボーイングが発表した。

中国のライン増設発表に先立ち、ボーイングはその他の拠点でも737-800BCF改装能力の増強を公表しており、広州の广州飞机维修工程有限公司Guangzhou Aircraft Maintenance Engineering Company (GAMECO)以外にコスタリカのCooperativa Autogestionaria de Servicios Aeroindustrialesが新しく加わり、カナダのKFエアロスペースKF Aerospaceとボーイング自身のロンドン・ガトウィック空港の整備補修施設に加わる。

ボーイングはこれから20年で合計1,720機が旅客型から貨物型へ改装されるとみており、うち1,200機は標準的な機体改装を受けると予測。アジアの需要が全体の4割を占めるとボーイングは試算している。■

 

Boeing Adds 737 Freighter Conversion Lines With China’s STAECO To Meet Cargo Boom

Guy Norris December 07, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/boeing-adds-737-freighter-conversion-lines-chinas-staeco-meet


2021年12月6日月曜日

予知保全で機体整備費用が大幅に下がる可能性。日本航空、ZIPAIRが利用するSTエンジニアリングの技術サービス。

  

 

ローバル展開するMRO企業の新規契約獲得に予知保全技術が必須になってきた。その中でSTエンジニアリングST EngineeringルフトハンザテクニクAFI-KLM E&Mと並び、部品の作動状況に異常を見つけ残る作動時間を予測し整備上の判断を助けるサービスを開始した。

 

同社は新サービスをコンポネント健康状態管理Component Health Managementと呼び、時間制整備maintenance-by the-hour (MBH)の5年契約を2021年9月より開始し、日本航空及び同社LCC子会社のZIPAIR Tokyoボーイング787全機を対象に統合コンポネントサポートを提供している。 STエンジニアリングは日本航空の737-800でも同様のMBH契約を以前から成約させている。

 

今回のJAL/ZIPAIR向け契約ではコンポネント検討管理を初めて応用する。同社広報は「その他2社とも予知技術を応用したコンポネント健康信頼性管理で契約ができている」とした。

 

同社はコンポネント健康管理の開発を2019年に解

開始し現在も個別分野で開発を進めている。「分析モデルの精度は向上しており、データ収集が進むことでより多くのお客様ユーザーが利用に関心を示している」(同社広報)

 

コンポネント健康管理はSTエンジニアリングが社内開発したもので、市販ソフトやツールを利用し、C#をプログラミング言語とし、マイクロソフトアジュールのSQL、UiPath(手順の自動化用)、やパイソンの公開ライブラリーにあるコードも多数利用した。またTableau Softwareも利用してユーザーは予知内容に加え背後にあるデータパターンも確認できる。

 

開発陣はエアライン顧客のほか、社内専門家と密接に作業し航空機技術、データ分析技術、信頼性工学やサプライチェーン管理まで取り込んだ。

 

予知保全の実施で鍵となるはコンポネントの故障データと関連するセンサーのデータだ。STエンジニアリングでは顧客と連携して故障データ・センサーデータが利用できるコンポネントを選択し、さらに運航に支障を与える程度が大きいコンポネントに絞り込んだ。コンポネント健康管理の対象部品は機種により異なる。健康管理は統合ドライブジェネレーター、表皮のエアバルブ、エアタービンのスターター、その他バルブやエンジンんで作動する油圧ポンプを対象としている。

 

STエンジニアリング広報は対象部品で鍵となるデータは関連センサーから入手し、不良記録、整備中に見つかった問題点レポート、突発交換の平均期間、故障平均時間その他信頼性関連データを利用していると説明。

 

同社によればコンポネント健康管理により不良による遅延や運航取り消しが減り、収益を逃すことがなくなるという。さらに突発の交換整備を定期整備に切り替えるて整備コストを最終的に60%削れるという。

 

STエンジニアリングにとって今回の契約成立は出発点に過ぎない。「対象機種を増やし、顧客層を広げる予定です。参加企業が増えれば解析対象のコンポネントが多様になります」「利用事例が増えれば当社サービスは堅実かつ成熟し、かつMRO業務の貴重な知見を有効活用できます」

 

長期的にはSTエンジニアリングは今回の予知モデルをエンジンサポート事業に応用したいとする。■

 

 

ST Engineering Launches Predictive Maintenance Tool With Japanese Airlines

Henry Canaday December 01, 2021


2021年12月4日土曜日

737MAX運航再開へ一歩近づく。中国CAACがAD発行。ただし、中国、欧州の考えとFAAの見解で一部相違がみられる中、ボーイングは22年からの月産31機体制実現に期待。

  

 

Credit: Boeing

 

国民用航空局Civil Aviation Administration of China (CAAC)がボーイング737 MAXの運行再開につながる機体特定型の耐空証明(AD)を発出した。基本的に米航空規制当局、ヨーロッパ、カナダの規制部門と並んだ。

 

改修を求めているのは飛行制御コンピュータとエイビオニクス表示画面で、あわせて水平安定板のトリムワイヤーの改修もボーイングが行った737 MAXの全般的点検で規制基準に合わせる必要が見つかっていた。

 

CAACではヨーロッパ連合航空安全庁、カナダ運輸省が認めた失速警告を与える操縦桿振動機能を切るためサーキットブレイカーの操作を許容する選択肢を加えた。CAACのフライトマニュアル追補にこの指令が入っており、手順詳細として緊急時対応として注意力を分散すると判断すれば切ることを同局は容認している。ただし、FAAはこの手順を認めておらず、737 MAX向け運用ではパイロットがブレイカーを切るリスクのほうが大きいことを理由としている。

 

CAACが求める運航再開条件リストには関連するサーキットブレイカーにカラーキャップをつけてパイロットが簡単に識別できるようにするとあり、手順改訂を反映している。

 

「十分な評価作業を経てCAACは修正作業で安全上体を確保できると思料した」とADにある。

 

指令内容には失速警報関連の手順が入っているが、基本となるパイロット養成の必要内容に触れていない。その他の規制当局の姿勢を反映するものと思われ、737 MAX専用のシミュレーターによる訓練とともにコンピュータで再現した座学をパイロット全員に求めるはずだ。

 

機体の改修とパイロット訓練には数週間がかかると見られ、CAACの12月2日付け発令では運航再開日程には触れていない。

 

中国は2019年3月のエチオピア航空302便事故を受けてまっさきに737 MAX運航を停止させていた。世界各地で合計385機が地上待機とされてきた。CAACは運航再開の条件として三つを上げている。設計変更が耐空検査に合格すること、パイロットが適切な訓練を受けること、二回の墜落事故原因が解明され、改修により適切に対応されること。ボーイングはMax 7の一機を8月にシアトルから上海に飛ばし、一週間にわたる中国規制当局向け実証を展開していた。パイロット訓練の必要内容が公表されれば中国での規制が解け、エアライン各社が改修とパイロット訓練を行えば、世界第二位の規模となっている中国航空マーケットでの運行再開が実現する。

 

ボーイングは声明を発表し、CAACが737 MAXの中国国内での運航再開に重要な一歩を示したとし、今後も規制当局と協力の上、各顧客が世界各地で同型機の運行再開に向かうべく作業を続ける、とした。

 

中国が737 MAXの引き渡し再開を容認したことでボーイングが目論む737が目論む月産31機を2022年早々の実現に大きなはずみがついた。Aviation Week Intelligence Network Fleet and Data Servicesによれば中国各社のAの737MAXファミリー発注は444機に上り、さらに97機が現在飛行停止措置に入っている。■

 

China Green-Lights Boeing 737 MAX Modifications

Chen Chuanren Sean Broderick December 02, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/safety-ops-regulation/china-green-lights-boeing-737-max-modifications


2021年12月3日金曜日

Aviation Weekの主張 オミクロンの出現でエアラインが根拠のない政府規制の対象となっているが本末転倒ではないか。

  

ダレス国際空港を出発するフライトクルー。米国は南部アフリカ路線の乗り入れを禁止した。ただし、米国永住権を持つ利用客はこの対象ではない。Credit: Photo by Jim WATSON/AFP via Getty Images


 

新のCOVID-19変異種でひとつだけ朗報がある。エアラインを想起させる名称になっていないことだ。

 

オミクロンと命名され、デルタ他の変異種とは異なるようだが、人間社会の対応ぶりにこれまでと大きな差はない。パニックとなり国境を閉鎖し、航空路線を止めた。これまで23カ月に及ぶパンデミックからの学習効果はないようだ。

 

世界各国がオミクロン発生地といわれる南アフリカからの渡航を急いで停止、あるいはやっとはじまったばかりの渡航制限解除を中止している。

 

航空移動の制限でCOVID流行を止めようとする政府の動きはデータや科学的根拠に基づいていない。いかにも政府が「何かしている」印象を与えるための気休めであり、目に見える形のメカニズムに過ぎない。

 

一番効果のあるウィルス対策にもっと厳しい政治判断が必要だ。欧米のワクチン接種率は今年に失速気味になっている。各国政府はワクチン接種の効果を国民に説得できず、デルタ変異種が出現し死亡例がワクチン未接種層に急増してもこのありさまだ。

 

ヨーロッパでマスク着用義務化、ソーシャルディスタンス、夜間外出制限が再度登場する動きがでるや街頭デモが狂暴化した。ワクチンに手が届かない途上国向けの支援に各国政府が及び腰なのは自国内に反発の動きが広がるのを恐れてのことだ。

 

南部アフリカ諸国路線を閉鎖する急な動きにより利用客に混乱が生じている。だがそれにとどまらずその他各国にも科学的データに基づかない措置がメッセージとして伝わってしまった。

 

ワクチン接種と検査こそ航空移動での伝染を食い止める最も効果的な手段であり、経済活動を維持し、利用者は希望通りに移動できる。ワクチンと検査はパンデミック出現後に驚くべき短期間で利用可能となったが、その効果が高いことは科学的に証明済みだ。グローバル規模の医療危機に呼応するグローバル規模の解答となる。航空移動の禁止では対応とならない。

 

 だが各国政府はグローバルどころか地域単位のモグラたたきの解決に走っており、航空便利用者が不必要な標的にされているのである。■

 

EDITORIAL: Air travel isn't the virus problem

Karen Walker November 29, 2021

Karen Walker

Karen Walker is Air Transport World Editor-in-Chief and Aviation Week Network Group Air Transport Editor-in-Chief. She joined ATW in 2011 and oversees the editorial content and direction of ATW, Routes and Aviation Week Group air transport content.


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