2019年6月30日日曜日

ロッキードも超音速民間市場に参入、ただし実現は規制の動向に左右されそう

Lockheed Martin adds momentum for supersonic travel


27 JUNE, 2019
 SOURCE: FLIGHT DASHBOARD
 BY: TOM RISEN
 WASHINGTON DC
https://www.flightglobal.com/news/articles/lockheed-martin-adds-momentum-for-supersonic-travel-459352/


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ロッキードの低騒音超音速旅客機の構想図

ッキード・マーティンがNASAと共同開発の騒音低下技術を導入し民間超音速機の開発を検討中で実現すれば超音速機開発を目指す企業に加わる。

ロッキードは低騒音超音速機(QSTA)コンセプトを6月19日米国航空宇宙技術学会主催のフォーラムで発表し、初期設計段階にあると明らかにした。

同社スカンクワークス部門がカリフォーニア州パームデールで製造中のX-59試験機はNASA向けで別事業。QSTAは40席で全長69メートル、翼幅22メートルとXプレーンより大きくなる。

現在の亜音速民間フライトは巡航速度がマッハ0.85程度だがQSTAは陸上上空でマッハ1.6、洋上ではM1.8で巡航する設計とX-59の主任エンジニアを務めるマイケル・ブロナノは言う。

低騒音超音速技術が今後の民生旅客需要の実現で鍵となる。米国では陸上上空の速度制限をM1.0としており騒音対策が目的で、ソニックブームは25マイル(40キロ)以内で聞き取れるという。

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Lockheed Martin

超音速旅客機製造に取り出した他社も2020年代中の路線就航を目指しており、ロッキードも他社同様に亜音速フライトより早く目的地につくのであれば「喜んで追加料金を払う客層」があると述べる。各社は需要拡大を見込みつつ初期費用の削減を狙う。

有償飛行に耐える規模の客席規模の機体づくりをねらうのはブームスーパーソニック一社のみだ。残るエアリオンスーパーソニックスパイクエアロスペースは小型ビジネス機に特化している。

マーケットはある
「需要は間違いなく存在する」とブオナオは断言する。「実現していないのは将来の規制像が見えないためだ」

NASAのX-59は衝撃波によるソニックブーム発生を防ぐ設計だがQSTAではさらに離着陸時の騒音軽減策としてエンジンの消音化も採用する。X-59は連続生産や民生運用を想定せず、GEエイビエーションF414エンジンを搭載する。これはF/A-18E/Fスーパーホーネットと同じエンジンだ

「超音速飛行で離着陸時の静粛化は難題です」とブオナノは認める。「離着陸時の飛行方法を変更すれば騒音は下がります」

.ロッキードのスカンクワークスがX-59をカリフォーニア州パームデールで製造中

QSTA、X-59ともに操縦はヴィデオ画面で行い、従来型のコックピット窓は空力特性を強めた機体にはない。

飛行中の騒音がどうであれブオナノによれば音速の壁を破ってもQSTA機内の乗客には「体感はできない」という。また「高速飛行のため振動もわずかながら改善される」という。

QSTAはじめ各機は高度50千から60千フィートと通常の民間機より高高度を飛行する設計。「そこまで高く飛べば機体から発生する排出物の影響は無視できません」ので高高度飛行中の大気汚染の最小化が必要だ。

X-59が実際に飛べば騒音は受容可能か一般社会の意見が出てくる。XプレーンはM1.5で米国各地を2023年から2025年にかけ飛行しNASAが住民に騒音レベルの調査を進める。

NASAフライトの調査結果とデータで連邦航空局とICAOが超音速旅客機でどこまでの騒音と速度が許容可能化を決定する。

ブームスーパーソニックを創設したブレイク・ショールによれば「海上超音速飛行の需要は十分あり、陸地上空でM1.0以上の飛行を認めるのに数年かかっても変わりない」という。

ブーム(本社コロラド州)はXB-1実証機を製造中で2020年中のフライトテストを目指す。日本航空が10百万ドルを同社に投資しており、有償飛行をM2.2で実現し、最大20機の調達を狙っている。■

2019年6月23日日曜日

注目の民間エアライン機材の最新動向

Aviation Week & Space Technology

Commercial Airliner Programs To Watch

Jun 14, 2019Jens Flottau, Guy Norris, Bradley Perrett and Maxim Pyadushkin | Aviation Week & Space Technology


んと言っても注目されるのはボーイング737 MAXがいつどんな条件で路線運行を再開するのかだ。だがその他にも注目すべき機体がある。ボーイングは777Xの遅延にどう対応するか。エアバスはA321XLRの立ち上げに向かいつつあり、A321neoの長距離版だ。A220は販売を伸ばしているがコスト削減が課題だ。エンブラエルはE2の販売強化が必要だ。C919やMC21といった新型機はフライトテスト中だが今後が課題だ。

ボーイング737 MAX
ボーイングの最高優先事項が737 MAXの運行再開で、3月以来370機ほどが地上に残ったままだ。
問題のMCAS機体制御補強装置のソフトウェアおよび訓練過程の承認がまだ下りておらず機体製造はピークの月産52機を42機におよそ2割削減しているが同社には今後の生産増加で追加費用支出がのしかかるはずだ。飛行禁止措置がいつまで続くかによるが影響を受ける機体は夏までに600機に増える可能性もある。飛行停止措置が長引けば受注残はさらに深刻になる。
飛行停止措置でボーイングが想定していたMAX三型式の投入にも遅れが生じている。座席数を増やした737-8、短胴体の737-7、ストレッチ版の737-10だ。まず737-8 200が1月13日に初飛行したがローンチオペレーターのライアンエアへの引き渡しは延期されたままだ。同様に737-7も初飛行は2018年3月に成功しているものの型式証明がまだ下りていない。737-7一号機にMCASソフトウェア改良版が搭載されテスト飛行に供される。
Boeing 737 MAX

ボーイング新型中間市場機材 New Midmarket Airplane (NMA)
ボーイングのめざす新型中規模機材NMAで新規情報が極めて少ない。2017年のパリショーで同構想が登場したのだが、2025年の路線就航の目標も737 MAXの危機状況の中で存在感が霞んだ格好だ。同社は年末までに同機開発の了解を取り付けたいとする。発注数が充分そろえば2020年はじめに正式開発がスタートする。
ボーイングはエンジンメーカー各社と接触を開始しており、737-10と787-8の間となる220席-270席で5千カイリの性能を想定。同社はエンジンは単一型式にしたいとしておりロールスロイスがRB.3059アルトラファンでの参入を日程がきつすぎると取り下げたので実現は容易になりそうだ。
そうなるとNMAはCFMジェネラル・エレクトリックサフランの共同事業体)かプラット&ホイットニーのいずれかを採用することになる。両社とも推力50千ポンドの性能を提示しており、CFMはLeapエンジンの発展型を、プラットはPW1100Gギアードターボファンの発展型を提示している。
Boeing New Midmarket  Airplane (NMA)

ボーイングは画期的な生産設計システムでNMAは合計6年間以内に製造型式証明取得が可能としている。これは同社の秘密部門「ブラックダイヤモンド」の開発した手法で777Xの折りたたみ式翼端機構や米空軍向けT-X練習機開発で効果が実証されている。

エアバス A321XLR
エアバスはA321neo派生型の最初のモデルを発表すると見られ、長距離路線市場を狙う。A321XlRは機体中央部の燃料容量を増やし、最大離陸重量は101トンになると業界筋が解説している。CFM Leap 1Aエンジン、プラット&ホイットニーPW1100Gで出力増加になるのか不明だが、同社筋によれば機体はストレッチされず主翼も新設計の必要はないという。
早めに立ち上がれば2023年ないし2024年に路線就航できるとエアバス最高営業責任者クリスティアン・シェーラーが述べている。
Airbus A321XLR

A321XLRは航続距離が600カイリ延長され4,600カイリまでの路線に就航可能となる。中央ヨーロッパから米東海岸まで、米国からラテンアメリカまで飛べる。カンタスの低運賃部門ジェットスターのCEOギャレス・エバンスによれば同社は現行のボーイング787にかわり同機でケアンズから日本路線を運行したいという。
A321XLRは仮称で今後変更の可能性があるが、ボーイングがNMAを立ち上げた場合の対抗策として開発費用を最小限に抑える武器となる。また改良型が生まれそうでストレッチ型や新設計の複合材主翼のほか、より強力なエンジンを採用する可能性がある。

エアバスA220
昨年のファンボロ航空ショーではエアバスA220が注目を集めたのは新鋭のモキシジェットブルーエアウェイズの2社ががエンブラエルのE2ファミリーを抑えて同機を大口発注したためあった。エアバスは同機用の生産ライン追加をアラバマ州モービルで建設開始しており、米国内向け需要には将来同工場が対応する。ただしその後は同機の受注は伸び悩んでいる。
明らかに受注数の増加が必要でモントリオール近郊のミラベル最終組立工場の能力を下回っており、従業員もモービル工場に受注分の生産が移転されると不安を強めている。エアバスはA220-300で確定発注451機、小型版の-100で85機としているが、-300で49機、-100で19機が4月末までに引き渡されている
Airbus A220

ルブールジェはその他の点でも同機の進展を占う点で重要だ。エアバスにはサプライヤー各社との価格交渉で何らかの進展が必要で、同機がCシリーズと呼ばれていたころのボンバルディアが不利な条件で買い取りをしていたのだ。エアバスとの統合により世界規模のサポート体制を実現することも優先順位が高い課題だ。

エンブラエル E2
最新E-ジェットの受注が期待より低調になのは、エアバスがA220として品揃えを強化していることやボーイング-ブラジル-コマーシャルと改名した共同事業体の認証が未完了なことも理由だ。エンブラエル-コマーシャルエイビエーションCEOのジョン・スラッテリーはエアライン業界の収益が低下する中でE2の様な小型機に商機が有ると信じている。E190-E2の路線就航が始まっている。
Embraer E2


A330neo
エアバスは今年はA330、A330neoを合計50機納入する予定で、ロールスロイスのトレント7000エンジンも納品が予定通りに戻ってきた。今後はA330を減産しA330neoを増産するとエアバス民間機部門最高業務責任者クリスティアン・シェーラーは述べている。受注残は240機で納入はまだ8機だ。A330-800はわずか10機にとどまっている。エアラインは大型の-900型を好むためだ。今年はエミレイツがA330-900を40機一括発注したことで活況を呈した。これはA380発注の取消に伴う発注だったが確定発注になっていない。まだ機齢が若いA330機材の更新機材のサイクルがいつ具体化するかが注目される

A330neo


ボーイング 777X
ジェネラル・エレクトリックGE9Xエンジンの耐久性問題が6月に浮上して777-9初飛行は延期になった。このためテスト日程も今年夏にかけ遅れることとなりただでさえ厳しい型式証明および納入が厳しくなる。ローンチオペレーターのエミレイツ、ルフトハンザ両社は2020年5月-6月に一号機の受領を期待していたが、すでに遅延を覚悟した代替案の準備に入った。
777-9は777Xでまず市場投入する型で競合機種はエアバスA350-1000で、747-400に匹敵する経済性を強調する。777Xは現行777-300ERの胴体に完全新設計の複合材主翼とジェネラル・エレクトリック開発のGE9Xエンジンを組み合わせせ、開発は2013年に始まった。
Boeing 777X

開発は2018年初頭までは概ね順調だったがGE9Xと生産工程で問題が起こり、自社設計製造の複合材主翼でも躓いた。3月に控えめにロールアウトを敢行したが、これも当初予定より4ヶ月遅れとなりフライトテストも遅れている。とくにフライトテストについては具体的な説明が遅れについてなされておらず、ボーイングはFAAと折りたたみ式主翼端など新趣向技術について事前協議をしていると見られる。

Comac C919
ロールアウトから3.5年、初飛行から2年が経過しているがComacはC919試作型三機を飛行させており4機目が2019年に加わる。同社は2020年に型式証明取得という予定を変えておらず、フライトテスト完了まで残された時間は18ヶ月しかないのに動きが鈍い。初号機引渡しは2021年の予定だ。
.開発開始は2008年だが2017年はじめから進展がない。同機は158席のナロウボディ機だ。
Comac C919

C919フライトテスト用4号機は2019年第二四半期中に進空すると関係筋が述べている。更に5号機、6号機が続く。ただフライトテストには3.5年は長すぎるとの見方もある。同機はCFM Leap 1Cエンジンを搭載。

Craic CR929
中露合弁企業CraicコンソーシアムはCR929ワイドボディ機のエンジン選定を9月に予定している。Comacと合同航空機企業(UAC)の共同事業体の同社は調整に手間取っていると関係筋が解説。
Craic CR929

CR929はエアバスA350と同等の機体長翼端の機体だが後続距離は12,000キロと短い。当初はジェネラル・エレクトリックまたはロールスロイス製エンジンを搭載するといわれていた。初飛行2023年引き渡し介し2025年の想定で開発期間を8年としていた。ただし開発期間については業界内では信憑性が薄いとの声が多い。

三菱スペースジェット
三菱航空機から予想通りMRJの立て直し案がパリ航空ショー前日に発表があった。以前のMRJ70をスペースジェットM100と呼び、ストレッチ化で米マーケットの事情により良く適合させる。また客室は3クラス編成で76席とし以前の69席より拡大された。
全長は113.2フィートと109.6フィートより伸びるが翼幅は4フィート減らし91.3フィートになる。米委託運行会社に課せられた制約の範囲内で客室容積を最大化している。
Mitsubishi MRJ

三菱は大型MRJ90をスペースジェットM90と改称し優先順位上はこちらを重視するとしている。2020年中頃に引き渡し開始したいとの目標を同社は再表明している。MRJ70開発はMRJ90の一年後となるがギャップを最短にすbるべく再設計は最小限にするという。

イルクートMC-21
パリ航空ショーではロシアの新型MC-21は公開されない。8月末のモスクワ近郊のMAKS航空ショーで公開される。メーカーのイルクートは合同航空機子会社で試作三号機に客室を装備して公開する。
MC-21はロシアを再び民間航空機に復帰させようといねらいであるが、同国と西側の関係が悪化し、当初国際協力事業との触れ込みだったのが変更されロシア国内の作業量が増えた。2018年末に米制裁措置がイルクートの主要取引先に課せられたのが打撃となり、外国製部品の入手が困難となった
Irkut MC-21


ロシア関係者は国内での複合材取得により型式証明が6ヶ月遅れており、現在の目標は2020年末取得だと明かす。当初はエアバス、ボーイングのエンジン換装ナロウボディ機より先に市場投入の目論見だった。
制裁措置が解除されないままイルクート、UACは代替製品を国内調達せざるを得ずAviadvigatel PD-14エンジンがその第一歩となる。PD-14搭載のMC-21のフライトテストは2020年スタートの予定。

2019年6月13日木曜日

MRJからSpaceJetへ。M100(76席型)に軸足を移す構えの三菱航空機

Mitsubishi rebrands MRJ as SpaceJet and plans new 76-seat variant
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三菱航空機はMRJをスペースジェットと再ブランド化し米国市場に76席仕様のM100で参入を図る。Mitsubishi Aircraft

13 JUNE, 2019
 SOURCE: FLIGHT DASHBOARD
 BY: JON HEMMERDINGER
 BOSTON
https://breakingdefense.com/2019/06/with-fcas-french-air-forces-renaissance-begins/?_ga=2.249066048.617291603.1560425748-835073440.1556677463

菱航空機はMRJをスペースジェットと再ブランド化し米国市場に76席仕様のM100で参入を図る。Mitsubishi Aircraft
三菱航空機はMRJ事業を再構築し、ブランド名をスペースジェットとしMRJ70開発は中止、あらたに76席型をSpaceJet M100の名称で開発する。MRJ90はSpaceJet M90に改称される。

同社はM100のキャビンモックアップをパリ航空ショーで展示し「今年末に」正式な新型機開発を開始する。この機体は米国内のリージョナルエアラインの要求内容に合わせたと同社は説明。

SpaceJet M90が路線就航2020年予定に向け準備するのと並行しSpaceJet M100を発表し、リージョナル市場の現在、将来のニーズに対応すると三菱航空機社長水谷久和が述べている。リージョナル機の最大市場米国に適合する機体として同社が企画した。

ファーストクラス、プレミアムエコノミー、エコノミーの3クラス仕様で76席とし最大離陸重量(MTOW)は39トン(86千ポンド)と米リージョナルキャリアー各社の大部分の運用制限内に収まる。いわゆるスコープクローズとして大手エアラインとパイロット間の労働協約で支線機材では76席39トンを超える機体に成約がある。三菱航空機では制約に適合する機材がこれまでなかった。
M90は2020年路線就航予定だがMTOW制限を超える。中止となったMRJ70は重量制限は満たすものの2クラス仕様で69席しかなく、76席機材のエンブラエル175に対して訴求力が低かった。

三菱航空機が開発を進め型式証明段階へ入ればM100は米リージョナルエアラインの要求水準を満たす76席リージョナル機として唯一の新設計新世代機となる。

「中止となるMR70のコンセプトを出発点に生まれたM100は特定の市場ニーズに合致する設計」と三菱航空機は説明。「米市場ではスコープクローズに合致するよう機材が最適化し65-76席の範囲で3クラス編成の客室となっている。その他地域のニーズにも柔軟に対応できる設計で単一クラスなら88名まで運べる」
MRJに関するニュースは数週間にわたり流れており、一部には三菱航空機で76席型は事業の成功に不可欠との見方もあった。

M100では同社は全長、貨物スペースやオーバヘッドビン、座席配置を最適化したと述べている。M100の設計がM90やMRJ70とどこが違うのか三菱航空機からの説明はまだでていない。

M100は全長34.5m(113 ft)でM90より1.3m短いがMRJ70より1.1m長いと三菱航空機発表の仕様諸元でわかる。

航続距離は1,910nm(3,450km)でM90の2,040nmよりわずかに短い。エンジンはプラット&ホイットニーPW1200G双発で推力合計17,600lb(78.3kN)はM90と同じと仕様書にある。MRJ70は15,600lbのPW1200Gとなる予定だった。

M100の貨物スペースは狭くなり13.6m3 (480cb ft) とMRJ70/90の18.2m3から後退。だが客室内のオーバーヘッドビンは充分に広くキャリーバッグも収容できる。

三菱航空機がM100事業案を発表したのはパリ航空ショー開幕の一週間前で親会社三菱重工業がボンバルディアのCRJ事業で買収交渉を発表した後となった。

アナリスト陣にはCRJのグローバル販売・サービス拠点を入手すれば三菱機はエアラインの信頼を得られるとの見方がある。■

2019年6月11日火曜日

2019パリ航空ショーにボーイングはどう臨むつもりなのか。

How will Boeing approach the Paris air show?

ターミナル2と同時掲載します。

10 JUNE, 2019
 SOURCE: FLIGHT INTERNATIONAL
 BY: JON HEMMERDINGER
 BOSTON
https://www.flightglobal.com/news/articles/how-will-boeing-approach-the-paris-air-show-458252

像してもらいたい。737 Maxの墜落事故二件がなければ、346名死亡が発生していなければ、規制当局により運行停止措置が下りていなければボーイングは今年のパリ航空ショーに堂々と乗り込み737 Maxの成功を高らかに宣伝していたはずだ。
 現実は別だ。同社は会場で新型中規模機(NMA)の発表をする、あるいはワイドボディ機受注をとつけるかもしれないが、737 Maxの事故が全てに影をさしている。
 737 Maxの飛行再開時期をみんな知りたがっている。ボーイングはおそらく答えることができないだろう。各国の規制当局が決めることであり、ボーイングのソフトウェア変更内容を承認する必要がある。これだけ不確実さがある中でボーイングは今年の航空ショーにどう対応するのだろうか。
 「考え方は2つですね」とコンサルタント会社Airの航空宇宙部長マイケル・マールゾは言う。「ひとつは低姿勢を貫くことです」これで二件の墜落事故へ謙虚な姿勢を示せる。実際にボーイングは3月のエチオピア航空機事故以来この状態にある。
 もうひとつは前向きなビジネスの話にもっていくことで、サービス産業の成長性や軍事航空関係の好調な販売状況を取り上げることだとマールゾは言う。
同社の軍用機部門に良いニュースが多い。KC-46ではつまづいているが、2018年には大型案件が相次いで同社のものとなった。米空軍向けにはT-X351機を関連機材含め97億ドルで受注に成功しており、T-Xは1,000機規模の事業になるとみる向きもある。
 さらに海軍向けにはMQ-25A無人給油機をまず4機製造する契約を805百万ドルで受注し空軍にはMH-139ヘリコプター84機を24億ドルで納入する。
 ボーイングの2018年度実績では国防・宇宙、安全保障関連売上は13パーセント増で232億ドルになった。.
 他方で航空機関連サービス事業の拡大を積極的に進め、グローバルサービシズ部門として独立させている。CEOデニス・ムイレンバーグは一連のリストラ策が功を奏し10年以内に500億ドル企業をめざすという。
 同社は目標からまだ遠いがサービス関連事業は急成長しており、ソフトウェア企業ForeFlightや部品供給業者KLXの買収が一役買っている。またサフランとは補助動力をめぐり共同事業を立ち上げており、アーデント・エアロスペースとも機内シート事業を開始している。各社の買収によりボーイングのグローバル・サービシズの2018年売上は17%増で170億ドルになった。
 とはいえこれだけでは737 Maxを覆う陰鬱な空気を一変させるだけの迫力はない。ボーイングは同機で4,620機の受注残をかかえ、今後の売上を左右する大きな部分になっている。
 同社幹部はパリ会場で 737 Max 関連の質問を浴びる覚悟をしており、トラブル続きの機体制御補強システム(MCAS)でも多数の質問が出るだろう。ただし正式調査が続く中で簡単に答えが述べられる問題ではない。
ライオン・エア機の事故がまず発生してから同社は質問に積極的に答えていないが、MCASで批判が相次いでおり、またそもそもMCASの存在をエアラインパイロットに開示していなかった。連邦航空局も同機の型式証明交付で大きな批判の矢面に立たされた。
4月にごく短い記者会見を行ったムイレンバーグは悔恨の念こそ示したものの同社設計内容を擁護しさらにMCASはさらに高性能になると豪語。
 ボーイングはソフトウェア改良作業を完了しており、MCASはセンサー2基を利用し急な機種下げ入力を防止する。事故二件でこの現象が発生していた。問題は規制当局が新ソフトウェアをいつ承認するかだが、未定のままだ。
 他方でパリ会場で同社が民間機事業の発表を行うかも未定だ。会場で受注が実現するのは確実だが、737 Maxの新規受注は当然ながら失速状態にあり4月にもインドのジェット・エアウェイズの運行停止を受けて737で196機の受注を取り消している。
 一方で他機種でもボーイングの受注は低調でついに4月は新規発注がなくなった。787は受注残584機でヒット作のままだが、開発中の777Xでは思ったより受注が伸びていない。
2013年のドバイ航空ショーでお披露目された777X事業は予定通り今年中の初飛行でその後型式証明と初納入が待つ。777-9がまず登場しその後777-8が続く。
 777Xは新設計の複合材主翼、大型化した客室窓、客室の拡大、GEエイビエーションGE9Xエンジンが特徴でとくに同エンジンは民間機用で最大径となる。ダッシュ9は乗客425名を7,525カイリ(13,940キロ)はこび、777-8は375名で8,690カイリの性能となるとボーイングは発表。
 4月時点で777Xの受注は344機でうち281機が777-9となっている。発注エアラインには中東、アジアのグローバルエアラインのエミレイツANAキャセイ・パシフィックエティハドカタールエアウェイズシンガポールエアラインズに加えブリティッシュ・エアウェイズルフトハンザも名を連ねる。
 777Xは優秀な性能でA350には手強い競争相手になるとの見方が外部にある。特に長距離性能とペイロードは超長距離路線投入に最適だ。ただ産業ウォッチャーには777Xは時代の先に行き過ぎた機体との見方もある。ワイドボディ機の更新をすませたエアラインが多いこと。777-300ERの様な機体にまだまだ供用期間が残っていることを指摘する。
 777Xはボーイングの新型だが、もっと大きな疑問への答えが見えない。ボーイングの次代をひっぱる機体はどれか。ここ数年に渡りボーイングは200-270席双発で4千から5千カイリの性能のNMAが757後継機としてさらに生産システムの変換で大きな役割をにない次代の大型案件につなぎたいと述べてきた。大型案件とは737後継機であろうと関係者は見る。今年早々にボーイングがNMAに乗り気になっている兆候が出ていた。NMAの立ち上げ決定は今年中としても正式な事業開始は来年で路線就航は2025年となろう。
 737 Max事故、飛行停止措置でNMAにも不確実性が増えた。ボーイング幹部の口からNエチオピア機事故以来MAの話題はめっきり減っている。ムイレンバーグはNMAでは順調に進捗中とするものの優先順位はMaxであるのは明らかだ。「疑いなく最大の優先事項はMaxの運行再開だ。これにしたがい社内体制も対応しており、NMAは平行して作業する」
 ボーイングはその他にもブラジルのエンブラエルと共同事業の二案件を進めており、民間、軍用それそれだ。民生部門ではエンブラエルの民間機部門の80%を42億ドルで買収する。軍用機部門ではエンブラエルのKC-390輸送機の販売促進、開発を進める。両社は年末までに合意をまとめるという。■


2019年6月6日木曜日

三菱重工がCRJ事業を手に入れたい理由

Mitsubishi finalising deal for acquisition of CRJ programme


05 JUNE, 2019
 SOURCE: FLIGHT DASHBOARD
 BY: MAX KINGSLEY-JONES
SEOUL

https://www.flightglobal.com/news/articles/mitsubishi-finalising-deal-for-acquisition-of-crj-p-458714/


菱重工業はボンバルディアからCRJ事業の取得を今月のパリ航空ショーで発表すると見られ、同社の狙いはグローバル規模での足固めのようだ。
 同社は50-100席程度のCRJリージョナル機をめぐり交渉中であると認めつつ、決定事項ではないとし協議内容に触れていない。
 FlightGlobalでは三菱重工は交渉の最終段階に来ておりパリ航空ショーで発表すると見ている。実現すればボンバルディアは民間航空機事業縮小に向かい、同社はビジネス機事業は残す。
 三菱はMRJリージョナル機の製造に向かいつつあり、CRJのライバル機になる。ボンバルディアと三菱はCシリーズの型式証明とグローバル7000の産業秘密をめぐり紛糾中である。
 三菱はボーイングにMRJのカスタマーサポートの委託契約を交わしている。有効期限10年間の同契約は2011年に合意形成したが等のボーイングは三菱のライバルであるエンブラエルと提携しており、関係者にはボンバルディアCRJ事業の譲渡で三菱重工は独自に世界規模のサポート体制構築が可能となるとの見方がある。■

コメント なるほどボーイングがエンブラエルを手に入れる中で現行契約の満了日までに独自の世界規模サポート体制を構築するのが三菱重工の狙いなのですね。しかしこれは肝心の販売機材がしっかりしてのことでしょう。CRJに大型規模をMRJは70に特化して棲み分けを図るのでしょうか。しかし、日カナダで事業を統括する能力が三菱重工に有るのか、ボンバルディアが手放す理由に赤字事業になっていることもあり普通の判断だと手を出しにくいはずなのですが。今後の推移が注目されますね。

2019年6月5日水曜日

三菱重工は赤字のCRJ事業をボンバルディアから買収して勝算があるのか

Bombardier in talks to sell its last commercial jet business to Mitsubishi ボンバルディアは三菱重工へ最後に残るジェット機事業売却を交渉中

The CRJ regional jet once produced the bulk of Bombardier’s revenue, but now it’s losing money CRJリージョナル機事業はボンバルディアの収益の大部分を稼いでいたが今は赤字事業

ボンバルディアは今年1月にCRJの売却含め「あらゆる戦略的選択肢」を模索中としていた。.Bombardier Inc
Bruce Einhorn
June 5, 2019
9:06 AM EDT
菱重工業ボンバルディアInc.のCRJリージョナルジェット事業の買収を狙っていることが判明した。
Air Currentが買収交渉の進行を報じたのを受け三菱重工は買収は決定事項ではないと声明文を発表した。Air Currentは6月17日より開催のパリ航空ショーで発表の可能性があると報じた。
ボンバルディアは三菱重工と交渉中と認め、合意形成にむけ同社トップが検討中とするが、成約の保証はできないと述べた。ボンバルディア(本社モントリオール)はリージョナル機で世界第二位の規模を誇る。
合意に至れば三菱重工はエンブラエルの民間機製造への最大の挑戦者となる。エンブラエルはボーイングに吸収される途中にあるが、三菱重工にはジェット機製造のトップグループにのぼりつめたいとの長年の願望が実現する。
三菱もMRJで独自にリージョナル機の製造をめざすがフライトテストの失敗や経費超過に長年苦しんでいる。昨年は米系エアラインが40機を一挙発注取り消しした。
リージョナル機材は小型のため乗客数もナローボディ機のボーイング737やエアバスSEのA320より少ない。CRJの最大型でも乗客数は100名をわずかに超える程度だ。
ボンバルディアの事業売却は同社に残る民間航空事業の整理となり一つの時代の終焉となるとAir Current は報じた。同社は不採算のCRJ事業の売却先を昨年以来模索していた。
CRJはかつてはボンバルディアの稼ぎ頭だったが、鉄道車両事業やビジネス機事業にその座を明け渡していた。世界各地でCRJはおよそ1,500機が稼働中だ。■

With assistance from Masatsugu Horie and Oliver Sachgau


2019年6月4日火曜日

JALはマレーシア航空との協力拡大を図っている模様

JAL eyes deeper ties with Malaysia Airlines 
マレーシアエアラインズとの提携拡大をめざすJAL


02 JUNE, 2019
 SOURCE: FLIGHT DASHBOARD
 BY: ELLIS TAYLOR
 SEOUL
https://www.flightglobal.com/news/articles/jal-eyes-deeper-ties-with-malaysia-airlines-458633/


本航空マレイシアエアラインズとの協力関係をさらに拡大する意向でワンワールド加盟ながら苦境にあるマレーシア側への増資の可能性がある。

両社は合意形成したばかりで日本マレーシア路線で規制当局に共同事業の申請中だがJAL社長赤坂祐二はさらに大きな期待があるという。赤坂は将来は日本から米国さらにマレーシアからアジア各地へと路線延長したいという。

さらにマレーシアエアラインズへの資本参加も赤坂は示唆したがすぐにも出資するつもりはないようだ。

赤坂はマレーシアエアラインの再建への道どりには日本航空の2010年倒産とその後の再建と重なるものがあるとも述べている。

「マレーシアエアラインズの現状は日本航空の倒産後の道のりと類似しており、両社には合い通じるものがありお互いに助け合えるのではないかと見ている」

だがマレーシア首相マハティール・モハマドからは同社への対応として運行停止も含め政府が検討中との発言が以前にあった。

そんな脅かしにもかかわらず赤坂はワンワールド加盟の同社の長期的見通しを信じているという。「マレーシアエアラインズの今後には大きな可能性があると見ています」■

2019年6月1日土曜日

MRJで何が起こっているのか---三菱航空機は国内報道を否定しパリ航空ショーで正式発表すると言うが

Aviation Daily

Mitsubishi Aircraft Stands By MRJ90 As Priority Version

三菱航空機はMRJ90を中心商品に堅持

May 30, 2019Bradley Perrett | Aviation Daily
高温環境テストでアリゾナ州メサに展開したMRJ90 Credit: Mitsubishi Aircraft

菱航空機はMRJ大型版の重要性を再度表明した。同社が小型版に軸足を移すとの報道への対応。
MRJは「スペースジェット」に改称され一部を米国内生産に切り替えるとの記事が日経新聞に掲載された。
三菱航空機はAviation DailyにMRJ70の改修を進めると2018年11月に語っていた。同型のほうが市場要求への対応が優れるとしていた。今回は5月になり同型のストレッチ改修案が現実味を帯びてきたと語り、詳細は間もなく発表すると同社が述べている。
日経記事では同社は改修型MRJ70に中心を移すとある。
「当社の中心事業に変化はない」と三菱航空機広報はこれに論評。「MRJ90が当社の基盤であり今後も最高優先順位である。型式証明に向け順調に進んでおり、2020年中頃に初号機を引き渡す」
MRJ90は全席エコノミーで乗客88名を想定するが米大手エアラインが業務委託するリージョナル路線で運行ができない。総重量がパイロット側との協約で定めた上限を超えるためだ。
MRJ70の開発はMRJ90から一年遅れているが全席エコノミー仕様で76名を運ぶ。これだとスコープクローズと呼ばれる組合との労働協約でも運行が可能だ。
だが同機の開発を統括するアレックス・ベラミーからは5月に市場は各クラス混合で76席機を求めていると述べ、MRJ70をストレッチする構想を紹介した。ベラミーは改修型にはMRJ70の名称はつかないとも述べた。
三菱航空機はMRJ70の定格寸法を全長33.4メートル (109.7 ft.) とし2クラス仕様で横3席のビジネスクラス9名含み69名を収容できるとする。これを2クラス76名にすると全長35.8メートルのMRJ90と大差なくなる。MRJ90はビジネスクラス9名、エコノミー72名と同社は説明。
日経新聞によれば三菱航空機は米国内サプライヤーによる一部部品供給に切り替えコストダウンを狙い「米国内生産も検討している」とある。だが何を生産するかは言及してない。
各記事に対し三菱航空機広報は「記事は当社発表内容に基づかず当社のグローバル戦略も反映していない。正式発表はショー会場で出す」と6月17日開催のパリ航空ショーに言及した。
だが同広報MRJ90の引き渡し開始2020年との発言は遅れに遅れた同機開発日程にこれ以上の遅延はないとするものだ。本格開発が2008年に始まったが、遅延は計5回7年相当にのぼる。
MRJ70の引き渡し開始は2021年予定のままだが同社からは昨年11月時点でMRJ70試作型のフライトテストの開始時期は2022年時点の市場動向に左右されるとの発言もあった。
MRJはプラット&ホイットニーPW1200Gを搭載し、ライバルのエンブラエルE2とほぼ同じエンジンだ。MRJの機体生産は同社親会社の三菱重工業が大部分を担当している。
同機はまずANAに引き渡される。■


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