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2021年4月23日金曜日

Covid-19時代の客室にどんな変化が生まれるのか。シートメーカー等から活発な新構想発表が出ていますが、投資とワクチン普及をにらみエアラインの腰は重いようです。CNN記事からのご紹介です。


 

 

席を隔てるプレキシグラス、ジグザグ配置、透明バブルを乗客頭部に置く、店舗やレストランにあるような新型分離スクリーンがCovid-19大流行に合わせ出現しているが、エアラインの座席配置でも同じ傾向が出てきた。

 

マスク、手指洗浄用ジェル、消毒クロスなどエアラインで必携のアイテムとなり、機内の様相は一変している。

 

それにあわせウィルスへの科学・医療知識がひろまり、飛沫による空気感染が主要経路であることがわかり、効果の高い防護策の選択にも影響している。

 

最も効果が高い防護策は乗客のマスクだ。このため、エアライン各社がマスク着用を乗客に求めており、マスク着用しない乗客の搭乗を拒んでいる。

 

機内環境が感染リスクが高いとは思えない。世界各地で旅客運行は続いているが、クラスター発生の報告はほとんどない。

 

マスク着用と合わせ高機能微粒子空気清浄機が多数の機材に搭載されており、飛行中の環境を保っていることも理由だろう。

 

「飛行中に感染例が極めて低い理由はよくわかっていない」と国際航空運輸協会(IATA)が解説している。「顔を突き合わせる密接がないこと、座席が物理的バリヤーになっていること、客室内空気が循環していることなどの複合効果かもしれない。研究をさらに進める」

 

"Janus," by Italian firm Aviointeriors, proposes seats made up of a row of three, with the seat in the middle facing the opposite direction.

イタリア企業アヴィオインテリアの「ジャヌス」では3列座席のうち、真ん中の座席だけ反対方向になっている。

Courtesy Aviointeriors

 

機内シートで新しい構想が出てきた


2020年上半期に各社から客室内改修案が出ており、Covid-19流行に対応できるとアピールしている。座席後部に透明バリヤー、発泡スチロールを座席上部に追加する、ヘッドレストの工夫などだ。

 

世界の客室内装品メーカー各社がエアライン側が採用すると見て一斉に動き出している。

 

これまでの座席配置を変える動きもあり、そのうちアヴィオインテリアAviointeriorsが提唱するジャヌスは乗客を入れ違いに座らせる構想だ。

 

The Janus proposal features seats fitted with a three-sided shield.

ジャヌス構想では三方をシールドしたシートが特徴だ。Aviointeriors

 

座席にバリヤーを付ける提案もあり、乗客が機内に乗り込む際に支障も生まれそうだ。

 

ただし、新しく機内に搭載する前には各種の安全要素を確認の上、型式証明を得る必要がある。

 

難燃性とともに乗客に有害な発煙を発生させないことも必要だ。過大な力に耐える必要もある。緊急脱出時に乗客の身体に害を与えるような鋭角が出ない必要もある。

 

シート装着の場合はすべて墜落衝撃テストに合格する必要があり、規制当局が一層の安全を求める中でテストは厳しくなる一方だ。

 

「型式証明の取得は大きな課題」とレカロ航空機シート製造Recaro Aircraft SeatingのCEOマーク・ヒラーが語る。「シートに追加して重量が増えると、シートは再度の型式証明取得が必要となります。簡単な手順とはいきませんが、長期間耐久性のある製品とするため当社は集中して対応しています」

 

レカロからはバリヤー式の追加装備の提案が出ており、微生物対応技術をシート素材に組み入れる製造も提案している。

 

すべて、スーパーでの支払いカウンターについたアクリル板間仕切りより複雑なのだ。

 

Recaro has proposed a number of side-on barrier options.

 

レカロはシート側部につけるバリヤーの提案が出ている

 

 

追加コストと時間が制約条件だ


エアライン側にはこうした追加装備を維持しつつつ、消耗や破損さらに乗客が誤った方法で使用した場合に新品と交換を続ける必要が生まれる。

 

長年をかけて客室内は工夫され洗練された結果、驚くほど長く使用に耐えるようになったえいる。あるシートメーカーではトレイテーブルの耐久性をとりあげ、実際に乗客に上で立たせているほどだ。今回提案の各種趣向も搭載後に手を入れる必要が生まれるだろう。

 

その意味で機内搭載後が重要で、一時的あるいは恒久的に導入するにせよ、清掃、維持を定期的に行うからだ。今でさえ余裕がない機内清掃に追加作業の時間を計上すれば作業が複雑になりコストも増える。

 

確かにコストは大きな要素で、世界各地のエアラインが財務面で危機的状況に陥っている中で無視できない。

 

「エアライン側のキャッシュが厳しい状況なのはわかっています。解決方法が乗客に安心感を与えることで投資回収が可能になると証明しなければなりません」(レカロのヒラー)

 

レカロの新提案を採用するエアラインはまだない。

 

時間も不利だ。ワクチンが広く利用可能となるのは2021年中ごろの予想だが、新型シートあるいはバリヤー追加の設計、型式証明、製造には一定の時間が必要だ。

 

つまり、ワクチンが広く投入される前の数カ月に過大な投資へまあまり期待できないのだ。

 

シートバリヤー以外にも対策はある


とりあえず、Covid-19対策で一番いいのは乗客乗員の接触を最小限にすることだ。

 

機内サービスの基準が変更され、乗務員が機内を歩き回るのも最小限になったため、機内食でも調理から食事まで空気にさらす時間を最小限にしようと見直しが進んでいる。ただし、機内食は伝染経路とはみなされてない。

 

ではどんな変化になるのか。最大の作業となるのが微生物あるいはウイルス対策の素材をシートや客室内に採用することだ。

 

Adjustments to meal service to minimize contact are already in place.

機内食でも接触を極力避ける工夫が始まっている。British Airways

 

航空機内装用の布地革製品メーカーのタピスTapisは昨年8月にウルトラレザーに「微生物対策の銀イオン技術組み込みの表面を実現し安全を実現した」とし、「空気感染対策として有効なシールドとなり、機内の微生物対策でリスクを下げ安全な環境を作ります」

 

この素材の機能としてウィルス含む微生物の生体機能を阻害することがあり、テストでコロナウィルスにも有効だと実証されている。

 

エアライン各社がこれに期待するのは確実だ。ただし、Covid-19ワクチン接種が広まり危機状況が緩和されれば、機内衛生状況を乗客が意識しなくなる可能性は同社も認めている。■

 

 

Is the great Covid-19 airplane seat overhaul happening?

John Walton, CNN • Published 14th September 2020

 

John Walton is an international transportation and aviation journalist based in France, specializing in airlines, commercial aircraft and the passenger experience.


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