2020年12月27日日曜日

航空不況に巨大ハブ空港は生き残れるのか。課題はあるがまだ有効なモデル。予想外に早く観光需要が回復すれば....Aviation Weekの記事を御覧ください。

 

Adrian Schofield Jens Flottau December 16, 2020

Frankfurt hubsフランクフルトはじめ各地のハブ空港で乗継便画大幅に減少している。Credit: joepriesaviation.net

 

大ハブ空港は緻密な路線網をつなぐ中心に君臨してきた。しかし、COVID-19の世界的流行で路線網が運行停止しており、ハブ中心の路線網に厳しい状況が続いている。

エアラインビジネス全般が大きな圧力を受けているが、世界をつなぐハブ空港がとくに脆弱に映る。各国の渡航制限を受け、路線そのものが消え、路線ネットワークがいつ、果たして再開できるのか、さらに今までのハブモデルを支えた水準に復帰するかが問われている。

背景に都市間路線の大幅減があり、IATAまとめでは2020年は国際線の減少が目立つ年になったとある。

IATAは2019年までの5年間で全地域で接続性が大きく向上し、ヨーロッパ、アジア太平洋では40%、北米でも26%増えたとする。

一方でコロナウィルスの2020年で大きく逆転した。アジア太平洋では対前年比で76%、北米でも73%それぞれ低下し、その他地域では90%減になった。アジア太平洋と北米の落ち込みが比較的低いのは国内路線網が充実した国が含まれ、渡航制限の影響がやや少ないためだ。

パンデミック前のアジア太平洋では都市間路線が6,270本あった。これはどちらか一方あるいは両方とも同地域内にある国際路線と国内路線を含む数字だ。だが4月は4,020本に急減した。中国国内線を除くと、パンデミック前の4,070本が4月に1,880本になった。

アジア太平洋地区には航空業界でも有数のハブ空港があり、そこを本拠とするエアラインに極めて重要な拠点となっている。その例がキャセイパシフィック航空シンガポール航空だ。

シンガポールのチャンギ国際空港では週あたり提供座席数は12月7日時点で年率87.5%減とCAPAとOAGのデータでわかる。シンガポール航空は大幅な運行縮小のためCOVID-19以前同様の路線接続はできないと同認めている。

乗り継ぎ需要も規制にくわえ利便性低下で大きく影響を受けているとIATAは分析。

多数国で空港内トランジット区域内にとどまるなどの条件で乗り継ぎ需要に対応してきた。香港、シンガポールはともに一部の目的地向け乗り継ぎを再開したが、これは各政府が乗り継ぎ対応が現地エアラインに大きな需要と認識しているためだ。

一方で乗り継ぎ旅客に厳しい制限を課したままの国もあり、IATAはエアライン側とこの解消をめざしている。

ハブ空港での接続便を旅客が歓迎しなくなっている理由は他にもある。

ハブを使うフライトがここまで減っているため、「利便性の高い接続便が十分確保できず」2-3時間以内の接続便運行ができないという。さらに空港多数を経由する旅客が各国で異なる規制にうんざりしていることもある。

マッキンゼーの調査では乗り継ぎハブ空港の役割、パンデミックでハブ空港が影響を受けている中で興味深い考察が見られる。

接続便ハブモデルは実はパンデミック前から課題に直面していた。グローバルレベルで2019年の接続便利用実績は17%に低下しており、2005年は20%だった。これは主にLCCの短距離線で直行便が増えたのが理由だ。

ただし長距離国際路線では逆の現象もある。ヨーロッパと北米間路線は2019年までの14年間は安定しており、アジア北米路線は同期間に大きく成長している。これといわゆるメガハブ空港の成長が一致している。

レポートでは乗り継ぎ需要がパンデミックで特に大きな影響を受けたとある。直行便需要は8月の対前年比で61%減となったが、乗継便はさらにひどく81%減だった。

原因に需給両面の変換がある。需要では単純に渡航制限で長距離路線利用客が減っただけだ。利用客もできるなら直行便を選択する傾向があるとレポートは指摘。供給面では運行削減で「多くのエアラインで接続便の提供が不可能となった」とある。

マッキンゼーはフランクフルト国際空港の例をあげている。2019年8月の到着便は1-4時間以内に35本に乗り継ぎが可能だったが、一年経過しこれが11本に減った。

接続便運行モデルには長期的な課題が残る。利用客が直行便を希望するのは自然なことでノンストップ便と乗り継ぎ便の料金差はCOVID-19後に消滅するとマッキンゼーは指摘する。

ハブ空港の大きな課題は今後登場する新型機だ。ボーイング787、エアバス350に加え長距離ナローボディのA321LRが直行便を増やす。この傾向をパンデミックが後押しし、旧型特に大型機が予定より早く運行停止となる。

今後登場する長距離高効率機材がハブ空港にプラス効果をもたらすとする。ボーイング787の2019年実績ではハブ間路線が40%だったが49%がハブ・非ハブ空港路線だった。11%はハブを通らない路線だった。

「大型小型のワイドボディ機の投入で違いがあるが、大多数は今もハブを経由している」とある。

マッキンゼーのいわんとすることは国内需要が大きい国のハブ空港は「短期的には苦労する」が運行を適合させなないと「厳しい時期を生き残れなくなることが真のリスク」という点だ。

「短期的には各ハブ空港にプレッシャーとなり、長期的にはごくわずかのハブ空港のみにプレッシャーとなる」乗り継ぎハブモデルは今後も有効だとレポートはまとめている。「経済効果がありエアライン側には効率の良く、利用客に魅力的な料金を実現するモデルが大方として有効なまま残る」とする。ハブ空港は予想される意外に早い観光需要の回復に助けられるという。■


2020年12月24日木曜日

クリスマスイブ記事 今年もNORAD北米防空司令部がサンタさんを追跡。でもこの伝統はいつ、どう始まったのでしょうか。

 


During last year's Christmas Eve, Canadian Brig. Gen. Guy Hamel of NORAD joins other volunteers taking phone calls from children around the world. (AP Photo/Brennan Linsley)

昨年のクリスマスイブの風景。カナダ軍のガイ・ハメル准将もボランティアとして世界各地の子どもたちからの電話対応にあたった。(AP Photo/Brennan Linsley)



米が恒例の北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)によるサンタさん追跡が気になる時期が来た。NORADは実際にサンタの飛行経路をオンラインで公開しており、アプリでも昔ながらの電話でもその時点でサンタがどこを移動中か教えてくれる。


だがこれはNORADの超天才がはじめたわけではない。新聞記事の誤植が原因だった。

ボランティアの空軍曹長ロデリック・シュワルドがコロラド州ピーターソン基地内のNORADサンタ追跡オペレーションセンターで各地からの電話問い合わせに対応している。Dec. 24, 2013. (Photo: Master Sgt. Charles Marsh)

 

だがNORADはなぜサンタを追跡するのか。


1955年12月24日、当時の米大陸防空例支部作戦センターのあるコロラドは通常通勤務体制だったが、当直のハリー・シャウプ大佐におかしな電話が入ってきた。


「電話をかけてきたのはコロラドスプリングの幼児で地元デパートの広告に番号があったのです。幼児はサンタクロースの居場所を聞いてきたんです」(NORAD広報官プレストン・シュラクター)

新聞広告ではこの番号でサンタさんにお話できるよとあったが、番号が間違っており、防空司令部にかかってしまうのだった。


シャウプは最初の通話に対応した。意地悪な対応もできたのだが、実際は違っていた。


「大佐はご両親にかわってもらい幼児には大陸防空司令部はサンタの安全を守っていると伝えたのです」(NORAD広報官プレストン・シュラクター)


その晩シャウプは部下と一緒にサンタの居場所を幼児一人ひとりに答えた。こうして伝統がはじまったのであり、1958年NORADに改組されても維持された。その後のテクノロジーの進歩でさらに人気を博すようになっている。今日の幼児は電子メール、スカイプ、ツイッター、フェイスブックやアプリ更にオンスターでサンタの行方を把握している。


サンタ追跡は大掛かりな事業で毎年11月にNORADSanta.orgが各家庭からの問い合わせに対応を開始してスタートする。政府、非政府あわせ70もの団体が寄付しサイト、アプリ、電話回線を準備する。制服組、国防総省文民、家族ボランティアが1,500人もクリスマスイブに子どもたちのサンタはどことの問いに答える。


シュラクターによれば200もの国と地域からウェブサイトへの訪問があり、ページビューは18百万、フェイスブックの特設ページには175万人のフォロワーがあるという。NORADサンタ追跡プログラムには126千もの通話が入り、電子メール2,030通に対応し、オンスターでも7,477もリクエストがあったという。


シュラクターはたまたま誤植だったとはいえ、いまや重要な伝統の一部となっており、各家庭の楽しい場面づくりに役立てて嬉しいと語る。


コールセンターは12月24日東部標準時の午前6時にオープンする。小児は 1-877-Hi-NORAD(446-6723) へ電話、あるいはnoradtrackssanta@outlook.comに電子メールを送ればその時点でサンタがどこにいるか教えてもらえる。ただし、関係者はサンタは子どもたちが寝ている時間にならないとあらわれないので当日は早くベッドに入らいないとお家にやってこないよと注意喚起している。


サンタクロースの居場所追跡を楽しんでください。トナカイには人参を、さんさんにはミルクとクッキーを忘れないで。■


この記事は以下を再構成したものです。


Does NORAD Really Track Santa?

Department Of Defense | By Katie Lange


2020年12月23日水曜日

日本航空とカンタスが共同事業立ち上げへ。2021年7月の発足をめざし、当局へ申請中。オーストラリア、ニュージーランドへの移動がもっと楽になる。

Qantas, JAL propose five-year joint venture to reboot tourism travel

By Greg Waldron23 December 2020

https://www.flightglobal.com/strategy/qantas-jal-propose-five-year-joint-venture-to-reboot-tourism-travel/141732.article


ンタス日本航空とオーストラリア、ニュージーランド、日本を結ぶ路線で共同事業を立ち上げる。


両社はワンワールドアライアンスに加盟しており、「2021年7月」に共同事業を立ち上げたいとする。


Qantas A330

Source: Qantas

コロナウィルスの流行でカンタスが運行中のワイドボディはA330のみとなっている。


共同発表で両社は国際旅客輸送が再開した直後の旅行需要の回復を支援するのが狙いとし、共同事業で日本と南半球を結ぶ便を強化する。


共同事業は5カ年の有効で両社はオーストラリア、ニュージーランド規制当局に申請ずみで、「6ヶ月以内」で回答を期待している。


共同事業でコードシェア便が増え、以遠地への接続も増える。さらに利用の多い顧客が恩恵を受ける。一番大事なのは両社で航空運賃、運行計画を調節できることだ。


「日本からオーストラリアへ2019年は50万人が訪れています。旅行需要が回復すれば、日本人旅行客の利便性を高めたい」とカンタスCEOアラン・ジョーンズが述べている。


JAL 787-8 no2

Source: Japan Airlines

A Japan Airlines 787-8.


「共同事業でJALとの関係を更に強め、路線を増やし、乗り継ぎを便利にし利用頻度の高いお客様にはさらにメリットが増えます。また日本はオーストラリアの主要な貿易相手国ですので両社はさらにサービスの幅を広げられます」


JALの赤坂祐二社長は両社で日本とオーストラリアを結ぶ路線を半世紀以上運行している実績を強調している。

「カンタスとの共同事業でそれぞれの国内線への乗り継ぎをもっと便利にして選択の幅をひろめることで旅行需要を掘り起こし回復のペースを加速化したい」。■

 

2020年12月19日土曜日

737Maxの運行再開が展開中。アメリカンは12月29日より、ユナイテッドは2月、サウスウェストは3月以降。

United to return Boeing 737 Max to service on 11 February

By Pilar Wolfsteller19 December 2020

https://www.flightglobal.com/fleets/united-to-return-boeing-737-max-to-service-on-11-february/141683.article



ナイテッドエアラインズボーイング737 Maxを2021年2月11日のデンバー、ヒューストン両ハブ空港発の便から運行再開する。


ユナイテッド(本社シカゴ)の12月18日発表は同型機で根強い安全性への懸念考慮し、別機種を投入する可能性にも触れた。


737 Maxは墜落事故二件を受け、20ヶ月に渡り運航停止となったが、最近になり有償運航再開の承認を受けた。


United 737 Max

Source: United Airlines

ユナイテッドは737MAX運行を2月に再開する。


同社はFAAが求めるフライトソフトウェアの改修、パイロット訓練、点検に加え1,000時間超の追加作業を行い、運行再開に万全を期すと発表。


またMax投入路線の予定を1月早々に発表する。同機に不安を感じる利用客には無料で予約変更を受付け、返金にも応じる。


Cirium記事データベースでは同社は同型機を運行停止時点で18機運航しており、さらに166機をボーイングに発注している。


ボーイングの設計変更を受け、連邦航空局は2019年3月13日付け「緊急運行停止命令」を11月18日に撤回していた。


カナダ民間航空規制当局も今週になりMax改修内容を承認し、1月にお運行停止措置を解除しそうだ。


ブラジルでは同型機の型式証明再発行を受けLCCのGolが12月9日に有償運航を開始した。


米国で定期運行再開のトップを切るのはアメリカンエアラインズで、マイアミ−ニューヨーク(ラガーディア)路線を12月29日にMaxで運航する。


世界最大規模の737運航会社サウスウェストエアラインズは3月に同型機の運航を再開すると今週発表している。■


2020年12月14日月曜日

小型衛星打ち上げを画期的に変える手段になるか。スタートアップ企業エイヴァムの大胆な挑戦

こうした新興企業が次々と現れ技術革新が進むのが米国のすごいところで根っこには失敗を恐れない、失敗しても自分の財産が差し押さえられないメンタリティとシステムの違いがあるのでしょう。民間航空部門などは出来上がったシステムを汲々と守り利益を最大化することしか眼中にない観があります。航空不況で大打撃を受けてもシステムそのものを打破する発想は民間航空部門に出てくる気配がありません。だから制約がないわけではありませんが、どんどん新発想が出てくる軍事航空部門に魅力を感じるのですが、皆さんはどうでしょうか。


*ターミナル1-2共通記事


AEVUM/YOUTUBE SCREENCAP

国の新興企業エイヴァムAevumがオンラインでロールアウト式典を開きレイヴンX自律発進無人機をお披露目した。式典には実寸大のモックアップも登場した。同社は2016年設立で本社をアラバマ州ハンツヴィルに置き、再利用可能な無人機にロケットを搭載し、小型衛星等を低地球周回軌道に乗せる。

 

レイヴンX無人機は双発で同社によれば打ち上げの第一段に相当し、機体重量55千ポンド、全長80フィート、翼幅60フィートと往年のA-5ヴィジランテに相当するサイズだ。二段目ロケットの母機として1,000ポンド程度のペイロード運搬を狙う。エイヴァムはレイヴンXを三段式打ち上げシステムとして構想している。

 

同社によれば打ち上げシステムの第一段目に無人機を使えば、ロケットモーター作動を切り離し0.5秒から1秒後に開始できるメリットが生まれるという。ここまで短時間で機体下部から切り離しできれば、ロケットモーターのエナジーブリードを最小限にできる、つまり切り離し直後の慣性損失を最小限にできるという。同社はこの切り離し方法を有人機で行うのは危険が伴うとする。これまでの空中発射では有人機からロケットを落下させ時間をおいてからロケット点火して乗員の安全を確保していたが、ロケットの運動エナジーがその分犠牲になっていた。

 

報道によればロケット切り離し高度は33千から66千フィートの間で可能という。二段目の推力は5千ポンドと同社CEOジェイ・スカイラスはArs Technica ブログで搭載エンジンは「高温運転テストを長時間行い」「認証テストを完了」したという。

 

第一段に再利用可能宇宙機を活用する構想は前にもあったが、再利用可能無人自律型の母機が通常の航空機同様に離着陸するのは新規構想で少なくとも民生分野では初めてだ。レイヴンXは従来型ロケット打ち上げより経済的、簡素かつ柔軟性にとんだ手段になると見ている。また同社は自社方式をその他の空中発射方式のノースロップ・グラマンのスターゲイザーやヴァージンのオービットロンチャーワンと異なると主張しており、レイヴンX第一段は大気圏内で加速させてからロケットを急速切り離し点火させるのが違いとする。ただし実際の効果でどこまで違いがあるか不明だ。

 

レイヴンXの大日程はかなり野心的でまず「機体レベルのテスト」で耐空証明を取得し、打ち上げ許可を得るとある。後者は通常18ヶ月かかる工程とスカイラスは説明。その後、同社は第一段で耐空証明を連邦航空局から取得する。

 

そして軌道打ち上げテストをセシル宇宙港(フロリダ州ジャクソンビル)で2021年末に開始する。ここまで極めて野心的な内容に聞こえ、システムの工程表もまだ完成していない。ロールアウト式典で公開されたモックアップ機はタクシーテストに投入可能に見えるが、鋭い観察眼を持つ外部専門家は必要な機能がついていないことに気づいている。スカイラスはレイヴンXを18ヶ月で稼働開始にするというが、疑問が残るのは事業の実施可能性であり、資金の確保先だ。

 

AEVUM/YOUTUBE SCREENCAP

Aevum CEO Jay Skylus explains the launch profile during the rollout event.

 

この種の打ち上げ機で型式証明は前例がないが、エイヴァムでは無人機を使うのが今後の顧客ニーズに合うと見ており、既存の有人機のインフラや支援装備をそのまま使える利点があるとする。同機は通常のジェットエンジン用の燃料を使う。今は数年を要する打ち上げ準備を大幅に短縮するためと同社は述べる。

 

AEVUM/YOUTUBE SCREENCAP

 

レイヴンXの顧客候補に米宇宙軍があり、第一回目ミッションとして490万ドル契約を昨年受けている。迅速小型打ち上げ運用ノーマライザーASLON-45の打ち上げが2021年末に予定されている。

 

デジタルのロールアウト式典にはライアン・ローズ中佐(宇宙ミサイルシステムズセンターの小型打ち上げ部門長)がニューメキシコ州カートランド空軍基地から参加し、軍がレイヴンXへ関心を示していると挨拶した。

 

同社は年間8回ないし10回の打ち上げを予定しており、ミッション費用は5-7百万ドルの範囲だという。

 

この以外に米空軍の小規模ビジネスイノベーション研究事業から5万ドル、さらに名称非公開のペンタゴン契約も取得している。同社はオービタル・サービシズ事業-4で9.86億ドルで同契約を獲得しており、打ち上げ20回を行うとの報道が一箇所から出ている。

 

米政府資金を確保しているがエイヴァムは民間資金の確保にも向かっている。ただし、規模は非公表だ。同社ウェブサイトでは民間顧客が一社あるとなっているが社名は「非公開」でミッション実施時でも公開しないという。最終的に同社は資金の85%を民間顧客から確保し、残りを国防関連機関に期待する。

 

同社公表のコストではライバル他社と大きな差がないが、エイヴァムはレイヴンXの利点は迅速かつ簡易な方法でペイロードを軌道に載せられるのは従来のロケット打ち上げ施設の利用が不要となったためと説明している。「低地球周回軌道にペイロードを届けたあと地上に戻り自律的に安全に滑走路に着陸し、格納庫まで戻ってきます」

 

ASLON-45ミッションはセシル宇宙港から打ち上げるが、同社は適切な長さの飛行施設ならどこでも使えるとし、ペイロード打ち上げは「最短180分、24時間毎日」可能になるという。

 

この打ち上げ方法ではペイロード重量の制約がついてまわるが、宇宙軍、ミサイル防衛庁が小型衛星の打ち上げを意図する限り問題ではない。極超音速ミサイルなど空中発射式装備にも応用できそうだ。実用化に成功すれば、低地球周回軌道に簡単にペイロードを送る魅力的な選択になる。大型衛星は大国間戦では脆弱な目標とペンタゴンは危惧している。このため小型で簡易な衛星を大量に打ち上げ大型衛星喪失の穴を埋めることが高優先順位になっている。いいかえれば短時間で軌道打ち上げする必要がある。

 

この事業には未回答の疑問点も数々あるとはいえ、エイヴァムは興味深い打ち上げコンセプトを提示した。時間が経てば、同社の大胆な構想が言葉どおり成果をあげるかわかるはずだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Aevum's Space Launch Plane Is A-5 Vigilante Sized, Its Claims Are Even Bigger

BYTHOMAS NEWDICKDECEMBER 4, 2020

 

2020年12月13日日曜日

航空不況、米旅客エアライン業界の雇用総数が30年で最低水準にまで低下している

 San Francisco International airport

Source: Pilar Wolfsteller/FlightGlobal

Covid-19大量流行でほぼ無人になったサンフランシスコ国際空港。2020年12月8日撮影。

 

US passenger airlines’ employment dips to lowest level in at least 30 years

By Jon Hemmerdinger12 December 2020

https://www.flightglobal.com/networks/us-passenger-airlines-employment-dips-to-lowest-level-in-at-least-30-years/141578.article



米定期旅客エアライン全体で10月中旬までの一か月で37千名近くの雇用が削減され、雇用規模は過去三十年で最低水準になった。


給与支払いに充てていた米政府の資金支援策が9月末に終わったことによる削減だ。


10月中旬時点で米系エアライン22社で368,162名が正社員で、9月中旬の404,869名から9%が削減された。(米運輸省調べ)10月の前年同期の雇用総数は454,070名だった。


運輸省が数字を公表開始した1990年1月以来でここまで少ない雇用規模はない。


9月から10月にかけての雇用削減は米大手エアラインが32千名を削減した効果が表れている格好だ。


LCC各社で同時期に1,400名分の雇用が消えており、リージョナルエアライン各社では3,100名が削減された。


連邦政府によるパンデミック救済策は3月に成立し、290億ドルをエアライン各社の給与支払いに投入していたが、9月末日をもって失効した。■


2020年12月12日土曜日

777Xと787の失速で737に期待せざるを得ないボーイングの苦しい事情、敵失でエアバスがますます優位になるのか

 Widebody Softness Triggers Boeing 787 Production Cut, Adds More Pressure To 737

 

Sean Broderick December 04, 2020

 

777X wingSource: Boeing

 

ーイングのワイドボディ機二型式が厳しい逆風にさらされており、787の製造数は2021年にさらに削減され、777X型式証明は時間をかけて進みそうだ。

 

787生産はサウスカロライナへ移転中で、2021年央に月産5機と以前の発表より少なくなり、現在のペースの半分となる。同社CFOグレッグ・スミスが12月4日明らかにした。

 

「冬季は厳しい状況で[COVID-19の] 感染が世界各地に広がっています。今後さらに増えれば旅行制限も変更となり、回復への道はさらに遠のき、状況は各地で異なるだろう」とスミスはクレディスイス主催イベントで述べた。「その結果、787減産も妥当な範囲で調整する」

 

長距離路線需要が低下しており、787納入に生産関連の問題が影を落としている。11月の納入はゼロだったとスミスは述べ、今年の累計は53機だという。787は5月にも納入ゼロとなったが、その際はCOVID-19のためチャールストン、エヴァレット両工場が数週間閉鎖されていた。スミスは11月の納入ゼロは品質問題も原因と認めた。

 

「追加点検で納入前機材の状況を確認していますが予想以上に時間がかかっているのです」「その結果、11月は787納入が皆無になり、12月も納入はスローペースになると見ています」

 

777Xについてスミスは「規制当局と型式証明で連携しており、737再審査の結果も反映している」と述べ、ボーイングの最新EIS(路線就航)タイミングは納入一号機を2022年目標にしているが、スミスはこれについて追加コメントしなかった。

 

「開発中のためリスクがあり、日程に影響が出ます」「EISのタイミングは最終的に型式証明に規制当局により左右されます」

 

 

FAAが777Xを厳しく見ているのは737MAXの飛行停止措置が大きい。FAAは技術諮問委員会を設け777Xの設計内容を点検している。

 

777X型式証明は2019年に数か月遅延している。これはGEエイビエーションGE90エンジンの問題が原因だった。MAX騒動で規制当局が追加措置をとっており、同機がめざす市場の状況もあり今後目が離せない。

 

「今後規制当局と作業を進め状況が見えてくると期待している」「同時に当社は777Xの顧客各社と連携し各社のフリート構成案と納入タイミングを照らし合わせ検討しているところ」

 

ウィアドボディ二型式で不確実性があるため737MAXファミリーにもプレッシャーとなっている。ボーイングは20か月に及ぶ飛行停止を終え、納入開始の承認を得て、まず駐機中の機材と新規生産の450機の引き渡しに入る。

 

駐機中機材の点検に通常より大量の人員を投入する必要があるが、スミスはあくまでも顧客ニーズを中心に進めると述べた。「制約は当社の納入状況ではなく、むしろ顧客の側の受け入れ体制だ」

 

エアライン各社は国内規制当局の了承を得ないとMAX運航ができず、これに数か月かかる国もある。一方で需要低下でナロウボディ機運航も影響を受けている。ただし、ワイドボディ機への影響と比べれば軽い。

 

納入日程を遅らせるエアラインが多いが、新型機の導入は速まっている。ライアンエアは737-8200を75機発注していたが、12月3日に前倒し受領を発表した。同社は2025年までに新型ボーイング機210機を運航するとしている。スミスは納入先送りなど変更は増えると見ている。

 

「受注の動きが出てくると見ています」「ただし、顧客で事情が異なります。ライアンエアが発注していますよね。これから同じ動きが増えると思いますよ」(スミス)

 

MAXの受注残を解消し、引き渡しを進めることがボーイングのキャッシュフローに最大の影響を与える。787、777Xがともに失速するなか、737生産が一層重要になっている。ボーイングは737生産を「超低速」で進めており、2022年初めに月産31機に持っていきたいとスミスは語った。

 

「737生産を元に戻すことが最大の原動力になります。ただし、状況は20年21年ともに変わりません」とし、787納入の復帰もキャッシュフロー上で重要だとする。「2022年に737が元通りになっていれば、つまり在庫一掃し生産数を増加させていればということですが、その先は市場の状況次第ですが、生産数も呼応して変更していきます」■


2020年12月9日水曜日

2021年パリ航空ショー中止へ。COVID-19で揺れる航空宇宙産業界

 

Organizers Cancel Paris Air Show 2021 On COVID-19 Uncertainty

Helen Massy-Beresford December 07, 2020

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/organizers-cancel-paris-air-show-2021-covid-19-uncertainty

 

Paris

Credit: Paris Air Show

 

界最大の航空展示会パリ航空ショーは2021年は開催されないことになった。COVID-19大量流行の関連で先が見通せないのが理由と主催者が発表した。

パリ航空ショーおよびフランス航空工業団体GIFASの理事会は全会一致でこの決定を12月7日に下した。

「前例のない事態の中で航空宇宙産業への影響が予測つかない中では、妥当として理事会で全会一致決断した。今回の危機的状況では避けがたい」との声明が出ている。

コロナウィルスの影響で旅行産業が大打撃を受け、エアライン各社で機材を地上待機させ、政府支援で生き残りを図る状況だ。IATA予測では2019年実績水準に戻るのは2024年以降とある。

パリ航空ショーはルブールジェ空港を会場としてきた。前回2019年の来場者は316千名を超え、民間軍用双方の業界関係者、一般観客が集まり、世界最大の航空ショーとなった。同年に会場での受注総額は1400億ドルだった。

第一回は1909年に開かれ、隔年開催だが、世界大戦で中断されている。2021年ショーは第54回になるはずだった。

「2021年ショーが開催できず残念。ここにきて展示会多数が世界各地で中止されており、国際航空宇宙防衛産業界として次回開催に期待したい」とパリ航空ショー会頭のパトリック・ダヘル(ダヘルグループ会長)が声明発表した。「2023年ショーで航空宇宙産業の復活を国際レベルで祝えるよう準備作業を開始した」

中止となったショーは2021年6月21日から27日に開催予定だった。主催者側は2023年6月の次回ショー日程をのちほど発表するという。■

 


2020年12月8日火曜日

ボーイングのシェア低下を見てエアバス取引に走るべきか、サプライヤー各社の判断は....

 

Should Boeing Suppliers Shift Toward Airbus?

Michael Bruno November 26, 2020

https://aviationweek.com/aerospace/manufacturing-supply-chain/should-boeing-suppliers-shift-toward-airbus

 

Spirit AeroSystems's composite center fuselage sectionスピリットエアロシステムズではエアバス取引の拡大の一環でA350XWBの胴体中央部を複合材で製作している。

Credit: Spirit AeroSystems

 

ささか遅い観はあるが、ボーイングCEOデイヴ・キャルホーンが10月に同社が民間航空機市場でヨーロッパのライバルに差をつけられていると認めた。

COVID-19の大量流行の前から737 MAXの飛行停止措置並びに生産中断があり、業界の中にはこのままだと6対4いやもっと差がつくとエアバス、ボーイング両社のナローボディー機の動向で警句を出す向きがあった。

これまでの5対5の互角勝負から大幅な推移だが、背後に大きな変化がある。「ボーイングが737 MAXで足踏みしている状況はエアバスに千歳一隅のチャンスでナローボディー分野でシェアを一気にふやせる」とモーガンスタンレーのクリスティン・リワグ、マシュー・シャープが11月9日に記していた。「サイクルが長くかつ競争相手や新規事業が限られているのが航空宇宙産業で...マーケットシェアを戦略的にふやした効果は今後長く残る」

航空宇宙産業のサプライヤー各社も歴史的な不況に直面する中、マーケットシェアの大変動を見てエアバスに切り替えるべきか疑問に思っているはずだ。

確かに誘惑は強い。「ここ18か月でエアバスが完全にリードを奪い、ボーイングは抵抗できなくなるほどの勢いだ」とエージェンシー・パートナーズのアナリスト、サッシュ・ツーサがAviation Week 主催のウェビナーで11月に発言していた。「エアバス関連サプライヤー各社のほうがボーイングと取引中の各社より企業価値が増えている。これは収益でも明らかで受注の6割がエアバスだ」

事情はサプライヤーにより異なるが、考えていることは同じだ。もしエアバスがA320ファミリー機材の引き渡しを順調に進めれば、MAXを注文した顧客は先送りあるいは取り消しに走るのではないか。とくにMAXの飛行停止措置は注文変更の絶好のチャンスだ。

モーガンスタンレーのデータを見てみよう。ボーイングのMAX受注は2,717機あり、2025年までの分だ。うち29%はA320発注もしているリース会社あるいはエアラインによる発注だ。

COVID-19とMAX飛行停止措置前はサプライチェーンがボトルネックで両社合わせ月産120機の生産計画構想が強いプレッシャーだった。

専門家には両社のうち先に月産60機以上のペースをサプライヤーベースで維持できる方が勝者となるとの見方がある。エアバスは各サプライヤーに47機体制を2021年10月までに整備するよう求めているが、ボーイングはわずか31機しかも2022年「早期」までとあり、それでもサプライヤー側にはこの目標を怪しむ向きがある。

ボーイングのティア1サプライヤーで少なくとも一社、スピリットエアロシステムズがエアバス陣営に移行しようとしており、その背景にはMAX問題やCOVID-19以前の戦略企画がある。737ファミリーがスピリットの売り上げ50%を2019年まで占めており、ボーイング全部合わせると8割近くになる。

スピリットがエアバス向け取引で多角化を図るのは理に適っているといえるのか、アナリスト、コンサルタントには間違いとみる向きがある。

「正しい判断ではないでしょう」とバーンステインのアナリスト、ダグ・ハーネッドがAviation Week 主催ウェビナーで述べていた。「シェアは変動するもので、一般の皆さんが考えるより大きく動いています」

PwCのコンサルタント、スコット・トンプソンは「二社寡占状態で市場は50-50の互角勝負に戻るはず」という。だがもちろんバランスをどう回復できるかが問題と本人もいう。

ハーネッドも下位のサプライヤー企業でボーイング依存が高すぎる会社に影響が出ると見ており、あるいはボーイングがシェア回復を狙いサプライヤーに圧力をかけてくるかもしれないという。だが実際にはそうならないと本人はみている。「小規模サプライヤーに影響が出ても、大方でこれ以上悪化する可能性は少なく、よい方向になるのではないか」

乗り換えを無効にするその他の要素もある。「ボーイングとエアバスのシェア争いがどうなるかは不明だが、見ものなのは確かだ。シェア争いで勝者はない」とリワグ-シャープは口をそろえる。

航空宇宙製造業は変化への適応が遅く、動きも鈍い業界といわれる。しかし今回はあえて変化を選択せず、マーケットシェアの混乱を受け流し、サプライヤー構図に手を付けないのが一番と見る外部筋が多い。■

 


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