2020年11月28日土曜日

大韓航空がアシアナを吸収すれば韓国にメガキャリアが出現する...のか

 

Korean Air-Asiana Merger Would Create Asia-Pacific Giant

Aviationweek

Adrian Schofield November 24, 2020

Korean Air and Asiana Airlines Airbus A380 aircraft大韓航空とアシアナ合わせA380は16機あるが、ほぼ全機がCOVID-19のため運航停止中だ。Credit: joepriesaviation.net

 

韓航空アシアナエアラインズを買収するとグローバル市場で最上位のキャリアの仲間入りとなる。大韓航空の運航規模が劇的に拡大する可能性が出てきた。

 

韓国政府、アシアナの債権団がともに買収案を了承しており、アシアナの路線運航継続には最良の選択としている。アシアナはcovId-19流行前から業績が悪化しており、さらにパンデミックで苦境に追い込まれていた。両社統合で競争状態が低下するが、これ以外にアシアナの存続策はないのが現状だ。

 

大韓航空役員会は11月16日にアシアナ株式を1.8兆ウォン(16億ドル)で買収する案を承認した。国営の韓国産業銀行(KDB)が8千億ウォンを投入し買収を成立させる。大韓航空も来年に新株発行で2.5兆ウォンを調達し買収に備える。

 

大韓航空CEOのウォルター・チョーは社員の雇用維持が最優先と強調するが、アシアナの現有機材と路線網の処置は未定だ。

 

同社は買収が完了すれば世界トップ10社入りできると期待する。路線網拡大、機材拡充で同社は「世界メガキャリアと競合できる」立場を強化できるとする。韓国にフルサービスキャリア大手が二社あることが「競争面で不利」とし、大手一社体制のドイツ、フランス、シンガポールの例をあげている。

 

大韓航空は2019年に国際線旅客数で18位、アシアナは32位であったとIATA統計にある。両社合わせると10位で、アジア太平洋でトップとなる。有償旅客キロでは世界11位になる。

 

両社で共通する貨物の強みが統合でさらに強くなる。大韓航空は国際定期貨物トンキロで世界5位、アシアナは23位だ。統合で3位になる。上にはカタールエアウェイズとエミレイツがあるだけだ。韓国国内路線では大韓航空シェアがさらに高まる。また路線網整備で乗り継ぎの便が向上すればインチョン国際空港はアジアのハブ空港として地位を固めると大韓航空は見ている。

 

2019年12月2日の週時点で大韓航空は韓国国際線販売シェアが22.4%だったとCAPAとOAGデータでわかる。アシアナが第二位で15.4%だった。合計37.8%となり、さらにLCC子会社もあわせると48.1%になる。

 

同時期データでインチョン空港では大韓が25.3%、アシアナが17.9%のシェアでLCC合わせ50%となる。CAPAデータでキャセイパシフィック、SIAグルーぷ、ルフトハンザグループも本拠地で高いシェアがあることがわかる。

 

ソウル-チェジュ線では両社で67%のシェアとなる。同路線は韓国内で最重要の位置づけであり、同時に利用が一番盛んな路線でもある。

 

両社統合の話題は以前からあったが、今回の危機状況で待ったなしとなった。「韓国航空市場はパンデミック以前から飽和状態にあり、COVID-19後の状況が見えにくくなっている」と大韓社長のKee Hong Wooは述べる。「統合後は路線、機材ともに柔軟運用が可能となり、効率運用が可能となる。シナジー効果を最大にでき、貨物ターミナル、訓練センターや整備拠点といったインフラを合理化できる」

 

機材統合が課題となる。大韓航空は170機を主要機材とし、ここに地上保管機材30機を含む。アシアナは総75機で7機を保管中だ。両社機材で共通するのはエアバスA380、A330、ボーイング777、747貨物型だが、ナローボディ機はちがう。大韓航空は737中心でアシアナはA320/321を運用中だ。大韓航空は737MAXを発注しているがA220も10機発注し、両社がA321neoを発注している。

 

ワイドボディ機材更新の動きでも相違点があり、大韓はボーイング787、アシアナはA350を選択した。大韓で787-9の10機が運航中で、-9は10機、-10の20機を発注中。アシアナはA350-900を11機運航中で、-900を10機、-1000を9機発注している。

 

統合後は機材型式が増えるが、大韓航空はこれまでもA380、747-8、MAXやneoのように各メーカーから多数機種を運航してきた。

 

大韓航空は財務面で苦しく多額の借入がある。これだけでも大変だが、さらにコロナウィルスによる大幅減収の回復にも努めなければならない。アシアナもパンデミック前から財務面で苦境にあった。親会社のクムホグループはアシアナ支配権を現代開発に売却すると合意したものの、COVID-19危機で同社価値が下がったため9月に暗礁に乗り上げた。このためアシアナはKDB含む債権団の実質管理下に入っていた。

 

買収は2021年に完了する見込みと大韓航空はみている。政府当局の承認が必要で一定の時間が必要となる。さらにハードルとなるのが法廷判断だ。

 

大韓航空はAviation Weekに当面はアシアナは大韓航空子会社として運行を続けると明らかにしたが、数年かけてアシアナブランドは消滅させる。アシアナがスターアライアンスに残るかは未定だ。大韓航空はスカイチームに加盟している。

 

アシアナ傘下のLCCエアソウル、同社が支配するエアブサンは統合対象だ。ただし、両社がそのまま残るか大韓航空のLCCブランド、ジンエアと統合されるかは未定だ。

 

両社統合にKDBは8千億ウォンを大韓航空の親会社ハンジンKALに貸し付けとして投入する。大韓航空は3千億ウォンをアシアナ取得の前金とする。

 

これでアシアナは年末までの運航費用を手当てでき、財務状況も改善できる。ハンジンKALはKDB資金受け入れで借入にするより新株発行を選んだのは「安定財務構造」の維持を狙ったためと説明している。「KDBは議決権を得て、ハンジンKAL及び大韓航空が企業取得案を予定通り進める野を監督する」と大韓航空は説明している。■


2020年11月22日日曜日

縮むエアラインに長距離ナローボディ機が期待を与える。ボーイングはエアバスに大きく水をあけられている。

 

ANALYSIS: Long-Haul Narrowbodies Will Help Bridge Gaps As Airlines Shrink

Jens Flottau November 17, 2020

https://aviationweek.com/special-topics/crossover-narrowbody-jets/analysis-long-haul-narrowbodies-will-help-bridge-gaps


空業界、主要機材メーカーのエアバスボーイングエンブラエルは生き残りを最重視し、冬がすぎ、COVID-19ワクチンが出回り世界がもとの状況へ復帰するのを待っている。

エアライン各社が運航を大幅に減らす中、一部の機種が注目を集めており、新型コロナウィルス流行が下火になり需要が復活してもこのトレンドは続きそうだ。

業界では小型ワイドボディ機、長距離ナローボディ機が民間航空の再成長段階でいちはやく効果を発揮するとの見方が強い。こうした機材ならリスクを最小にしながら機体価格は訴求力があるというのだ。エアバスのA321XLRは4,700nmの航続距離があり、2023年に路線就航するが、受注はすでに400機を超えている。

だが長期的にはA321XLRのような機体があればエアラインは運航回数を増やすか、座席数を増やすか、あるいは旅客数が少ない路線を思い切ってノンストップ運航し、ワイドボディ機でも最少のエアバスA330-200あるいはボーイング787-8では持て余す路線に投入する選択肢も生まれる。

また機材の大規模更新の時期が近付いており、北米ではボーイング757や767の退役がパンデミックで加速されつつある。

短期的にはエアライン各社の規模縮小は不可避だ。IATA最新予測では有償旅客キロは2020年に前年比で66%減少するとあるが、2019年は737MAXの運航停止などそもそも需要にブレーキがかかった年だった。

パンデミック終息後のエアライン各社はどのように保有機材を活用するだろうか。地域、企業戦略、投入可能な機材構成など各種要素により左右される。ただし、パンデミックにより余剰機材の退役が加速しており、とくにエアバスA380、A340、ボーイング747-400は需要が低下した長距離路線で持て余し気味だ。

そこで長距離路線でナローボディ機が成功すれば機体メーカーにもろ刃の剣になる。ワイドボディ機の需要は弱いまま新鋭機材が長距離路線に投入可能となれば選択肢が広がる。ただし、ワイドボディすべてが悪影響を受けるわけではない。2020年春のパンデミック最高潮時でもエアライン各社はボーイング787、エアバスA350を路線投入しており、小型ワイドボディならではの効率性をとくに787で生かしていた。だがその他の機種は重宝されていない。ボーイング777では9月末時点で合計353機が運航停止となり、前年の58機から急増した。787で運航停止保存状態に入っているのは189機(前年25機)。エアバスではA330で402機(前年56機)で、A350は比較的少なく58機(6機)にとどまっている。

長期的に見れば、機材選択では性能を重視する方向に進むだろう。現在も787、A350が欧州と米東海岸間路線に投入されているが、両機種の航続距離からいえば性能を十分活用しているとは言えない。そこでやや短い長距離路線をねらってボーイングは新型中間市場機(NMA)構想を立てていたが、今年に入りこれを中止してしまった。

A321neoの長距離版LR、XLRが成功すればエアバスはナローボディ機市場でシェアを伸ばせる。現時点の受注残でも同社は60%超のシェアを占めている。ボーイングが競争面で不利な状況を受忍する状況は普段は考えられないが、737MAXの発注取り消しが1,000機を超え運航停止措置が伸びたこと、同社の民生機材部門の赤字が組み合わさる状況では中短期的に新型機開発に乗り出し、ナローボディ機のハイエンド部門で解決策を提示するのは不可能だ。■


2020年11月8日日曜日

T1で先行発表。地球上いかなる地点にも一時間以内に輸送完了できる宇宙貨物便が実現しそう。

 軍は世界いかなる場所へも補給物資を送れる「ロケット貨物便」の活用に注目している。

 

こんなシナリオだ。戦闘部隊が世界のはての地点に展開し、弾薬糧食が必要だ。そこで特別航空補給を要請する。米輸送本部が承認し、貨物は低地球周回軌道にロケットが打ち上げられる。一時間足らずで5.56mm弾、おいしそうなピザのMREが届き、部隊は気分を一新し士気が高まる。

 

補給ポッドを宇宙から送り込む構想はSFのようだが、真剣に検討していると米陸軍は認めている。

 

「80トンの貨物となるとC-17一機分だが、世界中いかなる地点に一時間未満で送り届けられる」と輸送本部司令のスティーブン・R・リヨンズ大将が空輸給油協会開催の10月のリモート会議で発言した。「これからの兵力投射に従来の方法を打ち破る形で挑戦したい。ロケット貨物輸送もその一部だ」

 

リヨンズ大将はこれ以前に全国国防輸送協会のイベントでペンタゴンが航空宇宙企業のスペースXと協同研究開発契約を締結し、外宇宙に輸送経路が確立できるか検討すると発表していた。

 

輸送本部は「商用の地点間宇宙輸送手段を利用し、まず部品部材、さらにゆくゆくは人員を世界中いかなる地点に迅速輸送することで緊急事態や自然災害に対応できると着目」しているとニラフ・ラッド空軍中佐が述べている。中佐は宇宙輸送の主任研究員である。

 

国防企業間で「宇宙空間を介しての輸送について利用可能性、技術・事業面での実施可能性の検討が進行中で、輸送本部には国防総省のグローバル輸送部隊として役割が与えられる」と同本部は発表している。「貨物人員輸送ではスピードが重要だ。ここに大きな可能性が秘められている」とリヨンズ大将は発言。

 

Senior Airman Ian Dudley, 30th Space Wing Public Affairs photojournalist, photographs an unarmed Minuteman III intercontinental ballistic missile during an operational test at 2:10 a.m. Pacific Daylight Time Wednesday, Aug. 2, 2017, at Vandenberg Air Force Base, Calif.

非武装のミットマンIII大陸間弾道ミサイルがヴァンデンバーグ空軍基地から試射された。

Senior Airman Ian Dudley, 30th Space Wing Public Affairs photojournalist, Wednesday, Aug. 2, 2017,Photo via DoD

 

 

宇宙空間利用の輸送手段の評価で次の段階は来年に予定され、輸送本部は「産業界や戦闘部隊と協力し長距離地点間輸送構想を2021年に実施する」と米陸軍が公表している。

 

「民間宇宙輸送手段提供企業がこれまでの常識を一変させる手段を開発中でその進展は実に早い。2021年の実証では人道救難物資を送り届けることになるだろう。ロケット輸送ミッションは現実となる」(リヨンズ大将)

 

長期目標は宇宙輸送手段の試作型を製造し、輸送本部に空中、海上、陸上の輸送を補完する手段を今後5年から10年以内に実現することにある。スペースXとの研究契約でこの目標が実現できるかが注目される。

 

「スペースXの最新情報では開発は非常に進んでいるとだけお伝えしておく」とリヨン大将は以前述べていた。

 

一つ確かなのはロケット貨物輸送は「宇宙の歩兵」構想につながることで筆者は構想を支持する。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

US Army Developing 'Rocket Cargo' To Transport Gear To Troops Via Space

JARED KELLER16 HOURS AGO


TAGSSPACEXROCKETSOUTER SPACENEWSMILITARY TECHRESUPPLY INBOUNDU.S. TRANSPORTATION COMMANDU.S. SPACE FORCEU.S. ARMYRESUPPLY


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