ラベル リチウム硫黄バッテリー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル リチウム硫黄バッテリー の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2019年8月11日日曜日

リチウム硫黄は電機飛行機のバッテリー問題の解決策になれるか

Aviation Week & Space Technology

Is Lithium-Sulfur The Answer To Electric Aviation’s Battery Limits?

Aug 7, 2019Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology
リチウム硫黄バッテリーはリチウムイオンの2倍のエナジー密度を実現するが、出力と耐久性で改善の余地がある。
空機メーカーに実用に耐える全電動航空機実現の機運が強まっている。だがバッテリーが障害となり、寸法、性能で現行の制約の解消が不可欠だ。
次世代バッテリーが商業化の初期段階にありエナジー密度でリチウム-イオン(Li-ion)を上回り航空機への応用が期待されている。.
まず半導体バッテリーがあり、Li-ionに使われている電解液に変わり固体電解物として安全が向上しエナジー密度も高くなるとその分バッテリー寸法を小型化できる。またリチウム-金属型ではLi-ionの黒鉛陰極のかわりにリチウム金属を用い、これもエナジー密度が高くなる。
もう一つ有望なのがリチウム硫黄(Li-S)で注目を集めているのは英バッテリー新規企業オキシスエナジー Oxis Energy と米電動航空機メーカー、バイエアロスペース Bye Aerospace が航空機応用で協力関係を締結したことだ。バイは二人乗り練習機eFlyer 2の開発に取り掛かっており、Li-ionバッテリーを使用するが大型機用にLi-Sへ注目している。
オキシスは2004年創業でLi-Sのエナジー密度を400 Wh/kg以上に刷るのに成功し、来年早々には500 Wh/kg達成を目指す。Li-ionでは最高性能でも 250 Wh/kgだ。

この性能はサイオンパワーが2015年にキネティック(現エアバス)の太陽光高度無人機ゼファーで達成した 350 Wh/kgを超える。ゼファーは11日間飛行して長時間飛行記録を樹立した。またその後25日間の連続飛行を達成したが別のバッテリー技術を使っていた。
だがエナジー密度だけがバッテリー性能の重要要素ではない。出力、放電充電回数、安全性、寿命も重要要素だ。
リチウム硫黄バッテリーは確かに高エナジーだが高出力ではない。つまりエナジー貯蔵量と放電量の問題だ。高高度疑似衛星となるゼファーのような機体では高出力が必要だが放電率(C)は極めて低くする必要がる。電動の垂直離着陸 (eVTOL) では高いエナジー密度、高出力が必要だが離着陸で放電率は高くなる。
従来型の固定翼機としてジェネラルエイビエーション分野で運用すると高出力が必要となるの離着陸時のみで比較的短時間だが、放電率の制御が必要となる。
リチウム硫黄で懸念されるのは寿命で、これが理由となり開発が進んでこなかった。オキシスのLi-Sは200サイクル程度しかない。一方でLi-ionは数千サイクルとなっている。ウーバーは自社eVTOLsをLi-ionを容量が85%になる1,300サイクルで交換し地上発電需要向けに売却している。


この点は改良が必要とオキシスも認める。エナジー密度にこれまで開発の中心が置かれてきたが、高性能は達成できたので次は寿命の延長をとりあげ、最低500サイクルの実現を2年以内に目指すという。
Li-Sは Li-ionに対しコストでも有利だ。その理由として硫黄はコバルト他のレアメタル素材よりはるかに安価に入手できる。さらにWh/kgが高い。同じ容量なら必要な素材量が少なくてすむ。密度が二倍なのでセル数が半分で済む。
安全面でも有利だ。Li-ionセル内でリチウムが樹状に伸びるとショートが発生し熱暴走が始まるためバッテリー全体で慎重な設計が必要だ。
これに対してリチウム硫黄では樹状成長はなく、一旦形成された小さなくぼみも次回のサイクルでリチウムが使うことで消える。 Li-ionでは陰極陽極間を埋めるスパイクができショートが発生する。だがリチウム硫黄ではこのような望ましくない問題は発生しないという。
オキシスは国連が定めたUN/DOT 38.3試験標準でリチウムバッテリーの輸送を実施したがリチウム硫黄は良好な成績を示したという。.
同社は増産に入っており、ウェールズのポートタルボットに新工場を設け、陰極陽極を製造する他、ブラジルにセル製造工場を置く。民生用途の第一陣は2022年開始予定で年間数百万セルの量産体制に入るという。一方で試作用は1万しか製造していない。.
それにより同社はリチウム硫黄バッテリーの強みを享受する目論見だ。さらにエナジー密度を生かした用途として電動バスがあり、バッテリー集合体で数トンになるほか、携帯型ウェラブル型の電源として軍用用途や航空宇宙用途を想定。.
Li-Sの航空用途としてオキシスは社名非公開の欧州航空機メーカーと性能実証をしている。Li-ionバッテリーによる飛行プロファイルを確認中だ。

リチウム硫黄は軽量なため機内に多数搭載できると同社は見ており、大型バッテリーでは離陸時の放電率は低くできる。Li-Sの高エナジー密度により巡航飛行時間が伸び長いフライトが可能となるという。■

お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。