2021年9月29日水曜日

主張 COVID-19後をにらむエアライン業界は危機前水準への復帰ではなく、リセットの機会として新たな方向性を模索すべきだ

 COVID-19は世界各地のエアライン各社に等しく大きな影響を与えましたが、対応は各社それぞれでした。日本のエアライン各社が機材をどこまで整理したのか定かではありませんが、一過性の事態なので需要もそのうち再開するとみていたのではないでしょうか。再開はいつ化すると思いますが、採算性を冷徹に見て大胆な手を打ったエアライン他社とは業績の差が広がりそうです。この二年の決断の差が大きな意味をもってきそうですね。空運株は買うべきではないでしょう。

 

 

際航空運送協会(IATA)が二年ぶりに対面方式の年次総会を開催するが、米国外からの参加者にとっては移動自体が複雑な作業となる。ヨーロッパは米国からの渡航者に今年早々に門戸を開き、同様の措置が米国で生まれるよう期待したものの、米国は扉を閉ざしたままコロナの新規感染を封じ込めようとしている。

 

中国からの渡航者がCOVID-19を初めて拡げた事実とは別に、包括的な旅行制限を各国政府が実施してきたもののウイルス封じ込めに効果があったのかは疑問だ。節度ある行動(マスク着用、ソーシャルディスタンス等)が各地で鍵を握っているとの証拠がある。旅行を制限したままにしていいのか、各地でワクチン接種が普及してきた今、根拠はさらに弱くなっている。

 

米国と欧州間の航空移動はもっと早く再開できたはずだ。ワクチン接種の義務化がその根拠だ。ワクチン接種を入国条件とする国はこれまでもあった。COVID-19の渡航措置も早晩その他の措置と同様になろう。

 

包括的渡航禁止はもっと早く撤廃されていておかしくない。パンデミックで業界にはあまりにも経済的損害が大きかった。米国の新展開でワクチン接種済み旅行者(同時にテストも受けていることが条件)に入国を認める発表が出たが、業績回復への道はまだ遠い。

 

9月19日に措置が発表されると、エアライン各社や旅行代理店から需要急増が伝えられ、その他旅行関連サービス等へも一気に注文が入った。処理できないほどの照会があったといわれる。嬉しい大変さではないか。

 

大西洋横断路線では朗報のようだが、その他長距離路線特にアジア向けは再開されておらず、需要は低いままだ。18カ月も旅行できないままの旅行客がしびれを切らしている状況は想像に難くない。

 

旅行需要がコロナ前水準に復帰するか疑問に思う向きが多い。戻るとして問題はいつになるかだ。だがこの疑問自体が愚問だろう。業界は2019年水準の業務への復帰をめざすべきではない。むしろそれは不可能であり、高機齢機材多数が運航を終了し、すでに売却されるかその途中にある。こうした機体が運航再開することはない。一部にはマーケットシェアのため運航されるものがあろうが、利益が出ない。またエアラインの多くでダウンサイズが進み、元に戻ることは容易ではない。また環境政策もある。業界は責任を理解している状況を示す必要に迫られている。旅行需要がエアラインの業務を後押しするだろうが、エアライン側は以前よりきびしく行動を律し、サステナビリティ目標の達成をめざすべきだ。

 

そこでIATA総会だが、IATAが示すべきメッセージとは業界が直面する危機状況が従来になく深刻な中、業界をリセットする機会とすべきだろう。機材は新しくなり、路線網も見直し、環境経営双方でサステナビリティへの姿勢を示し、強化すべきだ。

 

IATA Director General Willie Walsh

IATA事務局長 Willie Walsh

Credit: IATA

 

次の段階へ進むべき時が来た。ボストンが出発点となる。またウィリー・ウォルシュがIATA事務局長に就任し初の総会となる。適任の人物といえよう。ウォルシュは International Consolidated Airlines Group (IAG)のCEOとしてエアライン関連企業多数の利益水準を前例ないレベルに引き上げるにとどまらず、これまでにない環境目標も設定した。その姿勢を新たに示すのが本人の課題だ。

 

勢いがついてきた。世界経済フォーラムのClean Skies for Tomorrow構想では航空業界の燃料消費の10%を2030年までにサステナブル燃料に切り替える目標を発表している。従来よりも大胆な目標設定であり、欧州委員会の想定をも上回る。エアライン企業部会としては良好な目標設定といえよう。IATAが業界全体での実施を働きかけるべき時が来た。■

 

 

Commentary: Airlines Must Use Crisis To Reset Fundamentally

Jens Flottau September 24, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/airlines-lessors/commentary-airlines-must-use-crisis-reset-fundamentally

 

Jens Flottau

Based in Frankfurt, Germany, Jens leads Aviation Week’s global commercial coverage. He covers program updates and developments at Airbus, and as a frequent long-haul traveler, he often writes in-depth airline profiles worldwide.


2021年9月26日日曜日

COVID-19で機材早期退役、部品回収、貨物機需要の高まり、コスト削減でPMA中古部品需要が高まっている

 Atlas

Credit: Getty Images/S3studio

 

エンジンMRO企業で中古再利用可能部材(USM)取り扱いを専門とする各社がワイドボディ機向け需要が上向いてきたことに注目している。その理由に航空貨物需要が高まってきたことがある。

 

エアライン側も部品製造者承認ずみ parts manufacturer approval(PMA)部材でコスト削減をしながら、パンデミックの長期化に対応しようとしている。

 

Aviation Week はMROアジア太平洋イベントをオンラインで開催し、AARのアジア太平洋地区営業担当副社長コリン・グレゴリーは席上でここ数カ月で同地区で「高成長」があったと述べた。それによると貨物輸送需要が上向きでボーイング747F、757F、767Fの稼働率が高まっているという。その結果、エンジン部品を求める声が増えており、特にプラット&ホイットニーPW2000シリーズ、PW4000シリーズで部品が手に入りにくくなっているという。

 

グレゴリーは中国でUSM需要が「大きく伸びている」とし、COVID-19からの早期回復が背景にあるという。別要因として中国国内でエンジン解体の認証業者が増えていることがある。

 

これに対し、StandardAero’s Airlines & Fleetsのアジア太平洋担当営業部長マリオ・ロマノは使用済みエンジンから回収した部品は耐用年数が短い点を強調した。つまり、残存価値が少ない。キャッシュが潤沢でないエアライン側は機材を早期退役させ、新規機材を路線投入している。

 

 SGI Aviationの技術担当副社長フランチェスコ・バカラニも同じ論調で、さらに中国やインドのような厳しい環境で運用された機材から回収した部品は状態が悪く不合格となることが多いと付け加えた。USM価格は新品カタログ価格の65-70%が普通だが、機材退役で出てくる余剰部品により60%まで価格が下がると指摘した。

 

グレゴリーもエアラインにPMA部品需要が増えているのはコスト削減策だとしながらも、エアライン側は部品交換より修理を好む傾向があると指摘した。さらに機材の所有権がエアラインにあるかが重要で、リース会社はPMAを自社所有機材に搭載するのを承認しないと述べた。■


USM Demand Swings To Widebody Engines

Chen Chuanren September 22, 2021

https://aviationweek.com/shows-events/mro-asia/usm-demand-swings-widebody-engines


2021年9月23日木曜日

エアバスがeVTOL機構想を発表。4名搭乗、125km/hで80キロ移動が可能。エアバスの動きに対し、ボーイングは電動航空機で音なしの構え?

 エアバスのほうが環境を意識した航空移動手段の開発に熱心なのでしょうか。将来への布石ではエアバスが一歩先のようですが、ボーイングの動きが今後注目されます。



エアバス主催のサステナビリティサミットが本日フランスのツールーズで開かれ、同社から固定翼のCityAirbus NextGen eVTOL構想が発表された。V字尾翼と電動モーター8基を搭載したプロペラ推進機だ。


エアバスヘリコプターズが中心となり開発する同機は2023年に試作機が完成し、2025年の型式証明取得をめざす。4名搭乗で80キロまでの飛行を最高速度120km/hで実現する。


「サステナビリティを都市間航空移動に統合し、環境社会両面の問題解決につながる手段をめざしています」とエアバスヘリコプターズCEOブルーノ・イーヴンが語る。都市間移動への統合とともに社会の認知を得ることも課題だと認め、航空管制の自動化とともにビジネスモデル開発も課題とイーヴンは認め、「安全、サステナブルで完全統合されたサービスを社会に提供したい」という。


都市圏では騒音水準の解決が不可欠だが、CityAirbusのデザインでは上空通過時に65 dB(A) 、着陸時に70 dB(A)以下とするのが目標だ。エアバスはホバリング時と巡航時を最適化していると説明。


エアバスはCityAirbus NextGen をEASAの特殊条件VTOL規定で型式証明をめざしている。


単座型Vahana、複座CityAirbus技術実証機の開発から知見を多く得たという。後者は当日の会場で展示されていた。


両実証機で合計242回のフライト、地上テストをこなし、計1,000キロの飛行を行った。さらにエアバスは風洞実験を大規模に行っている。


CityAirbus NextGen 試作型のテスト飛行はパリ、ミュンヘンで行うが、テストは両国以外にも広がるとエアバス幹部は説明。■


Airbus Unveils Plans for Larger, Fixed-wing eVTOL

by Cathy Buyck

 - September 21, 2021, 12:29 PM

https://www.ainonline.com/aviation-news/business-aviation/2021-09-21/airbus-unveils-plans-larger-fixed-wing-evtol


2021年9月19日日曜日

主張 国際航空旅行の制限を見直す時が来た。

 


 

 

airport testing center sign

Credit: Daneil Leal-Olivas/AFP/Getty Images

 

年コロナウィルス大量感染が爆発的に発生し、各国政府は直ちに国境を封鎖した。中国発のウィルスの世界規模の拡散を止めるねらいがあった。ウィルスを止めるのが不可能と判明すると、時間を稼ぎワクチン接種を待つ作戦だった。

18カ月が経過した今、航空業界は政府による制約を受けたままで、意味のない施策も見受けられる。例としてEUからの旅客入国を禁じる米国方針を見てみよう。欧州では米国発の利用客に入国を再開しているが、米国は欧州からの旅行客の入国を依然認めていない。ヨーロッパでのワクチン接種率がなかなか増えない間は意味があったが、今やヨーロッパの接種率が米国を上回り一カ月以上となり、ヨーロッパのCOVID-19感染率ははるかに低い。

もうひとつある。ヨーロッパ委員会は米国内の感染状況が高いことを受け、「不急不要の」米国渡航者の制限強化を提言している。オランダは米国人の渡航を「非常に高いリスク」とし、米疾病管理センターは米国民にイタリア渡航はコロナウィルスのため再検討するよう推奨している。

こうした中で不満がたまるが、ICAOが提唱する公衆衛生回廊構想ではリスク低減策を大幅に増やすとある。旅行客にワクチン接種を義務化し、COVID-19テスト結果で陰性証明を求め、マスク着用は機内、空港内で続ければリスクは大幅に減る。同構想は急に出てきたわけではない。これまでも入国時に黄熱病などでワクチン接種証明を求める国があった。

COVID-19ワクチンの登場前にも学術研究によりウィルスが航空旅行を介して広がる可能性は低いとされてきた。旅行者に厳しい制限が課されているためだ。感染が発生するのは家族友人同僚とマスクやソーシャルディスタンスなしで面会する場合だ。

COVID-19の地球上での撲滅が可能としても、数年かかるだろう。エアライン業界の立場を支持する。政府はリスクを皆無にするのではなく最小限に管理すべきという視点だ。ワクチン接種により深刻な症状悪化には歯止めが生まれ、レストランでの外食やコンサート鑑賞など基本的な自由を再び享受できるようになった。次は移動の自由で、この回復だけ例外扱いにはできないはずだ。■

Editorial: It Is Time To Revisit Travel Bans

September 10, 2021

Editorial: It Is Time To Revisit Travel Bans


2021年9月18日土曜日

ボーイングの2030年航空産業全体予測が出た。エアライン向け機材は8千機の純増。MROの成長に期待し、2025年までにCOVID-19前水準に復帰。デジタル化も成長の余地が大。

  


 

ーイングが2030年までの航空サービス関連業界見通しを発表した。それによると収益規模は3.2兆ドルで、うち民間部門は1.7兆ドルで53%を占める。

 

支出ではMROが軍民双方で主流となり、2.2兆ドルで全体の70%を占める。そのうち民生部門が半分をわずかに上回ると予測する。

 

民生MRO部門は2020年のCOVID-19関連の需要急落を経て回復基調にある。ボーイングはMROについて「COVID-19前の水準回復に二三年かかる」とみている。

 

機材退役が急増するとみられ部品や再利用可能な部材の取引が増えそうだ。ボーイングは2030年までの旅客機引き渡しを18,850機と予測しており、一方で供用を終える機材10,200機の一部は貨物機に改装されるが大部分は廃棄されると見ている。

 

「2020年に世界各地で運航中止機材が急増したが、旧型機で効率が劣る機材が多数になったため、資産運用効率や業務面では好影響が生まれたとみるアナリストが多い」と指摘し、昨今の不況を経て、エアライン全体では今後5年で15-20%の機材が退役すると見る。

 

ボーイングは「さらに20-25%の機材が運航停止になっても驚くに当たらない」としており、2025年までに6,475機が退役することになる。この計算の根拠としてボーイングは2019年時点で25,900機が供用中としている。

 

航空サービス関連のうち残る15%相当は訓練、「デジタルソリューションおよびアナリティクス」に二分されるとし、後者には燃料消費最適化、機材管理のソフトウェアが含まれる。

 

「デジタルソリューションはパンデミック初期段階で必須となった。運航側が環境へ迅速に適合しようとしたためで、財務上もその必要があった」とボーイングは指摘している。「エアライン多数がデジタルソリューション投資の価値を認めており、デジタルトランスフォメーションで業務を迅速に変化させつつ、データ分析・活用の効率化で差をつけようとしている」

 

ボーイングは運航データを活用し保守点検を最適化しつつ想定外の事態の発生を抑え、また在庫を微調整して運航の信頼度を損なうことなく支出を最小限化することに業界の関心が高まっていると注目している。

 

訓練に関してボーイングは仮想学習の急速な普及を指摘している。COVID-19に伴う規制のため各社は適正な訓練を対面方式を使わずに行うことを求め、仮想学習のトレンドが強まっているとする。■

 

 

Boeing Sees Services Recovery By 2025

Sean Broderick September 14, 2021

https://aviationweek.com/mro/boeing-sees-services-recovery-2025

 

Sean Broderick

Senior Air Transport & Safety Editor Sean Broderick covers aviation safety, MRO, and the airline business from Aviation Week Network's Washington, D.C. office.


2021年9月11日土曜日

主張 航空旅行需要はいつ回復するのか。変異種の動き、ワクチン接種率を見るとコロナ共存の道を考えたほうが賢明だ。

airport terminal sign

Credit: Patrick T. Fallon/AFP/Getty Images

 

空旅行需要がCOVID以前の状態に戻るのはいつになるのか。

 

航空産業は同じ疑問をここ18ヶ月問い続けてきた。

2020年のAeroDynamic Advisory調査では、2023年末に平常に戻るとの評価が出た。この悲観的な見解に当時驚く向きもあったが、おおむねは消極的にこれを認めていた。筆者も再検討してみたが、楽観的過ぎたと考えるに至った。

 

デルタ変異種が世界各地で主流になって状況を一変させている。一人感染すれば5-9名にひろがるというのは、COVID-19当初の2-3名への感染力より強い。このため、集団免疫もワクチン接種率が90%にならないと実現しない。ちなみに当初のCOVID-19では70%だった。また世界各地の病院が新患で満員となり医療システム全体が危険となる。世界全体でワクチン接種は80億回必要となる。アジア、ラテンアメリカ、アフリカの大部分で深刻な状況が数年間も続きそうなのは、ワクチン接種が広まらないためだ。デルタ変異種の強力な感染力もあるが、新変異種がいつ現れないとも限らず、現行のワクチンが効果を出せなくなるかもしれない。

 

こうした背景から航空旅行の復活シナリオを考えてみよう。2019年の有償旅客キロ(RPK)は8.7兆でうち65%が国際線だったが、国際線需要は死んだままだ。

 

各国政府は航空業界向け支援策を講じ、ワクチン接種、検査、隔離など展開している。一部国は国際線利用そのものを止めており、渡航者にバブルを課す国もある。また渡航は認めても隔離措置を求める国もある。ワクチン接種履歴を渡航条件に採用している国は皆無に近い。世界各地のワクチン接種記録で標準化ができていないためだ。そのため各国で方策を各自組み合わせているのが現状だ。欧州連合では米国出発の渡航者への制限を加盟27か国に推奨し、米国内のデルタ変異種感染の高まりに警戒している。

 

このため国際旅行に面倒な要因がついてまわる。企業幹部は国別で異なるテスト要件を逐次満足する以外に隔離へ時間を取られるリスクに直面している。料金に敏感な観光客だが、数回にわたる検査料金が航空券価格に近づく上に隔離のリスクも覚悟しなければならない。

 

世界全体のRPKの残り35%を占める国内線利用でも影響が出ている。ワクチン接種率が高い中国でさえ、デルタ変異種の登場で減少が止まらない。8月初旬の座席提供数は32パーセント減となり、政府はCOVID-19撲滅をまず進めてから再開をねらうようだ。ロシアは50万人をすでに失っているが、ワクチン接種が進まず、7月の死亡数が記録を破ったという。

 

明るいニュースもある。今年に入り米国内需要が急上昇しており、需要の底堅さは確実だ。世界全体のワクチン製造規模は2022年に150億回分になる。うち三分の一が画期的なmRNA技術によるもので、ブースター接種で早く効果を発揮する、あるいは今後登場する変異種にも対応する期待がある。ワクチン接種義務化に動く国もある。またワクチン接種済み住民に死亡率や入院措置の必要度が非接種者より低いのが明らかになってきた。今後の各国政府はCOVID-19撲滅をめざすのではなく、共存の道を選択するはずで、英米両国がすでにこれを始めている。

 

では航空需要は2023年に回復するだろうか。可能ではあるが、世界規模のワクチン接種がどこまで広がるか、政府の渡航方針がどこまで改善されか、さらに変異種で運が良ければ、という条件が必要だ。航空業界で戦略を検討するなら悲観的なシナリオを使うほうがよいだろう。「パンデミックや伝染病には歴史を一変させる力があるが、生き残ったものには効果がすぐ見えない」とカナダの文化人類学者ウェイド・デイヴィスの言葉を贈りたい。■

 

Opinion: Why Air Travel's Recovery May Be Years Away

Kevin Michaels September 07, 2021

 

The views expressed are not necessarily those of Aviation Week.

 

Kevin Michaels

Contributing columnist Kevin Michaels is managing director of AeroDynamic Advisory in Ann Arbor, Michigan.

 

2021年9月4日土曜日

ボーイング新型機開発で日本企業が共同事業体に加わる可能性が浮上。スペースジェットの挫折を超える強靭な意思決定力が日本に試されそう。

 

  • Aviaion Weekに気になるニュースが入りましたので早速お伝えします。


  • スペースジェットで手痛い経験となった三菱重工業が慎重な態度を捨てるのか、その他重工業とコンソーシアムを組んで対応するのか、日本政府がどこまで支援するのか、いずれにせよ完全国産旅客機の夢よりも現実的な解決策を模索するべき時が来たと思います。


ボーイングの新型旅客機事業に期待があるが、同社内部に必要な資金がない。

だが同社が外部と提携し。例えばスーパーティアー1と呼ばれるメーカー、あるいは他国企業と共同事業となればどうなるか。

737 MAXとCOVID-19のダブル危機で、ボーイングは二年連続で記録的な赤字決算となった。ただ、第2四半期の赤字幅が予想を下回りウォールストリートが驚いた。CEOディブ・カルホーンは「峠は越した。回復に勢いがついてきた」と述べている。

ただ同社は6月末現在で420億ドルの負債を抱え、105年の同社史上で前例のない規模となり、2018年末から8倍増に増えた。ボーイング独自の予測では民間航空部門の発注は今後10年間で11%減となる。業界ではエアバスに対抗するボーイングは現状のシェア40-50%は維持できず、30-40%になるとの見方がある。

そこで業界内部には新型ボーイング機の投入を期待する声が高い。中型機、737後継機などが取りざたされており、運航会社の購買意欲を刺激し、ボーイングのシェア奪回につながる。だが完全新型機では200億ドル以上が必要とみる筋もある。

同社の支出には二つ優先事項がある。負債の整理と株主還元がある。バンクオブアメリカのアナリスト、ロン・エプスタインはウォールストリート関係者の56%はボーイングが新型機を立ち上げると予想しているが、34%はそのためにはボーイングは投資機関への姿勢を変えるべきだとみていると紹介。

「新型機開発の資金集めが課題でしょう」というのが航空業界に特化するコンサルタント企業Avascentの意見だ。「当社分析ではボーイングには完全新型機開発をしつつ配当金を支払うキャッシュフローがありません」

だが可能性が高いのはボーイングが他社と提携し、リスクを減らしつつ利益を共有する事業形態に走ることだろう。Acascentのジェイ・カーメル、スティーブ・ガニヤードはこの構想を深堀し、太平洋の向こう側、日本の「重工業」数社との提携だろうとのメモを8月に出した。

同上メモでは日本政府は国産旅客機開発を模索してきたと指摘。ボーイングは共同事業の可能性を数回にわたり探ってきたが、一度も成立していない。そこで、三菱スペースジェットの自壊に注目が集まっている。

「日本とボーイングが共同事業体を立ち上げれば、共同出資、共同生産で新世代旅客機が生まれる」と両名は記している。「興味深いのは今回はエンブラエルとの共同事業検討と異なることで、ボーイングはエンブラエルの技術力を高く買っていたものの共同出資は二の次だった」

日本の国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構には航空機DXコンソーシアムの新規事業があり、「スーパーティア1」として日本国内企業にボーイングとの技術共有、リスク共有を進めさせる構想があるとAvascentは紹介。日本の労働コストは高いといっても北米、ヨーロッパの水準に比べれば低いと主張する。

両名は共同事業が成立すればウィンウィンとなるが、まずは日本側に今度はうまくいくと信じさせ、作業分担は日本航空宇宙産業のグローバルでの地位を高めるものにする必要があると主張する。エアバスの独走状態、さらに中国が実力をつけてきたことから、共同事業は以前よりも実現しやすくなっているのではないか。

「明確に言う。ボーイングには日本が必要だ。日本にはボーイングが必要だ。日本は財務、技術両面でリスクを共有する相手になれる。ボーイングが完全新型旅客機を投入できれば、『失われた十年』を回避できる」とカーメル=ガニヤードは指摘している。■

Will Boeing’s Next Airliner Be Built In Japan?

Michael Bruno September 01, 2021

https://aviationweek.com/aerospace/aircraft-propulsion/will-boeings-next-airliner-be-built-japan


2021年9月2日木曜日

宇宙衛星ビジネスは2040年に1兆ドル規模に成長する予測。低地球周回軌道上に大量の衛星を打ち上げ、ブロードバンド通信サービスがこれからの成長産業か。

  

Satellites in LEO

低地球軌道(LEO)は幕を開けつつある衛星ネットワークブームの舞台となる。「直近5年間で衛星運用は3,000パーセント増加した」とジョージア工科大のマリエル・ボロウィィッツ准教は指摘。「これだけでもすごい規模だが、序章にすぎない」

Credit: Source: COMPSOC

 

2010年から2020年にかけ地球周回軌道上の実用生成は958機から3,371機に増加したと衛星産業協会の最新報告書にある。だが252%増もこれからの増加率の前には小規模に映るはずだ。

 

「2030年までに10万機が軌道上を回っているはず」とスティーブ・ウルフは指摘する。公共政策専門シンクタンクBeyond Earth Instituteを共同で立ち上げて理事長をしている。「驚くほどの増加だ」

 

宇宙経済は2040年に1兆ドル規模に成長するとの予想がある。低地球軌道上に打ち上げられる大量の衛星がけん引役となり、スペースXのスターリンク、OneWebのグローバルブロードバンドなど既存の衛星運用会社がさらに機能や用途で細かく分けた衛星を打ち上げ、地球静止軌道(GEO)上の衛星が担当してきた通信サービスが大きく変わりそうだ。

 

設立52年周年のカナダ企業テレサットはGEO上に13機の衛星を運用しているが、50億ドルを投じLEO衛星ネットワーク、Lightspeedを立ち上げる。「ブロードバンド接続への需要が世界各地で増加している」と同社CEOダン・ゴールドバーグが語っている。「三年で倍になるペースとの予測だ」

 

SESは70機以上の衛星を運用しており、ボーイングに同社のO3bネットワーク中地球軌道(MEO)用新型衛星群を製造させる。MEOとは高度5千マイルほどの位置になる。O3b mPower ネットワークは2023年までに軌道上に完成し、ボーイングの702X新型衛星を使用する。これは完全にソフトウェアで仕様変更な衛星で、LEO、MEOあるいはGEOに対応し、市場需要に応じ帯域を変更可能だ。

 

 「ソフトウェア依存で完全な運用柔軟性を有する衛星はこれまで存在しなかったのですでに顧客層からの引き合いが相当来ている」とボーイング・コマーシャルサテライト・システムズ社長のライアン・レイドが語っている。

 

ボーイングはLEO衛星需要にも注目し、スペースX、OneWeb、アマゾン他のブロードバンド衛星運用会社の関心を集めている。レイドもパートナー候補と商談に入っていることを認めている。「たとえば当社がスペースXのスターリンクと直接競合することはないが、当社の顧客企業ではありうることだ。そこで当社の立ち位置は各社に解決策を提供し、当社の技術での支援を使っていただくこと」としている。■

 

 

Burgeoning Satellite Industry Paving Way To $1 Trillion Space Economy

Irene Klotz August 24, 2021

https://aviationweek.com/aerospace/program-management/burgeoning-satellite-industry-paving-way-1-trillion-space-economy


お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。