2020年5月31日日曜日

スペースジェットに未来はない? そんなことはないという証拠

SpaceJet waiting game plays on at Mitsubishi

By Flight International30 May 2020

え難きを耐えてこそ真の忍耐力、とのことわざが日本にある。


三菱航空機の親会社三菱重工業(MHI)はこれを体現してきたといってよいだろう。


MITSUBISHI MRJ-SPACEJET c AirTeamImages
Source: AirTeamImages

当初計画からの遅延7年がさらに伸びる兆候がある中、スペースジェットの野心的な事業は弱小企業ならとっくに倒産につながる規模だ。▶だが、さすがのMHIも忍耐の限界に来ているのだろうか。▶昨年のパリ航空ショーで名称が変わったスペースジェットM90は型式証明取得と路線就航という課題に三菱航空機は問題解決にかかりきりだ。


販売も低迷している。米系キャリアが「スコープ条項」による制限の解除にこぎつけるという楽観的見方があったが、パイロット組合は依然強硬なままM90はリージョナル路線への就航できなくなっている。▶2019年に76席型スペースジェットM100の開発開始を発表したのはスコープ条項撤廃は無理との見通しのためだったのだろう。▶ただし、一年たちMHIは同型の開発作業を中止した。またM90の予算も削減し、米国内のフライトテストセンターも閉鎖した。▶すべてコロナウィルス危機後の新経済を反映している。


航空利用客の減少でキャッシュフローが弱いエアライン各社は発注を減らす受領の先送りをしている。▶これはスペースジェットだけではなく、ボーイング787で見られる現象だが、MHIの場合は収益を押し下げる効果になっている。▶一方でスペースジェット事業費は昨年度だけで13億ドルと膨れ上がっており、コスト削減対象で目立つ存在になっている。


市場動向がスペースジェットに不利なのは明らかだ。▶ライバルのエンブラエルもボーイングとの合併をご破算にし、やはりスコープ条項対応の新世代機投入ができていない。(E175は販売好調だが。)


新型機需要の崩壊でMHIもM90の型式証明や路線就航に余裕が出てきた。▶エンブラエルによるリージョナル機独占を歓迎するエアラインはなく、米パイロット組合が弱体化すればスコープ条項の変更あるいは廃止も視野に入る。航空旅行の需要もゆくゆく復活するはずだ。

スペースジェットは新規参入機種になるが、三菱重工には第二次大戦前までさかのぼる航空機製造の実績がある。同社には忍耐の意味がわかっているはずだ。■

2020年5月30日土曜日

地磁気の減少で衛星に重大な損傷が発生する?

大西洋上の問題だからと安閑としていられません。この惑星上の生命を守っているのは放射線から守るシールドがあってこそで、地磁気の減少でこのシールドが弱まれば、まずガンの発症が増えたり、地震が増えるでしょう。あるいは磁極逆転になるのか。人類の存続があやうくなるのでは

大西洋上空に地磁気が弱い箇所があり、ここ50年で規模を拡大しながら年間12マイル西に移動している。

南大西洋上空異常現象と呼ばれ、地球を守る磁場が消えれば、危険な太陽放射線にさらされる危険事態が発生しかねない。▶欧州宇宙局ESAは異常現象がここ5年で二方向に分離したと報告。一つがアフリカ南西の洋上で、もうひとつは南アメリカ方面だ。▶「南大西洋上空異常現象の東側部分は10年前に登場し、最近は大きく発達している」とドイツ地球科学研究所が指摘している。▶地磁気全体は200年でおよそ9%減少しているとESAはまとめている。▶異常現象が二分化した理由は科学陣でも解明していない。地球内部の核の動きとの関係の解明が急務という。

磁場の衰弱は衛星や宇宙機にも影響を与える。▶太陽光中の高電荷粒子が増えれば地球を守るシールドを通過しやすくなる。▶低地球軌道上の宇宙機や衛星が粒子を浴びればハードウェアの損傷や故障発生につながる。また内部の電子装備の機能が低下し、重要なデータ収集機能が遮断されたりコンピュータ部品の劣化が進む原因となる。

さらに国際宇宙ステーションの問題がある。2018年度の研究報告によれば異常現象部分を通過するとステーション内部の人員は「強度の放射線に数分間被爆する」とある。

地球の磁場は地表1800マイル下にある外核の流体状の鉄の渦巻移動が生んでいる。▶変化を正確に観測するためESAはSwarm衛星3機を利用している。■

この記事は以下を再構成したものです。
May 29, 2020  Topic: Space  Region: Space  Blog Brand: Techland  Tags: SatellitesSpaceSpace ForceMagnetic FieldEarthOrbit


Ethen Kim Lieser is a Science and Tech Editor who has held posts at Google, The Korea Herald, Lincoln Journal Star, AsianWeek and Arirang TV. He currently resides in Minneapolis.

2020年5月22日金曜日

エールフランスがA380全機を運行終了

Air France Brings Forward A380 Retirements

Helen Massy-Beresford May 20, 2020

A380
エールフランスのA380は運行を終了した。
Credit: Joe Pries

エールフランスエアバスA380運航を完全終了した。コロナウィルスの大量流行を受けスーパージャンボ機退役を前倒しした。
「COVID-19の危機状態のため、ならびに運行規模への影響のため、エールフランス=KLMグループは本日をもってエールフランス保有のA380運行を完全終了します」と同社は5月20日に発表。
同グループのA380は2022年末までに段階的に運航終了の予定だった。機材の合理化、簡素化で企業競争力と利益力を確保する。
エールフランスのA380は、同社保有、またはファイナンス・リース中の機体は5機で、別の4機がオペレーティング・リースだ。
Aviation Week NetworkのFleetDiscoveryデータベースを見ると、この9機は全部飛行停止状態だ。5機がシャルル・ド・ゴール空港、2機がフランス南部のタルブ・ルルド・ピレネー空港、2機がスペインのテルエル空港に駐機中だ。
A380運行終了で同グループは評価損5億ユーロ(5.5億ドル)の計上を迫られ、2020年第2四半期で償却する。 
エールフランスはA380にかわりA350、ボーイング787を運行する。フランスのフラッグキャリアである同社は昨年12月にA350を10機追加発注し、A380とA340の処分後に対応するためとしていた。

ルフトハンザも同社14機のA380のうち6機を退役させる発表をしている。コロナウィルス危機で大きく落ち込んだ航空需要の回復に時間がかかるためだ。■

2020年5月16日土曜日

原子力推進航空機は実用化される? 


aircraft in flight
Credit: U.S. Air Force


Aviation Week Networkでは読者からの質問を随時受け付けており、編集者アナリストが回答している。更に回答が困難な場合には専門家ネットワークにアドバイスを求めている。
「原子力推進航空機の可能性はあるのか。実現すれば航続距離無制限の無人機が生まれるのではないか。」
技術担当の主幹グラハム・ウォーウィックが回答しました。
ロシアが原子力推進式巡航ミサイルのブレヴェスニクの試射に成功したと主張している。NASAも無人回転翼機を土星の衛星タイタンの探査用に開発中だが、放射性同位体の応用で熱電素子発電を使う構想だ。このように原子力推進は現実になっている。
米空軍は核分裂反応炉を改修したコンベアB-36爆撃機のNB-36Hに搭載し、1955年に飛行させている。(上写真参照) この事業は打ち切りとなったが、研究者間では繰り返し原子力推進による無限大飛行距離と炭化水素排出ゼロのフライト構想が取り沙汰されている。
2014年にNASAは低出力原子炉を搭載した航空機構想を発表している。この原子炉は常温核融合炉でロッキード・マーティンのスカンクワークスでは小型融合炉を開発中でC-5程度の航空機で必要な電源を確保するのが目標だ。
航空機に核出力を応用する方法は他にもある。ひとつが高性能小型モジュラー反応炉(SMR)で開発中だが空軍基地や空港単位で必要な電源が確保できる。移動式の小型炉は電気飛行機の充電にも応用できよう。それとは別にSMRで水から水素を取り出し、大気中の二酸化炭素と結合させ液体燃料を生成する方法がある。この電力で液体燃料を作る技術があればジェット燃料のかわりになる。

読者のコメントです


EDWARDFRANCIS
Thu, 05/14/2020 - 13:32

原子力発電所には相当の抵抗感があるので「はいそうですか」と行かない話だ。原子炉が頭上を飛び、広大な立ち入り禁止区域ができるのを一般社会が受け入れる可能性はない。この構想は取り下げてもらいたい。

他方で民間航空分野でもカーボン・オフセットの導入を組織的に始めるべきときに来ている。全世界の温暖化効果ガス排出の3%が航空業界によるものだ。この費用は航空運賃に転嫁しつつ、オフセットの努力を目に見える形で航空業界は進めるべきだ。

航空運賃が上がれば太陽光発電のマイクロ配電網がアフリカに生まれ、大量の森林喪失も防止できる。樹木はCO2吸収効果があるがアフリカで樹木が消失しつつあるのは調理や暖房のため伐採されているからだ。カーボン・オフセットを協調実施すれば森林消失に歯止めがかかり、森林再生の費用を拠出する新規企業も生まれる。であればアフリカ女性も薪集めから解放される。浮いた時間は教育や家族計画に使える。 

民間航空には明るい将来があるが、現在の危機を今後進むべき道に反映させるべきであり、その道がカーボンニュートラルにあることは自明の理だ。

JGODSTON
Thu, 05/14/2020 - 14:42

プラット&ホイットニー社員です。当社では1960年代から1970年代初期に『原子力推進機」を検討したものの、意味がないと判断しました。あまりにも複雑で、大重量で、高価格となるとためです。今回はどこが違うのでしょうか。

この記事は以下を再構成したものです。

What Are Prospects For Nuclear-Propelled Aircraft?


Graham Warwick May 14, 2020

2020年5月9日土曜日

アジアで国内線需要に回復の兆し、日本はいつ?

Asian Markets Start Domestic Travel Rebound

Adrian Schofield May 06, 2020

domestic route flight capacity
Vietnam Airlines is adding flights on domestic routes as restrictions ease.
Credit: Airbus

完全復活はまだ先としても、期待できる兆候がアジアのエアラインに見えてきた。
国内路線再開は中国が先行し、韓国、ヴィエトナムが続く。ただし、インドネシアや日本などでは国内運行が削減されたままで、回復は一様とは言えない。
  • 国内需要の復活は中国、韓国、ヴィエトナムで顕著
  • 海外旅行ができず国内観光が増える
COVID-19で航空便は大幅削減され需要が減少している。最も大きな被害を受けた国が最も大きな回復を見せる一方で、その他の国では大量発生が峠を越したとは言えない状態だ。
国内航空需要は国際線より先に回復の予想がある。国内で旅行制限が解除されれば国内路線網を多く持つエアラインが有利となる。
【中国】COVID-19が最初に発生した中国がこの傾向を実証し、国内輸送容量が増加中だ。北京への国内旅行制限が解除された4月30日から旅行需要も加速している。また全国人民代表会議が5月22日開催と正式に決まったのも朗報となる。
【韓国】韓国は最大のウィルス被害を初期に受けたが、以後はウィルス封じ込めと感染予防に成功している。国際線は各国の政策で打撃を受け、国内路線も大幅削減された。
大韓航空の国内路線は4月に対前年比60%減だったが、5月は52%減に転じた。同社は4月28日まで国内17路線中6路線のみ一日36便を運行していた。だが5月18日までに15路線で59便を毎日運行する。
LCCのチェジュ航空は50%もの減便をしていたが今後は運行再開を増やすと発表。
【ヴィエトナム】ヴィエトナムも国内路線運行再開に向かっている。政府の措置によりヴィエトナム航空はハノイ-ホーチミン線で一日一便のみ運行となった。
ヴィエトナムも公衆衛生で成果を上げ、政府は国内路線を順次再開させる。CAPAとOAGのデータではヴィエトナム航空の国内線輸送容量は4月初めが底で以後増加に転じている。4月23日から同社はハノイ-ホーチミン線をデイリーで4-6便に増やし、5月に11便とする。その他幹線も増便する。
【マレーシア】エアエイジアマリンドエア両社もCOVID-19の影響で国内運行を停止していたが、4月27日から限定付きで再開した。だがマレーシアでロックダウン措置が5月12日まで延長されたせいもあり初日の利用は低調だった。
マレーシアの国内需要は今年末までに2019年実績の8割までに回復するとPwCが予測している。国内旅行で海外旅行であいた穴を埋める期待があるためという。
【日本】その他国の短期的見通しは暗いままだ。日本の国内運輸容量はまだ増加に転じておらず、日本航空は4月初期の運休37%が5月10日は68%に増える。全日空も国内便は4月28日時点で7割を運休していた。日本政府は緊急事態を5月31日まで延長し、国内移動を制限している。
【インドネシア】インドネシアの国内路線への影響は他国よりは軽かったが、4月24日に状況が大きく変わった。同日に政府が定期旅客便運行を6月1日まで停止すると決めたためだ。大量の国民移動で感染の広がりをを恐れラマダン、エイド期間の里帰りを制約した。

総合するとアジア各国のエアライン業界は低調な状態のままで、当面はこれが続く。ただし、朗報が少ない中で、成長の兆しをうかがわせる事例からトンネルも先が見えてきた。■

2020年5月6日水曜日

空港の利用実績が2019年水準に戻るまで数年かかる予測、実は2019年も成長は鈍化していた

Passenger levels to more than halve at airports after traffic peak in 2019

By Graham Dunn 5 May 2020
エアポート団体ACI Worldによる最新予測では世界規模で2020年の旅客利用者数は半減する。コロナウィルスのパンデミック状況が航空輸送に暗い影を落としている。
ACI World が本日発表した予測では空港利用者は第2四半期だけで20億人減り、年間46億人になる。2019年は91億人と最高記録を計上していた。
ACI World は年率4.6パーセント増の95億人と今年初め予想していたが、危機拡大で4月に撤回し年36億人減と修正していた。再予測でACI World は2020年の空港収入は970億ドル超減と見ている。
「Covid-19パンデミックは各国の空港さらに航空業界全般に打撃となっており、さらにグローバル経済は不況のため政府が適切な救済支援策を講じないと業界は存続の危機を迎える」とACI Worldを率いるアンジェラ・ギッテンスは述べている。
「交通量と収益の双方が減少し、各空港は必至に安定を求めているが、運営費用の大部分が固定費であることが難問だ」
「雇用確保が必要だが、財政支援がないと従業員は業務復帰できず、景気が戻り業務量も増えても対応できなくなる」
ただし、「財務支援は喫緊の課題だがバランスの取れた回復のために航空業界が広く効果を享受できるように考慮すべきであり、特定分野のみ優遇すべきではない」とした。

危機前から低成長になっていた

各国主要空港では2019年に旅客数の増加は鈍化していた。
FlightGlobalがCiriumデータを解析すると2019年の世界主要空港100箇所の合計旅客数は46.1億人で前年比3%増にすぎず、ACI Worldまとめの2019年成長率3.4%と近い。
3%増とは2018年5.4%増から大きく鈍化で、ここ10年間でも最も低い。主要ハブ空港で5%未満の実績が10年間で2回あった。
空港実績は主要エアラインの利用実績の減少と同じ傾向を示しており、経済活動の減退とボーイング737 Maxの飛行停止措置も続いている。
airport-passengers-2005-2019

アトランタが世界最大のハブを堅持

デルタエアラインズのアトランタ・ハーツフィールド-ジャクソンハブが2019年も世界最大規模の座を守った。利用者数は2.9%増の1.1億人だった。
アトランタ以外では利用者数が減少したハブが目立ち、状況が厳しい。
Top10-Airports-2019v2c
世界第2位の北京首都空港は1%減で1億人になった。これは2019年9月に第2空港開港が影響している。2019年の第4四半期だけでもキャリア数社が大興へ運航拠点を移している。
もうひとつ急成長のグローバルハブがドバイ国際空港だが、ここでも2019年実績旅客数は3.1%減となった背景に経済状況もあるが、滑走路改修工事で45日間の閉鎖があったことも大きい。
ドバイ空港のCEO、ポール・グリフィスは「2019年利用者実績は前年を下回りましたが、45日間の滑走路閉鎖、ジェットエアウェイズの破綻、さらに737 Maxの飛行停止がかさなり、32百万人分の影響が出たと分析しており、ドバイ国際空港の成長余力は健在です」
旅客数は減ったがロサンジェルス国際空港は88.1百万人と世界三位になった。その他米国ではダラス-フォートワースが75百万人、8.6%と世界10ハブ空港中で最高の成長率を計上し、2019年に10大空港リストに復帰した。背景にはアメリカンエアラインズの利用客が10%増加し、64百万人になったことが大きい。
香港はトップ10リストから外れた。デモ継続で下半期に治安が不安になったことが大きい。利用者は4.2%減の71.5百万人。
減少が顕著な空港にインドのデリー、ムンバイがある。インド第二位のエアライン、ジェットエアウェイズの破綻があった。同社は2019年初めに運行削減を開始し、機材は差押さえられ財務危機となり、4月に全面運行停止した。
ムンバイ空港の利用者ではジェットが四分の一を計上していたが、このため6%減の47.1百万人になっていた。インド最大のデリー空港は2%減で68.5百万人になった。
ジェットが破綻した割には旅客数減少が小幅に終わったのはその他各社が運行路線を引き継いだためだ。

2019年に最大成長を遂げた空港はどこか

デリーの2018年利用者数は10.1%増でトップ50空港の最上位3空港の一角となった。対象的に昨年のトップ50空港で二桁成長は皆無だった。
2019年のトップ50ハブ空港で最成長をとげたのがモスクワのシェレモチョボ空港で9%増の49.4百万人だった。
10-fastest-growing-airports-out-of-top-100-2019
トップ100空港中で二桁増加を計上したのは6箇所で、これに対し2018年は12空港だった。ヨーロッパが最多でウィーン、ミラノ・マラペンサ、アンタリヤの三空港が牽引した。
うち最大の増加率はウィーンの17.1%で旅客数は31.6百万人だった。ここにはエア・ベルリンニキ両社の破綻後の穴を埋める利用増が作用しており、ライアンエアがウィーン発着便を増やし、ウィズレベル両社がウィーン運行を始めた事が大きい。
ウィーン空港はだがコロナウィルス危機前でも急成長は終わったと見ており、2020年は3-5%成長と予想していた。
これもパンデミックですべて変わった。全国規模の都市封鎖が続き経済が打撃を受け、利用客急落は今年だけで終わらず、2019年水準へ戻るのに数年かかるだろう。
大手キャリアに主要ハブに運行を集中すして需要減少の影響を少しでも減らす動きがあるが、歴史を見れば回復は短期間では無理だ。

2008年の金融危機でトップ100空港の旅客水準が翌年に減少したものの2010年に増加に転じた。今回の危機に関する予測をもとにすると、一部の空港で2019年水準を上回る実績の実現は数年先となろう。■

2020年5月4日月曜日

強気のエアバスCEOの需要回復見通しとボーイングとの競合再開への対応



Airbus Mulls 'Smaller Scale' Rate Changes, May Not Need State Aid

Jens Flottau April 29, 2020

Airbus
Credit: Airbus

エアバスは6月まで生産計画の変更は小幅にとどめ、状況に応じ変更したとしても以前の削減規模より「小規模」になるとCEOジローム・フォーリ Guillaume Fauryが4月29日発言した。
同社は顧客各社の事業計画、財務状況を分析し、各社の短期行動と長期戦略双方を理解したいとする。同時に需要回復を予想に応じた財務計画にするという。
同社CFOドミニク・アサムは「予定通りなら政府支援は不要だし、4月はじめの段階で300億ユーロ(325億ドル)の流動資金があり、当面は十分に手当できる」と言い切っている。
同社は4月8日に三分の一程度減産する決定をし、ナローボディは月産40機に(以前は60機)、A330/A330neoは2機、A350は6機となった。アナリストには顧客が納入先送りに走る中、さらなる減産は避けられないとの見方もある。
フォーリは第1四半期の122機納入に対し、第2四半期は「極めて低調」になると見ている。第1四半期は完成済み60機が納入できなかった。
「夏以降は引き渡しは増える」とフォーリは完成機の未引き渡しは第3四半期がピークと見ている。「ただし状況はきわめて動的だ」
短期的にはキャッシュ節約と生産規模削減で乗り切るが、フォーリとしては短期のうちに成長路線に再び乗せたいとする。「競争は再開する。当社は素早く柔軟に立ち回りたい。今回の危機に捕らわれ競争が再開できなくなる恐れもある」が単通路機需要はワイドボディより早く回復すると見ている。ただしその時期は「予測が極めて困難」という。COVID-19危機が収まれば「単通路機の増産は極めて急速」になるという。A321XLR開発は「好調なスピードで」進めるという。
エアライン各社との協議から、フォーリはウィルス危機前より小型機を好む傾向が強まっていると感じている。この点でエアバスは有利な立場で、A220を最小のナローボディ機として、A321XLRを一部ワイドボディ機を食う形で品揃えしているとする。
ワイドボディ需要の回復は2023年ないし2035年以降とフォーリは見る。だがナローボディの見通しは「そこまで暗くない」という。このためエアバスは以前の生産規模へ復帰する力を温存する。新規設備投資としてツールーズの単通路機生産ライン追加などは需要が月産60機ラインを超えたと判断するまで凍結する。
ボーイングがコロナウィルスに加えMAXの飛行停止で苦境にあることを受け、フォーリはエアバスの「競争力は向上しており、製品揃えは適切」と主張。また今回の危機は「機材更新が早まるチャンスになる可能性がある」とし、ボーイングとエンブラエルの民生機共同事業構想が潰れたのは「付随的損害を生み、競争面で当社によい結果をもたらす」と見ている。
エアバスの第1四半期売上は106億ユーロで4.8億ユーロの純損だった。前年同時期は125億ユーロ売上で4千万ユーロの純利益を計上していた。調整後の営業利益は49%減の2.8億ユーロだ。自由に使えるキャシュフローは第1四半期はマイナス80億ユーロと前年同期の2倍になっている。エアバスは未納入の60機を在庫算入に迫られ、36億ユーロを贈賄騒動の解決に支払っている。■

2020年5月3日日曜日

ボーイング:民間機事業不振で国防事業頼みに


シアトルで生産中のP-8 ポセイドン哨戒機。 Boeing photo.


ーイング経営陣は業績維持を防衛部門に期待せざるを得なくなっている。民生機事業はCOVID-19の打撃を受けたままだ。

民間航空輸送は前年比95%減となり、同社CEOデイヴ・キャルホーンは各アナリストとの電話会議で第1四半期業績を語っていた。エアライン業界は大幅な業務縮小で機材は地上待機のまま、新規機材発注は先送りされ、機材受領も延期され支払いが遅れたり止まっている。

世界的な経済減速によりボーイングの第1四半期売上は169億ドル、13.5億ドル赤字に転落。前年同期の売上は229億ドルで23.5億ドルの黒字。

「政府向け防衛宇宙事業が今後の業績安定に重要な要素になっています」「政府向け事業は2019年の収益で45パーセントを占めるまでになりました。今年以降の比重が増えるのは明らかです」(キャルホーン)

 以前から737 Max 旅客機の飛行再開が決まらずボーイングの財務環境は厳しく、 737 Max 生産は1月から停止したままだ。

2021会計年度は国防総省事業が同社の防衛部門を後押しし、防衛部門の売上が民生部門を上回る規模に拡大するとキャルホーンは見ている。

直近の業績に貢献が期待される事業に海軍向けMQ-25Aスティングレー無人艦載給油機、海軍向け超大型無人海中機(XLUUV)、空軍向けT-7レッドホーク練習機、同じく空軍向けMH-139グレイウルフヘリコプター(UH-1ヒューイの後継機)がある。

米海軍はMQ-25給油機4機の製造契約をボーイングに2018年に8億ドルで交付した。海軍は同型機を72機配備する。

同年に空軍はT-7レッドホーク練習機製造で92億ドル契約を交付し、グレイウルフヘリコプターでも24億ドルの契約を交付した。各事業でボーイングは他社より低金額を提示したのは、他事業でキャッシュフローを確保し交付前に開発構想を固めることができたためだ。この戦略を打ち立てたデニス・ミュイレンバーグは昨年12月にCEOの座を退いた。

2019年2月には海軍から43百万ドルでオーカXLUUV4隻建造の契約を交付されている。設計はエコーボイジャー無人ディーゼル電気推進潜水艇が原型で、エコーは全長51フィートで母艦から発進し6,500カイリを自律運行できる。

2年前は民生機事業が同社の主力だった。ジェット旅客機事業でキャッシュを確保し研究開発に投入することで他社に差を付けてきたが、国防総省契約がないと売上が安定しなくなるまでになった。

民生機部門の減速で同社の研究開発力にどんな影響が生まれるかは不明だ。ボーイングは16万名の従業員の10%を削減する。また配当支払いを中止するほか、不要不急の支出は見直す。

「研究開発や設備投資を削減、あるいは先送りする」のはコスト削減策の一環とキャルホーンは説明した。ただし、将来に大きな意味がある重要事項や技術には支出を続けるという。■

この記事は以下を再構成したものです。

In Role Reversal, Boeing's Defense Programs Prop Up Commercial Business



April 30, 2020 11:47 AM

お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。