2020年2月23日日曜日

中国航空需要の急すぎる減少、いまやポルトガル程度の規模へ

ブルームバーグの記事です。今回の事態が今後どんな影響を与えるのか、制限が解除されれば再び人の大移動で中国路線が活況を呈するはずですが、一体いつになるのか興味津々というところですが、キャッシュフローの悪化で整備不良となるエアラインが生まれないことを祈るばかりです

 

China’s Aviation Market Shrinks to Smaller Than Portugal’s

2020年2月18日 12:02 JST

 

2020年代中には米国を追い抜く予測まで出ていた中国の航空需要だが、コロナウィルス流行で急減少し、かつての世界三位が今や25位とポルトガルの次となってしまった。
湖北省を中心には流行が広がったことからエアライン各社が中国運航便を次々に削減し、1月20日から2月17日にかけ170万席およそ8割が運行停止となった。一方で中国国内線では1,040万席分の運行が削減された。いずれもOAGエイビエーション・ワールドワイド調べ。
「コロナウィルスにより壊滅的な効果が生まれている」とOAG上席アナリストのジョン・グラントが記している。「多くの面で改めて中国市場の占める大きさと航空サービスのグローバル化の影響を思い知らされる」
コロナウィルスの封じ込め策で中国路線を運行中止するエアラインは多く、中国から香港、台湾向け路線では5週間で25万席分が消え、中国三大エアラインの国際線では8割から9割が削減された。
その結果、中国南方航空の運行規模はカザフスタンのエア・アスタナをわずか800席上回る規模にまでに落ち込み、中国東方航空チュニスエアをわずかに上回る程度だという。両社の削減規模は週あたり20万席とOAGは把握している。
「ウィルス騒動が落ち着いても今回の影響が長期的成長に効いてくるエアラインがあらわれる」とグラントは見ている。■

2020年2月22日土曜日

ベルのEDAT技術は電動ヘリコプター実現の大きな一歩になりそう

まだ道は遠いのですが、ここに来て電動航空機の可能性が高まってきました。地道な技術ですが今後の動向に注目です。(ターミナル2同時配信記事)

EDAT testbed
フライ・バイ・ワイヤでトルク打ち消しを可能とした試験機Credit: Bell Helicopter

ベルがこっそりと電動トルク打ち消し装置の技術実証中で、電動垂直離着陸機(eVTOL)の実現に向かう可能性がでてきた。
同社の電動分散トルク打ち消し (EDAT) 技術試験機はモデル429双発軽ヘリコプターを改造し、固定ピッチ電動ファン4つを垂直安定装置にとりつけ、従来型テールローターを廃止している。
回転翼機で電動トルク打ち消し機能の開発が進んでいるが、ベルのEDATが最初に飛行にこぎつけた。テストは昨年5月に関心を集めることなく始まっていた。ベル試験施設があるケベックで試験機がホバリングする映像が公開されてEDATの存在がはじめて明らかになった。
自社資金で始めた研究開発にオタワ州政府が2018年に助成金を交付しており、安全と騒音軽減での利用者の期待の高まりに対応していくとEDAT主管のエリック・シヌサスが語っている。「安全と運行経費の改良を求める声が利用者の皆さんからでています。騒音への関心がこれまでになく高まっており、技術陣にプレッシャーがかかっています」
ヘリコプター騒音の大半はメインローターとテールローターの干渉が原因で、テールローターをダクト化すれば騒音が下がる。
ダクトは以前からある。エアバスは古くは1960年代に遡り採用している。だが電動の採用でトルク打ち消し効果が最大限必要ない段階ではファン回転数を下げて、騒音を減らせる。同社はEDATの騒音レベルを公表していないが、テスト記録では「通常の429型より相当下がっている」とシヌサスは述べている。
安全面で通常のテールローターは危険発生源となり、地上でもエンジンが回転する間は危険だ。これに対しEDATはメインローターが回転中でも停止できる。運行経費でも良い効果が生まれる。テールローター用の複雑なギアボックス、シャフトがなくなり点検整備が楽になる。
だがEDATの採用で大幅な設計変更が必要となる。機械式のトルク打ち消し制御のかわりに、フライ・バイ・ワイヤでファン4つをペダル操作する。空冷式ファンモーターに液冷発電機が付き、搭載するプラット&ホイットニーPW207タービンが動力となる。これまでのシャフトの代わりに配線が機体後部に走っている。モーター、発電機はサフランが供給する。
ファンが4つあることで冗長性も生まれる。地上テスト結果からわかったのはファン4つ全部が使えなくなってもトルク打ち消し効果がある程度確保されることだ。通常のヘリコプターでテールローターが故障すると墜落こそしないものの危険になる。
別の観点は応答性だとシヌサスは述べる。「大型ファン一基あるいは中型ファン2基の場合は回転慣性が働き、応答性が下がる」とし、4本式の採用が必要だという。
ヘリコプター業界では電動トルク打ち消し装置の研究が進んでいる。レオナルド・ヘリコプターズはAW139のテールローターを改装しており、ベルのFC-X試験機は2017年に発表されており、電動ファンを採用している。
次の段階はEDATの飛行性能の拡大とともに技術の適正化にあり、特に重量が問題となる。「これを踏石にし、完全電気機体につなげたい。型式証明取得も問題ではないだろう」(シヌサス)■
この記事は以下をもとに再構成しています。

Bell Achieves Electric Anti-Torque Flight First

Tony Osborne February 20, 2020


2020年2月16日日曜日

Max運行再開がさらに先送りに。ボーイングはどうするのか。

American cancels Max flights through mid-August

By Pilar Wolfsteller15 February 2020
メリカンエアラインズは保有するボーイング737 Maxの運行再開は8月18日以降と発表し、夏の繁忙期に同型機の投入ができなくなる。
同日にはユナイテッドエアラインズもMax運行再開を9月4日に先送りすると発表しており、サウスウェストエアラインズも前日に8月10日からの運行再開に変更と発表していた。
American Max
Source: American Airlines
American Airlines 737 Max
同社(本社テキサス州フォートワース)向けに完成ずむMax24機は地上に駐機中で、さらに76機が発注済み。同機の運行停止は11ヶ月目に入るが、型式証明再発行のめどはついていない。連邦航空局とボーイングは懸命に作業中だが、型式証明取得に向けたフライトテスト日程が組まれていない。
アメリカンは8月に運行再開を小規模で始め、徐々に拡大し、9月にかけ本格稼働させる予定。運行停止措置でキャンセルとなったフライトは2019年第4四半期までに10千便になっており、2020年には前年の540百万ドル欠損の影響で赤字を覚悟しているという。■

2020年2月9日日曜日

NMA開発決断が待ったなしのはずのボーイングだが、煮え切らない態度のままなのはなぜ

Boeing has no time to lose on NMA decision

By Pilar Wolfsteller6 February 2020

業界ではボーイングは中規模機NMAの開発の決断を急ぐべきとの声が出ている。同機事業は737 Max の危機的状況を受け重要性がましている。
ボーイングCEOディヴィッド・カルホーンは先週NMA事業にブレーキを掛けた。同社は次期機種の市場規模を再評価するという。
「双通路機で単通路機の経済性を実現できるかが問題だが難しいだろう」とTeal グループ副社長リチャード・アブラフィアは2月5日述べている。「カルホーンの決断先送りに賛成する。ただ事態は深刻で中規模市場向け機種開発に向かわないと結果は取り返しがつかなくなる」
ここ数年ボーイングはNMA開発の着手をにわたり口にしており、270席で4千ないし5千カイリ(7,400-9,300km)の性能の想定だ。だが737 Maxの飛行停止措置のためNMAの2020年代中頃の販売開始想定が危うくなっている。一方でエアバスは2019年のA321XLR投入で中間規模市場攻略を開始した。このためボーイングは需要に取り残される危険に直面しており、経済性にすぐれた単通路機が双通路機よりおよそ2対1の割合で人気を集めている。
「以前は1対1だった単通路機と双通路機の市場規模が2対1になり、7割3割にもなりえる。長期的には単通路機が主流になりそうだ」「Maxは非常に厳しい事業環境だが、同時にボーイングにもここ数十年で最大の難題となっている。Maxが市場の大変換点で強力な競争相手に直面する中で技術的な問題に直面しているからだ」(アブラフィア)
エアラインにはNMAを一刻も早く欲しいとの動きがあり、757や767の老朽化が背景にある。ボーイングが新型機開発を早期開始しないとユナイテッドデルタ含む各社で運行中の330機がエアバスの新型長距離単通路機に更新される可能性がある。その中でエアバス以外の選択肢が必要という。ユナイテッドはA321XLRを50機昨年12月に発注しており、納入は2024年から始まる。
カルホーンCEOは同社が民生機市場への新型機導入効果の評価中と述べており、NMA以外の選択肢もあるかもしれない。同社は好評のA321neoへの対抗機種として新型機を開発する考えはないとし、パイロットとシステムの相互作用を中心にした飛行制御システムの開発に集中しているとアナリスト陣に語っている。■


ボーイングが相当苦境に立っていることが伺えます。エアバスとの差が今後拡大していくと大変なことになります。さらに中国に大きな期待をしているボーイングが今回のウィルス騒動で大きな後退を迫られる可能性もあり、ここ数年は苦しい状況が続きそうです。A321の拡大版で長時間のフライトは勘弁願いたいので、ボーイングには再び空の旅を快適にしてくれる新型機開発をお願いしたいものです。

お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。