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2019年8月10日土曜日

解説 ボンバルディアの民間機事業はどこに誤りがあったのか

Aviation Week & Space Technology

Opinion: The Mistakes Behind Bombardier’s Commercial Aircraft Failures

Aug 6, 2019Antoine Gelain | Aviation Week & Space Technology

CRJの三菱への売却を6月に発表したボンバルディアは33年前にカナデアをカナダ政府から購入して参入した事業から撤退するが、CRJで2千機、Qシリーズで1,300機が製造販売されており、さらに新型Cシリーズの開発まで行ったがボンバルディアの民間航空宇宙産業での実績は財務と戦略面での失敗事例として記憶に残るのは間違いない。
まず、1990年代末に戦略面でジレンマがあった。ボンバルディアはCRJファミリーの機体で大きな成功を収め、50席、70席、86席と次々にストレッチし、ついにリージョナル機の限界まで達してしまった。
ボンバルディア幹部は100-150席規模の分野はエアバスA318/319およびボーイング737-600-700が先乗りしいるもののこのセグメントの需要に最適化しているわけではないことに気づく。そこからボンバルディアに同セグメントのニーズに直接答える機体を一から作る機会を活用すれば既存機種に対して圧倒的に有利になるとの望みが開けた。


紆余曲折はあったものの完全新型機の開発には抵抗できない魅力がありCシリーズが2008年立ち上げられ、野心的なロードマップが広げられた。ねらいは市場の50%を手にすることで、100-150席規模の機体需要は20年で6千機超規模と見積もり、「クラス最高」の性能を燃料消費率で実行し、運行経費、CO2排出量ともに有利な状況を生むと期待できたのは画期的な技術として樹脂流し込みやギアードターボファンが有利に働くとの目算があった。少なくとも大胆なプロジェクトであったといえる。
そしてこの挑戦は同社には大規模すぎると判明した。55億ドルを投じた開発(当初予想の2倍以上になった)、さらに途中で数十億ドルを失い、ボンバルディア社のトップ経営層はこのまま実施を続ければ会社がもたないと見た。Cシリーズの将来はかぼそい糸でつながり、CRJとQシリーズが製品寿命の終わりに近づく中で同社は撤退を決めたのだ。
結局、ボンバルディア経営陣は戦略面でいくつかの誤りをおかしたあげく、市場動向や業界の力関係をもっとはっきりと認識していればこれを避けられたのではないか。
最初の誤りはCシリーズで狙うべきセグメントは同社が親しんできた市場の延長線にはないのを認識できなかったことだ。全く別の市場で要求事項も成功の尺度もこれまでと異なっていた。つまりCシリーズはカナダの小企業が世界を二分する巨大企業に挑戦してしまった事例だ。
二番目の誤りはボンバルディアの従来機種での知見により有利にスタートでき、急速に習熟度がCシリーズで上がると考えてしまったことだ。だがこれだけ多くの技術革新を5年間という短期間に実用化しようとしたことのは都合のよい発想で同社は事実上すべての点で現実に直面させられたのだ。
三番目にはサプライチェーンで規格通りの部品を予定通りかつ目標コスト内で実現する課題を過小評価したことだ。外注化を大胆に進める決定をサプライチェーンの適正な管理がないままにすすめたことで同社はサプライヤーの動向に左右される存在になり、コストは管理不能な状態に陥った。エアバスがここで介入し利益が出るようにA220のサプライチェーンを再構築したのは当然である。 
そうなるとボンバルディア経営陣は最も基本的な社内決定に失敗し、業界の動向の把握にも失敗し、分析をもとに戦略決定刷ることにも失敗している。参入障壁が高い市場に参入していなければ、ボンバルディアは今でも中核事業を守り今より良い状態を保っていただろう。また市場シェアも新規参入組の三菱、Comac、スホイから守っていただろう。またエンブラエルやATRににらみもきかしていたはずだ。Cシリーズのエアバスやボーイングへの売却もなかったはずだ。Cシリーズの売却でエアバスは同社に形式として1ドルを支払ったが、別のケースでは売却価格も異なっていたはずだ。■

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