2020年7月23日木曜日

チャイナエアラインズが社名変更へ



台湾立法院がナショナルキャリア、チャイナエアラインズ中華航空の社名変更提案を承認し、ブランド再構築に道が開いた。

今回の提案は4月に立法院に提出され、「同社の国際認知度を強化」するべく台湾の名称を強調するよう求めながら、同社の運航権に影響が出ずかつ台湾の国益が損なわれることがないよう狙う。

出席議員64名全員が同提案に賛成し、交通部に実施を求める。立法院は具体的日程を示さず、社名変更を求めている。

チャイナエアラインズの社名変更問題は長く議論の種で、今回はコロナウィルス流行の中で脚光を浴びた。

スカイチーム加盟の同社は4月に世界各地に貨物便を送り、コロナウィルス対策支援で医療品を寄贈してきた。だが社名に「チャイナ」とあり混乱を巻き起こし、寄贈が中国からか台湾からなのかわかりにくくしてきたという。■



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By Alfred Chua23 July 2020

2020年7月18日土曜日

航空宇宙産業界は2020年以降も危機的状況。救いはあるのか。

西側諸国の航空宇宙・国防産業界のサプライヤー各社は2020年下半期に存続の危機に直面する。

業界の生死を握る民間航空旅行需要は今年上半期はボーイング737 MAXとCOVID-19のダブルパンチを受けており、2020年の旅客需要は2019年の55%程度になると金融界はみている。問題はワクチン開発が間に合わなくても2021年に大きな需要回復があるのかだ。

メーカー各社は2019年水準への復帰は2023年から2025年以降とみている。一時は数千機の大型旅客機需要が見込まれていたが今は消えている。航空宇宙・国防(A&D)業界で過剰生産能力が30から50%あると専門家は試算しており、二次サプライヤーでは2割ほどの企業で今後存続が危うくなる。今回のパンデミック前にナローボディー機の月産は60機に近づいていた。ワイドボディ機はすでに減速し、国防予算はインフレ分を除けば現状水準を維持とみられていた。

AeroSystems manufacturing plant
航空宇宙防衛部門で生産能力は30から50パーセント過剰な状態でサプライヤーの2割が今後業界から姿を消すとの見方がある。Credit: Spirit AeroSystems

「COVID-19は小惑星が衝突して太陽の光が届かくなったのと同様。航空ビジネスで大量絶滅に匹敵する」(Warbird Capital CEO兼Chief Investment Officer のニコラス・パスツシャンNicholas Pastushan)

パスツシャンの経歴にはGEキャピタルエイビエーションサービシズでの6年が含まれる。「これまではこうした出来事は核戦争、世界の終りに匹敵する事態で、どうあがいても生き残れないとされてきた。今は誰も死んでいないものの交通量が一気に減る事態が発生したわけだ」

パスツシャンとならびバンクオブアメリカのアナリスト、ロナルド・エプスタインはともに新規製造機の需要は一気にしぼんだと見ている。「2023年に2019年水準に本当に回復するのなら、これから数年間は新規製造機体は不要ということになる。これまで新規製造機体の6割は需要増への対応分だったが、今必要なのはその他4割を占める機体更新用需要だけだ」(エプスタイン)

Naveoのリチャード・ブラウンは7月8日に、2020年の新規機体生産は1,090機規模と予測し、生産額ベースでは2006年水準になるという。

コンサルタント企業Frost & Sullivanの主任民生航空宇宙産業アナリスト・ティモシー・クーダーは2025年にかけ事業量で4,750億ドル相当が民間航空機部門で消滅するという。

エプスタイン、パスツシャン両名は生産の完全停止は想定していない。というのもそうなればサプライチェーン、業界ともに消滅するからだ。だからといって業界には慰めにもならない。今や航空機完成メーカーが生産規模を最低限に絞る方向に向かい業界の構造そのものに変化を避けて通れなくなったからだ。

西側のA&D製造業はピラミッド構造になっている。頂点の8社から10社が完成機メーカーや代表的防衛産業主契約企業、さらに十数社の大手一次サプライヤー企業だ。後者には完成機メーカーと競合するものもある。その下に二次サプライヤーがあり、国防関係では「小さな巨人」企業があるがここは最近は規模が縮小している。三次サプライヤーは15千社を超え、個人経営に近い企業もある。民生航空ビジネスが四分の三程度の比重となっている。

このピラミッドで下に行くほど不況の影響が深刻になる。「小型部品や予備部品メーカーは中小企業が多数だ」とフロストでA&D部門の副社長を務めるマイク・ブレイズが述べる。「大企業以上の打撃を受け、大企業なら多角化で嵐が来ても他部門のおかげで耐えられますが、サプライチェーンの中小企業ではそうもいかず事業をたたむところも出てきそうです。そもそもサプライチェーンは最初から良好な形で出発しているわけではありません」

下層部門の企業に影響がすでに出ていると述べる専門家は多い。「完成機メーカーから設備投資を進め増産の圧力を受ける状態が10年続いており、ボーイングからは成功のためのパートナーシップ、エアバスからは社内効率化のための SCOPe/SCOPe+もあり、業界のサプライチェーンでは資本不足の状態となっている」とAltonは6月レポートで指摘していた。

業界では各CEOが第二四半期からサプライチェーンで警鐘を鳴らしていた。「エアライン顧客の各社が厳しい状況になると小規模事業各社のサプライヤーが一番心配になる」(レイセオンテクノロジーズCEOグレゴリー・ヘイズ)また「エアライン各社が打撃を受けているがこちらも深刻だ」とエアバスCEOジローム・フォーリは述べた。「次はサプライチェーンが波にのまれる」

ではリスクが高いのはどこか。航空産業の構造そのものと答える向きが多い。というのも今回の危機の前から固定費が高く、税引き前の利ざやが低かったためだ。整備補修点検企業や部品供給メーカーもリストに入る。特にワイドボディー機や旧型機で早めの退役に向かうとの予想がある。ボーイングおよび傘下のサプライヤーのリスクはエアバス陣営より高いと見られている。MAX生産が事実上停止しており、737の800機近くが納品前の状態でエアラインが受領しない機体も含め駐機したままになっている。

「当社の回復予測では2022年の補修品販売規模は2019年比較で65-75%、完成機販売が2018年水準に戻るのは2024年」とUBSは6月18日にレポートを出していた。

とはいえあらゆる企業が同じ程度の苦難に直面しているわけではない。国防部門のサプライヤーは比較的安泰だ。ペンタゴンは30億ドルを投じ主契約企業向けの支払いを前倒ししており、サプライヤー各社も財務強化に向かっている。

さらに国防部門の産業基盤は整理統合ずみだ。これに対して民生部門のサプライチェーンは完成機メーカーが業務の三分の二程度を外注化していることもありはるかに多様になっている。なんといっても民生部門ではいまは過去のものとなった受注残の山の存在から新規参入企業や資本投下が相次いでいた。

「国防契約企業では下層部分の強化が業界全体の耐性強化につながった」とムーディズが6月にレポートしていた。「現在の米国防企業は規模、業績、対応がいずれも10年前より強化されている」

ムーディズでは国防契約企業の「大部分」が2011年予算化管理法で生まれた課題を乗り切った経営陣に率いられていると指摘。同法では支出キャップの強制執行停止措置が生まれた。だがその後のビジネス環境は変化が激しく、政府そのものも機能停止したり、ぎりぎりのタイミングで議会内の妥協で予算が成立したり、政府も技術面で受け入れ可能なら低予算装備品の購入に切り替えてきた。

「国防部門の航空宇宙産業の生産水準、作業時間、業務開拓はCOVID-19のアウトブレイクがあっても影響はわずか」とムーディズのブルース・ハースコヴィックスは指摘している。「政府が各施設を維持させ事業案件を継続させたことで安定度が生まれ、業界は成熟しているといえる」

三段階の移行期間で第一段階の末期にA&Dサプライヤーの産業基盤が近づいていると見るコンサルタントが多い。当初の強い危機感はこれから消えるとも見ている。第一段階では生き残りを決めるのは流動性であり、現金および等価物が当面の事業継続に必要な量確保できるかだ。「今の最大懸念は軟着陸をどうするかだ」とローランド・バーガーでグローバル規模A&Dを見るマンフレッド・ヘイダーが述べている。

第二段階に入ると、各社は最大24か月に及ぶ産業基盤への後遺症ならびに各種の想定案への対応に追われる。「その内容には生産能力調整や、もっと積極的な動き、戦略的な対応などあらかじめ想定しておき、いったん青信号が出ればすぐ対応可能にしておく措置がある」とアルトンのレポートにある。各社で社内検討チームを立ち上げ、日常業務の傍らで案を練っておくべきだ。

第二段階では各サプライヤーは積極策をとり自社業務の再構築を行うべきとKPMGは5月に提起していた。これまで航空業界を襲った危機状況の9.11や2008年金融危機の経験から危機を乗り切るだけでは不十分とわかっているためだ。「迅速かつ大胆に舵を切った企業はそうでない企業より3倍4倍も業績を伸ばしている」

同時にA&Dが1970年代の石油ショック後と似た変化期に突入したとの見方がある。同様の現象は冷戦終結後や9.11後にも発生している。共通するのはビジネス活動がピーク時の50パーセントまで低下してから復興が始まったことだ。これが最終段階で、第二段階と並行で始まるが、2021年に顕著になる。

「原因にかかわらず、経済環境の変化で業界も進化する事例が多いことがわかっている」(KPMG)

第三段階になるといくつものトレンドにより産業基盤を再構築することになる。サプライヤーの強化、サプライチェーンの地域内再編成、政府による特定技術分野への資金投入、業務のデジタル化、完成機メーカーの内製化等だ。なかでも整理統合、地域化、原価削減が大きな目標となるだろう。

こうしてみると、今後は吸収合併が増え、重要度が低い分野は売却処分され、外部投資機関も引き続き活躍しそうだ。同時に従来型産業分野で政府が大きな役割を担い、企業救済に関与するだけでなく、業界の優先順位づけにも発言力を増す。環境にやさしいエアラインづくりもそのひとつだ。

さらにすでにはじまっている行為から課題も発生する。「健全な供給も重要だが、全体に手を入れることも課題」とUBSは指摘。「サプライチェーンが機能停止しただけでなく、停止、再開、停止をくりかえしている。その他分野ではサプライヤーが一度も業務停止していないものもある。つまり過小生産の年月がある一方で新需要の縮小現象が2021年から2025年にかけ発生する」

今後の予想は以下のように分かれる。

Flight Paths logo

楽観的な見方

  • 整理統合はパンデミック前からの不採算資産が対象となる
  • エンドマーケットの需要は高く、企業維持に最低限規模以上の生産は維持可能
  • 需要は2022年にパンデミック前の水準に復帰する

中立的な見方

  • 買収合併もあり、サプライヤーの整理統合につながる
  • 生産量は安定するが企業存続に最低限必要な規模にしかならない
  • パンデミック前水準への復帰は2023年から25年になる

悲観的な見方

  • 整理統合や市場撤退により下層部分のサプライヤーの2割がA&Dから姿を消す
  • 生産計画が立てられなくなりサプライチェーンは受注変動に直面する
  • エンドマーケットの需要は再設定され、パンデミック前水準に戻ることはなく復活もない

この記事は以下を再構成したものです。

Suppliers Face Existential Decisions After COVID-19 Crisis

Suppliers Face Existential Decisions After COVID-19 Crisis


Michael Bruno July 15, 2020

2020年7月4日土曜日

747生産終了が見えてきた

Boeing To End 747 Jumbo Jet Production After More Than 50 Years: Report

Demand for the iconic four-engine jet has dwindled in recent years and other factors have further pushed Boeing to stop making them entirely.

BOEING
ボーイングは受注中の機体をもって747ジャンボジェットの生産を終了する。最終号機は2年後に完成見込で、50年に及んだ生産は終止符を打つ。COVID-19の世界的流行で航空旅行や航空業界大きく打撃を受けているが、その前から「空の女王」とまで呼ばれ旅客機の象徴的存在の同機も市場を失っていた。
747生産ライン閉鎖を報じたのはブルームバーグが最初で2020年7月2日だった。ボーイングは記事を否定も肯定もしていない。シカゴ本社はワシントン州エバレット工場に方針を伝えていないようだ。同工場では最新の747-8組み立てを行っている。1960年代末から747を送り出してきた同工場は今でも世界最大規模の建物である。
「月産0.5機で生産中の747-8には2年分の受注残がある」とボーイングはブルームバーグに回答していた。「今後も生産ライン維持のため適切な判断を下し顧客ニーズに対応していく」
現時点の受注残は747-8F貨物機16機でうち12機はUPSの発注だ。残りはロシアのヴォルガ-ドネプルグループだが係争中だ。
1月にロシアの同社からボーイングへ、発注済み4機の代金が支払えない、777F貨物機3も同様と伝えてきた。6月に米裁判所の判決でヴォルガ-ドネプルは機体の再販売を禁じられた。UPSが一機を購入すると表明した。
747生産もいよいよ終息の時が近づいている兆候があった。2015年に月産1機に減り、現在はその半分になっている。
ブルームバーグからは2019年11月にもボーイング747協力企業で最大規模のトライアンフグループが747-8胴体部を生産していたカリフォーニア州ホーソン工場の設備を競売中との記事があり、生産縮小の様子を伝えていた。
現在生産中の747-8型への需要は減少の一途で世界各地のエアラインが747を第一線から退けている。旅客型747-8iでは米空軍が次期大統領専用機VC-25Bに改装するため2機を購入した2017年以降は一機も販売できていない。しかも米空軍は新造機体ではなく倒産したロシアのエアライン、トランスアエロの発注機材を購入したのだ。
販売はますます難しさをましている。民間向け以外には軍用で米空軍が747原型のE-4ナイトウォッチ緊急指令機の後継機がある。だが、ボーイング747が再び採用される勝算は低く、小型機の767原型のKC-46空中給油機の派生型になりそうだ。
747-8生産が現時点の受注分で終了すると153機程度となる。これは貨物型も含めた数字だ。2016年以降の747-8販売でボーイングは各機につき40百万ドルを失ったとの試算もある。
ボーイングが直面する事態は市場の全体傾向と共通だ。2019年にエアバスからA380生産を2021年に終了する発表があった。同機は747の競合機種として唯一の存在だが需要がないためだ。A380の合計生産機数は251機となり、747の1,550機に及ばない。
COVID-19パンデミックにより航空旅行業界が打撃を受け、世界規模で景気後退が始まったことで事態はさらに悪化した。航空貨物業界はまだ良好といっても747-8F生産を維持するだけの需要が望めない。
ボーイングの業績も747と別にここ数年は悪化している。787ドリームライナーの開発、初期生産、稼働直後で困難な曲面に直面したのは2000年代末から2010年代始めのことで、最近も737 MAXを巡り大規模な騒動になっている。
欧州航空安全局(EASA)、米連邦航空局(FAA)他が737 MAXの飛行停止措置を命じたのは2019年で死亡墜落事故の連続を受けてのことだった。FAAは737MAXの型式証明再発行に向けテストを完了したあg、EASAは独自にテストで同機の安全を確認すると述べており、COVID-19大流行でボーイングは同機の販売機会を大きく失っている。
不採算の747ラインを閉鎖すればボーイングも欠損の一部をカバーできる。ボーイングは空いた生産施設他を別用途にあてられる。

生産終了となっても747各型は空軍のVC-25B含め今後も世界各地を飛ぶ。だが誰でも識別できる747ファミリーもいよいよ黄昏の中に入ることになる。■

お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。