2020年10月24日土曜日

三菱重工のスペースジェット開発凍結正式発表は10月30日の模様。残念ですが.....

 

MHI denies reports of SpaceJet development freeze

By Greg Waldron23 October 2020

https://www.flightglobal.com/aerospace/mhi-denies-reports-of-spacejet-development-freeze/140761.article


SpaceJet-c-MitsubishiAircaft

Source: Mitsubishi Aircraft

One of the M90 development aircraft

 

菱重工業(MHI)は三菱航空機スペースジェット開発の凍結を伝える報道記事を否定した。


「MHIは新型インフルエンザ流行も考慮しスペースジェット事業の詳細日程を検討中で、適正な資金投入をもって開発を進めており、MHIグループに逆風の金融環境も考慮している」と同社は発表。「様々な可能性を検討したのは事実だが、今回の記事で開発凍結を決定したとあるのは間違いだ」


MHIは第2四半期営業実績に合わせスペースジェット含む中期事業計画を10月30日に発表する。


報道では開発を大幅縮小し、世界的な航空不況に合わせ凍結するとある。今年初めにMHIは事業縮小の手始めに海外拠点の閉鎖としてワシントン州モーゼスレイクの飛行テスト拠点の名をあげていた。2020年中ごろまで続いたフライトテストはM90(旧MRJ90)を中心にモーゼスレイク周辺で展開していた。同社は令和2年度の同機関連事業予算を600億円に半減させた。


フライトテストは停止中だが三菱航空機は「当社チームはテストデータを解析中。テストは合計3900時間に上る」と発表。


スペースジェットは遅延の繰り返しで、テコ入れ策として2019年のパリ航空ショーでMRJから改称された。


これによりMRJ70開発は取り消され、あらたに76席型がスペースジェットM100になったが、今年はじめに開発は停止されている。■


2020年10月17日土曜日

コロナウィルス発生地の中国で国内エアライン利用客が初めて前年を上回る実績を計上。他国から見れば複雑な気持ちになるのでは。


China’s ‘Big Three’ see full domestic traffic recovery in September

By Alfred Chua17 October 2020

https://www.flightglobal.com/airlines/chinas-big-three-see-full-domestic-traffic-recovery-in-september/140665.article



airbus 50 a350 air china

Source: Airbus.

中国国際の9月国内利用は778万人で対前年比で1.3%増だった。

 

国のエアライン大手三社はコロナウィルス流行後で初めて前年を上回る乗客数になった。


9月実績を発表した中国国際中国南方中国東方の各社で前年同期を上回る利用客が搭乗した。国内ASK、RPKともに対前年比増になった。国内路線はパンデミック前の状況に戻ったが、国際線需要は渡航制限のため依然として低水準だ。 


「ビッグスリー」が間もなく発表する9月30日締めの四半期財務実績は赤字の見込みで黒字基調に戻る予測に反する結果になりそうだ。


9月だけ見ると中国国際は国内線で778万名を運び、対前年比1.3%増だった。今年8月からは7%増となった。路線網全体では782万名で8月比較では6.9%増だが年間では16.6%減に終わった。


スターアライアンス加盟の同社国内ASKは年率5.6%増で、8月比較で4.6%増だった。一方RPKは年率0.1%増、8月比較では9.2%増だった。


中国南方航空国内線は1110万名年率2.5%増とまずまずの実績で8月から8%増となった。路線網全体で1120万名を運び、年率12%減となった。国内ASKは年率6.6%増、8月比較は6.3%増だった。


中国東方航空の9月実績は国内路線890万名、年率1.2%増、8月比で5.1%増だったが路線全体では900万名で対前年比14%減に終わった。スカイチーム加盟の同社は国内ASKの年間伸び率がビッグスリーで最高の8.5%になった。前月からのASK増加は2.5%だった。同月のRPKは年間8.5%増、月間比較でASKは7.6%増加した。


9月の旅客実績は中国国内移動の順調な回復を示しているが、そもそも中国が今回のウィルスの発生地であり、当局は大量発生の事実が判明し移動制限を課してきた。


中国系エアライン各社は10月初めのゴールデンウィークに1300万名の輸送実績を記録し、運航便数はパンデミック前水準に近づいた。■

2020年10月10日土曜日

新世代の民間超音速エアライナーを目指すブームのXB-1がロールアウトしました。

 (ターミナル1・2共通記事)エアライン業界は大変保守的で既存機種を最大限に使うビジネスモデルにしがみついています。その結果、半世紀で機種の変更こそありましたが、基本的に性能は進化していません。ここに果敢に挑戦する新興企業数社が米国に生まれています。はたしてその試みが成功するか注目です。機体が登場する3年後に現在の航空不況が克服されているかもありますが、ビジネスジェット分野なら可能性はありますね。超音速性能をいかんなく発揮できるのが海洋上空など限られるのが制約ですが、もともとコンコードを警戒した米議会が陸上上空の超音速飛行を禁止したのでは。軍用用途にした場合、大統領専用機もいいですが、ISR機材はどうでしょう。


 

ーム・スーパーソニック(本社コロラド州)がXB-1超音速実証機をロールアウトした。同機は開発を目指す実機の縮小版で「ベイビーブーム」と呼ばれる。飛行開始は来年の予定で、55席の超音速旅客機「オーヴァチュア」Overtureの実現を目指す。

 

同機には民間機登録番号N990XBがつき、COVID-19流行のためヴァーチャル発表式典で2020年10月7日に執り行われた。

 

XB-1は全長71フィートで長く伸びたデルタ翼の全幅は17フィートあり、「離着陸時の低速安定性と高速飛行時の効率性を両立させた」とブームは報道資料で説明。機体は炭素複合材料を大量に使い、「超音速飛行時の高温ストレス環境でも強度と剛性を確保した」という。実証機はオーヴァチュアの三分の一の大きさだ。

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ジェネラルエレクトリックJ85-15ターボジェット三基で推力合計12千ポンドを発生する。最高速度マッハ2.2程度をめざす。同エンジンは米空軍で供用中のT-35タロン練習機に搭載されている。

 

BOOM SUPERSONIC

 

空気取り入れ口、排気口はともに可動式でオーヴァチュアでは「コンコードの三十分の一の騒音」になるという。また空力学的に洗練された機体形状でソニックブーム発生も変わるという。

 

XB-1の胴体部分は細長く、機首を延長しているため操縦時に視野が制限されるが、英仏合作のコンコードでは着陸時には機首を下げる複雑な機構を採用していた。ベイビーブームでは遠隔画像システムによりパイロットが機首の先を「見る」ことが可能。これはロッキード・マーティンがNASA向けに製造したX-59静かな超音速輸送 (QueSST)実証機に採用したのと同じ機構だ。

 

ブームはオーヴァチュア投入で民間航空に一石を投じるとする。マッハ2.2は最高速度で巡航飛行時はマッハ2未満となるが、最大航続距離は4,500カイリで、同社は運航効果が見込める路線は500を超えると見る。その一つがニューヨーク=ロンドン線でかつてコンコードも飛行していた。ソニックブームによる騒音問題はまだ未解決だが、同社は高人口密度地帯上空はコンコード同様に亜音速飛行するとしている。

 

この方法でオーヴァチュアは既存亜音速機種に代わる低コストかつ高信頼性の選択肢となる。「シートマイル費用で見ればオーヴァチュアは亜音速ワイドボディ機より低水準です」と同社ウェブサイトにあるが、フライト時間当たりの経費では数字を出していない。ブームは既存機種のビジネスクラス並みの料金を実現するのが目標としている。

 

BOOM SUPERSONIC

オーヴァチュアをエアライナーにした場合の想像図

 

 

ブームは機体価格を200百万ドル程度にするとしており、ここには内装他オプション部分は含んでいない。このとおりなら既存ワイドボディ機より低価格となるが、一方で既存機種の輸送力は大きい。2018年にエアバスは売れ筋のA330-200の平均価格は238.5百万ドルと発表していたが、同機は最大406席の輸送力がある。ボーイングも767-300ERの平均価格を217.9百万ドルと発表しており、300席の旅客を収容できる。

 

それでもオーヴァチュアは各方面から関心を集めており、ブームによればヴァージン日本航空も含めエアライン業界から76機の導入意向が寄せられている。ヴァージングループはブームの大株主でもあり、傘下のスペースシップカンパニーが機体製造テストを支援するとの報道が前に出ていた。

現実にプライベートジェット部門ではオーヴァチュアのような機体に大きな需要がありそうだ。大企業や大富豪など文字通り時が金につながる層には高速移動で時間を稼ぐのは当たり前になっている。マッハ2移動は当然関心を呼ぶ。ブームの提示価格が現状のビジネスジェットの二倍近くになっても同機を求める流れは変わらないだろう。同機が究極のステータスシンボルになる可能性もある。

 

超音速旅客機は軍用転用も可能で、The War Zone はブームの競合相手になるエアリオンAS2超音速ビジネスジェットの話題を前からお伝えしている。ブームは米空軍から契約交付を9月に受けている。これは超音速大統領専用機構想の検討がないようだ。空軍は同じく極超音速分野の新興企業ハーミウスコーポレーションHermeus CorporationエグゾソニックExosonicにも同様の研究を委託している。

 

BOOM SUPERSONIC

ブーム・オーヴァチュアを米空軍で供用する構想の想像図では機体に747原型のVC-25Aエアフォースワンと同じ塗装が施され、超音速大統領専用機となっている。

 

 

ブームはXB-1のテストとオーヴァチュア開発を並行実施すると発表している。まずベイビーブームの地上テストを完了し、飛行テストを2021年に開始する。同社の新工場が2022年に完成し、オーヴァチュア生産を開始し、3年後にロールアウトする。

 

ただし、XB-1、オーヴァチュア双方で遅延が発生している。XB-1の飛行テストは今年末開始の予定だったが、機体安定性強化システムで離着陸時の安全確保で対策が必要となり先送りされた。オーヴァチュアでも2017年時点で路線就航は2023年とされていた。

 

とひえ、XB-1実証機が完成し、テストも数か月後に実際に始まると思うと興奮してくる。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Boom Rolls Out Its XB-1 "Baby Boom" Supersonic Demonstrator Jet

BY JOSEPH TREVITHICK, THOMAS NEWDICK, TYLER ROGOWAY

OCTOBER 7, 2020


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2020年10月3日土曜日

ボーイング社内に完成済みMAXが470機、内60機超に買い手がつかない

 

Analysis Shows 13% Of Stored MAX Fleet Has No Customers

Sean Broderick October 01, 2020

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/analysis-shows-13-stored-max-fleet-has-no-customers

 

Boeing MAX aircraft

Credit: Boeing

 

ーイングは製造済み737 MAXの13%に新たに顧客を探す必要に迫られている。理由は数々あるが、世界各国でエアライン需要が低迷する中で発注元が受取りを拒んでいるとAviation Weekは分析。.

納入待ちのMAXは8月末時点で同社内に470機ほどあり、大部分が2019年3月中旬以降に生産された機体。この時点で同機は運航停止措置に入りボーイングも納入を停止した。

An Aviation Week Intelligence Network Fleet Dataの分析ではこのうち62機は発注元からキャンセルされており新しい買い手がみつかっていない。うち49機は航空機リース会社、エアラインは11機、のこり2機はボーイングビジネスジェットのVIP仕様だ。

この62機に加え、さらに12機でキャンセルが発生したがその後発注先が見つかった。ロイターによればボーイングはデルタエアラインズに余剰機体のうち最大40機の購入を期待している。デルタはベイキャリヤーでMAX発注が最大規模になっている。

MAX発注の取り消しは2020年1月から8月までで564機に上っており、うち114機がエアライン発注分だ。目立つのはGOLが34機、エアカナダの29機だ。

ボーイングは昨年で270機のMAX受注を失い、なかでもジェットエアウェイズが2019年4月に運航停止したのが大きかった。今年8月31日現在の受注残には同社発注分125機があり、162機のキャンセルの中で目だつ。

ボーイングでは納入実績を毎月発表しているが、納入待ち製造済み機数は公表していない。ここに過去18か月で生産されたMAX完成分が入る。

Aviation Weekの分析では2020年1月に生産を一時停止した時点で納入できないままのMAXが456機あった。その後生産再開したが、ボーイングは正確な数字を公表していない。そのため2020年に入っての生産数は不明だ。Jefferiesのアナリストからは9月中旬時点でスピリットエアロシステムズが737MAXの胴体部分22機分を納入していると伝えていた。

ボーイングの最新予測では737生産は2022年第一四半期に月産31機ペースに回復するとある。MAX納入も規制当局が飛行停止措置の解除に動けば再開の見通しで、FAA他当局が11月ないし12月にボーイングに正式通達すれば2020年中に一部の納入へ道が開く。

FAA長官スティーブ・ディクソンは元エアラインパイロットで737操縦経験があり、9月30日にボーイング所有のテスト機を操縦し、ボーイングが講じた変更内容を自ら試した。飛行後に同長官はボーイングの改良点に高揚した気分を隠さなかったが、FAAの飛行停止措置解除の日付については記者団に語らなかった。.

Aviation WeekのデータではMAXに合計3,993機の受注があり、うち11機がボーイングビジネスジェット仕様だ。Aviation Week のまとめた数字にはジェットエアウェイズ向け機体のように納入可能性が低い機数は入っていない。■


お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。