2021年6月30日水曜日

ユナイテッドの大規模機材発注が明らかに。737 Max-10を200機、A321neo70機の合計270機。リージョナル機材も機材更新の対象へ。

 



Boeing 737 Max 10. (Image: Boeing)

 

ナイテッドエアラインズは6月29日ボーイング737 Maxを200機、エアバスA321neo を70機の発注を明らかにし、同社史上最大規模かつここ10年で単独企業では最大の発注規模となった。同社が掲げるユナイテッドネクスト計画では運航中のナローボディー機材に新内装意匠を全機に導入することとしており、今回の発注で同社は国内提供座席数は2026年までに3割近く増やす。


このうちボーイング受注分ではMaxで最大規模となる737 Max 10が150機、Max 8が50機の内訳となっている。これでユナイテッドのMax発注は380機になり、うち30機が引き渡し済みだ。Max 10のローンチカスタマーであるユナイテッドは2017年にMax 9の100機確定発注をMax 10に変えていた。今回の発注ではMaxの訓練用シミュレーターデータの一式も含まれる。


またエアバス向け発注は既存のA321XLR(50機)に加え、A321を全体で120機にするものとなる。エアバスは今回発注の機材ではアラバマ州モービルの米工場で「かなりの機数」を製造するとしている。



ユナイテッドのナローボディー機発注は全体で500機に上り、来年は40機、2023年に138機、その後2024年以降に350機が納入される。2023年では三日おきにナローボディー一機が引き渡される。


運用中の幹線用小型機は新型機に交代させ、200機ある単一クラス仕様リージョナル機を大型機に取り替える。これにより、全社での燃料効率は11パーセント向上しつつCO2排出は座席当たり17から20パーセント削減される。


今回の発注でユナイテッドはファーストクラスとプレミアムエコノミーの拡充を重視する。2026年目標で北米路線でのプレミアムクラスを毎便53席にし、2019年実績より75パーセント増やす。■


United Airlines Orders 270 Boeing and Airbus Narrowbodies

by Gregory Polek

 - June 29, 2021, 8:47 AM

https://www.ainonline.com/aviation-news/air-transport/2021-06-29/united-airlines-orders-270-boeing-and-airbus-narrowbodies


2021年6月25日金曜日

ユナイテッドが機材大量発注を来週にも発表か。全米で平均機齢が最高水準の同社の発注に期待するエアバス、ボーイング両社。

ユナイテッドエアラインズは機材大量発注の準備に入っており、来週にも発表となれば、米エアライン業界で旧型機を一番多く抱えていた同社で機材更新が始まる。


ユナイテッドは500機超を運行中だが多数は数十年前の機材で、現在発注中は300機に満たず、機材更新にはさらに数百機の発注が必要だ。


6月29日に投資機関向け説明会とメディアイベントがニューアークのリバティ国際空港で開かれるとの噂が流れている。

 

経済誌フォーブスは6月23日にユナイテッドは来週にも「史上最大規模の発注」を発表すると報じ、業界筋二名の情報源があるとした。発注はエアバスボーイング両社が含まれると伝えた。


エアライン向けコンサルタント企業ボイドグループ・インターナショナルのマイク・ボイド社長はユナイテッドがエアバスの最新機材A220を発注すると見る。同機は以前はボンバルディアCシリーズだったがエアバスが2018年に事業を買収し再ブランド化したものだ。


「A220-300の発注になるのではないか」「運行効率が最大かつ運行を柔軟に行える機材だ」(ボイド)


だがボーイングも「売る気満々」とボイドは述べた。ボーイングは貿易戦争のため中国よりの発注が消えたため、新規営業に必死だ。


ユナイテッドは同記事へコメントしていないが、以前出た別記事で大量発注を予測した内容に再度コメントしている。同記事では発注規模を200機程度としていた。


「現時点でボーイングまたはエアバスと新機材導入の話はしておらず、機材発注の仮定についてコメントもしない」


投資銀行Cowenの航空分野アナリスト、ヘレイン・ベッカーは6月23日に「ユナイテッドが新規機材発注を発表しても驚かない」としたアナリストメモを発表し、さらに来週のイベントで「新路線関連の発表」の他戦略方針が発表されそうだとした。「電動航空機発注の発表が出ても驚かないだろう」


Cirium機材データベースを見るとユナイテッドは850機を運用しており、平均機齢は16.4年とある。これに対し、デルタエアラインズアメリカンエアラインズはそれぞれ14.8年、12年となっている。


米国の低運賃エアライン、超低運賃エアラインはさらに新しい機材を運用しており、JetBlueエアウェイズは11.4年、スピリットエアラインズが6.8年、フロンティアエアラインズに至っては4.2年となっている。旧式機を投入することで知られるアレジアントエアでも14.7年だ。


ユナイテッドの発注中機材はエアバス(95機)とボーイング(180機)の合計275機で、うち45機がワイドボディのA350-900と787-10が1機だ。ナローボディはA321neoが50機、737MAXが179機となっている。


同社はエアバス、ボーイングにオプション129機も設定している。また、ユナイテッドは今月初めにブーム・スーパーソニックが開発中の超音速旅客機オーバチュア15機導入を決定し、さらにオプション35機とした。オーバチュアの初飛行は2026年、路線運航開始は2029年を予定している。


またCirium機材データベースではユナイテッドがA320系128機、ボーイング機を364機運行しているとある。うちMax 9が30機、737NGが295機、757が39機だ。


37NGの半数近くが機齢20年超で、757は17年から26年となっている。A320系も平均22年とCiriumのデータにある。

United Airlines’ fleet (in service and storage)

Type

Number in fleet

Average age

A319

94

19 years

A320

99

23 years

737 Max 9

30

2 years

737-700

53

21 years

737-800

141

17 years

737-900

148

9 years

757

72

23 years

767

54

24 years

777

96

18 years

787

63

4 years

Total

850

16.4 years

Source: Cirium fleets data


ユナイテッドは軸足を個人客に移そうとしており、コロナウイルスの影響脱出も予想より早くなりそうな中、直行便を増やしながら、ハブアンドスポーク型の機能を強化したいとする。この方針では小型機を多数導入して、中小都市への接続便を増やす必要が生まれる。


同社による投資機関向け説明会は6月29日現地時間0800時の予定。■


United, with one of USA’s oldest fleets, poised for huge aircraft order: reports

By Pilar Wolfsteller24 June 2021

https://www.flightglobal.com/fleets/united-with-one-of-usas-oldest-fleets-poised-for-huge-aircraft-order-reports/144294.article


 

2021年6月23日水曜日

主張 中国市場の行方に黄信号。米中対決の影響で、最大の航空宇宙市場が消滅に向かうのか。

 Boeing aircraft

Credit: Boeing

 

トランプ政権時に始まった米国の対中政策の変化はジョー・バイデン政権で加速している。バイデン政権で対中政策補佐官を務めるカート・キャンベルは「これまでの相互互恵といわれてきた関係は終わった」と述べ、「現在は競合状態だ」としている。英国でのG7サミットの席上では米国は西側諸国による共同行為で中国の政治経済面の動きに対抗しようと提案した。その後の米EU会談で世界貿易機関でのジェット旅客機補助金問題を終結させ、これまで以上の協調体制で中国への対抗で合意した。

 

こうした進展は西側諸国と中国のつながりが逆転したことを示し、ジェット旅客機市場への影響には大きなものがある。

 

逆転現象は昨年すでに現れていた。米中間の海外直接投資は2016年のピークに比べ2020年は75パーセント縮小した。航空宇宙分野も同様で米国際貿易委員会によれば2018年の192億ドルが昨年は51億ドルになっている。

 

他方で中国の経済・社会は急成長時代を終え、政府の統制色、介入度がいっそう高まっている。航空利用客の減少はCOVID-19流行前からすでにはじまっていた。2018年10月の中国国内移動は12.2パーセント増となり、これまで20年近く二けた増が続いていた。だが2019年10月に5.3パーセント増に落ち込んでいた。

 

機体引き渡し数も減少していた。世界の機体引き渡しにおける中国の比重は2018年に23パーセントのピークを記録し、2019年15パーセント、2020年は12パーセントと引き続き減少している。理由の一部には737 MAX生産が止まったことがあるが、エアバスの引き渡しも減少している。

 

こうした数字以外に、米中の航空分野の関係は悪化した。他国の規制当局と異なり、中国の民間航空局は737MAXの型式再証明を発行しておらず、また今後の工程表も公開していない。他方で、米国は中国の航空宇宙企業の大部分を軍事エンドユーザー企業リストに載せ、西側装備の輸出を困難にしている。

 

中国市場の今後のシナリオは三つある。最良のシナリオは平和共存体制の復活でジョージ・H・W・ブッシュからオバマ政権までの時代同様になることだ。中国からのエアバス、ボーイング機材の発注が復活し、737MAXの型式証明が再発行され、米国も中国国内向けの技術輸出の制限を解除することだ。

 

最悪のシナリオはUSSR2.0だ。この場合の中国航空産業は西側と急速に切り離されていく。社会主義経済で成長率は低迷する。西側機材発注は減少し、中古機材の需要が高まる。国内線機材は中国国産機が中心となり、西側製造のエンジン装備等は性能が劣る国産品に代わる。この結果、大きな代償を10-15年にわたり支払うことになる。

 

三番目のシナリオがその中間となる。中国の成長率低下でジェット旅客機需要にも影響が出る。 737 MAXの型式証明を中国は再発行し、米国も中国向けの部品輸出の姿勢を変える。しかし、中国は国産化を急ぎ、航空機への搭載を義務化する。

 

対中国姿勢で同盟各国に共同歩調をとらせる米国の力量次第でシナリオが変わってくる。各国が同調すれば、一番目のシナリオが実現する可能性が出る。中国政府も路線変更しないと本当に孤立してしまうと悟る。米国と同盟各国の歩調が合わないと、中国は米国離れをし、エアバスは受注多数を獲得することになる。

 

航空業界には大きな転換点となる。10年に一度あるかどうかの外的ショックが、パンデミック、戦争、テロ襲撃や経済不況などで発生すればジェット旅客機需要は2-3年低迷することがある。だが、一番目のシナリオでないと、ジェット旅客機市場は恒久的なショックに見舞われ、最大の輸出市場の消失が現実になってもおかしくない。■

 

Opinion: Big Questions About The World's Largest Jetliner Export Market

Richard Aboulafia June 18, 2021

 

Richard Aboulafia

Contributing columnist Richard Aboulafia is vice president of analysis at Teal Group. He is based in Washington



2021年6月22日火曜日

航空協定は経済ブロック間でも発足する時代になった。ASEAN-EU間の合意が成立して、空のビジネスはどう変わるか。

 

東南アジア諸国連合(ASEAN)と欧州連合(EU)は各加盟国と拡大ASEAN-EU上級運輸関係者会合でASEAN-EU総合航空運輸合意 (AE CATA) の交渉を完了した。会合はオンラインで6月2日に開かれた。

ブロック間の運輸取り決めとして世界初となったAE CATAは合わせて37か国のASEAN、EU加盟国間の経済発展をめざし、接続性を向上させるのがねらいと6月4日に公表された共同声明にある。

今回の合意でASEANおよびEU圏内双方のエアライン各社は企業数に制限なく週14便まで旅客便、便数制限なく貨物便を第三国含め両ブロック間で運用が可能となった。

今後も密接な意見交換と調整作業を展開してパンデミックによる混乱を最小限に抑える点で双方は意見の一致を見た。

今回の合意は航空運輸における規制に関する最新の政策動向を反映しており、公正な競争、ビジネスの実施に関する条項を6月4日声明文が表明している。より重要なのがAE CATAがASEAN-EU間の今後のさらなる協力の第一歩となり、航空管制、消費者保護、環境社会問題への対処を列挙していることだ。協力関係の深化の基となるのが、EUによるASEAN域内統合支援(ARISE Plus)による技術支援やキャパシティビルディング、民間航空部門における気候変動影響の緩和に向けたEU-南東アジア間協力、国際航空部門におけるカーボンオフセット・削減事業(EU-SEA CCCA CORSIA)といった既存の枠組みだ。さらにEU-南東アジア航空連携プロジェクト (EU- SEA APP)もここに加わる。■


EU, ASEAN Agree to World’s First Bloc-to-bloc Air Transport Pact

by Gregory Polek

 - June 4, 2021, 2:09 PM

https://www.ainonline.com/aviation-news/air-transport/2021-06-04/eu-asean-agree-worlds-first-bloc-bloc-air-transport-pact




2021年6月20日日曜日

Covid感染防止策で根拠を示せさないままの英政府にライアンエア等が訴訟を起こした。渡航制限の根拠を開示せよ、透明性ある科学を根拠とする政策を要求。

 こうした訴訟は日本では無理でしょうね。長いものに巻かれろ、お上には逆らうな、という姿勢が航空業界にしみついていますからね. しかし、根拠を示せないままの政策に不満がたまる一方ですので、こうした行動を取る動きがいつ出てもおかしくないのですが。

Manchester Airport

マンチェスター空港グループ、ライアンエア両社はCovid流行を理由とする移動制限が航空運輸業界を不当に混乱させていると主張する。(Photo: Manchester Airport Group)


英国で一部航空会社、空港運営事業体とCovid大量流行を理由とする英政府の旅行制限措置の違法性を訴える訴訟をおこしている。制限の根拠となる理由を開示し透明性を求めると、低運賃キャリアのライアンエアマンチェスター空港グループが高等裁判所に政府の政策に対する司法判断を求めた。両社によれば他の英キャリアにも訴えに同調する動きがあるという。


法曹界には英国が導入した旅行需要軽減策として旅行客の出発国リスクを緑、黄色、赤の区分にわけ、新型コロナ検査及び隔離措置の対象としたのは科学的措置とは言えず、不合理な損失を航空業界に与えているとの意見がある。この区分で米国および欧州内の大部分の国が黄色区分とされており、訴訟の背後にある企業は大きな影響を受けている。


理論上は英国民は黄色区分国への渡航が可能だが、同時に英政府は渡航は必要不可欠なものに限るとしているため、不必要な混乱を招いているとの批判が絶えない。また、英国への入国者は全員渡航前にCovid検査を受け、到着後も二回検査の対象となり、同時に10日間の隔離措置を受けるのは旅行コストを上昇させ意欲を下げる措置だとの批判がある。ワクチン接種済みの利用客も措置が適用される。これに対し、EU加盟27か国は7月1日を目標に、ワクチン接種済み外国人旅行者客向け制約の撤廃に向け動いている。逆に英政府は6月21日に予定していた国内向け制約の解除を取消した。デルタ変種のまん延で制限措置の延長が必要なためだ。


裁判所は英運輸相グラント・シャップスおよび保健相マット・ハンコックを被告人とする訴訟の準備に入った。原告は政府に今回の国分類に至った過程の説明を求めるとともに根拠となるデータの開示を要求する。また、非常に短い告知で分類を変化した決定のいきさつも問いただすという。


ライアンエアCEOのマイケル・オリアリーは「目まぐるしく変更されてきた政策により航空業界は多大な損失を計上し、英国国民多数に休暇旅行の計画で不満と混乱が生まれたのはすべて政府の国際渡航措置の失敗のせいだ」「ボリス・ジョンソン首相には一連の措置の科学的根拠の説明を求めるとともにデータをもとにした透明性ある政策を基本にしてもらい、業績を左右する夏の旅行シーズンを控える中で信頼性回復につとめてもらいたい」


マンチェスター空港グループはマンチェスター、ロンドン・スタンステッド、イースト・ミッドランドの各空港を運営しており、政府の政策で旅行業界は継続が困難になっていると主張している。「政府の姿勢がオープンではなく、業界の企画立案の基礎となる政府決定がどう形成されたのかちっとも見えてこず、利用客も旅行予約できず困っている」とCEOチャーリー・コーニッシュは「大部分の国は今回の措置で黄色分類のままだが理由は開示されていない。各国の感染状況は英国より低いのだが」と語っている。


今回の法的手続き開始発表に際し英政府からは反応は出ていない。■


Airlines, Airports Sue UK Government Over Covid Travel Rules

by Charles Alcock

 - June 17, 2021, 9:27 AM


ボーイング737 Max 10(最大230席)が初飛行。エアバスとは異なる需要予測と設計条件だが、A321neoには相当の差があり、ボーイングは今後挽回できるのだろうか。

 



Boeing



ボーイング737 Max 10が初飛行に成功した。同機は6月18日、ワシントン州を離陸し、二年予定の型式証明取得が始まり、同時に2017年パリ航空ショーでの立ち上げから4年で機体が現れた。初号機は2時間37分の初飛行を終えボーイングフィールドに着陸した。


Maxで最大かつ最後の派生型のMax10はMax 9の胴体を66インチ延長している。その他、主翼も小幅設計変更し、777同様の主着陸装置を採用し、乗客12名分の追加で最大座席数は230になった。


ボーイングは737 Max 10開発の開始をパリ航空ショー初日に発表したが、ライバルのエアバスはA321neoはその一カ月前に路線就航させており、販売で先行していた。ボーイングはMax 10のほうが機体重量が軽く、燃焼消費で有利と売り込んでいた。エアバスはさらにA321LR、A321XLRで大西洋横断路線に投入可能な機体を提供することとした。ボーイングはエアラインは軽量かつ短距離運用型を好むと考え、受注数がその証明となるとし、航空ショー開催中に16社から計361機のMax各型の受注を獲得した。


その後、Max 10の受注は伸び悩み、ボーイングは受注数の詳細を明らかにせず、発注各社は機体型式を途中で変更可能と説明していた。ただし、開発開始時点でボーイングは受注の60から65パーセントは基本形Max 8で、Max 9および10は20から25パーセント、Max 7はわずか10パーセントとなると予測していた。現在のMax 受注合計は3,291機に上り、うち486機が引渡し済みと同社ウェブサイトの受注引き渡しデータでわかる。


これに対し、エアバスのA321neo、A321LR、A321XLR(航続距離4,700カイリ)の合計はA320neoファミリーの5,618機の過半数を占めているが、neo各型の引き渡し実績は1,782機に上っている。A321XLRの引渡し開始は2024年初めに予定しており、22社から426機を受注している。


ボーイングはMax 10の引渡し開始を2023年に設定し、当初予定より3年ほど遅れている。■


Boeing 737 Max 10 Completes First Flight | Air Transport News

by Gregory Polek

 - June 18, 2021, 5:11 PM


2021年6月5日土曜日

ブーム・スーパーソニックがユナイテッドから全面支援を受ける。超音速民間飛行の再開にむけ、まず実証機の初飛行を今年中に目指す。

 



Boom

(Image: United Airlines)


ユナイテッドエアラインズは6月3日の発表で、ーム・スーパーソニックと超音速ジェット旅客機オーヴァーチュア15機の購入合意ができたとし、「オーヴァーチュアがユナイテッドの安全基準、運行要求と合致し、維持可能と証明される」のが条件とする。オプションで35機購入も明記されている。

ブームは縮小版実証機を今年中にも飛行開始の予定で、2025年に完全版をロールアウトし、路線就航を2029年トする目標を掲げる。ジェネラルエレクトリックJ85-15ターボジェット三発、複合材の実証機XB-1はマッハ2.2を目指し、その後に65-88席のオーヴァーチュアが控える。今年三月のXB-1ロールアウト式典(オンラインで実施)で同社はアメリカンエキスプレスヴェンチャーから「戦略的投資」を受けたと発表していた。

ブームではオーヴァーチュアを場所不明の新工場で2022年に生産開始するとしている。

同機の特徴としてブームは民間機で最高水準の効率を誇る空気取り入れ方式で超音速を実現する。同社CEOブレイク・ショールの説明では空気取り入れ口が重要で、空気の流れを約マッハ0.5にまで下げてGEエンジンに導く。ブームは5年間にわたり、ロールスロイスと提携し、中程度バイパス比ターボファンのオーヴァーチュア搭載をめざしていた。

XB-1はサステナブル燃料(SAF)で飛行し、ブームは100パーセントのカーボンニュートラル事業だと宣伝している。2019年に同社はプロメテウス・フュエルズと提携し、XB-1向けSAFを確保した。

ショールは安全性と機体維持以上にスピードが重要だと指摘。オーヴァーチュアが実現すれば東京-シアトルを4.5時間で結び、ニューヨーク-ロンドンは3.5時間、モントリオール-パリは4時間で飛行可能となる。■


United Airlines Throws Weight Behind Boom Supersonic

by Gregory Polek

 - June 3, 2021, 8:04 AM

https://www.ainonline.com/aviation-news/air-transport/2021-06-03/united-airlines-throws-weight-behind-boom-supersonic


2021年6月3日木曜日

注目のクロスオーバー機材は短距離、長距離双方でここまで柔軟に運用されている。A220、E-Jetなど。スペースジェットの失敗は本当に痛いです。

 


Right Places For Right-Sized Aircraft

Bernie Baldwin June 02, 2021

https://aviationweek.com/special-topics/crossover-narrowbody-jets/right-places-right-sized-aircraft

 

Swiss A220

 

クロスオーバー型のナローボディ機はエアラインに自由な選択肢を与える。適材適所の運用が魅力だ。

 

低ロードファクター路線では737やA320の投入を避けられる。需要が低迷中の今日には朗報だ。またクロスオーバー機は定時性を重視する利用客に魅力となる。

 

エアラインへの魅力はまだある。燃料消費が減る。機体重量が低いことで燃料消費が減り、同時に空の座席のまま飛ばさなくてもよい。さらに今後排出ガスが課徴対象になれば、支払額も低くできる。着陸料も機体重量が低いことで節約できる。また、客室乗務員も減らせるのは魅力だ。

 

デルタエアラインズはA220-100およびA220-300を運用中だ。A220-100はデトロイトから350カイリ未満の短距離路線に投入し、飛行時間は1時間20分程度だ。ただしこの範囲を超える路線としてデトロイト-オースティンは1,000カイリを超え、2時間40分になっている。

 

デルタではA220-100で1,200カイリのロサンジェルス国際空港-ヒューストン・ブッシュ空港線、およそ3時間20分、ならびにボストン-オースティン(3時間40分、1,480カイリ)も運航している。

 

デルタではA220-300も柔軟運航し、各路線で適切な運航能力を実現すべく、クロスオーバー機と大型機材を使い分けている。

 

北に目を転じると、エアカナダがA220-300を増強している。東部のハブ空港のトロント・ピアソン空港とモントリオールをそれぞれ拠点に短距離線中心に運用され、エンブラエル175と併用し適正規模の運行を続けている。

 

各種機材の混合運用路線にハリファックス-トロント線があり、A220-300は737 MAX 8、A320と合わせて投入される。モントリオール発着便ではダッシュ8-400、CRJ900、MAX 8、E175とともに運行されている。

 

エアカナダはA220-300をトロントから西部のカルガリー、デンヴァー、エドモントン、サンフランシスコ、シアトルまで運航している。モントリオールからはロサンジェルスやヴァンクーバーまで同機を投入している。

 

トロント、モントリオールともにサンフランシスコ線が最長でトロントからは4時間45分で1,966カイリを飛ぶ。モントリオールからは2,216カイリ、5時間20分とさらに長い。

 

エアカナダはカルガリー起点でA220-300をケロウナ、オタワ、ヴァンクーバー等へ飛ばしている。

 

ヨーロッパではスイスがA220両型式機材を運用している。ロンドン空港はグライドスロープが急なことが有名でA220-100運用が認証を受けている。同社はジュネーヴ、チューリッヒからロンドン線に投入している。ただし、まだパンデミック前の運行頻度に復帰していない。

 

スイス路線の一部はヘルべティックエアウェイズがエンブラエルE-Jetで運用しており、E190を6機、E190-E2が8機投入されている。ここでも空港アクセスが厳し伊フローレンス空港があり、クロスオーバー機が活躍している。

 

KLMは傘下のKLMシティホッパーでクロスオーバー機を運用している。E190と少数ながらE175を使っている。同社はE195-E2を35機調達する。各機は定員132名の規模だ。

 

KLM Cityhopper E195-E2

 

KLMはシティホッパーで適正規模機材を課kつ擁しており、737では大きすぎる路線や閑散期の需要に対応している。またE-Jetはロンドン・シティ空港線、フローレンス線にも投入し運行制限に対応している。

 

ウィデローはE2を2018年4月に初の定期運航に投入した会社だ。ここではクロスオーバー機が同社の業務拡大に大きく貢献しており、同社で最大の機種となっており、110席仕様でベルゲン線を運行している。

 

その一つベルゲン-トロンドヘイム線ではE190-E2はダッシュ8-400(78席)で需要がさばけない場合に投入されている。

 

アフリカではエアタンザニアがクロスオーバー機を別の使い方で運用しており、A220-300をダッシュ8-400と併用して低需要のリージョナル線で、二機あるボーイング787を高需要長距離線に投入している。

 

4月22日のAviation Week Network では同社は7月までにA220-300を2機追加導入すると報じている。大型ナローボディー機の運用を避ける同社の狙いがさらに強まる。

 

エアバルティックはナローボディ機種を整理しA220-300のみに統一している。メインのハブをリガ(ラトヴィア)とし、リトアニア首都ヴィリニュス、エストニア首都タリンにも小規模ハブがあり、同機を活用する。

 

同社路線網は北西はレイキャビク、南西はテネリフェ島、東にモスクワ、南東にドバイまで広がっている。リガからの飛行時間はラトヴィア国内のリエパーヤまでの40分からドバイ線の6時間25分までと、明らかにA220-300の柔軟運航性能を活用して短距離、長距離両方で強みを発揮している。■


2021年6月2日水曜日

ベラルーシによる国家ハイジャックは世界の共通ルールを破るもので糾弾されるべきだが、世界の独裁国家が真似てゆくのではないか。

 

Belarus Hijacked a Plane and Set a Disturbing Precedent

 

Other Regimes Will Hijack Planes Too

If Belarus gets away with it, authoritarian dictators around the world will have a new tool of oppression.

BY ANNE APPLEBAUM

STAFF WRITER, THE ATLANTIC

MAY 30, 2021 08:00 AM ET

  •  

  • ARTUR WIDAK / NURPHOTO / GETTY / MINDAUGAS KULBIS / AP

  •  

 

価値観が衝突する場合でも、文明社会には共有すべきルールがある。その例が海洋法で、航空管制もそのひとつだ。パイロットがどこを飛ぶにせよ、地上管制の指示が政治的な意図のもと欺瞞にみちたものであってはならない。あるいは危険な着陸を指示してはならない。

 

ベラルーシの独裁者アレクサンダー・ルカシェンコがこの基本原則を破り、前例のない行動に出た。航空当局に指示し、ギリシャのアテネからリトアニアのヴィリニュスに向かう途中でベラルーシ上空を飛行中のライアンエア機をハイジャックした。ベラルーシ航空管制がパイロットに同機に爆弾が仕掛けられたとの虚偽の連絡を入れた。ベラルーシ国営メディアによれば同機はMiG戦闘機編隊の「護衛」がついてベラルーシ首都ミンスクに向かった。

 

実際には爆弾はなく、脅威もでっち上げで、ミンスクは一番近くの空港でもなかった。同機が着陸したが、乗客を安全誘導する係官は皆無だった。乗客のうち二名が連れ去られたことで、今回の事件の動機が明らかになった。そのひとり、ロマン・プロタセヴィッチはベラルーシの反体制派ブロッガーでありジャーナリストだ。もう一人がガールフレンドのソフヤ・サペガだ。プロタセヴィッチはミンスクで昨年夏に盛り上がった速報チャンネルNextaの編集者の一人だった。本人は2019年に同国を脱出し、亡命生活を送っていた。不在裁判でベラルーシは本人を「テロリスト」認定した。連行される際にプロタセヴィッチは別の乗客に「死刑になる」と伝えていた。ベラルーシではソ連方式の尋問、独居房、拷問が日常茶飯事だ。

 

詳細には不明な点も残る。ライアンエアはハイジャック事件後に数時間にわたり不可解な沈黙を守っていたが、機体整備が理由とする事務的な声明を発表した。事件翌日に同社CEOは「国家によるハイジャック」と呼んだが、実態は疑う余地がない。ベラルーシ政府は航行管制手順を悪用し、パイロットは本当に緊急事態が発生していると通告されたが、真意は批判分子の拉致だった。いいかえれば、ロシアが放射性物質、神経ガスをロンドンで使い政敵を倒した事件、サウジアラビアがイスタンブールの同国領事部内で自国民を抹殺した事件、オランダで自国民の批判勢力を暗殺したイラン、海外居住の自国民、自国出身の外国市民を拉致監禁した中国と同じだ。人権団体Freedom Houseはこうした手口を総じて「国境を変えた抑圧」と呼び、600件におよぶ類似事件があると指摘する。

 

こうした事件の根源はひとつだ。独裁体制の国家は反対勢力にパスポート発行せず、国境を超えることを許さず、外交慣例も無視してきたが、今や航空管制のルールも堂々と破るに至った。この新しい世界では独裁者は政敵を国籍に関係なく、外交法や行政手続きに束縛されず、いかなる場所でも抹殺できるようになった。独裁政権は他国へ圧力をかけ、狙う相手の保護を断念させる。ただし代償として制裁措置を受けたり、世界との関係が悪化するが、独裁者にはなんら痛くないようだ。

 

今回の事件がとくに関心を呼ぶのはサウジアラビア、ロシア、中国の首脳部と異なりルカシェンコには対外的な影響力が皆無に近いことだ。ベラルーシは貿易も大したことはなく、ニューヨークやロンドンに大きな投資案件を有しているわけでもないし、英サッカーチームのオーナーでもない。ルカシェンコは正当な理由なく身柄を拘束し、大部分ヨーロッパ市民を乗せたヨーロッパ登録の機体を危険に陥らせたのは、ヨーロッパとの関係を断絶する覚悟があってのことなのだろう。同時にロシアから経済支援、政治面の公認が得られると計算しているはずだ。ロシアの公認国際テレビチャンネルRTのトップが今回のハイジャック劇を見て「うらやましく」思うとツイートしている。それによれば、ルカシェンコは「見事に物事を動かした」とある。別のロシア高官はハイジャックを「必要かつ実施可能」だったと評している。だがらと言って驚くにはあたらない。独裁者は国際法を破る別の独裁者に支援の姿勢を示すことが当たり前になってきたのだ。

 

事件を受け西側指導者多数がソーシャルメディアに意見を投稿している。NATO事務総長、EC大統領、米国務長官もその中でハイジャックを非難した。リトアニア首相は定刻を大きく遅れ着陸した同機を迎えにヴィリニュス空港に出向いた。ラトヴィアはベラルーシ大使を国外退去させた。英国はベラルーシ登録機材の乗り入れを禁止した。今後数日でさらに多くの措置が現れ、ベラルーシ向けの新たな経済制裁措置も検討されるはずだ。同国向け航空機定期便の運行も停止されるだろう。本日また別の不思議な事態が発生し、ヨーロッパ各国はあらためてベラルーシが無法かつ危険な国となっており、しかもEUの境界線沿いに存在している事実を思い知らされた。ルフトハンザ機がミンスクからフランクフルトに向かうはずのところ、遅延となったのはまたしても爆弾が持ち込まれているとの理由からだった。一部には乗客が人質になるとの危惧もあった。ロシアがウクライナへ侵攻し各種人権侵害事件が発生したように、ベラルーシの人権蹂躙の影響はゆくゆくヨーロッパにも及ぶはずだ。

 

事はヨーロッパに限らない。世界中の独裁国家の首都で独裁者たちは西側諸国の反応を注視している。ルカシェンコがこのまま逃げとおすのか、そうなりそうだが、今回初めて投入された手法を自分たちも使えるのか。他国でこれをまねる動きが出るのは必至だし、自国内の反抗分子に安全な場所はどこにもないと伝えられる。民主国家に生活していても、政治亡命していても、一般の民間機で空中を移動中でもお前たちの身柄を拘束できるぞ、というメッセージになる。■


お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。