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2021年11月20日土曜日

ドバイ航空ショーの注目は貨物機新世代型。A350Fが初受注獲得した一方、ボーイングはまだ明確な姿を打ち出せない。一方、777-9型式証明は遅れたままだ。

  

A350Fはボーイングの人気機種777Fとまともに競合するサイズになった。Credit: Airbus concept

 

物機が高価格体の旅客型より注目されるとはまれなことだが、ワイドボディ機市場はパンデミックで一変しており、COVID-19発生後初の大規模航空ショーとなったドバイで新規貨物型の開発案件がを見出しを飾っている。

 

 

双通路機の新規発注が事実上停止している中で貨物部門は記録的な高需要を集めており、エアバスボーイング両社の新世代大型貨物機へ関心が集まっている。需要面の変化を反映した新型機構想がドバイ航空ショーに展示されており、エアバスはさっそく新規案件のA350Fへ初受注を集めた一方、ボーイングも777Xの貨物型で追いつこうとしている。

 

  • Air Lease Corp. がA350F発注に踏み切った

  • 777XFは777-8原型に方向転換

A350Fの初受注はエアリースCorp(ALC)によるもので、エアバス機各型109機の一斉発注の一部として7機受注に成功した。ALCはA220-300(23機)、A321neo(55機)、A321-XLR(20機)、A330-900(4機)も合わせて発注した。このうちA350FはALCで初導入となるが、ALCの執行会長スティーヴン・アドヴァーヘイジーは新型貨物型の需要が高いとし、この型式の機材にも手を広げることにしたと述べている。

 

A350FはA350-1000が原型で機体はフレーム5個分短縮したが、それでもA350-900より長く、ボーイングの777F(777-200LR派生型)に競合する。エアバスが発表した新情報ではA350Fの最大ペイロードを240,300ポンドで飛行距離を4,700nmとある。さらに急送便仕様では貨物209,400 lb、6,000nmになる。

 

ただし、A350Fが明確な姿を発表した一方で、ボーイング777XFはあいまいなままだ。少なくとも社外に対しては。ドバイショー前は、777XFは777-8と777-9の中間サイズになるとの観測があったが、同社は777-8旅客型の派生機種にするようだ。この変更は各社にヒアリングしてみたところ大キャパシティの777-8のほうが貨物機として最適サイズとの意見が多いと判明したためだ。

 

大型の777-8を原型とする方針は製造コストの観点では意味があるが、同時に短い方の777X二型式への関心も高める効果もある。777-8は全長229 ft.、777-9は252 ft.になるが、機体長はこれまでの想定より長くなり、最大離陸重量(MTOW)もこれまでの775,000 lb、788,000 lb想定より増え、777XFではさらに大きなキャパシティが実現しそうだ。業界筋にはMTOWは805,000 lbが目標との声もあり、現行の777Fの766,800lbより増えるという。

 

「実機製造まではスペックに縛られたくない」とボーイングの製品マーケティング担当重役トム・サンダーソンが述べている。「貨物型での課題はペイロードと容積のバランスに尽きる。高密度路線では高付加価値になりそうだが、長距離貨物便では重量が重宝がられる。この場合は機体全長はそこまで問題にならない。その前に機体重量の限界が立ちふさがるから」

 

さらにサンダーソンはeコマース市場の成長で逆に低密度貨物輸送がカギになると述べている。「貨物容積がもっと重要になります。またこの方向で業績が伸びます。現在はこうした検討を行っており、双方の間のどこかで合理的な結論を出したいです」

 

とはいえ、カタールを除けば777-8を発注している唯一のエアライン、エミレイツからボーイングが777XFと777-8の機体長を共通化して当初より大型化する動きに懸念の声が出ている。エミレイツ社長ティム・クラークは「これは問題になる。-9に近いサイズの別の機体をだれが買うのか」と一石を投じている。

 

エミレイツは777Xを2013年に大量発注し、777-9(115機)、777-8(35機)を導入するとしたが、ボーイングから777-9型式証明取得が2023年7月目標と聞かされ、エミレイツは777-8発注をこのまま続けることに疑問を感じ、16機に下方修正し、かわりに787-9を30機導入することにした。

 

エミレイツが777-8発注をゼロにした場合、同型の将来は一気に不安定になる。同社の姿勢が一気に消えれば、ボーイングに残るのはカタールエアウェイズの10機のみとなり、エミレイツの動きからカタールも何らかの対応を示してもおかしくない。

 

他方でエミレイツは機材構成を再考中で、「777Xの納入遅れ三年の影響は大きい。各機の路線就航開始日に合わせすべて計画している」とクラークは述べており、777-9の就航が一年遅れる場合も考慮している。クラークはしっかりした予定表を早期に示すようボーイングに求めたという。他方で「座して待っているわけにはいかない」とも述べている。

 

ボーイングは777-9では規制当局から要求された飛行制御系の変更が未搭載だが、あと2年間あれば型式証明取得できると自信たっぷりで、2023年第四四半期に引き渡し開始できるとボーイングは見ている。

 

エミレイツの見方より保守的な見通しで777-9初飛行(ボーイングは2020年1月)から数えて44カ月の2023年10月に型式証明が下りるとみている。

 

ただし、実際の型式証明取得のタイミングは規制当局次第だ。四機ある試験機のひとつがドバイで展示されており、各機合計で1700時間のフライトテストを実施している。最終的に3,500時間程度のフライトテストになる見込みだ。ボーイングは2023年中の型式証明取得と引き渡し開始の見込みを堅持している。■

 

New-Generation Large Freighters Form Focus At Dubai Airshow

https://aviationweek.com/shownews/dubai-airshow/new-generation-large-freighters-form-focus-dubai-airshow


Guy Norris Jens Flottau November 19, 2021


2021年11月13日土曜日

中型長距離機新開発の開始に踏み切れないボーイング。一方でA320XLRがナローボディ長距離線機材需要を独占して今いそうな勢い。ボーイングは新技術の熟成まで待つ気なのか。

  

エアライン、リース元はボーイングに「新しい757」を開発し、エアバスA321XLRへの対抗機種とするよう求めている。Credit: Joepriesaviation.net

 

ボーイングは新型ナローボディ機開発に踏み切るべきか、この質問をエアラインに向ければ、「すぐ始めて欲しい」というのが答えだ。これは Aviation Week Network/Bank of America Global Researchの共同調査で900社から回答を得た結果で、エアラインやリース会社多数を含む。業界はシンガポールの2020年ショー以来久しぶりの本格的航空ショーのあるドバイに集結しつつある。

 

「ボーイングが何らかの動きを示すべきだろう」とバンクオブアメリカのアナリスト、ロン・エプスタインが解説している。「だが同社はバランスシートを改善してから次に移る構えだ」新型中型機(NMA)の検討は2020年初めまで続いていたが、ボーイングは既存機種の生産安定化を優先し、COVID-19による歴史的規模の影響、さらに20カ月続いた 737 MAXの飛行停止措置、787引き渡し中断による影響からの回復が2022年第一四半期まで続くとしている。

 

ボーイング社内のNMA研究の一環として-5Xコンセプトが2020年末に流出しており、エアバスA321XLRに対抗しつつ757後継機がないニッチを埋めるとしていたが、同社はその後787引き渡し再開、777X型式証明へ注力し始めた。新型機投入の大日程を示す兆候は出ていない。

 

社内の新型機立ち上げへ向けた準備が低調なまま、ボーイングはタイミングを見定めようというのだろう。新型機開発業務には専門部署立ち上げから新技術の飛行実証等があり、統合製品チーム(IPT)でデジタルデザイン製造へ道を開き新型機の実現をめざすだろう。近年の軍用機事業で得た知見を投入するはずだ。

 

顧客側の回答でIPTでボーイングは次期機体の実現をきたいしており、73%はボーイングに高性能長距離性能があり座席数が多いナローボディー機でコスト削減の実現を期待している。顧客が期待する新型機は現行の737 MAXより大型の想定で、29%は座席数180から250のファミリー構成を希望。回答の半数以上が4,500カイリ以上とエアバスA321XLRを除けば、現行機のいずれよりも長い航続距離を望んでいる。

 

各社の要望は極めて高く、とはいえ必ずしも非現実的でもなく、運航経費低下を望んでおり、60%は15%削減で十分としつつ、20%削減が望ましいと85%が回答している。

 

調査結果で明らかになったのはエアラインやリース会社がボーイングにエアバスA321XLRの対抗機種の実現を望んでいることで、長距離型A321neoの納入開始が2023年に迫っており、確定発注がすでに500機になっているとの予測がある。エアバスは正確な受注数を公表していない。

 

ボーイング757と同様にXLRはエアライン多数が長距離路線用として大西洋横断あるいはラテンアメリカ路線に投入するだろう。ユナイテッドエアラインズCEOスコット・カービーScott KirbyはAviation Weekに対しXLRをニューアーク、ニュージャージー、ワシントンの参加者で運用すると述べ、北アフリカ路線も視野に入れる。

 

A320neoファミリー生産の半数がA321neoに間もなく切り替えれると、長距離単通路機市場でエアバスの優位性が確立される。この分野がエアバス収益の大きな柱になっており、ボーイングの737-9や-10では競争力が発揮できず苦戦となりそうだ。

 

対照的にに737-8販売がA320neo相手に善戦し、ボーイングに新型機開発の余裕が生まれると見る向きがエプスタインはじめアナリストに多い。

 

環境持続性が今回の回答で重要な視点となったのは驚くに当たらない。71%がこの問題をとても重要あるいは重要と回答した。またボーイングに迅速な対応を期待していることが明白となった。2026年の新型機引き渡しを期待し、29%が2027年、22%が2028年、19%が2030年だった。各社ともボーイングに時間を無駄にする余裕はないと見ている。

 

一つ問題がある。新型エンジン技術だ。回答のほぼ三分の二が新型オープンローター、水素あるいはハイブリッドエンジンの実用化を待つとし、多数がオープンローターに期待している。CFMインターナショナルが画期的イノベーション技術持続可能エンジン(RISE)の研究が進展しており、次世代機への採用が期待される。

 

このRISEでCFMはオープンファン実証を行う。克服すべき騒音と性能の課題がオープンファンにあり、技術設計上でどう解決するかが問題だ。

 

今年に出た同社発表では目標を燃料消費、CO2排出量で20%削減に置き、ベンチマーク対象のLeap 1ターボファンの20-35千ポンド推力クラスに置く。実証で一段式ギア駆動ファンにアクティブステーターをつけ2024年から25年にフライトテスト実施をめざす。

 

これに対しボーイングの製品開発担当副社長マイク・シネットMike SinnettはRISEにより同社の考える次期新型機の実現時期や方向性が左右されることなないとし、「あくまでも技術実証であり、CFMにはその他の検討対象となる別の技術もあるし、一つにまとめたテストもある」「同社はまだRISEを事業としておらず、ソリューションとしても認識していないが、各種の技術を試すチャンスとなる」と述べている。

 

「自分の視点並びにチームの視点では機体設計に投入可能なツールに映る。興味深い技術もある。タイミングが合う技術もあるが、合わないものもある。最終的なソリューションにつながるかに関心がある」

 

回答の58%がボーイング新型機のエンジンメーカーは一社限定が望ましいとしたが、737MAXでボーイングはエンジンの選択肢は提供していない。

 

ボーイング社内でNMAや派生型-5Xの検討が進んでいた時点で同社にはナローボディあるいは小型ワイドボディの選択があった。回答の四分の三が小型ワイドボディ機を望ましいとしたが、機体構造から抗力が増えてもいいとしたのには二つ理由がある。乗客の乗降時間が短くなる。また折り返し時間も大型ナローボディ機で問題となっており、757-300では前後のドアを使って乗客を移動させている。もう一つの理由として貨物輸送の収入が重要になっている。貨物収入は一程度必要だ。A321XLRの弱点は長距離路線運航で客席が満席となると貨物用スペースが実質的になくなることだ。

 

ボーイング社内ではコンセプト検討が続いている。ボーイングは業界の意見を集め、NASA向け提案として単通路持続可能飛行実証機(SFD)に盛り込むべき内容を把握しようとしている。Xプレーンの70年に及ぶ歴史でも最大規模となる専用試験機事業は各社競合となるが、NASAは持続可能飛行国家連携に政府機関、業界、学界の英知を集める。

 

将来の単通路機として2035年登場を想定する機体の中核技術の実証、成熟化を狙うNASAのXプレーンは2026年に飛行開始の予想で、低排出高効率のエアライナーとして2030年代に現行737の後継機となることが期待される。ただし、これはボーイングが事業化に成功した場合だ。ボーイング案は遷音速トラス構造主翼機で画期的な高アスペクト比の主翼を特徴にし、同社はこの構造を十年以上かけて研究している。

 

2026年末にXプレーンを飛行開始させ、NASAはSFDにより将来の亜音速機の性能目標の実現をめざすべく、地上テスト、飛行試験でデータを集めたいとする。■


Survey Shows Airlines Want New Boeing Aircraft

Survey Shows Airlines Want New Boeing Aircraft


Jens Flottau Guy Norris November 12, 2021


2021年11月10日水曜日

ボーイング、エアバスの現況:受注残は着実に減少する中、中国からの発注へ期待できないものの、業績は改善中

  

 

ボーイング 737 MAXの型式証明再取得が実現しても、中国エアライン各社の受注急増は期待できない Credit: Greg Baker/AFP/Getty Images

 

中国向け受注残が減少の中、新規案件がないボーイング、エアバス両社の現況

  • 中国向け受注残が減少の中、新規案件がない

  • エアバス天津工場はA321neo製造に対応

  • ボーイングは737 MAX再型式証明を年末まで取得を期待

ここ数年、ボーイングエアバス両社が前途有望な将来は東にあると指さしてきた。中国で中産階級の旅行需要が拡大する中で同国エアライン各社が旺盛に機体購入してきた。中国市場の成長で機体需要の中心地は東に移動すると見られていた。

2010年代の航空好況で旅客機の五機に一機は中国向けだったが、各社がCOVID-19パンデミック余波に対応する中で機材引き渡しは実質ゼロのまま、発注も減少している。両社の受注残も急速に減少しつつある。

ボーイング、エアバス両社が現在の引き渡し停止状況を抜け出そうとしているが、これまでとちがい中国には期待できない。

ボーイングの現状認識はこうだ。「中国は今後10年の世界規模の需要増加の25%を占める存在だが、中国向け引き渡しが進まないと当社の世界市場での地位が揺らぐ」とCEOデイヴ・カルフーンが6月にAviation Weekに述べていた。

政治も「大きな要素だ」とある幹部がもらしている。米中両国の緊張状態のため、「ボーイングがすぐにでも受注する見込みはない。ヨーロッパにも同様だ。中国は西側の政治発言で動揺している」というのだ。C919が今年末にも中国東方航空に引き渡しとなるが、当面は心配にさせる要因とならない。生産規模が数年は低いままで、中国国内エアライン各社にも同機を積極的に導入する様子がない。

ボーイング民生機部門は営業損失693百万ドルを計上したが、2020年第三四半期の損失の四分の三程度に相当する。民生機の収益が24%増加し45億ドルになるのは、737 MAX 引き渡しによるところが大きい。

短期財務状態では777で貨物機型生産の加速による変化が期待できる。「貨物機需要が底堅いためサプライチェーンと調整し777貨物型を増産することにした」とカルフーンは述べた。「2022年の777引き渡し数は2021年並みと見ている」とし、今年は9月まで777を20機納入した。

777の月産製造数は2機で、型式証明未取得の777-9もここに入る。今後は貨物型の追加で製造数が増えることになる。一方で777-9の型式証明取得と増産対応を進める。カルフーンによれば777新型の引き渡し開始は2023年末。

エアバスは今年9月までに424機を引き渡しし、昨年同期の24%増となった。内訳ではA220(34機)、A320ファミリー(341機)、A330(11機)、A350(36機)、A380(2機)だ。年間目標達成のため同社は残る三カ月であと180機を納入する必要がある。

同社の民生機部門では収益が21%増の246億ユーロになり、2020年の1-9月期の営業損失24億ユーロが今年は29億ドルの営業利益になった。■

Airbus, Boeing China Airline Orders Backlog Shrinking

November 04, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/airbus-boeing-china-airline-orders-backlog-shrinking


2021年10月27日水曜日

エアバス サービス部門でも首位の座を狙う。デジタル化を武器にMROや訓練の様相を一変させる。

  

aircraft in MRO hangar

各地ですでに10,000機がエアバスのSkywiseデジタルプラットフォームに接続されている。

Credit: Exm Company/H. Gousse/Airbus


  • デジタル化がカギとなる

  • 定期点検の全廃が目標

 

エアバスはデジタルサービス内容を拡げ、データ活用の強化を図る。デジタル化により新しい可能性が特にメンテナンスと訓練で開けており、同社はこの傾向により持続可能なビジネスに弾みがつくと期待している。

 

COVID-19の影響は完全に把握できていないが、一つコンセンサスがある。デジタルツールの採用が業界で広がったことだ。

 

 

この動きを受け、データ分析とエアバスの持つ運航効率化のノウハウの利用拡大も加わり、同社は機体整備、補修、完全点検(MRO)で中心的な存在となるのをめざし、ルフトハンザ・テクニークSTエンジニアリングの地位を奪おうとしている。

 

航空業界はまだ完全なデジタル産業になっていない。にもかかわらず転換が進んでおり、2025年には様相を一変するとエアバスでカスタマーサービスを統括するクラウス・ローウィが解説している。

 

「ビジネスモデルが一変する」とエアバスでカスタマーサービスのイノベーション並びにデジタルソリューションを統括する上席副社長ライオネル・ラウビーが述べている。「コロナ危機で心理的ハードルが取り除かれ、デジタルツールを日常業務に使えるようになった」

 

新技術、新構想の登場の背後で業績がパンデミック危機から回復しつつある。整備需要は2020年に40パーセント縮小し、機材更新はさらに大きく減り、業務は三分の二消えた。訓練も同様でフライトシミュレーター利用は半減した。

 

訓練の増加はまだこれからだが、予測以上のスピードで発生しているとローウィは見ている。機材の路線復帰が需要を生んでいる。さらにエアライン各社の計画からパイロットや整備要員の定年退職や離職が読み取れる。今後5年でパイロット10万名、整備員17.5万名が必要となるとエアバスは見ている。

 

仮想現実(VR)を定型的な訓練に大規模に使うことになりそうだ。「パイロット向けには移動型地上訓練をソリューションとして提供する」とエアバスの訓練・運航サービス担当上席副社長ヴァレリー・マニングが述べている。

 

その狙いは訓練手法の向上と経費削減だ。エアバスは市販部材のVRゴーグルなどを使い仮想環境を実現している。

 

パイロットは一人での訓練も可能となる。他の乗務員もシミュレーションで再現し、教官もシミュレーションで可能となる。あるいはパイロット二名が別々の場所からリモート訓練を受けることも可能だ。

 

VRによる定型的訓練の導入時期は不明だが、開発は着実に進んでいる。

 

この考えは整備士のエンジン点検にも応用できる。整備士はエンジン始動、地上走行、エンジンの静止テストの資格取得が前提だ。マニングによればこの発想はエールフランスインダストリーズが出したもので、エアバスがA320に応用しており、まもなくA350にも適用する。

 

年間420億ドルが非効率な業務のため無駄になっているというのがエアバスによる2019年グローバルマーケット予測の内容だ。デジタル化がこの解決となり、100億ドルの節減が可能となる。そのうち30億ドルが燃料消費の改善で、エアバスの「descent profile optimization」コックピット改良がこの助けとなる。

 

Skywiseデータ共有分析プラットフォームがエアバスの目指すデジタルトランスフォーメーションの柱だ。各国のエアライン140社がSkywiseの基本合意に賛同し、1万機が接続されている。(ラウビー)データ共有が増えれば、分析の質が高まる。当然データの匿名化が前提だ。

 

エアラインあるいはMROサービス提供企業や部品サプライヤー企業は参加レベルを選択できる。レベル2以上で予知保全が可能となる。

 

レベル3からエアラインの情報技術システムで「パートナー企業」認証が使えるようになる。Skywiseでは各社にあわせたサービスが提供される。その他にSkywiseアプリケーションストアがある。ICAOの国際航空運輸カーボンオフセット削減スキーム(Corsia)アプリでエアラインはCO2排出報告に仮想ツールが利用可能となる。

 

MROでは想定外の発生があるが、エアバスはデルタエアラインズとデジタルアライアンスを二年前に立ち上げ、ここにきてGEデジタルも巻き込んでいる。計画外の整備を一掃するのが狙いだ。

 

このスキームではエアバス以外の機体も対象とする。各社が開発するデジタルソリューション、分析技術、予測モデルを統合するのがねらいだ。「失敗モデルをこれまでより迅速かつ多彩に対象にできる」とラウビーは述べる。エアバス以外の機体の分析はデルタとGEデジタルから提供され、予知保全ソリューション統合が可能となる。デルタは今年末に同システム利用を開始する。■


Airbus Covets Central Role In Services

Thierry Dubois October 19, 2021

https://aviationweek.com/aerospace/airbus-covets-central-role-services


2021年9月23日木曜日

エアバスがeVTOL機構想を発表。4名搭乗、125km/hで80キロ移動が可能。エアバスの動きに対し、ボーイングは電動航空機で音なしの構え?

 エアバスのほうが環境を意識した航空移動手段の開発に熱心なのでしょうか。将来への布石ではエアバスが一歩先のようですが、ボーイングの動きが今後注目されます。



エアバス主催のサステナビリティサミットが本日フランスのツールーズで開かれ、同社から固定翼のCityAirbus NextGen eVTOL構想が発表された。V字尾翼と電動モーター8基を搭載したプロペラ推進機だ。


エアバスヘリコプターズが中心となり開発する同機は2023年に試作機が完成し、2025年の型式証明取得をめざす。4名搭乗で80キロまでの飛行を最高速度120km/hで実現する。


「サステナビリティを都市間航空移動に統合し、環境社会両面の問題解決につながる手段をめざしています」とエアバスヘリコプターズCEOブルーノ・イーヴンが語る。都市間移動への統合とともに社会の認知を得ることも課題だと認め、航空管制の自動化とともにビジネスモデル開発も課題とイーヴンは認め、「安全、サステナブルで完全統合されたサービスを社会に提供したい」という。


都市圏では騒音水準の解決が不可欠だが、CityAirbusのデザインでは上空通過時に65 dB(A) 、着陸時に70 dB(A)以下とするのが目標だ。エアバスはホバリング時と巡航時を最適化していると説明。


エアバスはCityAirbus NextGen をEASAの特殊条件VTOL規定で型式証明をめざしている。


単座型Vahana、複座CityAirbus技術実証機の開発から知見を多く得たという。後者は当日の会場で展示されていた。


両実証機で合計242回のフライト、地上テストをこなし、計1,000キロの飛行を行った。さらにエアバスは風洞実験を大規模に行っている。


CityAirbus NextGen 試作型のテスト飛行はパリ、ミュンヘンで行うが、テストは両国以外にも広がるとエアバス幹部は説明。■


Airbus Unveils Plans for Larger, Fixed-wing eVTOL

by Cathy Buyck

 - September 21, 2021, 12:29 PM

https://www.ainonline.com/aviation-news/business-aviation/2021-09-21/airbus-unveils-plans-larger-fixed-wing-evtol


2021年8月7日土曜日

良い前兆が見えても不確定さが消えない民生航空業界。ボーイングが新型機開発の決断に踏み切れない理由とは...エアバスとの差がさらに広がるのか。

  

ボーイング737-10は6月に初飛行し、2023年路線就航の予定だ。Credit: Boeing

 

間航空宇宙分野に生気が戻りつつある。エアラインの発注が増え、利益が復活し、航空機メーカー、サプライヤー各社で増産が再び話題となっている。だがよい兆候の前にふさがるのが長期展望での不確実さだ。

 

次世代機やエンジンがいつ登場するか、またその形状についてはむしろCOVID-19危機前より今のほうがはっきりしないほどだ。

 

ボーイング社長兼CEOのデイヴィッド・カルホーンは737-10および777Xの型式証明取得に焦点をあてつつ、777X貨物型が次の新事業になると述べている。

 

だがボーイングではR&D資金の減少を隠しようもない。2020年の25億ドル程度は2019年の2割減で、減少は2021年も続き、上半期は9.96億ドルにとどまっている。うち民生機用のR&Dは5.24億ドルにすぎない。

 

ボーイングの次の事業では資金減が課題だが、根本的な疑問が残る。エアバスが単通路機増産に向かう中でボーイングは新型機開発に乗り出さなくていいのか。このままではエアバスが数年のうちにマーケットシェアを6割まで増やしボーイングは守りとおせなくなる。

 

もう一つがジェネラルエレクトリックサフランの合弁事業CFMがRISEオープンファン推進方式の実証機開発を決定したことだ。ボーイングも次世代機の開発決定をするのかしないのか迫られる。カルホーンも新型推進技術の重要性をここにきて強調しはじめた。

 

GEエイビエーションは新型エンジンをRISEの技術研究開発をもとに開発しても姿をあらわすのは2035年以降としており、RISEの技術要素が現行のLeapエンジンに代わる新型エンジンに応用され新型ボーイング機に採用されるのは2020年代末まで待たされることになりそうだ。

 

ナローボディー機分野でエアバスが優位だが同社の状況も複雑だ。同社は2023年に月産64機に移行するが、パンデミック前の生産計画を下回る水準の生産が三年続き、ここ18カ月はいかなる犠牲を払っても発注取り消しを回避しつつ、納入先送りへの柔軟対応に専念してきた。このため数百機相当の生産予定が発注エアラインやリース会社の合意をもとに後年度に変更となっている。月産64機になっても受注残は8年分となり、しかも増産の実現は2年先のことだ。

 

エアバスで問題となるのは生産スロットの空きが2026年まで非常に少ないことだ。A320neoを追加生産したいが、スロットがない。そのため、早く機体が欲しい顧客はリース会社あるいはボーイングに向かうことになる。どちらもエアバスには朗報とならない。

 

そこでエアバスは予定通りの拡大を実現すべく、サプライチェーン各社に増産に向け設備投資しても安全だと納得させる必要に迫られている。ボーイングも同様に財務状況が大きく改善し、ナローボディ機増産に目を向け始めた。ただし、同社の増産規模はそこまで大きくない。

 

ボーイングは納入を停止して積みあがっていた787完成機100機近くの引き渡しを急ぐ。ワイドボディ機全体への需要は国際渡航制限とともに低迷しており、ボーイングはこの機会に787事業の立て直しを期待している。■

 

Why Is Boeing Slowing Down All New Aircraft Plans?

August 04, 2021

https://aviationweek.com/mro/why-boeing-slowing-down-all-new-aircraft-plans

 by Sean Broderick, Michael Bruno, Guy Norris, Jens Flottau


2021年8月1日日曜日

エアバスが月産70機超に向け強気の生産体制整備へ。現在は月産40機なのだが、このまま順調に推移するのか見ものだ。原動力はA321neoファミリーの好調な受注状況。

 Aviation Week記事からのご紹介です。

 

エアバスは顧客企業の需要増加傾向、サプライチェーンからの調達増から、増産への環境が整ってきたと判断している。

 

「一部パートナー企業が増産に抵抗を示しているのは残念」とエアバスCEOジローム・フォーリはアナリスト向け2021年上半期プレゼンテーションで7月29日発言した。「受注残は6千機ある」「月間40機だと15年分の生産になる。60機なら10年分だ。顧客企業側は長く待てない。60機体制に引き上げる必要がある」

 

フォーリは顧客企業側が引渡し前支払い(PDPs)を予定通り履行していることから機材引き渡しへの高い期待がわかるとした。

 

エアバスはナローボディ機生産を2021年当初の月産40機を同年第4四半期に45機に増やし、2023年第2四半期に64機にするべく準備を進めている。サプライヤー各社へは2024年第1四半期の70機想定で準備を求めており、さらに2025年の75機体制の調査を始めている。

 

「当社としてはサプライチェーンには早期増産を期待したい」とフォーリは発言し、パンデミックによる減産以前に生産設備投資を終えていおり、実施は可能と見ている。


A321XLRエアバスはA321XLRの引き渡しを2023年に開始する。

Credit: Airbus / S. Verger

 

増産への自信を高めているのがA321neoの好調さで、現在3千機の受注残となっている。エアバスはA321neo生産の比率を「50%超」に引き上げ、好調な需要に応え、さらに60%近くにするのも「間違いとは言えない」とフォーリは含みを持たせた。A321neo各型に加え、A321XLRの引き渡しが2023年から始まる。同社はA321neo用の最終組み立てラインをツールーズに建設中で増産に備える。

 

エアバスが単通路機生産増加を急ぐ背景には2021年上半期に完成機引き渡しが好調で結果として利益が高まっていることがある。エアバスは昨年同期の196機に対し、今年上半期に297機を引き渡した。商用機の収益は42%増の178億ユーロ(210億ドル)になった。また営業利益は24億ユーロと昨年同期の赤字18億ドルから好転した。

 

エアバスは今年の通年業績も上方修正した。600機の引き渡しを目指し、以前の予測を34機上乗せする。そのため営業利益は40億ユーロと以前の予測の二倍としている。また20億ユーロのフリーキャッシュフローを想定しているが、以前は収支トントンとの予測だった。

 

上半期の財務上の業績が強含みだが下半期もそのまま推移するとは思えない。同社CFOドミニク・アサムは直近の実績は「完璧な状態」と表現している。機体引き渡しのペースは増加しているが、エアバスは費用負担を可能な限り先送りしており、下半期中のどこかで処理を迫られる。

 

また同社は顧客企業が引き渡しを先送りしてもPDPsをそのまま計上している。相当数の引き渡しが近づく中で、相当部分の支払いが終わっているため、今後の収益が減少することに覚悟が必要だ。単通路機の増産体制構築が進むと財務上の負担が下半期に現れる。エアバスは2025年就航をめざすA350貨物型開発にも予算が必要だ。■


As Profits Recover, Airbus Argues For Fast Narrowbody Ramp-Up

Jens Flottau July 29, 2021


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