ボーイング737-10は6月に初飛行し、2023年路線就航の予定だ。Credit: Boeing
民間航空宇宙分野に生気が戻りつつある。エアラインの発注が増え、利益が復活し、航空機メーカー、サプライヤー各社で増産が再び話題となっている。だがよい兆候の前にふさがるのが長期展望での不確実さだ。
次世代機やエンジンがいつ登場するか、またその形状についてはむしろCOVID-19危機前より今のほうがはっきりしないほどだ。
ボーイング社長兼CEOのデイヴィッド・カルホーンは737-10および777Xの型式証明取得に焦点をあてつつ、777X貨物型が次の新事業になると述べている。
だがボーイングではR&D資金の減少を隠しようもない。2020年の25億ドル程度は2019年の2割減で、減少は2021年も続き、上半期は9.96億ドルにとどまっている。うち民生機用のR&Dは5.24億ドルにすぎない。
ボーイングの次の事業では資金減が課題だが、根本的な疑問が残る。エアバスが単通路機増産に向かう中でボーイングは新型機開発に乗り出さなくていいのか。このままではエアバスが数年のうちにマーケットシェアを6割まで増やしボーイングは守りとおせなくなる。
もう一つがジェネラルエレクトリックとサフランの合弁事業CFMがRISEオープンファン推進方式の実証機開発を決定したことだ。ボーイングも次世代機の開発決定をするのかしないのか迫られる。カルホーンも新型推進技術の重要性をここにきて強調しはじめた。
GEエイビエーションは新型エンジンをRISEの技術研究開発をもとに開発しても姿をあらわすのは2035年以降としており、RISEの技術要素が現行のLeapエンジンに代わる新型エンジンに応用され新型ボーイング機に採用されるのは2020年代末まで待たされることになりそうだ。
ナローボディー機分野でエアバスが優位だが同社の状況も複雑だ。同社は2023年に月産64機に移行するが、パンデミック前の生産計画を下回る水準の生産が三年続き、ここ18カ月はいかなる犠牲を払っても発注取り消しを回避しつつ、納入先送りへの柔軟対応に専念してきた。このため数百機相当の生産予定が発注エアラインやリース会社の合意をもとに後年度に変更となっている。月産64機になっても受注残は8年分となり、しかも増産の実現は2年先のことだ。
エアバスで問題となるのは生産スロットの空きが2026年まで非常に少ないことだ。A320neoを追加生産したいが、スロットがない。そのため、早く機体が欲しい顧客はリース会社あるいはボーイングに向かうことになる。どちらもエアバスには朗報とならない。
そこでエアバスは予定通りの拡大を実現すべく、サプライチェーン各社に増産に向け設備投資しても安全だと納得させる必要に迫られている。ボーイングも同様に財務状況が大きく改善し、ナローボディ機増産に目を向け始めた。ただし、同社の増産規模はそこまで大きくない。
ボーイングは納入を停止して積みあがっていた787完成機100機近くの引き渡しを急ぐ。ワイドボディ機全体への需要は国際渡航制限とともに低迷しており、ボーイングはこの機会に787事業の立て直しを期待している。■
Why Is Boeing Slowing Down All New Aircraft Plans?
August 04, 2021
https://aviationweek.com/mro/why-boeing-slowing-down-all-new-aircraft-plans
by Sean Broderick, Michael Bruno, Guy Norris, Jens Flottau
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