2020年8月30日日曜日

Ottoのセレラ 500Lは航空業界を一変させる画期的な小型機になる。(T1T2共通記事)

 ットーエイビエーション Otto Aviation から発表のセレラCelera500Lは画期的な機体になる可能性を秘めており、無人機版や軍用機として情報収集監視偵察任務につく発展も考えらえる。弾丸形状の同機をThe War Zoneがいち早く報じたのは2017年だったが、以来同社の動向を注意深く追ってきた。

セレラ500Lの初めての発表は同社販促用ウェブサイトの立ち上げと同日になった。報道資料は初飛行の詳細や日時に触れていないが、これまで31回の飛行を実施したとある。

 

2019年6月、民間機登録N818WMとして南カリフォーニアロジスティクス空港でタクシーする同機の姿が見られており、初飛行が近い様子だった。

 

「イノベーションにより問題解決に成功した。当社の目標は米国内のあらゆる都市間を一気に飛行可能でいながらスピード、コスト両面で民間航空便に匹敵する水準となるプライベート機を実現することだ」とオットーエイビエーションの会長兼最高技術責任者ウィリアム・オットー・シニアが記している。「個人客や家族でセレラ500Lを民間航空運賃並みの料金でチャーターしながら、プライベート機の利便性が実現する。民間航空に十分対抗できる料金でプライベート移動できれば大きな市場需要が生まれると見ている」

 

「セレラ500Lにより航空業界、旅行業界でここ50年で最大の変化が実現する。当社の機材は旅客輸送以外にも貨物空輸や軍用用途にも投入できる。セレラ500Lの市販の準備ができた」

 

OTTO AVIATION

 

OTTO AVIATION

OTTO AVIATION

 

オットーエイビエーションによればセレラ500Lの最大巡航速度は450マイル、航続距離は4,500マイルだ。また燃料消費効率が高く、1ガロンで18から25マイル飛ぶと同社は述べる。セレラ500Lと同等のビジネスジェット機では6名搭乗でガロン当たり2から3マイルなのでオットー社の経済性は際立つし、環境にもそれだけやさしいことになる。またセレラ500Lの一時間当たり運航経費は328ドルという信じられないほどの低水準だと同社は言う

 

OTTO AVIATION

 

画期的な性能を実現したのが層流効率を考慮した機体形状だ。同程度の大きさの他機より抗力は59パーセント低い。搭載するライクリン・エアクラフトエンジン・ディベロップメントRaikhlin Aircraft Engine Developments(RED)製A03 V12ピストンエンジンも大きな要素で、多段階ターボチャージャーを搭載しジェット燃料A1以外にケロシンやバイオディーゼルでの運転も可能だ。

 

REDは同エンジンは燃料消費をて抑えながら信頼性は同程度の出力のピストンエンジンよりはるかに高いとしている。「セレラ500Lの空力特性では離陸時や巡航飛行時に大馬力は不要なので効率重視のエンジンを採用した」とオットーのウェブサイトにある。

 

セレラ500Lにオットーは保有する特許7点を応用しており、その一つとして排気システムに熱交換器をつけ推力を追加した。空力的に洗練された機体形状のため、失速しても操縦に支障はなく安全性も確保している。

 

また涙滴型の機体で客室内に余裕が生まれたのも同程度の機体サイズの競合各機への優位性となる。長期間フライトでも快適さが確保されており、航続距離が4,500マイルでいながら離陸滑走路も3,300フィートで十分なためセレラ500Lは事実上米国内のあらゆる空港から途中燃料給油なしで移動可能としている。

OTTO AVIATION

 

まず民間、商用用途を念頭とするが、オットーでは同機の長距離性能や燃料効率の高さを生かし軍用支援用途にも投入可能とみている。人員輸送貨物輸送に加え情報収集監視偵察(ISR)ミッションも視野に入る。無人機版に各種センサーを搭載すれば長時間監視や通信中継用機材として対象地点に長時間滞空し、高高度から戦場をカバーできる。また、対象地点を変更してもジェット機並みのスピードで移動可能だ。

 

オットーエイビエーションではセレラ500Lの発展型としてハイブリッド推進あるいは全電動推進で効率をさらに高める機体も提案しており、拡大型のセレラ1000Lも提案している。

 

OTTO AVIATION

拡大型セレラ1000Lと500Lの機体サイズ比較

 


同社は外部投資先を確保し、FAA型式認証取得のうえで受注対応する。

 

目標はFAA型式証明を2023年までに取得し、量産型セレラ500Lの製造を開始し、2025年までに発注元へ納入開始することだ。

 

謎の機体として追跡してきたが、オットーエイビエーションのセレラとして姿を現したことに興奮を抑えきれない。同機には今までにない性能と期待が詰まっており、航空業界、航空輸送を一変させる可能性を秘めている。構想を飛行可能な機材として実現したオットーエイビエーションの大きな成果となった。多大な資源と相当の高リスクがある中でこれを実現したからだ。セレラがどんな発展をするか今後も見守りたい。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

The Potentially Revolutionary Celera 500L Aircraft Officially Breaks Cover

Otto Aviation aims to disrupt the aviation landscape with a design that flies at jet speeds, but uses a fraction of the gas, and has more range.

BY JOSEPH TREVITHICK AND TYLER ROGOWAYAUGUST 26, 2020

Contact the authors: Joe@thedrive.com and Tyler@thedrive.com


2020年8月24日月曜日

航空不況の中、世界の貨物輸送はどうなっているのか



 

COVID-19による危機状態の中、航空貨物輸送市場はどう推移しているのか。

パリ支局長にして航空運輸エディターのヘレン・マシー-べレスフォードがまとめてくれた。

空貨物輸送部門はCOVID-19のパンデミック前からすでに厳しい状況にあった。昨年は2009年以来で最悪の年で、米中貿易戦争、マクロ経済の不透明性やブレグジットが暗い材料となった。   

だがCOVID-19危機が始まると、課題は一夜にして変化した。緊急に必要とされる医療品の各地への輸送が優先事項となった。一方で旅客輸送は静止状態となり旅客機の貨物輸送能力も使えなくなった。このためチャーター便需要が強まり、エアライン便も臨時で貨物輸送に転用された。並行してモノの輸送需要そのものが広範囲で縮小し、見通しがつかない中で消費支出が減り、失業増で貨物便運航も減速を迫られた。  

世界の多くの地点で産業活動に再開の動きがある中で、航空貨物の見通しは一層複雑になっている。国際航空輸送協会 (IATA) の最新の市場分析は6月が対象で、回復は低調とあり、業界全体での貨物トンキロメーターは対前年比17.6%減とある。ただ、IATAは5月は20.1%減としていた。ただIATAは6月の貨物需要が例年より軟調だったとし、工業出荷及び新規輸出受注の水準が原因とし、貨物輸送も低速安価な自動車や鉄道に移行しているとする。この傾向は景気悪化時によく見られるが、このまま推移すれば航空貨物業界は心配になるはずだ。

パンデミック前はeコマースは航空貨物業界が有望視していたが、パンデミック後は消費者がオンラインショッピング利用を増やしている。とはいえ、emarketer.comは今年のeコマース販売は年率4.7パーセント減の3.9兆ドルに予測を下方修正している。

では航空貨物業界の今後数年間の見通しはどうか。すべてはグローバル経済の動向にかかってくる。業界は新しい状況に適合を進める必要がある。そのひとつに貨物輸送能力の削減があり、今後数年でひろがるはずだ。IATAは2019年水準への復帰は2024年以降とみている。■

Cargolux 747

Credit: joepriesaviation.net

 How Is The Cargo Market Faring During The Pandemic?

Helen Massy-Beresford August 19, 2020

2020年8月23日日曜日

厳しい企業環境のボーイング民生機部門でレイオフ希望者を追加募集中。軍用機宇宙部門は非対象

 

 

Credit: Boeing

 

ーイングは自発的一時解雇で追加を募集する。対象は商業機、MRO事業および管理部門で同社CEOが社内通知で発表した。これは今後数か年にわたり需要が縮小することに対応しての業務調整の一環。

 

「現在の市場需要で当社の雇用を支えられればよいと思う」「しかし、残念ながら新しい現実に合わせるため二は一時解雇が必要で、ゆくゆ

く成長路線に復帰するため現在の流動性と業界での位置を守っておく必要がある」(CEOデイビッド・カルホーンが従業員向けに発出したメッセージから)

 

最新の措置でボーイングは当初の予定より1割多い雇用調整を行うことになる。ただし、カルホーンによれば、今年後半に予定していた指名一時解雇の規模を下げるという。ボーイング・ディフェンスアンドスペースの社員は自発的一時解雇の対象外となっている。

 

ボーイングの社員数は2019年末で161千名だった。COVID-19のパンデミック状態と経済下降により航空宇宙産業ならびにMRO部門では数万名の社員が削減されており、これと別に一時解雇が見られる。米エアライン業界では数千名の整理が始まっているが、10月までに連邦政府支援が追加されなければその倍の整理が必要となるとみている。■

 

Boeing Seeks More Voluntary Worker Departures

Michael Bruno August 18, 2020

2020年8月14日金曜日

電動航空機の民生利用はどこまで実現しているのだろうか。展望は?

 電気推進方式の航空機はガスタービンエンジン機に比べ何が利点になるのか。

Aviation Week技術担当編集者のグラハム・ウォーウィックが以下回答してくれた。

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スタービンとの比較では電動モーターに利点が多い。ただしモーターは電気推進システムの一部に過ぎない。タービンエンジンに燃料タンク、ポンプ、配管その他が必要なように電気推進ではエナジー貯蔵、電気制御電子装置、配電系統や冷却システムが必要となる。システム単位でみると電動推進方式には課題が残る。

 

利点の一つはノイズだ。電動モーターは静粛度で燃料燃焼型エンジンに勝る。ただし、推進動力を作るためローター、プロペラやファンの駆動が必要となり、離陸時や上昇時にノイズが発生する。とはいえ、電気推進はタクシー中や巡航飛行中は静かだ。電動モーターで分散型推進が可能になり、小型かつ静粛なローターやファンを多数配置できる。

 

もう一つの利点が効率だ。電動型の効率は90パーセントに及ぶが、大型ターボファンで55%、小型ターボプロップは35%程度となっている。タービンエンジンの大きさで効率にも差が出るため、電動推進の導入はターボプロップエンジン搭載のリージョナル機から始まっている。

 

さらに利点となるのが規模を自由に変更できることだ。大型モーターを一二個使う、あるいは分散型推進方式にしても性能に大きな変化がない。タービンではこうはいかない。航空機用電動モーターの開発はまだ初期段階で各種技術で模索が続いている。時が経てば結果が出るだろう。

 

電動推進で最大の課題はエナジー貯蔵だ。現行バッテリーのエナジー密度は航空燃料の数分の一程度しかない。このため全電動機は小型短距離のエアタクシーからで、一時間程度の飛行を想定する。ハイブリッド方式の電動機も出だしは短距離リージョナル機だろう。

 

現行リチウムイオンを上回る高性能バッテリーもあるにはあるが、民生利用は先の話だ。水素燃料電池によるエナジー貯蔵方式が自動車業界で始まっている。さらに新しい方式としてフロー電池があり、NASAがこれをAquiferプロジェクトで航空機に応用しようとしている。

 

バッテリーに制約があるため電気推進方式も当面は従来の航空業界になじみのなかった分野を狙うことになる。その例が都市内航空移動やリージョナル貨物輸送で、現在は道路交通や鉄道輸送が中心だ。民間航空の中核部分ともいえる短距離路線、中距離路線用の機体で電動化はさらに時間がかかり、長距離路線用機材は液体燃料が中心のままとなるとみられる。

 

短距離、中距離用機材では全電動化は無理としても電動化が進むことは確実だろう。メガワット級モーターと発電機をターボファンに組み込めば出力増が望める。これは離陸時に活用でき、タービンエンジンの小型化、効率化が可能となる。貯蔵エナジーを利用したエンジンサイクル管理が可能となれば効率が上がる。

 

電動推進の実現への道はまだ長いが、欧州連合航空安全局がPipistrelの練習機Velis Electroの型式証明を6月に発行しており、普及に向け規制上の最初の関門を突破したと言えよう。■


What Are The Advantages And Challenges Of Electric-Powered Airliners?

Graham Warwick July 31, 2020


2020年8月9日日曜日

ブリティッシュエアウェイズが大規模人員整理に動き出した

 リティッシュエアウェイズが社員12千名削減を目標としている。社員数千名規模が雇用調整対象の通知を受けている。


余剰人員のほぼ半数は自発的退社になると同社はみており、本日は強制退社扱いの対象社員に通知が手交された。


「ここ半年でCovid-19が当社の財務に大打撃となっており、困難な決断をせざるを得ない状況の中、雇用も最大限守るため可能な手段すべて行使してきた」と同社は説明。


「人員整理は予測だにしていなかったが、社員6千名余から自主退社の意向が出ている」


退社を申し出た6千名のうち4千5百名がヒースロー、ガトウィック両空港がベースの客室乗務員。


社に残る従業員にも現在の雇用条件のまま、あるいは新条件を受け入れるかを迫られる。退社社員は同社の人事制度に登録され、新規雇用口を見つける。


ブリティッシュエアウェイズが人員削減を正当化する理由として、運航便数が2割程度に減る中で最大のマーケットの米国とインドへ依然として運航できない状態がある。同社の第二四半期業績は赤字711百万ポンドだった。■


British Airways staff receive redundancy notices

By Cirium8 August 2020

https://www.flightglobal.com/strategy/british-airways-staff-receive-redundancy-notices/139684.article


2020年8月2日日曜日

ボーイングが商用機生産削減を拡大。日本への影響も心配です。

ーイングは民生機材生産数をさらに削減し、一時解雇の追加や777X納入を2022年まで延期する検討に入った。COVID-19による市場減少で同社は第2四半期の赤字が24億ドルになり、737MAXの運航開始のめども立っていない。

Boeing Puget Sound
Credit: Boeing


2020年第2四半期実績を受けて積極対応策を発表した同社は747生産は2022年で終了と同時に発表し、現在は2か所の787生産拠点の統合も検討するとしている。787はワシントン州エヴェレット、サウスカロライナ州チャールストンで生産中。  

同社にとって737の運航再開が順位が高い優先事項であることに変わりないが、完成した450機が納入できず保管されている状態だ。2021年から2022年初期は月産31機に減産するが、市場は軟調なままで型式証明再取得に時間がかかっている。ボーイングは第4四半期から納入再開するとしているが、それまでにMAXの運航資格を得るのが前提となる。

「月産製造数には保管中機材の引き渡しの動向も影響が出ている」とCEOデイヴ・キャルホーンは述べ、完成済み機体の納入が2021年に大方完了すると見ている。ただし、同社はこれから2022年までの製造数の動向には顧客エアライン側との納期交渉や保管機材ならびに製造中機体の完成手順も影響するとしている。

稼ぎ頭の777と787でも大幅減産は避けられない。以前の同社発表では787は2020年に月産10機、2022年までに7機になるとしていた。キャルホーンは「パンデミックの苦境にあるエアライン顧客各社の動向をみて、787の月産10機を2021年に6機にするか検討中」と述べている。

一桁台まで月産が減ると生産拠点の統合案の可能性が出てくる。ボーイングは787生産をエヴェレットとチャールストンに分けているが、最大型の787-10生産は東部チャールストンに限定している。これは機体中央部の長さ寸法のためであり、実際に同部分の製造はサウスカロライナで行われている。物流面からは787生産を全数チャールストンに統合するのが理にかなうが、キャルホーンは検討結果の方向性について言及を避けている。

777では777-300ER/777Fと777X合わせ2021年に月産2機まで減産される。同社は当初3機としていた。777引き渡しは平均で月2.5機のペースを今年中は維持する。だがそのあとはパンデミックの影響から調整するとキャルホーンは公言しており、777Xファミリーの一番手777-9の納入開始は当初の2021年を2022年に先送りする。

777-9開発の減速もCOVID-19に起因する市場需要の減退が原因で、あわせて型式証明取得も遅れているのは737MAXでの型式証明再取得が影響している。「737で得た経験を777Xに取り込んでいることから工程が若干伸びている」とキャルホーンは説明。「一部に時間がかかる要素がありFAAと協力している。さらに深く検討すべき内容もあり以前の想定より時間がかかっています」

747-8生産を2022年に終了させる案を認め、キャルホーンは同機貨物型は年間6機を最後まで維持すると述べ、50年超に渡る同機がいよいよ生産を終了する。予想では2023年終了とみられていたが、7か月前倒しとなった。767ではKC-46軍用型があり、今のところ影響は出ておらず、月産3機を当面維持できる。

ボーイング民生機の第2四半期納入実績はパンデミックと737MAXの飛行停止双方の影響を受けた形で、合計20機と前年同期の90機を大きく下回った。機種別では787が最大の7機で、767、777、737は各4機だった。747-8は1機を納入した。今年これまでの累積は70機で2019年上半期は239機だった。

キャルホーンは雇用の整理にもふれ、民生部門が中心と述べた。社員19千名が離職し、うち6千名が6月末に退職している。「民生部門で15パーセントに相当し、雇用調整は現実問題だ。これで完了したわけではない」とし、「本日の発表内容から将来的に雇用でさらに影響が出てくる」とも述べた。■



Guy Norris July 29, 2020

お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。