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2021年12月17日金曜日

A380最終号機の引き渡しで同機生産も終了。エアバスは巨額の開発費用を回収できなかったが、品ぞろえの点で優位に立ったのが同機の功績。巨人機の時代は終わった。

 A380_Emirates_Hamburg

AIRBUS

 

 

アバスA380の最終号機が納入され、世界最大のエアライナーの製造が「スーパージャンボ」の当初の期待を裏切る形で終焉を迎えた。つまるところ、エアライン業界の変化によりA380生産は想定より早く終了し、251機製造で終わった。これはロッキードのL-1011トライスターより一機多いだけだ。

 

その最終製造機、MSN272がドイツ・ハンブルグを離陸し、発注元ドバイのエミレイツに向かった。出発にファンファーレも流れず、エアバスはCOVID-19のため式典を省略したとするが、大きな野心作の退場を祝う気になれなかったのだろう。

 

A380開発は2000年12月に正式開始され、すべてが大規模だった。エンジン四発の同機は全長238フィートで翼幅262フィート、634トンの機体を空に飛ばした。上下二階の客室に最大853席を設定でき、ボーイング747-8インターコンティネンタルの410席に大きく差をつけた。ただし、大部分のエアラインは545席、4クラス仕様を選択した。

 

AIRBUS

A380 MSN 272が別のエミレイツ機とハンブルグのエアバス社施設に並んだ 

 

2005年4月にツールーズで初飛行し、シンガポールエアラインズが2007年10月に商業飛行を開始した。スーパージャンボには14社の発注が集まり、中でもエミレイツがほぼ半分を占める大規模発注元となった。とはいえ、発注総数は期待を大きく下回った。エアバスは1,200機の受注を当初期待していた。

 

その中でA380の乗客は飛行体験を賞賛した。普通の乗客にとっても同機のサイズは快適な旅となり、余裕のある乗客はエティハドのファーストクラスの「アパートメントスイート」を楽しめた。エティハド、エミレイツはともにアラブ首長国連邦の二大フラッグキャリアである。

 

乗務員もA380の操縦特性を高く評価している。「A380は小型のA320と同じ感覚で操縦できるようにエアバスは技術を投入した」とA380の元機長が語っている。「驚くほど機敏に操縦反応があり、とても600トンの機体を操縦している感じはなかった」

 

だがA380のビジネスはとても成功したものと言えなかった。

 

9/11以前には航空輸送は巨大ハブ空港の出現を求める動きが強かった。エアバスの解決策は幹線に大型機を投入することで飛行回数を減らすことだった。A380は巨体ながら世界各地400地点の空港での運用が可能だが、基本ハブアンドスポーク運用で小型機を接続便に投入する構想だった。

 

だが事態は別の方向に進んだ。民間航空には燃料消費率の優れた双発機が君臨し、A380や747は大きすぎる機体になってしまった。新型双発機は長距離路線で経済効果を大きく発揮できる。エンジン技術の進展が背後にあり、複合材製の機体や空力設計の改良で777の長距離型にその後787ドリームライナーやA350が登場すると、人気を博したのは機体価格とともに運航経費がエアバス巨人機より低くなったためだ。

 

AIRBUS

エアバスワイドボディの三型式、A330、A350XWBとA380が編隊飛行している

 

A380では機材引き渡しが遅れたことも事業の推移に悪影響を与えた。運航投入されると今度は旧世代エンジンと機の素材のため早くも陳腐化してしまった。

 

A380引き渡し開始時点のエアライン大部分は787ドリームライナーとA350に関心を示していたのだった。新世代機で路線需要に応じ柔軟な運用が可能で、経済性に優れ利益を実現しながら長距離路線の開設が可能となるからだった。

 

2019年にエアバスはA380生産を2021年末で終了すると発表した。ボーイングも2020年に747の製造終了を発表した。A380はもともと747へ対抗するべく生まれた機体だが、両機を比較すると明らかに747に軍配が下る。1,550機が製造され、各型に発展し、50年にわたり生産されたからである。

AIRBUS

An Airbus infographic from March 2017, around two years before the company announced plans to end production.

 

A380開発の250億ドルは回収できなかった。

 

他方でエアバスは貴重な教訓を得た。構造部品はヨーロッパ各地で精算され陸路、海路で輸送された。同社のA330改装版のベルーガXL貨物機でも搭載できなかったのである。「エアバスの今日のリーダーとしての地位は同機があって初めて実現したものだ」と同社は声明文を発表している。「製品ラインアップを完成させ、競合他社に優位性を確立できた」

 

メーカーの立場としては商業的に失敗作となったものの、導入したエアライン各社はまだ当面同機を運用する。中でもエミレイツはA380運用で利益の85パーセントをパンデミック前に稼ぎ出していた。

 

エールフランスとルフトハンザもA380運航を段階的に縮小している一方で、アシアナ、ブリティッシュエアウェイズ、中国南方航空、エミレイツ、エティハド、大韓航空、マレイシアエアラインズ、カンタス、カタールエアウェイズ、シンガポールエアラインズ、タイエアウェイズ、ANAは同機運航を継続している。

 

エミレイツはA380を123機発注し、高需要かつ長距離路線網向け機材として活用している。当初想定した空の旅の革命は発生しなかったものの、スーパージャンボは航空業界のニッチを埋めた。なかでも最大の驚きはエミレイツが同機を世界最短のドバイ‐マスカット線に投入していることで、わずか217マイルで1時間未満のフライトだ。

 

それでもA380がエミレイツの成功を実現したのだが、同社もその他エアラインにならいCOVID-19の中で同型機を地上待機させた。スーパージャンボのうち7機はほぼ新造機だったがスクラップ送りとなった。同機の中古機に買い手が見つからず、ここにもA380登場後の業界がいかに変化してしまったかがわかる。

 

だが少なくともエミレイツがいるおかげでA380は当面残る。同社は2030年中ごろまで同機を運行したいとする。世界のエアラインの尺度でいうとA380型各機は小規模で、機体の維持が今後問題になりそうだが、エミレイツは整備会社Spairlinersと契約を結び、修理部品を確保している。とはいえ、同社もボーイング777Xをスーパージャンボ一部の代替機材と見ている。

 

「A380も最終的に供用を終了することになるが、777Xがその後継機として燃料消費効率が優れ、環境にやさしい機体となるが、当社ネットワークの就航先は今後30パーセント増える」とエミレイツ社長ティム・クラークTim Clark が今年初めに語っていた。

 

エミレイツはA380運用を今後も続けるべく、客室内の模様替えを行っている途中で、シンガポールエアラインズ、カンタスの両社も同じ方向を狙っている。

 

製造が終了したことで、終焉が始まったのは不可避の事実で、A380は徐々に姿を消していくだろう。

 

現在の状況では超大型機に残された時間は少ない。ただし、A380の刻んだ物語からは民間航空の世界では変化がいかにも早いことがわかる。これを念頭に、将来にスーパージャンボ構想が復活する可能性は極めて少ないことを心に刻もう。■

 

Airbus Just Delivered The Last A380 Super Jumbo Jet | 

BY THOMAS NEWDICK DECEMBER 16, 2021


2020年5月22日金曜日

エールフランスがA380全機を運行終了

Air France Brings Forward A380 Retirements

Helen Massy-Beresford May 20, 2020

A380
エールフランスのA380は運行を終了した。
Credit: Joe Pries

エールフランスエアバスA380運航を完全終了した。コロナウィルスの大量流行を受けスーパージャンボ機退役を前倒しした。
「COVID-19の危機状態のため、ならびに運行規模への影響のため、エールフランス=KLMグループは本日をもってエールフランス保有のA380運行を完全終了します」と同社は5月20日に発表。
同グループのA380は2022年末までに段階的に運航終了の予定だった。機材の合理化、簡素化で企業競争力と利益力を確保する。
エールフランスのA380は、同社保有、またはファイナンス・リース中の機体は5機で、別の4機がオペレーティング・リースだ。
Aviation Week NetworkのFleetDiscoveryデータベースを見ると、この9機は全部飛行停止状態だ。5機がシャルル・ド・ゴール空港、2機がフランス南部のタルブ・ルルド・ピレネー空港、2機がスペインのテルエル空港に駐機中だ。
A380運行終了で同グループは評価損5億ユーロ(5.5億ドル)の計上を迫られ、2020年第2四半期で償却する。 
エールフランスはA380にかわりA350、ボーイング787を運行する。フランスのフラッグキャリアである同社は昨年12月にA350を10機追加発注し、A380とA340の処分後に対応するためとしていた。

ルフトハンザも同社14機のA380のうち6機を退役させる発表をしている。コロナウィルス危機で大きく落ち込んだ航空需要の回復に時間がかかるためだ。■

お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。