2020年6月28日日曜日

ユナイテッドのアジア路線再開の動き。中国線は当面制約が残る。

United 777-200

Source: United Airlines

United reinstates flights to Asia

By Pilar Wolfsteller27 June 2020

ユナイテッドエアラインズは米国とアジア各地を結ぶ路線を7月から運航再開する。

サンフランシスコ-上海線(ソウル経由)は週2便で7月8日から再開し、ボーイング777で運用する。▶7月はその後シカゴ-東京線を再開し、香港線、シンガポール行き(香港経由)も再開する。▶上海線の再開は国際路線再構築で重要な一歩と同社国際路線アライアンス担当副社長パトリック・クウェイルが6月26日に述べた。▶上海線は2月から運休中だが、米キャリアでは中国路線で同社は最大規模の、サンフランシスコ、ロサンジェルス、シカゴ、ニューアークから5便をデイリー運行していた。

今回の発表は競合するデルタエアラインズが先に中国路線を再開すると伝えたことに呼応するもの。▶新型コロナウィルスが世界的流行になったと世界保健機関が3月に発表すると中国当局は同国に乗り入れる国際便を制限し、疾病の流入を防ごうとした。▶今回出た布告では各キャリアは3月12日時点の運行実績を上回る規模のフライトを実施できないことになっているが、当日は米国エアライン各社は中国向けフライトは全便運休していた。

5月にデルタ、ユナイテッド両社は中国民用航空局(CAAC)に旅客輸送フライト再開の申請を出したが、CAACは却下していた。▶6月3日、米運輸省(DOT)が中国エアライン各社の米国乗り入れを6月中旬より禁じる措置を出し、これに対抗した。▶CAACはすぐ態度を変え、米各社に合計4便まで中国本土へのフライトを認めてきたとDOTは述べている。DOTも中国各社に同数のフライトを認めた。■

ベル412はライバル機に対抗できるのか

How Will Bell 412 Do Against Competition?

Tony Osborne June 19, 2020

helicopter
Credit: Bell

ベル412は性能向上型とはいえ、市場では新技術を導入した他機種が立ちふさがる。ではベルは412でこの挑戦にどう立ち向かうのか。また412EPXは412EPおよびEPI後継機の座を確立できるのか。
ベル412EPXは412ファミリーで単なる性能向上型という存在ではない。日本の自衛隊がUH-1H後継機として採用を決め、Subaruと共同開発する機体だ。EPXの前にEPとEPIがあるが、EPXが登場しても中型ヘリコプター市場での同社の位置づけがかわることはない。2005年に同社は業界トップの座を失った。イタリアのアグスタとAB139(現AW139)共同事業から撤退したのがきっかけだった。
AW139が民生用中型ヘリコプターで一番の売れ筋商品の座を今後10年ないし15年守るのは間違いない。昨年は千機目の引き渡しを達成している。ベルとしても412型に大規模投資するか、新型中型ヘリコプターを開発し、AW139へ対抗が必要となるはずだが、どちらもAW139をトップの座から引きずり下ろす効果はないと見られる。
ベルには412型の開発をこれ以上進めるつもりはないのではないか。UH-XはすべてSubaruに任せ、ベルは軽ヘリコプターに割く余裕を作り、米陸軍の求める将来型長距離強襲機や将来型攻撃偵察機といった軍用機案件やニッチ技術の実用化に専念したいのだろう。■

2020年6月27日土曜日

ボーイングの財務回復はいつ?

When Is Boeing Likely To Recover Financially?

Michael Bruno June 24, 2020

aircraft in flight

ボーイングの財務状態は極めて厳しい。回復はいつになるのか。
最近のボーイングでは機体より金融支援の話題が多い。同社は3月に連邦政府支援600億ドルを求め、自社のみならずサプライヤー対象としていた。だが4月に連邦準備制度が社債買い入れ方針を示し大型社債発行を保証すると、同社も史上最大規模の企業負債となる250億ドルを市場で入手した。
背景には民間航空部門の今後の見通しがある。業界は投資機関と同様に長期のビジネス環境をこう見ている。アジアで中産階級が増え、数百万単位の新しい旅行需要が生まれる。大型機製造は難しいが、多くの規制に守られた市場はエアバス、ボーイングが支配している。両社は最低でも十年は市場規模の拡大効果を享受するはずだ。
とはいえ全てそう簡単ではない。ボーイングのCEO兼社長デイヴィッド・キャルホーンには同社による負債返済は可能とはいうものの、回復がいつになるかが問題だという。投資機関への印象悪化を避けるため同社はエンブラエルの商用機部門を42億ドルで80%を買収する案を中止し、従業員の1割を一時解雇した。またボーイングは今後に影響を与えそうな選択もしている。新型中型機の立ち上げを延期し、空軍向けの地上配備戦略抑止事業への参加も断念した。
一方で株主対策は低調なままだ。配当支払いはあるだろうが、株買い戻しは737 MAX事業が再開されるまで見送りになりそうだ。これには時間がかかる。同社は遅れているMAX引き渡しの再開まで一年かかると見ている。また同社は現金を保持し、投資機関格付けを維持したいとする。
「市場ではボーイングが資金調達に向かうとは今後12ヶ月で発生すると問われると、そうならないとも見ていないし、むしろその恐れはあると見ている。ボーイングが入手した250億ドルや銀行が設定した借入限度まで使い果たせば、航空事業市場の問題がもっと深刻だと示すことになる」とバンク・オブ・アメリカの社債アナリスト、ダグラス・カーソンが述べている。

MAXが危機になったのは2019年だったが、当時のボーイングは民生、軍用双方で前例のない規模の受注を享受していた。今や、民間航空部門の不況は3から5年続く様相を示しており、政府がCOVID-19関連の各種救済策で債務増となる中で国防支出増加は難しい。ボーイングの完全復活を機関投資家が判断するにはこの双方が必要となる。■

2020年6月20日土曜日

主張 エアライン業界の黄金時代は終わった?

Has a golden age of travel passed?

By Flight International19 June 2020

c Shutterstock
Source: Shutterstock
Welcome aboard

アライン業界で2020年から2021年にかけ欠損1千億ドル予測は前例がない巨額規模だ。

厳しい不況の到来は時間の問題とエコノミストが警句を発していたが、コロナウィルスの世界的大流行で一気に危機的状況が到来した感がある。大手エアラインが業務縮小し、中小エアラインは存続の危機に追い詰められる様子を目の当たりにしている。今後は吸収合併が始まり、倒産や路線廃止も避けられない。中古機材だけでなく新造機材も運航されないまま処分されれば機体生産の復調も無理だ。

一部で旅客運航が再開している。今後の動向が見えない世界で第二波、第三波も予想される中、運航が制約されかねず財務面でも混乱しているが活路を見出そうというのだろう。企業存続の鍵はキャッシュ、機動性に加え運そのもののようだ。

今後数ヶ月あるいは数カ年の予測でも今後の再生の姿はわかりかねる。その中でエアライン業界は次の三点に留意すべきだろう。

ひとつが原油価格だ。エアライン各社トップの懸念はいつも燃料価格だ。石油業界は過剰設備を抱え、地政学から市場占有率にとりつかれている。中心的存在のサウジアラビアとロシアは供給抑制に向けた協調に向かう様子はない。不況によりモノ、サービスの需要は弱く、航空旅行や原油も例外ではない。生産国がどんな選択をするにせよ、需要衰退で燃料価格は低水準のままで推移する。

二番目が安全だ。コロナウィルスのワクチン開発が迅速に実現すると予想してはならない。1年ないし1年半という予測は政治家やビジネスピープルのものであり、科学者は経験上で10年単位と予測している。空港や機内での利用客の防護策がいかなるものにせよ、今回の大流行の経験から旅行に慎重な態度となる向きが増えそうだ。

出張需要ではリスク回避の動きが強い。各社とも社員の移動出張に慎重となる。遅かれ早かれ大流行は再度やってくることが経験則でわかっており、慎重にならざるを得ない。

三番目に純然たる経済だ。不要不急の航空旅行に及び腰となる。不況が到来する前に、グローバル経済で借り入れ前提の不要不急の支出で生まれたバブルが吹き飛ばされている。世界的大流行が再来する前だが消費者、企業の負債は警告水域を既に超えている。さらに失業の広がり、雇用の不安定から多くの人々が支出より貯蓄に向かう本能的反応を示している。

航空旅行の黄金時代はすでに過去のものとなったのかもしれない。■

2020年6月13日土曜日

中国国内線は供給増加中だが、需要は呼応していない模様


Daily Memo: Chinese Domestic Capacity Near 90% Of 2019 Level

Bradley Perrett June 10, 2020

国国内のエアライン各社で利用率が前年の9割近くに回復しており、来週は96%に上昇しそうだ。
ただし、需要は低いままだ。各社は需要に先立ち運航力を再編しているが、従業員の有効活用の意図もあると業界筋は見ている。
直近の国内便の運用力増は4月に始まり、5月に入り安定したとOAG及びCAPA航空センターのデータでわかる。
5月11日に始まる3週間で国内線の定期運行は前年比で80%に達し、3月・4月平均の63%から増加した。
先週は90%になり、今週は88%で推移している。来週の運行予定は前年比96%と最高水準となる。
2019年実績の9割は通常時の9割と意味が異なる。エアライン各社はコロナウィルスの大量流行がなければ大幅な供給増を予定していたためだ。1月に緊急事態の宣言前の8週間は国内便の供給量は前年比で約6%増えていた。
国内線利用客のロードファクターは弱含みだ。5月は平均65.2%で、見かけ上は増加していたと中国データ企業Variflightが説明している。原因は規制ではなかった。国内便で感染予防のためロードファクターの制限を撤廃しており、一方で国際線は75%を上限としていた。
エアラインの大多数が国営企業で従業員削減や出勤停止ができない事情もある。社会安定を最優先とする方針はどこにも書かれていないが、共産党の統治にかかわることなので暗黙の了解がある。
そのため他国のエアラインと比べると中国各社の運航力活用コストは低くなる。西側では従業員のレイオフがあり、業務再開を待って給与手取りは増える。中国系エアラインでも多数の未利用機材がある。
路線運航能力の再開が早まる背景に業務をなるべく通常通りとし利用客を呼び戻したい意向がある。キャンセルをどこまで減らせるかが重要だ。
中国国内の利用率は不明だが、エコノミー席の平日料金を利用が最大の北京上海線で見れば傾向がつかめる。6月中旬はCNY400-500(5,600円-8,000円)だが、3週間前はCNY500-600、さらにパンデミック前はCNY1,000だった。このことから業界は実需要より先に対応していることがわかる。

一方で中国系エアラインの国際線利用状況は4月以来は前年比で5-7%になっている。その後増加、減少いずれの動きもないとOAG、CAPAのデータから読み取れる。■

2020年6月6日土曜日

自社生き残りが課題のボーイング、エアバスにサプライヤー支援の余力なし---航空業界の不況は今後数年続く

Airbus And Boeing Focus On Own Survival

June 04, 2020

aircraft
Credit: Next143/Getty Images

COVID-19パンデミックの余波で、今後数年に渡り民間航空部門では苦痛と不安定性が続く。
エアラインの多くが存続の危機に立つ中、メーカー側も同様だ。機体完成メーカーや大手サプライヤーで財務が苦しくなり、自社の存続に集中せざるを得ず、顧客の支払い条件やサプライヤー支援まで配慮する余裕がなくなっている。
エアバスは4月8日に3割減産を発表していた。今度はボーイングで、各種削減策を打ち出した。民間機生産の削減、開発研究の規模縮小だ。ボーイングにはCOVID-19関連の余波とともにMAXの飛行停止措置継続のダブルパンチとなっている。
エアバスは顧客の機体受領先送りに対応しもう一段の削減が必要と見るアナリストがある。ただし、同社はまだ決定を下していない。
ボーイングはボーイングサウスカロライナ(BSC)で787生産を再開し、5月に入り社員多数が職場復帰している。
エアバス、ボーイングの4月引き渡しは合計12機のみで、前年同月比で87%減となった。■

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