2021年7月26日月曜日

米国、中国、欧州のエアラインビジネスの回復は渡航制限のない国内移動に助けられた格好だ。日本は自粛をしすぎたのではないか。

 前回の記事の続きです。グラフがすべてを語ってくれますね。

アジア太平洋の弱点は変化への対応スピードでしょうかね。

 

 

国際線には利用客がまだ戻っていないが、米国系エアラインの利用率は世界最上位にある。COVID-19前の8割程度にまで回復しているが、大部分は国内線によるものだ。ヨーロッパは5割程度にとどまっているが、一時の閑古鳥が鳴く状況からここまで回復してきた。両地区は今年夏の旅行シーズンでさらに拡大を示すと期待されている。

中東、ラテンアメリカも回復基調だが、ここ数カ月の回復は微増にとどまっている。

他方で中国やアジア太平洋地区の回復ぶりは症例の急増、渡航制限の再開で大打撃を受けている。それでも中国は唯一パンデミック前水準に復帰した国で、ここも国内路線の活況に助けられている。■

 

U.S., Europe Leading Utilization Recovery

July 22, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/us-europe-leading-utilization-recovery

 


2021年7月23日金曜日

2021年夏の状況。北米、欧州の回復ぶりに対してアジア太平洋が落ち込んだままの状況が航空業界の心配のたね。中国国内は堅調だが国際路線は依然として制限したまま。

 数カ月にわたる米国内の進展ぶりに業界は安堵の感を強めている。

他地区より早い回復が北米で発生している。米国国内線の実績がかなり良好になってきた。6月の運行座席数は2019年実績の12パーセント減だったが、今後は差が縮まる。

大型発注の動きが楽観的な見通しを後押ししている。ユナイテッドエアラインズボーイングエアバス両社からナローボディ機270機を発注したが、サウスウェストエアラインズも737-700の後継機に737 MAX発注を増やしている。2020年3月から運行停止中のポーターエアラインズでさえエンブラエル195-E2を大量発注しようとしている。

業界では北米はもはや問題地区ではないことが忘れられがちだ。ヨーロッパも同様で米国より回復のペースは遅れるが、落ち込んだ利用客も夏の休暇シーズンを機に増えつつある。COVID-19ワクチン接種の動きがヨーロッパで勢いをつけて望ましい効果を上げているようだ。ただし感染力が高いデルタ変種のCOVID-19が勢いをつけている。

parked aircraft

Credit: Steve Strike/Getty Images


エアライン業界、航空機業界ともに現実の問題はアジアの状況で、望ましくない要因の複合が強く働いている。ワクチン接種率が低い、あるいは極めて低い中で国際航空移動の制限が残ったままだ。

エアバスの確定発注機数でアジア太平洋は37パーセントを占め、ボーイングでは31パーセントになっている。これに対し北米はそれぞれ16パーセント、18パーセントだ。予想外の回復が突如として現実とならない限り、両社の受注残で相当の部分がリスクにさらされたままとなる。

アナリスト陣、国際航空運輸協会(IATA)はともに中国の状況に注目している。ダグラス・ハーネド(バーンステインリサーチ)は中国国内路線の運航座席数は2020年9月に2019年実績を超え、成長モードに入ったが例外は2021年2月で政府が中国新年の休暇中に旅行自粛をもとめたためだ。関係者にはうれしいニュースだ。

だがアジア圏内の運行実績は中国国内線を勘定に入れないと異なる様相を示している。2020年4月は73.6パーセント減となり、一時的に縮小幅が減ったものの、今年6月実績は2019年より72パーセント減で、7月は69パーセント減となる。ハーネドは2022年2月冬季オリンピックより以前に中国が国境を解放するとは予測していない。

アジア内の移動需要は2021年8月は2019年実績の54.4%減、9月は46.9%減となる予想が現在の運行予定から見える。

アジアを出発点、到着点とする長距離路線でも状況は似ており、2021年6月のヨーロッパアジア間路線は66%、アジア北米間は77%減となっている。北米ヨーロッパも71%減で、ロードファクターとなると悲惨な実績になっている。

現在の交通量のまま回復が最重要市場で見られないと機材引き渡しはさらに減速しそうだ。アジア系エアラインはすでに大規模な負債に直面しており、政府援助を受ける会社も多いが、借入返済に資金を回す必要がある。各国政府がどこまで財政支援をするのか、できるのかも不透明だ。

すでに影響が表れている。ハーネドはエアバスのナローボディ機部門では2019年並み引き渡し数に回復するのは2024年、上回るのは2025年と見ている。ボーイングは2018年ナローボディ機引き渡し実績に並ぶのは2022年と予想しているが、そもそも2019年実績は737 MAXの飛行停止措置の影響を受けていた。

ワイドボディ機となると状況は一変する。エアバスは2019年に173機を引き渡しており、2025年はこれが116機に減る予想が出ている。ボーイングは2019年の254機引き渡しが2025年に178機になる。それぞれ危機前の67%、70%の水準だ。ただし、見通しは機種により異なる。エアバスは2025年にA330neoはわずか26機になるが、A350は88機引き渡しする。ボーイングでは787は96機、777Xは36機との予想になっている。■

 

Opinion: Asia-Pacific Region Is Slowing Global Air Transport Recovery

Jens Flottau July 21, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/airlines-lessors/opinion-asia-pacific-region-slowing-global-air-transport-recovery


2021年7月17日土曜日

2021年6月のボーイング受注引き渡し実績は好調ながら、787で品質問題発生など不安材料も....

 MAX

Credit: Flydubai

 

6月のボーイングの受注や引渡しの足を引っ張ったのがフライドバイが737 MAX65機の発注をキャンセルしたこと、および787製造で見つかった品質問題となった。

 

受注は合計219機で、うち200機はユナイテッドエアラインズによる737MAX 発注だった。この規模は2018年6月以来最高となった。また18機は767-300FでFedEx Expressの発注だった。同社は20機発注を発表しており、2機は条件付きとなっている。

 

一方キャンセルは73機にのぼり、フライドバイの存在が大きい。同社は機材を737で統一し、MAX15機を運行中で171機を発注中だ。

 

キャンセルしたのは機材構成の見直しで737 MAXの運行停止措置の影響もあり、同社の乗り入れ国の規制当局の動きを受けている。その中でインドはまだ解除していない。同社は運航停止中の機材から稼働させ、発注分の引き渡しを中止させた。

 

BOC AviationはMAX5機をキャンセルし、名称非公開の顧客がMAXビジネスジェット型一機をキャンセルした。その他英空軍はE-7Aウェッジテイル2機をキャンセルした。RAFは当初5機発注していたが国防体制見直しで二機削減する。

 

結局6月の純受注数は146機となり、五カ月連続で受注数がキャンセル分を上回った。またASC606会計分類では56機追加となり、737が49機、7787を7機の確定発注をうけつつ納入は確定していない。6月30日時点の受注残は4,166機となり、これと別にASC606分で918機がある。

 

6月の引き渡し総数は45機で2019年3月以来最大となった。うち、737 MAXは33機で月間引き渡し数としては2018年12月の実績を上回った。またP-8哨戒機を米海軍へ2機納入している。

 

6月のワイドボディ引き渡しは10機で、ターキッシュエアウェイズ向け787-9が一機あるが、同機の耐空証明は2020年末に出ていたが、引き渡しまで5カ月以上経過したのは製造上の品質問題が関連している。5月に再度引き渡しが止まったのは新規の耐空証明が必要となり、ボーイングはFAAに対し社内にある機材の点検手順の有効性を証明し、引き渡し再開を図っていた。同社は生産関連の問題数点について解明の上、一部は是正措置を施し耐空性能を保証するとしている。

 

787問題は機体構造の接合部にあり、設計仕様を満たしていないことにある。一部では問題解決のためのシム寸法がまちがっており、ギャップが許容限界を超えている。

 

ボーイングは接合問題が各所で発生していると明らかにしており、胴体バレル間もその一部とし、点検の上必要に応じ再作業しているとする。前圧力バルクヘッドでも仕様通りになっていないことが見つかったとし、これはセクション41と呼ぶ機首部分で、製作はスピリットエアロシステムズだった。

 

点検再作業に加え、検証作業が未完了のままで新たに前方バルクヘッド問題が発生したためボーイングは787製造ライン人員を点検再作業に配置している。つまり、787の月産数が少なくとも数週間にわたり低下し、月間5機が守れなくなると同社は発表。

 

問題の山積みによりボーイングは今年末までの787納入予定100機の半分しか達成できなくなると予測している。なお、2021年の787実績は14機となっている。■

 

MAX Cancellations, 787 Issues Dim Boeing’s June Orderbook Momentum

Sean Broderick July 13, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/max-cancellations-787-issues-dim-boeings-june-orderbook-momentum

 


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