2021年7月23日金曜日

2021年夏の状況。北米、欧州の回復ぶりに対してアジア太平洋が落ち込んだままの状況が航空業界の心配のたね。中国国内は堅調だが国際路線は依然として制限したまま。

 数カ月にわたる米国内の進展ぶりに業界は安堵の感を強めている。

他地区より早い回復が北米で発生している。米国国内線の実績がかなり良好になってきた。6月の運行座席数は2019年実績の12パーセント減だったが、今後は差が縮まる。

大型発注の動きが楽観的な見通しを後押ししている。ユナイテッドエアラインズボーイングエアバス両社からナローボディ機270機を発注したが、サウスウェストエアラインズも737-700の後継機に737 MAX発注を増やしている。2020年3月から運行停止中のポーターエアラインズでさえエンブラエル195-E2を大量発注しようとしている。

業界では北米はもはや問題地区ではないことが忘れられがちだ。ヨーロッパも同様で米国より回復のペースは遅れるが、落ち込んだ利用客も夏の休暇シーズンを機に増えつつある。COVID-19ワクチン接種の動きがヨーロッパで勢いをつけて望ましい効果を上げているようだ。ただし感染力が高いデルタ変種のCOVID-19が勢いをつけている。

parked aircraft

Credit: Steve Strike/Getty Images


エアライン業界、航空機業界ともに現実の問題はアジアの状況で、望ましくない要因の複合が強く働いている。ワクチン接種率が低い、あるいは極めて低い中で国際航空移動の制限が残ったままだ。

エアバスの確定発注機数でアジア太平洋は37パーセントを占め、ボーイングでは31パーセントになっている。これに対し北米はそれぞれ16パーセント、18パーセントだ。予想外の回復が突如として現実とならない限り、両社の受注残で相当の部分がリスクにさらされたままとなる。

アナリスト陣、国際航空運輸協会(IATA)はともに中国の状況に注目している。ダグラス・ハーネド(バーンステインリサーチ)は中国国内路線の運航座席数は2020年9月に2019年実績を超え、成長モードに入ったが例外は2021年2月で政府が中国新年の休暇中に旅行自粛をもとめたためだ。関係者にはうれしいニュースだ。

だがアジア圏内の運行実績は中国国内線を勘定に入れないと異なる様相を示している。2020年4月は73.6パーセント減となり、一時的に縮小幅が減ったものの、今年6月実績は2019年より72パーセント減で、7月は69パーセント減となる。ハーネドは2022年2月冬季オリンピックより以前に中国が国境を解放するとは予測していない。

アジア内の移動需要は2021年8月は2019年実績の54.4%減、9月は46.9%減となる予想が現在の運行予定から見える。

アジアを出発点、到着点とする長距離路線でも状況は似ており、2021年6月のヨーロッパアジア間路線は66%、アジア北米間は77%減となっている。北米ヨーロッパも71%減で、ロードファクターとなると悲惨な実績になっている。

現在の交通量のまま回復が最重要市場で見られないと機材引き渡しはさらに減速しそうだ。アジア系エアラインはすでに大規模な負債に直面しており、政府援助を受ける会社も多いが、借入返済に資金を回す必要がある。各国政府がどこまで財政支援をするのか、できるのかも不透明だ。

すでに影響が表れている。ハーネドはエアバスのナローボディ機部門では2019年並み引き渡し数に回復するのは2024年、上回るのは2025年と見ている。ボーイングは2018年ナローボディ機引き渡し実績に並ぶのは2022年と予想しているが、そもそも2019年実績は737 MAXの飛行停止措置の影響を受けていた。

ワイドボディ機となると状況は一変する。エアバスは2019年に173機を引き渡しており、2025年はこれが116機に減る予想が出ている。ボーイングは2019年の254機引き渡しが2025年に178機になる。それぞれ危機前の67%、70%の水準だ。ただし、見通しは機種により異なる。エアバスは2025年にA330neoはわずか26機になるが、A350は88機引き渡しする。ボーイングでは787は96機、777Xは36機との予想になっている。■

 

Opinion: Asia-Pacific Region Is Slowing Global Air Transport Recovery

Jens Flottau July 21, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/airlines-lessors/opinion-asia-pacific-region-slowing-global-air-transport-recovery


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