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2019年12月21日土曜日

エアラインの構造変化:ワイドボディ機需要は低下、ナローボディ機の長距離路線投入が主流になる


Widebody Market Weakness Shows Signs Of Permanent Structural Change

ワイドボディ機需要の弱さは恒久的構造変化の印だ
Jens Flottau Michael Bruno December 11, 2019

ーイングからワイドボディ機をドバイ航空ショーで大規模受注したと発表があったが、実は大規模でも新規でもなかったことに注目すべきだ。
以前受注した777Xの150機受注の一部が787-9など小型機に変更された。エアバスユナイテッドエアラインズがA321XLRを50機発注したと発表し、ボーイングにショックを与えたが、同様に手痛い結果も受けた。同じユナイテッドがA350発注を5年間先送りすると発表したのだ。
ふたつの事象から今後の動向悪化につながる兆候を両社は見ている。ワイドボディ機の需要が弱い。影響は両社の最新製品A350、787、777Xに直結する。両社にはこの傾向が一時的と受け止める時間の余裕があるものの、構造的転換を進め、調整期間に備える必要は避けられそうもない。
複数の事態が同時進行中だ。エアライン側はナローボディのA321XLRで小規模設備投資でリスクも低いまま長距離路線の運行が可能と気づいた。エアバスによれば2019年パリ航空ショーでの発表以来の同機受注は予定も含め400機を超えている。これに対しエアバス、ボーイングの合計ワイドボディ機受注は407機、ただしこれは2年間の合計で、エアバス122機、ボーイング285機だ。
湾岸三大キャリアが市場の低調さを補うシェルターの役目を果たしていない。ボーイングは2014年に777X確定受注277機を記録したが以後この規模は超えていない。さらにエミレイツ発注分を除くと127機になり、カタールエティハド両社も除けば42機しかないる。
ここ五年間で航空運輸は大幅な成長をとげたが、拡大基調に減速が現れており、成長分も短距離路線やLCCによるものだ。貿易戦争から国際ビジネス出張に悪影響が出ている。短中期的に見ると不確実性しかない。さらにA330からA330neoへ、777から777Xへの移行はエアバス、ボーイングの予想よりずっと遅い。
エアバスではワイドボディ機の売れ筋のはずのA350-900で純受注は5年間で157機だ。大型の-1000型は同時期でわずか18機が実質受注分だ。エアバスでA330neoがこの五年間でワイドボディ機の最大の売れ筋で2014年1月から2019年11月にかけ299機を受注した。第1世代のA330がこれに続き178機受注。A380は受注が全てキャンセルされており、同機は2021年に生産終了となる。
ボーイングでも事情はさして変わらない。747-8FではUPS発注分で数年間生き延びているに過ぎない。事態を反転させるだけの引き合いも期待できない。一方でベテランの767にまとまった発注があり、ボーイングは同機でエンジン換装の可能性を検討し始めたところだ。
777と787が大口顧客特に湾岸各社の戦略変更の犠牲だ。エティハドは2013年ドバイ航空ショーでの発注分をほぼ全機キャンセルし、キャンセルできなかったA350-1000は長期間保存機材とする。エミレイツは787発注分をやっと確定したが、2013年に発注した777Xの一部をキャンセルしている。同社は受領機数を2割減らす意向でエティハドは発注済み25機をすべてキャンセルしたいとする。すでに同社は787の発注残を51機から20機減らしており、A350では今年はじめに62機だったが今や20機に減らしている。
2019年に発注取り消しが新規受注を上回った。2018年には77新規受注はゼロで2015年から2017年合わせて30機しか無い。777-9の185機、777-8の35機という2014年実績はすべて湾岸キャリア各社の発注だった。
787がボーイングのワイドボディ機の中心だが、よく見ると全体としての成功の中心は787-9だとわかる。787-8では5年間で19機減で、2014年からでは787-10は55機、787-9が371機受注となっている。
不確実性はさらに拡大している。 Agency Partners の試算ではA350受注残の三分の一は不安定で、イランエアやリビアンエアラインズは機体を受領しないかもしれない。「ユナイテッドがA350発注を取り消す可能性が増えてきた」とする。同社の発注は9年前のものでその後数回に渡り内容を変更している。ユナイテッドは長距離路線にナローボディ機を投入する好機がきたと見るエアラインの一画で、A321XLRは757-200の後継機とみなしている。
この結果はメーカー側に厳しく響く。ボーイングは787を月産14機から12機に減らす。777から777Xへの転換は予想以上に時間がかかる見込みなのはエンジン開発などの問題のせいだが、ルフトハンザ、エミレイツへの引き渡し開始は2021年に延期となった。777X採用を決めたのは9社にすぎず、その後が続かないのはエアライン側が大型機の747-8やA380で苦労していることも影響している。
今年の夏に入りボーイングからサプライヤー各社、投資機関その他に対し米中貿易の悪化で航空機販売の行方に悪影響が出るとし、とくに777、787で顕著と伝えるメッセージが出た。
Jefferiesの12月レポートではワイドボデイは中国市場でのシェアは29%で国内長距離路線に投入されているとある。実際にアジア各地では短距離路線にナローボディ、ワイドボディーがともに投入されることが多く、東京札幌線、東京福岡線ではボーイング777と737NGが運行されている。Jefferiesによればワイドボディ機投入のトップ25路線の平均距離は917カイリだという。
だが世界第一位第二位の経済大国が「フェーズ1」の貿易休戦に向かおうと苦戦する中、中国からの発注の復活は未だ先の話のようだ。ボーイングは10月に787月産を12機に減らすと発表したが、その実施は「2020年後半」とし早くとも2021年と見ていたアナリスト予測を裏切った。
エアバスはA350の初期増産体制を月産10機にしたが、市場の不確実性を理由に当面これ以上増やさないとしている。「A350で現れつつあるギャップはボーイング787でも同様で新規発注分の単価が低下しA350の収益性が圧縮される」とAgency Partnersパートナーのサッシュ・チューサが記している。それによるとA350月産規模は2022年末に減産を余儀なくされ、このまま状況に変化が無いと2024年には7機にまで減るという。
A321XLRの成功が現行ワイドボディ機のみならずボーイングが構想中の新型中間規模機(NMA)にも影響を与えている。NMAは小型ワイドボディ機となるといわれる。「A321XLRの販売好調でNMAは実現の芽を奪われそうだ」とBloomberg Intelligenceが12月レポートで記している。
「ナローボディ機は小型のため小規模都市間路線に適す一方、大型機は経費利益ともに不利になる」「また路線組み合わせの柔軟性につながりエアラインの機動性が高まる」(Bloomberg)
今後登場するボーイングのナローボディ機は現在より席数が増え200席程度が中心となり、A321XLRより長い航続距離を実現するだろう。Bloombergはその実現時期を最短で2020年代後半、開発費用は100億ドル規模と見積もる。「NMAはナローボディに変更されMAXの飛行停止で実現時期が先送りになるのではないか」という。
Jefferiesも同じ見方だ。「ボーイングはNMAの最終決断を下していないが、737MAXの飛行停止で決断を先送りしながら目標価格の実現に必要な条件も同時に先送りできる」■

Based in Frankfurt, Germany, Jens leads Aviation Week’s global commercial coverage. He covers program updates and developments at Airbus, and as a frequent long-haul traveler, he often writes in-depth airline profiles worldwide.
Based in Washington, Michael Bruno is Aviation Week Network’s Senior Business Editor and Community and Conference Content Manager. He covers aviation, aerospace and defense businesses, their supply chains and related issues.

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