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2021年12月10日金曜日

737の貨物機改装を急ピッチで進めるボーイングは中国等に改装ラインを多数確保している。需要規模は大きいとの計算から。

 Aviation Week の記事からです。

737といえば手ごろな貨物機というイメージが今後定着するのでしょうか。それまでにボーイングは新型機を市場に導入できるでしょうか。それにしても737-800はまだまだ第一線で活躍中の機体だと思っていましたが。

 

STAECO はボーイング737-800BCF改装ライン7本を整備する。

Credit: Boeing

 

空貨物輸送の需要がいまだかつてない規模に拡大しつつあり、ボーイング山东太古飞机工程有限公司Taikoo (Shandong) Aircraft Engineering (STAECO)と737-800を貨物型へ改装するボーイング貨物機転換Boeing Converted Freighter (BCF) 専用ラインを二基増設する。

両社の合意内容が12月7日北京で発表されたのは中国民間航空局が 737 MAX の耐空証明を発行し、2018年から19に年にかけ発生した人身事故を受けて運行停止措置となっていた。同型機の運行再開が可能となった直後のことだ。

今回の追加ラインは2022年にSTAECOの山東省斎南市に完成し、うちひとつは2022年第一四半期、のこるひとつも同年中ごろに稼働開始する。すべてそろうとSTAECOには合計7ラインを稼働し、737-800BCFへの改装が実現するとボーイングが発表した。

中国のライン増設発表に先立ち、ボーイングはその他の拠点でも737-800BCF改装能力の増強を公表しており、広州の广州飞机维修工程有限公司Guangzhou Aircraft Maintenance Engineering Company (GAMECO)以外にコスタリカのCooperativa Autogestionaria de Servicios Aeroindustrialesが新しく加わり、カナダのKFエアロスペースKF Aerospaceとボーイング自身のロンドン・ガトウィック空港の整備補修施設に加わる。

ボーイングはこれから20年で合計1,720機が旅客型から貨物型へ改装されるとみており、うち1,200機は標準的な機体改装を受けると予測。アジアの需要が全体の4割を占めるとボーイングは試算している。■

 

Boeing Adds 737 Freighter Conversion Lines With China’s STAECO To Meet Cargo Boom

Guy Norris December 07, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/boeing-adds-737-freighter-conversion-lines-chinas-staeco-meet


2021年11月20日土曜日

ドバイ航空ショーの注目は貨物機新世代型。A350Fが初受注獲得した一方、ボーイングはまだ明確な姿を打ち出せない。一方、777-9型式証明は遅れたままだ。

  

A350Fはボーイングの人気機種777Fとまともに競合するサイズになった。Credit: Airbus concept

 

物機が高価格体の旅客型より注目されるとはまれなことだが、ワイドボディ機市場はパンデミックで一変しており、COVID-19発生後初の大規模航空ショーとなったドバイで新規貨物型の開発案件がを見出しを飾っている。

 

 

双通路機の新規発注が事実上停止している中で貨物部門は記録的な高需要を集めており、エアバスボーイング両社の新世代大型貨物機へ関心が集まっている。需要面の変化を反映した新型機構想がドバイ航空ショーに展示されており、エアバスはさっそく新規案件のA350Fへ初受注を集めた一方、ボーイングも777Xの貨物型で追いつこうとしている。

 

  • Air Lease Corp. がA350F発注に踏み切った

  • 777XFは777-8原型に方向転換

A350Fの初受注はエアリースCorp(ALC)によるもので、エアバス機各型109機の一斉発注の一部として7機受注に成功した。ALCはA220-300(23機)、A321neo(55機)、A321-XLR(20機)、A330-900(4機)も合わせて発注した。このうちA350FはALCで初導入となるが、ALCの執行会長スティーヴン・アドヴァーヘイジーは新型貨物型の需要が高いとし、この型式の機材にも手を広げることにしたと述べている。

 

A350FはA350-1000が原型で機体はフレーム5個分短縮したが、それでもA350-900より長く、ボーイングの777F(777-200LR派生型)に競合する。エアバスが発表した新情報ではA350Fの最大ペイロードを240,300ポンドで飛行距離を4,700nmとある。さらに急送便仕様では貨物209,400 lb、6,000nmになる。

 

ただし、A350Fが明確な姿を発表した一方で、ボーイング777XFはあいまいなままだ。少なくとも社外に対しては。ドバイショー前は、777XFは777-8と777-9の中間サイズになるとの観測があったが、同社は777-8旅客型の派生機種にするようだ。この変更は各社にヒアリングしてみたところ大キャパシティの777-8のほうが貨物機として最適サイズとの意見が多いと判明したためだ。

 

大型の777-8を原型とする方針は製造コストの観点では意味があるが、同時に短い方の777X二型式への関心も高める効果もある。777-8は全長229 ft.、777-9は252 ft.になるが、機体長はこれまでの想定より長くなり、最大離陸重量(MTOW)もこれまでの775,000 lb、788,000 lb想定より増え、777XFではさらに大きなキャパシティが実現しそうだ。業界筋にはMTOWは805,000 lbが目標との声もあり、現行の777Fの766,800lbより増えるという。

 

「実機製造まではスペックに縛られたくない」とボーイングの製品マーケティング担当重役トム・サンダーソンが述べている。「貨物型での課題はペイロードと容積のバランスに尽きる。高密度路線では高付加価値になりそうだが、長距離貨物便では重量が重宝がられる。この場合は機体全長はそこまで問題にならない。その前に機体重量の限界が立ちふさがるから」

 

さらにサンダーソンはeコマース市場の成長で逆に低密度貨物輸送がカギになると述べている。「貨物容積がもっと重要になります。またこの方向で業績が伸びます。現在はこうした検討を行っており、双方の間のどこかで合理的な結論を出したいです」

 

とはいえ、カタールを除けば777-8を発注している唯一のエアライン、エミレイツからボーイングが777XFと777-8の機体長を共通化して当初より大型化する動きに懸念の声が出ている。エミレイツ社長ティム・クラークは「これは問題になる。-9に近いサイズの別の機体をだれが買うのか」と一石を投じている。

 

エミレイツは777Xを2013年に大量発注し、777-9(115機)、777-8(35機)を導入するとしたが、ボーイングから777-9型式証明取得が2023年7月目標と聞かされ、エミレイツは777-8発注をこのまま続けることに疑問を感じ、16機に下方修正し、かわりに787-9を30機導入することにした。

 

エミレイツが777-8発注をゼロにした場合、同型の将来は一気に不安定になる。同社の姿勢が一気に消えれば、ボーイングに残るのはカタールエアウェイズの10機のみとなり、エミレイツの動きからカタールも何らかの対応を示してもおかしくない。

 

他方でエミレイツは機材構成を再考中で、「777Xの納入遅れ三年の影響は大きい。各機の路線就航開始日に合わせすべて計画している」とクラークは述べており、777-9の就航が一年遅れる場合も考慮している。クラークはしっかりした予定表を早期に示すようボーイングに求めたという。他方で「座して待っているわけにはいかない」とも述べている。

 

ボーイングは777-9では規制当局から要求された飛行制御系の変更が未搭載だが、あと2年間あれば型式証明取得できると自信たっぷりで、2023年第四四半期に引き渡し開始できるとボーイングは見ている。

 

エミレイツの見方より保守的な見通しで777-9初飛行(ボーイングは2020年1月)から数えて44カ月の2023年10月に型式証明が下りるとみている。

 

ただし、実際の型式証明取得のタイミングは規制当局次第だ。四機ある試験機のひとつがドバイで展示されており、各機合計で1700時間のフライトテストを実施している。最終的に3,500時間程度のフライトテストになる見込みだ。ボーイングは2023年中の型式証明取得と引き渡し開始の見込みを堅持している。■

 

New-Generation Large Freighters Form Focus At Dubai Airshow

https://aviationweek.com/shownews/dubai-airshow/new-generation-large-freighters-form-focus-dubai-airshow


Guy Norris Jens Flottau November 19, 2021


2021年11月16日火曜日

2021年ドバイ航空ショー: ボーイング777-8の行方に赤信号。大手発注先エミレイツがボーイングの引き渡し遅れに不満。機材計画の変更を強いられていることから。

  

 

777-9が2021年ドバイ航空ショーに展示されている。

Credit: Mark Wagner/Aviation Images


 

ドバイ----エミレイツエアラインボーイングから777-9の型式証明が2023年7月に取得予定だが引き渡しには不確定さが残ると聞き、同社が発注済みの777-8の今後に一層疑念を募らせている。

 

エミレイツエアライン社長ティム・クラークTim Clarkはドバイ航空ショー会場で11月16日に「ボーイングとはやるべき仕事の実効で合意ができていたが、来年なかばまでに日程を再調整する必要がある」と述べた。

 

エミレイツは777X計115機を発注しており、うち16機が-8型とみられる。当初は150機発注でうち35機が-8だったが、下方修正し、代わりに787-9を30機発注した。

 

とはいえ、クラークは同社が777-8の進捗に納得していないと述べており、「さらに遅延の可能性があり、貨物型が先に出るのではないか」

 

クラークは-8をやや大型化し貨物機型の原型に使おうというボーイング構想に懸念を隠せない。「-8が-9に近いサイズなら導入する必要があるのだろうか」

 

エミレイツが777-8発注を取り消せば、同型の将来は暗くなる。同社分を除くと確定発注はわずか10機になる。すべてカタールエアウェイズの発注だ。エミレイツが動けば、同じ湾岸地区のライバルたるカタールにも影響が出よう。-8に発注ゼロとなる事態となれば、ボーイングには777-9と貨物型しか残らないことになる。

 

他方でエミレイツは機材構成の再検討に入っている。「777X引き渡しが3年遅れている影響は大きい」とクラークは述べ、「路線就航を前提にすべてを計画していた」という。検討作業では777-9においても遅延が発生する場合を考慮して、さらに787-9の引き渡しも1年遅れる場合を想定する。クラークによればボーイングにはしっかりした計画を火球的かつ速やかに出すよう求めたという。他方で「黙って座っているわけにはいかない」という。

 

エミレイツはそのため「旧型ER多数」を予定より長く供用し、2030年代としたエアバスA380の順次退役計画も変更を余儀なくされる。同社は機材の運用期間を延長することにした。また777-300ER、A380ではキャビン改修を実施する。53機の777と52機あるA380にはプレミアムエコノミーキャビンが追加される。また777では新しいビジネスクラスキャビンとして1-2-1レイアウトを導入する。こうした改装作業は2022年末から開始し、18カ月以内に完了させる。

 

エミレイツ向けに納期を守れなかったのはボーイングだけではない。エミレイツのA380最終発注機材の二機は10月に引き渡し予定だったが、11月にエミレイツはエアバスに12月10日の最終引き渡し日程を確認させたものの、エアバスCEOジローム・フォーリからクラークに12月16日も実行不可能だと伝えてきたという。■

 

Emirates Casts More Doubt On Future Of Boeing 777-8

Jens Flottau November 16, 2021

https://aviationweek.com/shownews/dubai-airshow/emirates-casts-more-doubt-future-boeing-777-8


2021年11月15日月曜日

ドバイ航空ショーの話題:ボーイングは777X貨物型を777-8原型で開発立ち上げを発表か。

 ドバイ航空ショーが開幕し、いろいろな話題が出てきました。Aviation Weekからボーイングが777Xで早くも貨物機を立ち上げるという話題です。777Xは型式証明が下りておらず、まだ民間エアラインへの引き渡しも始まっていない機体なのですが。

 

Credit: Mark Wagner/Aviation Images

ボーイングは貨物専門エアライン各社との話合いを経て777-8を原型とする貨物専用型の選択に狙いを狭めたようだ。

 

ーイングが777XF貨物型を777-8と-9の間のサイズで発表するとの観測がある。エアバスがA350-950Fとして先に発表しており、A350-900と-1000の中間のサイズとしたが、ボーイングはより大型の777-8旅客型を原型にするようだ。この背景に民間運航者側から777-8を原型にするのが望ましいとの声が大きいことが分かったからだ。

「実際に機体開発を開始するまでは性能諸元についてお話しできません」とトム・サンダーソンTom Sanderson製品マーケティング部長が述べている。同部長は787製品開発とともにボーイングの Confident Travel Initiativeも担当する。「貨物機の課題は常にペイロードと容積のバランスだ。高密度路線は高価値の輸送になり、長距離貨物路線では重量が重視され、機体サイズより最大重量が決定要因となります」

ただしサンダーソンはeコマースの成長で低密度輸送も重要になってきたと指摘している。「貨物容積がこの場合もっと重要になる」

777-8は全長229フィートで777-9は242フィートだが777-8を若干延長し最大離陸重量(MTOW)は従来話題になっていた775,000 lbあるいは788,000 lbより増える。777XFは輸送能力を増やして登場する可能性がある。貨物運航業者筋からはMTOWが805,000 lb.にまで増えるとの期待がある。ちなみに777-200LR派生型の777Fは766,800 lb.だ。

一方でボーイングからは規制当局から777-9の飛行制御系で変更を求められているが、実機への搭載・試験はまだ行われていないが、777-9の型式証明取得はあと二年で達成できると自信たっぷりの発言があった。引き渡し開始を2023年第四四半期に想定している。

777-9初飛行が2020年1月だったので44カ月で2023年10月ごろに型式証明取得をめざすわけだ。これは777、787でそれぞれ10カ月、20カ月だったのと対照的だ。

ただし実際の型式証明発行は規制当局の事情により左右されるのであり、マイク・フレミング Mike Fleming 737MAX運航再開担当の上席副社長兼民生部門顧客サポート及びコマーシャル派生製品事業担当は「これまで同機のフライト業務に多大な時間をかけてきた。どんな問題にも対応できる」と述べ、「今年初めは777Xの大日程に気鋭踏力側の変化を織り込み慎重に日程を組み替えていた」としている。

テスト用機材4機の合計フライト時間は1,700時間に上っており、テストでは3,500時間を狙う。フレミングは「現状の立ち位置は2023年に型式証明を取得し、同年末にお客様へ引き渡し開始する目論見に変更はない」としている。

FAAから型式検査証明 (TIA) を取得すればその段階から飛行テスト時間は型式証明取得にカウントされる。TIA取得はまだだがフレミングはボーイングは「必要な書式の記入に懸命に取り組んでおり、規制当局への提出を急ぎ、最終的な検査証明取得を目指していると述べた。ただし、地上型式試験にはTIAは不要で、テスト機材の少なくとも一機が地上テストに投入されているようだ。■

Boeing Studies Larger 777-8 As Baseline For 777XF

Guy Norris November 14, 2021

https://aviationweek.com/shownews/dubai-airshow/boeing-studies-larger-777-8-baseline-777xf


2021年11月13日土曜日

中型長距離機新開発の開始に踏み切れないボーイング。一方でA320XLRがナローボディ長距離線機材需要を独占して今いそうな勢い。ボーイングは新技術の熟成まで待つ気なのか。

  

エアライン、リース元はボーイングに「新しい757」を開発し、エアバスA321XLRへの対抗機種とするよう求めている。Credit: Joepriesaviation.net

 

ボーイングは新型ナローボディ機開発に踏み切るべきか、この質問をエアラインに向ければ、「すぐ始めて欲しい」というのが答えだ。これは Aviation Week Network/Bank of America Global Researchの共同調査で900社から回答を得た結果で、エアラインやリース会社多数を含む。業界はシンガポールの2020年ショー以来久しぶりの本格的航空ショーのあるドバイに集結しつつある。

 

「ボーイングが何らかの動きを示すべきだろう」とバンクオブアメリカのアナリスト、ロン・エプスタインが解説している。「だが同社はバランスシートを改善してから次に移る構えだ」新型中型機(NMA)の検討は2020年初めまで続いていたが、ボーイングは既存機種の生産安定化を優先し、COVID-19による歴史的規模の影響、さらに20カ月続いた 737 MAXの飛行停止措置、787引き渡し中断による影響からの回復が2022年第一四半期まで続くとしている。

 

ボーイング社内のNMA研究の一環として-5Xコンセプトが2020年末に流出しており、エアバスA321XLRに対抗しつつ757後継機がないニッチを埋めるとしていたが、同社はその後787引き渡し再開、777X型式証明へ注力し始めた。新型機投入の大日程を示す兆候は出ていない。

 

社内の新型機立ち上げへ向けた準備が低調なまま、ボーイングはタイミングを見定めようというのだろう。新型機開発業務には専門部署立ち上げから新技術の飛行実証等があり、統合製品チーム(IPT)でデジタルデザイン製造へ道を開き新型機の実現をめざすだろう。近年の軍用機事業で得た知見を投入するはずだ。

 

顧客側の回答でIPTでボーイングは次期機体の実現をきたいしており、73%はボーイングに高性能長距離性能があり座席数が多いナローボディー機でコスト削減の実現を期待している。顧客が期待する新型機は現行の737 MAXより大型の想定で、29%は座席数180から250のファミリー構成を希望。回答の半数以上が4,500カイリ以上とエアバスA321XLRを除けば、現行機のいずれよりも長い航続距離を望んでいる。

 

各社の要望は極めて高く、とはいえ必ずしも非現実的でもなく、運航経費低下を望んでおり、60%は15%削減で十分としつつ、20%削減が望ましいと85%が回答している。

 

調査結果で明らかになったのはエアラインやリース会社がボーイングにエアバスA321XLRの対抗機種の実現を望んでいることで、長距離型A321neoの納入開始が2023年に迫っており、確定発注がすでに500機になっているとの予測がある。エアバスは正確な受注数を公表していない。

 

ボーイング757と同様にXLRはエアライン多数が長距離路線用として大西洋横断あるいはラテンアメリカ路線に投入するだろう。ユナイテッドエアラインズCEOスコット・カービーScott KirbyはAviation Weekに対しXLRをニューアーク、ニュージャージー、ワシントンの参加者で運用すると述べ、北アフリカ路線も視野に入れる。

 

A320neoファミリー生産の半数がA321neoに間もなく切り替えれると、長距離単通路機市場でエアバスの優位性が確立される。この分野がエアバス収益の大きな柱になっており、ボーイングの737-9や-10では競争力が発揮できず苦戦となりそうだ。

 

対照的にに737-8販売がA320neo相手に善戦し、ボーイングに新型機開発の余裕が生まれると見る向きがエプスタインはじめアナリストに多い。

 

環境持続性が今回の回答で重要な視点となったのは驚くに当たらない。71%がこの問題をとても重要あるいは重要と回答した。またボーイングに迅速な対応を期待していることが明白となった。2026年の新型機引き渡しを期待し、29%が2027年、22%が2028年、19%が2030年だった。各社ともボーイングに時間を無駄にする余裕はないと見ている。

 

一つ問題がある。新型エンジン技術だ。回答のほぼ三分の二が新型オープンローター、水素あるいはハイブリッドエンジンの実用化を待つとし、多数がオープンローターに期待している。CFMインターナショナルが画期的イノベーション技術持続可能エンジン(RISE)の研究が進展しており、次世代機への採用が期待される。

 

このRISEでCFMはオープンファン実証を行う。克服すべき騒音と性能の課題がオープンファンにあり、技術設計上でどう解決するかが問題だ。

 

今年に出た同社発表では目標を燃料消費、CO2排出量で20%削減に置き、ベンチマーク対象のLeap 1ターボファンの20-35千ポンド推力クラスに置く。実証で一段式ギア駆動ファンにアクティブステーターをつけ2024年から25年にフライトテスト実施をめざす。

 

これに対しボーイングの製品開発担当副社長マイク・シネットMike SinnettはRISEにより同社の考える次期新型機の実現時期や方向性が左右されることなないとし、「あくまでも技術実証であり、CFMにはその他の検討対象となる別の技術もあるし、一つにまとめたテストもある」「同社はまだRISEを事業としておらず、ソリューションとしても認識していないが、各種の技術を試すチャンスとなる」と述べている。

 

「自分の視点並びにチームの視点では機体設計に投入可能なツールに映る。興味深い技術もある。タイミングが合う技術もあるが、合わないものもある。最終的なソリューションにつながるかに関心がある」

 

回答の58%がボーイング新型機のエンジンメーカーは一社限定が望ましいとしたが、737MAXでボーイングはエンジンの選択肢は提供していない。

 

ボーイング社内でNMAや派生型-5Xの検討が進んでいた時点で同社にはナローボディあるいは小型ワイドボディの選択があった。回答の四分の三が小型ワイドボディ機を望ましいとしたが、機体構造から抗力が増えてもいいとしたのには二つ理由がある。乗客の乗降時間が短くなる。また折り返し時間も大型ナローボディ機で問題となっており、757-300では前後のドアを使って乗客を移動させている。もう一つの理由として貨物輸送の収入が重要になっている。貨物収入は一程度必要だ。A321XLRの弱点は長距離路線運航で客席が満席となると貨物用スペースが実質的になくなることだ。

 

ボーイング社内ではコンセプト検討が続いている。ボーイングは業界の意見を集め、NASA向け提案として単通路持続可能飛行実証機(SFD)に盛り込むべき内容を把握しようとしている。Xプレーンの70年に及ぶ歴史でも最大規模となる専用試験機事業は各社競合となるが、NASAは持続可能飛行国家連携に政府機関、業界、学界の英知を集める。

 

将来の単通路機として2035年登場を想定する機体の中核技術の実証、成熟化を狙うNASAのXプレーンは2026年に飛行開始の予想で、低排出高効率のエアライナーとして2030年代に現行737の後継機となることが期待される。ただし、これはボーイングが事業化に成功した場合だ。ボーイング案は遷音速トラス構造主翼機で画期的な高アスペクト比の主翼を特徴にし、同社はこの構造を十年以上かけて研究している。

 

2026年末にXプレーンを飛行開始させ、NASAはSFDにより将来の亜音速機の性能目標の実現をめざすべく、地上テスト、飛行試験でデータを集めたいとする。■


Survey Shows Airlines Want New Boeing Aircraft

Survey Shows Airlines Want New Boeing Aircraft


Jens Flottau Guy Norris November 12, 2021


2021年11月10日水曜日

ボーイング、エアバスの現況:受注残は着実に減少する中、中国からの発注へ期待できないものの、業績は改善中

  

 

ボーイング 737 MAXの型式証明再取得が実現しても、中国エアライン各社の受注急増は期待できない Credit: Greg Baker/AFP/Getty Images

 

中国向け受注残が減少の中、新規案件がないボーイング、エアバス両社の現況

  • 中国向け受注残が減少の中、新規案件がない

  • エアバス天津工場はA321neo製造に対応

  • ボーイングは737 MAX再型式証明を年末まで取得を期待

ここ数年、ボーイングエアバス両社が前途有望な将来は東にあると指さしてきた。中国で中産階級の旅行需要が拡大する中で同国エアライン各社が旺盛に機体購入してきた。中国市場の成長で機体需要の中心地は東に移動すると見られていた。

2010年代の航空好況で旅客機の五機に一機は中国向けだったが、各社がCOVID-19パンデミック余波に対応する中で機材引き渡しは実質ゼロのまま、発注も減少している。両社の受注残も急速に減少しつつある。

ボーイング、エアバス両社が現在の引き渡し停止状況を抜け出そうとしているが、これまでとちがい中国には期待できない。

ボーイングの現状認識はこうだ。「中国は今後10年の世界規模の需要増加の25%を占める存在だが、中国向け引き渡しが進まないと当社の世界市場での地位が揺らぐ」とCEOデイヴ・カルフーンが6月にAviation Weekに述べていた。

政治も「大きな要素だ」とある幹部がもらしている。米中両国の緊張状態のため、「ボーイングがすぐにでも受注する見込みはない。ヨーロッパにも同様だ。中国は西側の政治発言で動揺している」というのだ。C919が今年末にも中国東方航空に引き渡しとなるが、当面は心配にさせる要因とならない。生産規模が数年は低いままで、中国国内エアライン各社にも同機を積極的に導入する様子がない。

ボーイング民生機部門は営業損失693百万ドルを計上したが、2020年第三四半期の損失の四分の三程度に相当する。民生機の収益が24%増加し45億ドルになるのは、737 MAX 引き渡しによるところが大きい。

短期財務状態では777で貨物機型生産の加速による変化が期待できる。「貨物機需要が底堅いためサプライチェーンと調整し777貨物型を増産することにした」とカルフーンは述べた。「2022年の777引き渡し数は2021年並みと見ている」とし、今年は9月まで777を20機納入した。

777の月産製造数は2機で、型式証明未取得の777-9もここに入る。今後は貨物型の追加で製造数が増えることになる。一方で777-9の型式証明取得と増産対応を進める。カルフーンによれば777新型の引き渡し開始は2023年末。

エアバスは今年9月までに424機を引き渡しし、昨年同期の24%増となった。内訳ではA220(34機)、A320ファミリー(341機)、A330(11機)、A350(36機)、A380(2機)だ。年間目標達成のため同社は残る三カ月であと180機を納入する必要がある。

同社の民生機部門では収益が21%増の246億ユーロになり、2020年の1-9月期の営業損失24億ユーロが今年は29億ドルの営業利益になった。■

Airbus, Boeing China Airline Orders Backlog Shrinking

November 04, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/airbus-boeing-china-airline-orders-backlog-shrinking


2021年9月4日土曜日

ボーイング新型機開発で日本企業が共同事業体に加わる可能性が浮上。スペースジェットの挫折を超える強靭な意思決定力が日本に試されそう。

 

  • Aviaion Weekに気になるニュースが入りましたので早速お伝えします。


  • スペースジェットで手痛い経験となった三菱重工業が慎重な態度を捨てるのか、その他重工業とコンソーシアムを組んで対応するのか、日本政府がどこまで支援するのか、いずれにせよ完全国産旅客機の夢よりも現実的な解決策を模索するべき時が来たと思います。


ボーイングの新型旅客機事業に期待があるが、同社内部に必要な資金がない。

だが同社が外部と提携し。例えばスーパーティアー1と呼ばれるメーカー、あるいは他国企業と共同事業となればどうなるか。

737 MAXとCOVID-19のダブル危機で、ボーイングは二年連続で記録的な赤字決算となった。ただ、第2四半期の赤字幅が予想を下回りウォールストリートが驚いた。CEOディブ・カルホーンは「峠は越した。回復に勢いがついてきた」と述べている。

ただ同社は6月末現在で420億ドルの負債を抱え、105年の同社史上で前例のない規模となり、2018年末から8倍増に増えた。ボーイング独自の予測では民間航空部門の発注は今後10年間で11%減となる。業界ではエアバスに対抗するボーイングは現状のシェア40-50%は維持できず、30-40%になるとの見方がある。

そこで業界内部には新型ボーイング機の投入を期待する声が高い。中型機、737後継機などが取りざたされており、運航会社の購買意欲を刺激し、ボーイングのシェア奪回につながる。だが完全新型機では200億ドル以上が必要とみる筋もある。

同社の支出には二つ優先事項がある。負債の整理と株主還元がある。バンクオブアメリカのアナリスト、ロン・エプスタインはウォールストリート関係者の56%はボーイングが新型機を立ち上げると予想しているが、34%はそのためにはボーイングは投資機関への姿勢を変えるべきだとみていると紹介。

「新型機開発の資金集めが課題でしょう」というのが航空業界に特化するコンサルタント企業Avascentの意見だ。「当社分析ではボーイングには完全新型機開発をしつつ配当金を支払うキャッシュフローがありません」

だが可能性が高いのはボーイングが他社と提携し、リスクを減らしつつ利益を共有する事業形態に走ることだろう。Acascentのジェイ・カーメル、スティーブ・ガニヤードはこの構想を深堀し、太平洋の向こう側、日本の「重工業」数社との提携だろうとのメモを8月に出した。

同上メモでは日本政府は国産旅客機開発を模索してきたと指摘。ボーイングは共同事業の可能性を数回にわたり探ってきたが、一度も成立していない。そこで、三菱スペースジェットの自壊に注目が集まっている。

「日本とボーイングが共同事業体を立ち上げれば、共同出資、共同生産で新世代旅客機が生まれる」と両名は記している。「興味深いのは今回はエンブラエルとの共同事業検討と異なることで、ボーイングはエンブラエルの技術力を高く買っていたものの共同出資は二の次だった」

日本の国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構には航空機DXコンソーシアムの新規事業があり、「スーパーティア1」として日本国内企業にボーイングとの技術共有、リスク共有を進めさせる構想があるとAvascentは紹介。日本の労働コストは高いといっても北米、ヨーロッパの水準に比べれば低いと主張する。

両名は共同事業が成立すればウィンウィンとなるが、まずは日本側に今度はうまくいくと信じさせ、作業分担は日本航空宇宙産業のグローバルでの地位を高めるものにする必要があると主張する。エアバスの独走状態、さらに中国が実力をつけてきたことから、共同事業は以前よりも実現しやすくなっているのではないか。

「明確に言う。ボーイングには日本が必要だ。日本にはボーイングが必要だ。日本は財務、技術両面でリスクを共有する相手になれる。ボーイングが完全新型旅客機を投入できれば、『失われた十年』を回避できる」とカーメル=ガニヤードは指摘している。■

Will Boeing’s Next Airliner Be Built In Japan?

Michael Bruno September 01, 2021

https://aviationweek.com/aerospace/aircraft-propulsion/will-boeings-next-airliner-be-built-japan


2021年8月7日土曜日

良い前兆が見えても不確定さが消えない民生航空業界。ボーイングが新型機開発の決断に踏み切れない理由とは...エアバスとの差がさらに広がるのか。

  

ボーイング737-10は6月に初飛行し、2023年路線就航の予定だ。Credit: Boeing

 

間航空宇宙分野に生気が戻りつつある。エアラインの発注が増え、利益が復活し、航空機メーカー、サプライヤー各社で増産が再び話題となっている。だがよい兆候の前にふさがるのが長期展望での不確実さだ。

 

次世代機やエンジンがいつ登場するか、またその形状についてはむしろCOVID-19危機前より今のほうがはっきりしないほどだ。

 

ボーイング社長兼CEOのデイヴィッド・カルホーンは737-10および777Xの型式証明取得に焦点をあてつつ、777X貨物型が次の新事業になると述べている。

 

だがボーイングではR&D資金の減少を隠しようもない。2020年の25億ドル程度は2019年の2割減で、減少は2021年も続き、上半期は9.96億ドルにとどまっている。うち民生機用のR&Dは5.24億ドルにすぎない。

 

ボーイングの次の事業では資金減が課題だが、根本的な疑問が残る。エアバスが単通路機増産に向かう中でボーイングは新型機開発に乗り出さなくていいのか。このままではエアバスが数年のうちにマーケットシェアを6割まで増やしボーイングは守りとおせなくなる。

 

もう一つがジェネラルエレクトリックサフランの合弁事業CFMがRISEオープンファン推進方式の実証機開発を決定したことだ。ボーイングも次世代機の開発決定をするのかしないのか迫られる。カルホーンも新型推進技術の重要性をここにきて強調しはじめた。

 

GEエイビエーションは新型エンジンをRISEの技術研究開発をもとに開発しても姿をあらわすのは2035年以降としており、RISEの技術要素が現行のLeapエンジンに代わる新型エンジンに応用され新型ボーイング機に採用されるのは2020年代末まで待たされることになりそうだ。

 

ナローボディー機分野でエアバスが優位だが同社の状況も複雑だ。同社は2023年に月産64機に移行するが、パンデミック前の生産計画を下回る水準の生産が三年続き、ここ18カ月はいかなる犠牲を払っても発注取り消しを回避しつつ、納入先送りへの柔軟対応に専念してきた。このため数百機相当の生産予定が発注エアラインやリース会社の合意をもとに後年度に変更となっている。月産64機になっても受注残は8年分となり、しかも増産の実現は2年先のことだ。

 

エアバスで問題となるのは生産スロットの空きが2026年まで非常に少ないことだ。A320neoを追加生産したいが、スロットがない。そのため、早く機体が欲しい顧客はリース会社あるいはボーイングに向かうことになる。どちらもエアバスには朗報とならない。

 

そこでエアバスは予定通りの拡大を実現すべく、サプライチェーン各社に増産に向け設備投資しても安全だと納得させる必要に迫られている。ボーイングも同様に財務状況が大きく改善し、ナローボディ機増産に目を向け始めた。ただし、同社の増産規模はそこまで大きくない。

 

ボーイングは納入を停止して積みあがっていた787完成機100機近くの引き渡しを急ぐ。ワイドボディ機全体への需要は国際渡航制限とともに低迷しており、ボーイングはこの機会に787事業の立て直しを期待している。■

 

Why Is Boeing Slowing Down All New Aircraft Plans?

August 04, 2021

https://aviationweek.com/mro/why-boeing-slowing-down-all-new-aircraft-plans

 by Sean Broderick, Michael Bruno, Guy Norris, Jens Flottau


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