WASHINGTON—米FAAは2018年10月のライオン・エアJT610便事故を受けてのボーイング737 MAXの改修作業の実行を求める一方、エチオピアエアラインズのMAX 8機事故で運行停止措置が各国で広がる中で同機事故で運行停止に足る証拠は見つかっていないとの立場だ。
 改修作業は現在急いで行われておりボーイングのMAXファミリーで今後完成する機体に反映される。型式証明のため飛行テストが進行中でFAAは改修内容の耐空証明を4月までに交付する見込みだ。
 ボーイングによる改修内容には機体操縦特性補正システム(MCAS)の改良があるとし、ライオン・エアJT610便事故の調査で飛行制御問題が関心の的となっている。だがMCAS以外に飛行制御系そのものも対象となり、パイロット用画像表示、運航マニュアル類、乗員訓練が改訂される。
 「飛行制御能力の向上策には迎え角(AOA)入力もあり、安定板のトリム指示を誤ったAOA表示の際に行い、安定板操作の制限で昇降舵操作を回復させる」とボーイングは説明。
 FAAはこうした変更内容はJT610便事故での指摘事項に対応するものと評価し、3月10日発生のエチオピア機事故があったがこの内容を変更するだけの証拠は見つかっていないと主張。デジタルフライトレコーダーとコックピットボイスレコーダーのでーた読み取りがまだ終わっておらず、証拠となる内容はまだでていない。
 「これまでのところ検討したところシステム状の動作問題は見つかっておらず同機の運行停止を命じる根拠はない」とFAA長官代行ダン・エルエルが3月12日には声明を発表。「また各国の民間航空当局から措置を正当化するだけのデータは届いていない」
「2019年3月10日発生のエチオピアエアラインズのボーイング737-8型機事故をうけ国家運輸安全委員会(NTSB)を認定機関およびFAAが技術顧問としてエチオピア事故調査局を支援している」とFAAは3月11日に発表した耐空証明継続措置の中で各国向けに説明。「FAAは調査機関の支援用に職員を現地に派遣し、事故の実態解明にあたる。データは全部精査して、FAAはデータが必要と示せば適切な行動をとる」
 FAAはJT610便事故後に措置をとったと強調しており、離陸直後にジャワ海に墜落した同機事故では迎え角(AOA)センサーが異常値を示す中で乗員がなんとか操縦しようと格闘していた。その他、ボーイングは737MAXのFCSもMCASを含む形で改修する予定だ。
 MCASとは自動的に機首を下げるインプットを提供しフラップを上げた操縦をする想定でパイロットを助ける機能がある。「とくに低速域でAOAが大きい際に有効だ」とボーイングは昨年11月煮出した運航社向け通告で説明した。MAXのCFM LEAP-1Bエンジンはこれまで以上の揚力を高い迎え角で発生させ、737NGのCFM-56-7Bと異なる。MCASはこのちがいを緩和するべく型式証明で必要とされた。
 MCASにはAOAセンサー一個からのインプットが入るがこれもボーイングの改修で変更になるとみられる。データのエラーにより機構が作動し、パイロットはチェックリストでこれをオーバーライド出来る。だがシステムの反応がエラーモードではパイロットを混乱させる可能性があると、JT610調査で指摘されている。
「AOAデータがエラーの場合、ピッチトリムシステムにより安定板のトリムを取り機首下げを最長10秒間行う」とボーイングはJT310便事故後の昨年11月に運行者に説明していた。「機首下げ安定板のトリムの挙動は電気式安定板トリムスイッチにより停止、逆転できるが、電気式暗転番トリムスイッチを切ると5秒後に再スタートする。安定板トリムシステムを切っておかないと機首下げ安定板が繰り返し作動することがある」
 JT610機事故調査での仮説には乗員が機体に発生している事態を完全に理解しないままMCASと反対の動作をトリムスイッチで試み、同装置の作動を止めなかったというものがある。
 世界各国の運行者、規制当局はMCASの機能がよく理解されないままセンサーデータの誤りを疑い、機体を着陸させようと通常ではない行動をとったが安全に影響するデータを確認していなかったのではないかと危惧している。
 仮にMCASが運行上のリスクと考えられても規制当局には運行停止以外の選択肢が少なくとも1つあると元当局の関係者がAviation Dailyに語った。「MCASが問題の根源なら切ればよい」とし「MCASを使わずに運行制限を設け、たとえば一定の速度以下では飛べなくすると問題が解決するまで措置が残ります。運行停止までする必要なないんです」■