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2021年8月5日木曜日

C919は無事開発・型式証明を完了できるのか。Comacが予定通りに進めれば、西側大手メーカー並みの実力を短期間で習得することになるのだが....





Comac’s C919

Credit: AFP/Getty Images

 

新型航空機の開発では技術課題や設計不備のため型式証明取得が遅れるのが通例だ。路線就航や低率生産開始も課題となる。中国商用航空機(Comac)C919ナローボディ機も例外ではない。

ComacはC919開発を2011年に発表し、2015年後半に試作機1号機を完成させ、2017年には2号機を製造した。Comacは試験用に6機を完成させ、今年の珠海航空ショーで低率生産段階に入ると公表した。比較すると、長年にわたる航空機生産の経験を有するボーイングでは787の路線就航開始から量産開始まで9年かかっている。

C919開発開始から10年経過したが、話題の中心は果たして同機が中国以外で買い手が見つかるかだった。さらに二つの疑問が生まれている。ComacはC919量産ができるのか、いつ量産段階に移行できるのか、という点だ。

C919はまもなく生産前審査と製品ライフサイクル検討を受ける。ここでC919の生産体制、仕様設定やサプライチェーンの課題が検討される。フライトテストを行い中国民生航空局が型式証明を出すのが次の段階で、その後路線就航が始まり低率生産の準備が整う。

機体を移動しながら生産するため各所に生産治工具の設置が必要となる。これまでのC919は固定位置で生産されたようだ。今後の増産を見越し、生産ラインを複数設置する、あるいは移動式生産ラインが必要となるはずだ。増産には生産サイクル時間の短縮が必須だ。そこで生産治工具をあらたに設計し調達ししかるべき位置に設置する必要がある。

さらに生産仕様を管理しつつ変化点制御を行うシステムの確立が必要だ。Comacは同機生産ラインの管理で多様な仕様の管理をこなす実力が求められる。サプライチェーンで発生した品質問題を追跡し、管理しつつ解決する能力が必要だ。また設計面の不備や製造性の問題が浮上すれば生産に支障が発生する。航空機生産は多様な素材を使用し、サプライヤー各社のリードタイムが長くなる傾向があり、製造にはパーツ全点数が正しい仕様で必要な時にそろう管理体制が必要となる。実効性を上げるには堅固な管理体制を整える必要がある。

さらに、C919の初期生産ではComac社内外のサプライチェーンが課題となる。C919の主要サプライヤー82社のうち6割が米国、3割が欧州、1割が中国と外資の合弁事業となっている。サプライヤー各社の位置が重要で、C919用部品の9割を国外から搬入するため、増産に移す際に障害になりかねない。

初期開発・型式証明取得段階でComacは部品を単純に調達したのみだった。生産段階では各種部品の数量が増え、サプライヤーとの取引契約は再交渉の必要がある。部品の約60パーセントが米国関連サプライヤーからの供給となるため輸出コンプライアンスで米政府による規制への対応が必要となる。C919試作機製造中には現状のような厳しい規制はなかった。こうしたサプライチェーン関連の課題により、計画の精度が不十分だったり、在庫やリードタイムを考慮しなければ、生産が遅延する可能性は十分ある。

C919が低率生産段階に入るのは時間の問題といえるが、通例の生産上の難関に加え、対外貿易上の課題に直面しそうだ。Comacにはボーイングやエアバスに匹敵する年間150機量産の実施経験が欠如している。だが、生産計画を念入りに行えば、Comacにも生産のこつを急速に習得する可能性があり、業界を驚かすような成果が生まれてもおかしくない。■

Opinion: Can Comac’s C919 Ever Reach Full-Rate Production?

Alex Krutz July 30, 2021

https://aviationweek.com/aerospace/manufacturing-supply-chain/opinion-can-comacs-c919-ever-reach-full-rate-production

Alex Krutz is the managing director at Patriot Industrial Partners, an aerospace and defense advisory firm that focuses on manufacturing strategy and supply chain optimization.

The views expressed are not necessarily those of Aviation Week


 

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