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2021年1月4日月曜日

主張 厳しい冬が続くエアライン業界はこの時期どうすごすべきか。利用客の利便性を真剣に考え、あえて構造改革に使うべきだ。その先の将来は明るい。

 EDITORIAL: Airlines' bleakest winter

Karen Walker December 16, 2020

Chicago O'Hare International Airport

Credit: Michael Sanborn

 

年に入ったが、ここ三ヶ月の運航に必要なキャッシュにも事欠くエアラインが多数ある。ワクチン発送はこうした各社に朗報とならず、航空需要が即回復する兆候はない。2020年は政府支援が航空業界にあったが、二回目では規模は限られ、申請も難しくなる。不毛の冬となり、破綻する会社も出るだろう。

 

冬でも希望はある。ワクチン配送は予想より早く始まったが、パンデミックの苦労が長期化すればCOVID-19の解明もそれだけ充実するはずで情報も入るはずだ。

 

エアライン業界も今回の危機状況から学ぶところは多い。固定費と運行経費の比率が高い産業であり、キャッシュが最低水準では無謀と言わざるを得ない。パンデミックによる業務縮小と経費節約からエアライン各社は状況に適応し、痛みのない縮小あるいは成長の方法を体得する必要に迫られている。

 

もっと大きな課題がサービス提供業者としての向上だ。生き残り第一の環境でキャッシュは王様であり、各社は必死にその確保に努めている。だが回復段階がはかどらず、利用客が移動方法を検討すれば、顧客が今度は主導権を握る。エアライン各社は顧客向けサービスの模範生ではなかった。とくに供給を上回る高需要の時期にあてはまった。顧客サービスを一貫して真剣に考えてきたごく少数のエアラインでも飛行移動再開となり顧客から確実に指名されるとはいえない。何ヶ月も利用できなかった顧客や得意先には選択の幅が広いからだ。最終的に利用客、業界双方によい結果が生まれるだろう。エアライン側はマイレージプログラムにあぐらをかき、サービス水準向上を二の次とする状態があまりにも長く続いた。

 

別の言い方をすれば、業界はこの危機的状況から復興し、以前よりよくなれる。一部エアラインはICAOが進めるCORSIA排出ガス対策目標以上の水準をあえて選択している。

 

ユナイテッドエアラインズの2050年完全カーボンニュートラル宣言は利用客、利用企業、投資機関がエアラインに環境への責任を求めているためだ。旧型機を早期引退させ、旅行需要の落ち込みに対応すれば、エアライン各社は持続可能な将来によりよく対応できる。

 

昨年末にIATAのチーフエコノミスト、ブライアン・ピアースは「危機的状況やショックから良い成果が生まれるものだ。ちゃんと考えれば、通常なら実施困難な構造改革が可能となる」と述べていた。

 

大変な一年が終わり、冬が続くが、業界は一層力強く再興できる。■


2020年6月20日土曜日

主張 エアライン業界の黄金時代は終わった?

Has a golden age of travel passed?

By Flight International19 June 2020

c Shutterstock
Source: Shutterstock
Welcome aboard

アライン業界で2020年から2021年にかけ欠損1千億ドル予測は前例がない巨額規模だ。

厳しい不況の到来は時間の問題とエコノミストが警句を発していたが、コロナウィルスの世界的大流行で一気に危機的状況が到来した感がある。大手エアラインが業務縮小し、中小エアラインは存続の危機に追い詰められる様子を目の当たりにしている。今後は吸収合併が始まり、倒産や路線廃止も避けられない。中古機材だけでなく新造機材も運航されないまま処分されれば機体生産の復調も無理だ。

一部で旅客運航が再開している。今後の動向が見えない世界で第二波、第三波も予想される中、運航が制約されかねず財務面でも混乱しているが活路を見出そうというのだろう。企業存続の鍵はキャッシュ、機動性に加え運そのもののようだ。

今後数ヶ月あるいは数カ年の予測でも今後の再生の姿はわかりかねる。その中でエアライン業界は次の三点に留意すべきだろう。

ひとつが原油価格だ。エアライン各社トップの懸念はいつも燃料価格だ。石油業界は過剰設備を抱え、地政学から市場占有率にとりつかれている。中心的存在のサウジアラビアとロシアは供給抑制に向けた協調に向かう様子はない。不況によりモノ、サービスの需要は弱く、航空旅行や原油も例外ではない。生産国がどんな選択をするにせよ、需要衰退で燃料価格は低水準のままで推移する。

二番目が安全だ。コロナウィルスのワクチン開発が迅速に実現すると予想してはならない。1年ないし1年半という予測は政治家やビジネスピープルのものであり、科学者は経験上で10年単位と予測している。空港や機内での利用客の防護策がいかなるものにせよ、今回の大流行の経験から旅行に慎重な態度となる向きが増えそうだ。

出張需要ではリスク回避の動きが強い。各社とも社員の移動出張に慎重となる。遅かれ早かれ大流行は再度やってくることが経験則でわかっており、慎重にならざるを得ない。

三番目に純然たる経済だ。不要不急の航空旅行に及び腰となる。不況が到来する前に、グローバル経済で借り入れ前提の不要不急の支出で生まれたバブルが吹き飛ばされている。世界的大流行が再来する前だが消費者、企業の負債は警告水域を既に超えている。さらに失業の広がり、雇用の不安定から多くの人々が支出より貯蓄に向かう本能的反応を示している。

航空旅行の黄金時代はすでに過去のものとなったのかもしれない。■

2020年5月9日土曜日

アジアで国内線需要に回復の兆し、日本はいつ?

Asian Markets Start Domestic Travel Rebound

Adrian Schofield May 06, 2020

domestic route flight capacity
Vietnam Airlines is adding flights on domestic routes as restrictions ease.
Credit: Airbus

完全復活はまだ先としても、期待できる兆候がアジアのエアラインに見えてきた。
国内路線再開は中国が先行し、韓国、ヴィエトナムが続く。ただし、インドネシアや日本などでは国内運行が削減されたままで、回復は一様とは言えない。
  • 国内需要の復活は中国、韓国、ヴィエトナムで顕著
  • 海外旅行ができず国内観光が増える
COVID-19で航空便は大幅削減され需要が減少している。最も大きな被害を受けた国が最も大きな回復を見せる一方で、その他の国では大量発生が峠を越したとは言えない状態だ。
国内航空需要は国際線より先に回復の予想がある。国内で旅行制限が解除されれば国内路線網を多く持つエアラインが有利となる。
【中国】COVID-19が最初に発生した中国がこの傾向を実証し、国内輸送容量が増加中だ。北京への国内旅行制限が解除された4月30日から旅行需要も加速している。また全国人民代表会議が5月22日開催と正式に決まったのも朗報となる。
【韓国】韓国は最大のウィルス被害を初期に受けたが、以後はウィルス封じ込めと感染予防に成功している。国際線は各国の政策で打撃を受け、国内路線も大幅削減された。
大韓航空の国内路線は4月に対前年比60%減だったが、5月は52%減に転じた。同社は4月28日まで国内17路線中6路線のみ一日36便を運行していた。だが5月18日までに15路線で59便を毎日運行する。
LCCのチェジュ航空は50%もの減便をしていたが今後は運行再開を増やすと発表。
【ヴィエトナム】ヴィエトナムも国内路線運行再開に向かっている。政府の措置によりヴィエトナム航空はハノイ-ホーチミン線で一日一便のみ運行となった。
ヴィエトナムも公衆衛生で成果を上げ、政府は国内路線を順次再開させる。CAPAとOAGのデータではヴィエトナム航空の国内線輸送容量は4月初めが底で以後増加に転じている。4月23日から同社はハノイ-ホーチミン線をデイリーで4-6便に増やし、5月に11便とする。その他幹線も増便する。
【マレーシア】エアエイジアマリンドエア両社もCOVID-19の影響で国内運行を停止していたが、4月27日から限定付きで再開した。だがマレーシアでロックダウン措置が5月12日まで延長されたせいもあり初日の利用は低調だった。
マレーシアの国内需要は今年末までに2019年実績の8割までに回復するとPwCが予測している。国内旅行で海外旅行であいた穴を埋める期待があるためという。
【日本】その他国の短期的見通しは暗いままだ。日本の国内運輸容量はまだ増加に転じておらず、日本航空は4月初期の運休37%が5月10日は68%に増える。全日空も国内便は4月28日時点で7割を運休していた。日本政府は緊急事態を5月31日まで延長し、国内移動を制限している。
【インドネシア】インドネシアの国内路線への影響は他国よりは軽かったが、4月24日に状況が大きく変わった。同日に政府が定期旅客便運行を6月1日まで停止すると決めたためだ。大量の国民移動で感染の広がりをを恐れラマダン、エイド期間の里帰りを制約した。

総合するとアジア各国のエアライン業界は低調な状態のままで、当面はこれが続く。ただし、朗報が少ない中で、成長の兆しをうかがわせる事例からトンネルも先が見えてきた。■

お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。