2020年12月8日火曜日

ボーイングのシェア低下を見てエアバス取引に走るべきか、サプライヤー各社の判断は....

 

Should Boeing Suppliers Shift Toward Airbus?

Michael Bruno November 26, 2020

https://aviationweek.com/aerospace/manufacturing-supply-chain/should-boeing-suppliers-shift-toward-airbus

 

Spirit AeroSystems's composite center fuselage sectionスピリットエアロシステムズではエアバス取引の拡大の一環でA350XWBの胴体中央部を複合材で製作している。

Credit: Spirit AeroSystems

 

ささか遅い観はあるが、ボーイングCEOデイヴ・キャルホーンが10月に同社が民間航空機市場でヨーロッパのライバルに差をつけられていると認めた。

COVID-19の大量流行の前から737 MAXの飛行停止措置並びに生産中断があり、業界の中にはこのままだと6対4いやもっと差がつくとエアバス、ボーイング両社のナローボディー機の動向で警句を出す向きがあった。

これまでの5対5の互角勝負から大幅な推移だが、背後に大きな変化がある。「ボーイングが737 MAXで足踏みしている状況はエアバスに千歳一隅のチャンスでナローボディー分野でシェアを一気にふやせる」とモーガンスタンレーのクリスティン・リワグ、マシュー・シャープが11月9日に記していた。「サイクルが長くかつ競争相手や新規事業が限られているのが航空宇宙産業で...マーケットシェアを戦略的にふやした効果は今後長く残る」

航空宇宙産業のサプライヤー各社も歴史的な不況に直面する中、マーケットシェアの大変動を見てエアバスに切り替えるべきか疑問に思っているはずだ。

確かに誘惑は強い。「ここ18か月でエアバスが完全にリードを奪い、ボーイングは抵抗できなくなるほどの勢いだ」とエージェンシー・パートナーズのアナリスト、サッシュ・ツーサがAviation Week 主催のウェビナーで11月に発言していた。「エアバス関連サプライヤー各社のほうがボーイングと取引中の各社より企業価値が増えている。これは収益でも明らかで受注の6割がエアバスだ」

事情はサプライヤーにより異なるが、考えていることは同じだ。もしエアバスがA320ファミリー機材の引き渡しを順調に進めれば、MAXを注文した顧客は先送りあるいは取り消しに走るのではないか。とくにMAXの飛行停止措置は注文変更の絶好のチャンスだ。

モーガンスタンレーのデータを見てみよう。ボーイングのMAX受注は2,717機あり、2025年までの分だ。うち29%はA320発注もしているリース会社あるいはエアラインによる発注だ。

COVID-19とMAX飛行停止措置前はサプライチェーンがボトルネックで両社合わせ月産120機の生産計画構想が強いプレッシャーだった。

専門家には両社のうち先に月産60機以上のペースをサプライヤーベースで維持できる方が勝者となるとの見方がある。エアバスは各サプライヤーに47機体制を2021年10月までに整備するよう求めているが、ボーイングはわずか31機しかも2022年「早期」までとあり、それでもサプライヤー側にはこの目標を怪しむ向きがある。

ボーイングのティア1サプライヤーで少なくとも一社、スピリットエアロシステムズがエアバス陣営に移行しようとしており、その背景にはMAX問題やCOVID-19以前の戦略企画がある。737ファミリーがスピリットの売り上げ50%を2019年まで占めており、ボーイング全部合わせると8割近くになる。

スピリットがエアバス向け取引で多角化を図るのは理に適っているといえるのか、アナリスト、コンサルタントには間違いとみる向きがある。

「正しい判断ではないでしょう」とバーンステインのアナリスト、ダグ・ハーネッドがAviation Week 主催ウェビナーで述べていた。「シェアは変動するもので、一般の皆さんが考えるより大きく動いています」

PwCのコンサルタント、スコット・トンプソンは「二社寡占状態で市場は50-50の互角勝負に戻るはず」という。だがもちろんバランスをどう回復できるかが問題と本人もいう。

ハーネッドも下位のサプライヤー企業でボーイング依存が高すぎる会社に影響が出ると見ており、あるいはボーイングがシェア回復を狙いサプライヤーに圧力をかけてくるかもしれないという。だが実際にはそうならないと本人はみている。「小規模サプライヤーに影響が出ても、大方でこれ以上悪化する可能性は少なく、よい方向になるのではないか」

乗り換えを無効にするその他の要素もある。「ボーイングとエアバスのシェア争いがどうなるかは不明だが、見ものなのは確かだ。シェア争いで勝者はない」とリワグ-シャープは口をそろえる。

航空宇宙製造業は変化への適応が遅く、動きも鈍い業界といわれる。しかし今回はあえて変化を選択せず、マーケットシェアの混乱を受け流し、サプライヤー構図に手を付けないのが一番と見る外部筋が多い。■

 


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