2019年6月23日日曜日

注目の民間エアライン機材の最新動向

Aviation Week & Space Technology

Commercial Airliner Programs To Watch

Jun 14, 2019Jens Flottau, Guy Norris, Bradley Perrett and Maxim Pyadushkin | Aviation Week & Space Technology


んと言っても注目されるのはボーイング737 MAXがいつどんな条件で路線運行を再開するのかだ。だがその他にも注目すべき機体がある。ボーイングは777Xの遅延にどう対応するか。エアバスはA321XLRの立ち上げに向かいつつあり、A321neoの長距離版だ。A220は販売を伸ばしているがコスト削減が課題だ。エンブラエルはE2の販売強化が必要だ。C919やMC21といった新型機はフライトテスト中だが今後が課題だ。

ボーイング737 MAX
ボーイングの最高優先事項が737 MAXの運行再開で、3月以来370機ほどが地上に残ったままだ。
問題のMCAS機体制御補強装置のソフトウェアおよび訓練過程の承認がまだ下りておらず機体製造はピークの月産52機を42機におよそ2割削減しているが同社には今後の生産増加で追加費用支出がのしかかるはずだ。飛行禁止措置がいつまで続くかによるが影響を受ける機体は夏までに600機に増える可能性もある。飛行停止措置が長引けば受注残はさらに深刻になる。
飛行停止措置でボーイングが想定していたMAX三型式の投入にも遅れが生じている。座席数を増やした737-8、短胴体の737-7、ストレッチ版の737-10だ。まず737-8 200が1月13日に初飛行したがローンチオペレーターのライアンエアへの引き渡しは延期されたままだ。同様に737-7も初飛行は2018年3月に成功しているものの型式証明がまだ下りていない。737-7一号機にMCASソフトウェア改良版が搭載されテスト飛行に供される。
Boeing 737 MAX

ボーイング新型中間市場機材 New Midmarket Airplane (NMA)
ボーイングのめざす新型中規模機材NMAで新規情報が極めて少ない。2017年のパリショーで同構想が登場したのだが、2025年の路線就航の目標も737 MAXの危機状況の中で存在感が霞んだ格好だ。同社は年末までに同機開発の了解を取り付けたいとする。発注数が充分そろえば2020年はじめに正式開発がスタートする。
ボーイングはエンジンメーカー各社と接触を開始しており、737-10と787-8の間となる220席-270席で5千カイリの性能を想定。同社はエンジンは単一型式にしたいとしておりロールスロイスがRB.3059アルトラファンでの参入を日程がきつすぎると取り下げたので実現は容易になりそうだ。
そうなるとNMAはCFMジェネラル・エレクトリックサフランの共同事業体)かプラット&ホイットニーのいずれかを採用することになる。両社とも推力50千ポンドの性能を提示しており、CFMはLeapエンジンの発展型を、プラットはPW1100Gギアードターボファンの発展型を提示している。
Boeing New Midmarket  Airplane (NMA)

ボーイングは画期的な生産設計システムでNMAは合計6年間以内に製造型式証明取得が可能としている。これは同社の秘密部門「ブラックダイヤモンド」の開発した手法で777Xの折りたたみ式翼端機構や米空軍向けT-X練習機開発で効果が実証されている。

エアバス A321XLR
エアバスはA321neo派生型の最初のモデルを発表すると見られ、長距離路線市場を狙う。A321XlRは機体中央部の燃料容量を増やし、最大離陸重量は101トンになると業界筋が解説している。CFM Leap 1Aエンジン、プラット&ホイットニーPW1100Gで出力増加になるのか不明だが、同社筋によれば機体はストレッチされず主翼も新設計の必要はないという。
早めに立ち上がれば2023年ないし2024年に路線就航できるとエアバス最高営業責任者クリスティアン・シェーラーが述べている。
Airbus A321XLR

A321XLRは航続距離が600カイリ延長され4,600カイリまでの路線に就航可能となる。中央ヨーロッパから米東海岸まで、米国からラテンアメリカまで飛べる。カンタスの低運賃部門ジェットスターのCEOギャレス・エバンスによれば同社は現行のボーイング787にかわり同機でケアンズから日本路線を運行したいという。
A321XLRは仮称で今後変更の可能性があるが、ボーイングがNMAを立ち上げた場合の対抗策として開発費用を最小限に抑える武器となる。また改良型が生まれそうでストレッチ型や新設計の複合材主翼のほか、より強力なエンジンを採用する可能性がある。

エアバスA220
昨年のファンボロ航空ショーではエアバスA220が注目を集めたのは新鋭のモキシジェットブルーエアウェイズの2社ががエンブラエルのE2ファミリーを抑えて同機を大口発注したためあった。エアバスは同機用の生産ライン追加をアラバマ州モービルで建設開始しており、米国内向け需要には将来同工場が対応する。ただしその後は同機の受注は伸び悩んでいる。
明らかに受注数の増加が必要でモントリオール近郊のミラベル最終組立工場の能力を下回っており、従業員もモービル工場に受注分の生産が移転されると不安を強めている。エアバスはA220-300で確定発注451機、小型版の-100で85機としているが、-300で49機、-100で19機が4月末までに引き渡されている
Airbus A220

ルブールジェはその他の点でも同機の進展を占う点で重要だ。エアバスにはサプライヤー各社との価格交渉で何らかの進展が必要で、同機がCシリーズと呼ばれていたころのボンバルディアが不利な条件で買い取りをしていたのだ。エアバスとの統合により世界規模のサポート体制を実現することも優先順位が高い課題だ。

エンブラエル E2
最新E-ジェットの受注が期待より低調になのは、エアバスがA220として品揃えを強化していることやボーイング-ブラジル-コマーシャルと改名した共同事業体の認証が未完了なことも理由だ。エンブラエル-コマーシャルエイビエーションCEOのジョン・スラッテリーはエアライン業界の収益が低下する中でE2の様な小型機に商機が有ると信じている。E190-E2の路線就航が始まっている。
Embraer E2


A330neo
エアバスは今年はA330、A330neoを合計50機納入する予定で、ロールスロイスのトレント7000エンジンも納品が予定通りに戻ってきた。今後はA330を減産しA330neoを増産するとエアバス民間機部門最高業務責任者クリスティアン・シェーラーは述べている。受注残は240機で納入はまだ8機だ。A330-800はわずか10機にとどまっている。エアラインは大型の-900型を好むためだ。今年はエミレイツがA330-900を40機一括発注したことで活況を呈した。これはA380発注の取消に伴う発注だったが確定発注になっていない。まだ機齢が若いA330機材の更新機材のサイクルがいつ具体化するかが注目される

A330neo


ボーイング 777X
ジェネラル・エレクトリックGE9Xエンジンの耐久性問題が6月に浮上して777-9初飛行は延期になった。このためテスト日程も今年夏にかけ遅れることとなりただでさえ厳しい型式証明および納入が厳しくなる。ローンチオペレーターのエミレイツ、ルフトハンザ両社は2020年5月-6月に一号機の受領を期待していたが、すでに遅延を覚悟した代替案の準備に入った。
777-9は777Xでまず市場投入する型で競合機種はエアバスA350-1000で、747-400に匹敵する経済性を強調する。777Xは現行777-300ERの胴体に完全新設計の複合材主翼とジェネラル・エレクトリック開発のGE9Xエンジンを組み合わせせ、開発は2013年に始まった。
Boeing 777X

開発は2018年初頭までは概ね順調だったがGE9Xと生産工程で問題が起こり、自社設計製造の複合材主翼でも躓いた。3月に控えめにロールアウトを敢行したが、これも当初予定より4ヶ月遅れとなりフライトテストも遅れている。とくにフライトテストについては具体的な説明が遅れについてなされておらず、ボーイングはFAAと折りたたみ式主翼端など新趣向技術について事前協議をしていると見られる。

Comac C919
ロールアウトから3.5年、初飛行から2年が経過しているがComacはC919試作型三機を飛行させており4機目が2019年に加わる。同社は2020年に型式証明取得という予定を変えておらず、フライトテスト完了まで残された時間は18ヶ月しかないのに動きが鈍い。初号機引渡しは2021年の予定だ。
.開発開始は2008年だが2017年はじめから進展がない。同機は158席のナロウボディ機だ。
Comac C919

C919フライトテスト用4号機は2019年第二四半期中に進空すると関係筋が述べている。更に5号機、6号機が続く。ただフライトテストには3.5年は長すぎるとの見方もある。同機はCFM Leap 1Cエンジンを搭載。

Craic CR929
中露合弁企業CraicコンソーシアムはCR929ワイドボディ機のエンジン選定を9月に予定している。Comacと合同航空機企業(UAC)の共同事業体の同社は調整に手間取っていると関係筋が解説。
Craic CR929

CR929はエアバスA350と同等の機体長翼端の機体だが後続距離は12,000キロと短い。当初はジェネラル・エレクトリックまたはロールスロイス製エンジンを搭載するといわれていた。初飛行2023年引き渡し介し2025年の想定で開発期間を8年としていた。ただし開発期間については業界内では信憑性が薄いとの声が多い。

三菱スペースジェット
三菱航空機から予想通りMRJの立て直し案がパリ航空ショー前日に発表があった。以前のMRJ70をスペースジェットM100と呼び、ストレッチ化で米マーケットの事情により良く適合させる。また客室は3クラス編成で76席とし以前の69席より拡大された。
全長は113.2フィートと109.6フィートより伸びるが翼幅は4フィート減らし91.3フィートになる。米委託運行会社に課せられた制約の範囲内で客室容積を最大化している。
Mitsubishi MRJ

三菱は大型MRJ90をスペースジェットM90と改称し優先順位上はこちらを重視するとしている。2020年中頃に引き渡し開始したいとの目標を同社は再表明している。MRJ70開発はMRJ90の一年後となるがギャップを最短にすbるべく再設計は最小限にするという。

イルクートMC-21
パリ航空ショーではロシアの新型MC-21は公開されない。8月末のモスクワ近郊のMAKS航空ショーで公開される。メーカーのイルクートは合同航空機子会社で試作三号機に客室を装備して公開する。
MC-21はロシアを再び民間航空機に復帰させようといねらいであるが、同国と西側の関係が悪化し、当初国際協力事業との触れ込みだったのが変更されロシア国内の作業量が増えた。2018年末に米制裁措置がイルクートの主要取引先に課せられたのが打撃となり、外国製部品の入手が困難となった
Irkut MC-21


ロシア関係者は国内での複合材取得により型式証明が6ヶ月遅れており、現在の目標は2020年末取得だと明かす。当初はエアバス、ボーイングのエンジン換装ナロウボディ機より先に市場投入の目論見だった。
制裁措置が解除されないままイルクート、UACは代替製品を国内調達せざるを得ずAviadvigatel PD-14エンジンがその第一歩となる。PD-14搭載のMC-21のフライトテストは2020年スタートの予定。

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