2021年4月30日金曜日

エアバスは単通路機増産を強気で進める一方、地域別のリスクも意識。次世代機開発を視野に入れたグループ再編とともに内製化テコ入れをする模様。

 


 

 

 

アバスCEOジローム・フォーリは航空業界の回復の中で各地に見られる「確実性の欠如」に警戒している。ただし、2021年の第一四半期業績は比較的堅調に推移した。

 

「一部地方で国内需要の回復が期待できる兆しが見えてきた」とフォーリは第一四半期業績発表の席上で述べた。

 

ただ、渡航制限解除が一律でなく、COVID-19パンデミックが残ったままのヨーロッパは「他地区より状況は悪い」と見ている。そのため、ヨーロッパはエアバスにとって「懸念地区」であり、インドも大幅な感染増加がここ数週間連続し、心配な地区だという。ただし、インドの危機状況から直接の影響は同社にまだ出ていない。

 

発注元との関係は「かなり差がある」と述べ、中国は「かなり改善した」が、米国は「強気市場」と表現した。一部の米エアラインでは機材引き取りを2023年2024年に先送りする傾向があるという。

 

エアバス収益は105億ユーロ(127億ドル)を第一四半期に計上したが、昨年同期は106億ユーロだった。民生機材は72億ユーロ、エアバスへリコプターが11億ユーロ、エアバスディフェンスアンドスペースが21億ユーロだった。グループとして営業利益462百万ユーロを計上し、純利益は362百万ユーロだった。12億ユーロのキャッシュフローが生まれ、2020年同期の80億ユーロ赤字から大きく反転した。昨年はCOVID-19パンデミックの影響をもろに受けたことに加え、贈賄事件解決へ36億ユーロで処理していた。これに対し2021年Q1は財務最高責任者ドミニク・アサムも「一歩抜きんでた」と評する業績になった。民生機材の収益は4パーセント減となったが、事業部として営業利益は57百万ユーロから343百万ユーロへと大きく伸びた。

 

同期の納入は125機で、昨年同期比で3機増えた。内訳はA220が9機、A320ファミリーが105機、A330neo1機、A350が10機だった。同期中の受注は39機にとどまり、昨年同期の356機から大幅減となった。今年の受注は38機が単通路機だった。ただし正味の受注規模がマイナス61機となったのは同期中に予約取り消し100機が発生したためだ。

 

フォーリによれば、エアバスは単通路機の増産を続けるのは、「マーケットの準備が加速化しそう」なためとする。単通路機は第三四半期に現行の40機を月産43機に増やす。第四四半期に45機にするのは以前の計画通りだ。新型A321XLRの投入時期に変更はなく、2023年だ。

 

またフォーリは単通路機の納入ペースが2022年に急増すると明らかにしている。「サプライチェーンで対応が完了している兆候がある」としたが、正確な数字はまだ発表できないとした。

 

単通路機とは対照的にワイドボディ機生産は「相当長期にわたり低迷する」とみており、長距離機需要は「なるべく早く損益分岐点までもっていきたい」とする。エアバスはA350で月産5機未満、A330neoは月産2-3機程度と半減させており、A380生産は今年終了する。

 

また、エアバスは「将来の産業システムの準備に入った」とし、新型大型案件向け企業をドイツ、フランスに設立し、新システムの中核に据えたいとする。新規立ち上げ企業は「現在の機材と異なる構造を有する次世代航空機」の実現で核となる。エアバス内で組織再編が進行中で、デジタルデザイン製造サービシズ(DDMS)のデジタル体制で次期製品は各面で「見える化」を進めるとする。生産水準を一新し「変革を加速する機会」を生みたいとフォーリは述べた。

 

また外注作業で内製化を進めると明らかにしたが、現行体制の再編とは無関係とフォーリは解説した。内製あるいは外注の方針変更なのかとの問いにフォーリは「内製化を相当進めるが購入も続ける」と述べた。結局、各製品別に変更は決まるのだろう。

 

パンデミック発生後のリスクが発注側に残るが、エアバスは状況は変化しつつあると見る。「今後の大きなリスクはサプライチェーンだ」とフォーリは発言。「ローラーコースターのような状況は管理が非常に厄介」とし、エンジンが増産のボトルネックと指摘している。そこで、エアバスは生産計画で慎重な姿勢を崩さず、特定企業の動向を監視する専門部隊を配している。「サプライ側に課題が見えてきた。危機が増大する前に解決が必要だ」

 

フォーリは貨物機需要に「もっと積極的に」対応すると発言し、ワイドボディ機での対応を想定している。「貨物機で消極的なままでいたくない。対応するのが一社だけという状況は望ましくない」とし、エアバスがA350貨物型の検討に入っていることが知られているが、フォーリは最終決定は時期尚早とした。■

 

Airbus Prepares Single-Aisle Ramp Up Despite ‘Lack Of Predictability’

Jens Flottau April 29, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/airbus-prepares-single-aisle-ramp-despite-lack-predictability

 


0 件のコメント:

コメントを投稿

お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。