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2021年7月17日土曜日

2021年6月のボーイング受注引き渡し実績は好調ながら、787で品質問題発生など不安材料も....

 MAX

Credit: Flydubai

 

6月のボーイングの受注や引渡しの足を引っ張ったのがフライドバイが737 MAX65機の発注をキャンセルしたこと、および787製造で見つかった品質問題となった。

 

受注は合計219機で、うち200機はユナイテッドエアラインズによる737MAX 発注だった。この規模は2018年6月以来最高となった。また18機は767-300FでFedEx Expressの発注だった。同社は20機発注を発表しており、2機は条件付きとなっている。

 

一方キャンセルは73機にのぼり、フライドバイの存在が大きい。同社は機材を737で統一し、MAX15機を運行中で171機を発注中だ。

 

キャンセルしたのは機材構成の見直しで737 MAXの運行停止措置の影響もあり、同社の乗り入れ国の規制当局の動きを受けている。その中でインドはまだ解除していない。同社は運航停止中の機材から稼働させ、発注分の引き渡しを中止させた。

 

BOC AviationはMAX5機をキャンセルし、名称非公開の顧客がMAXビジネスジェット型一機をキャンセルした。その他英空軍はE-7Aウェッジテイル2機をキャンセルした。RAFは当初5機発注していたが国防体制見直しで二機削減する。

 

結局6月の純受注数は146機となり、五カ月連続で受注数がキャンセル分を上回った。またASC606会計分類では56機追加となり、737が49機、7787を7機の確定発注をうけつつ納入は確定していない。6月30日時点の受注残は4,166機となり、これと別にASC606分で918機がある。

 

6月の引き渡し総数は45機で2019年3月以来最大となった。うち、737 MAXは33機で月間引き渡し数としては2018年12月の実績を上回った。またP-8哨戒機を米海軍へ2機納入している。

 

6月のワイドボディ引き渡しは10機で、ターキッシュエアウェイズ向け787-9が一機あるが、同機の耐空証明は2020年末に出ていたが、引き渡しまで5カ月以上経過したのは製造上の品質問題が関連している。5月に再度引き渡しが止まったのは新規の耐空証明が必要となり、ボーイングはFAAに対し社内にある機材の点検手順の有効性を証明し、引き渡し再開を図っていた。同社は生産関連の問題数点について解明の上、一部は是正措置を施し耐空性能を保証するとしている。

 

787問題は機体構造の接合部にあり、設計仕様を満たしていないことにある。一部では問題解決のためのシム寸法がまちがっており、ギャップが許容限界を超えている。

 

ボーイングは接合問題が各所で発生していると明らかにしており、胴体バレル間もその一部とし、点検の上必要に応じ再作業しているとする。前圧力バルクヘッドでも仕様通りになっていないことが見つかったとし、これはセクション41と呼ぶ機首部分で、製作はスピリットエアロシステムズだった。

 

点検再作業に加え、検証作業が未完了のままで新たに前方バルクヘッド問題が発生したためボーイングは787製造ライン人員を点検再作業に配置している。つまり、787の月産数が少なくとも数週間にわたり低下し、月間5機が守れなくなると同社は発表。

 

問題の山積みによりボーイングは今年末までの787納入予定100機の半分しか達成できなくなると予測している。なお、2021年の787実績は14機となっている。■

 

MAX Cancellations, 787 Issues Dim Boeing’s June Orderbook Momentum

Sean Broderick July 13, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/max-cancellations-787-issues-dim-boeings-june-orderbook-momentum

 


2021年6月20日日曜日

ボーイング737 Max 10(最大230席)が初飛行。エアバスとは異なる需要予測と設計条件だが、A321neoには相当の差があり、ボーイングは今後挽回できるのだろうか。

 



Boeing



ボーイング737 Max 10が初飛行に成功した。同機は6月18日、ワシントン州を離陸し、二年予定の型式証明取得が始まり、同時に2017年パリ航空ショーでの立ち上げから4年で機体が現れた。初号機は2時間37分の初飛行を終えボーイングフィールドに着陸した。


Maxで最大かつ最後の派生型のMax10はMax 9の胴体を66インチ延長している。その他、主翼も小幅設計変更し、777同様の主着陸装置を採用し、乗客12名分の追加で最大座席数は230になった。


ボーイングは737 Max 10開発の開始をパリ航空ショー初日に発表したが、ライバルのエアバスはA321neoはその一カ月前に路線就航させており、販売で先行していた。ボーイングはMax 10のほうが機体重量が軽く、燃焼消費で有利と売り込んでいた。エアバスはさらにA321LR、A321XLRで大西洋横断路線に投入可能な機体を提供することとした。ボーイングはエアラインは軽量かつ短距離運用型を好むと考え、受注数がその証明となるとし、航空ショー開催中に16社から計361機のMax各型の受注を獲得した。


その後、Max 10の受注は伸び悩み、ボーイングは受注数の詳細を明らかにせず、発注各社は機体型式を途中で変更可能と説明していた。ただし、開発開始時点でボーイングは受注の60から65パーセントは基本形Max 8で、Max 9および10は20から25パーセント、Max 7はわずか10パーセントとなると予測していた。現在のMax 受注合計は3,291機に上り、うち486機が引渡し済みと同社ウェブサイトの受注引き渡しデータでわかる。


これに対し、エアバスのA321neo、A321LR、A321XLR(航続距離4,700カイリ)の合計はA320neoファミリーの5,618機の過半数を占めているが、neo各型の引き渡し実績は1,782機に上っている。A321XLRの引渡し開始は2024年初めに予定しており、22社から426機を受注している。


ボーイングはMax 10の引渡し開始を2023年に設定し、当初予定より3年ほど遅れている。■


Boeing 737 Max 10 Completes First Flight | Air Transport News

by Gregory Polek

 - June 18, 2021, 5:11 PM


2021年5月14日金曜日

4月のボーイング実績。引き渡しは全17機、正味受注は8機増にとどまる。787が気を吐いても737 MAX引き渡しが停止中なのが痛い。


 

aircraft

Credit: Boeing

 

ーイング民生機部門は4月に17機を納入し、737は4機と低調だったが、787が増加した。

 

737 MAXの納入がボーイングが目指すバランスシート改善のカギを握る。1-3月に58機を納入し、4月第一週で4機を引き渡したものの、電気系統で問題が見つかり新規納入が止まり、約90機が納入できないままになっている。ボーイングは就航中機体とあわせ駐機中およそ300機でこの問題の解決を急いでおり、製造中機材にも対応する。作業が完了しFAAが承認するまで、737MAXの納入は停止する。

 

ボーイング、FAAともに今後の見通しについてコメントしていない。

 

4月に787が9機納入されたのは同社には朗報だった。同機でボーイングが1-3月に2機を引き渡したのは3月末のことだった。引き渡しが低調になったのは2020年10月初めからで、製造後点検で見つかった生産工程での問題の修正作業のためだった。

 

4月引き渡し機材にはその他777Fが2機、767-300CF1機、KC-46が1機ある。

 

新規受注は25機で737 MAXが20機を占める。だが発注取り消しが17機で正味受注は8機になった。2021年の受注は累計307機で、取り消し他顧客の発注調整分を入れると77機の純増だ。■

April’s Boeing 787 Boost Not Enough To Offset 737 Delivery Halt

https://aviationweek.com/mro/aircraft-propulsion/aprils-boeing-787-boost-not-enough-offset-737-delivery-halt


Sean Broderick May 11, 2021

2021年3月27日土曜日

ボーイングが787引き渡しを5カ月ぶりに再開。一方、先に再開したものの737Maxは400機超が社内に滞留していた。

 

Boeing 787 deliveries restart after five-month pause

By Jon Hemmerdinger27 March 2021

https://www.flightglobal.com/airframers/boeing-787-deliveries-restart-after-five-month-pause/143073.article


United Dreamliner1

Source: United Airlines

United Airlines 787


ーイングは3月26日、787-9をユナイテッドエアラインズに納入し、胴体部分で見つかった問題のため2020年10月以降停止していた機体引き渡しを再開した。


ボーイングは同日に、「787引き渡しを再開した。技術解析と点検作業をこれまで続けていた」と発表した。

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同社は胴体部分の問題を「表面の平坦度」とし、機体後部で見つかったと述べた。


同社は機体点検で許容範囲内にあるか確かめるべく、一部機体では客室部分の分解まで行っていた。


「安全と設計順守への姿勢からあらゆる角度を完全に点検し、機体引き渡しを続けることとし、規制上の要求をすべて満たすとともに最高水準のボーイング品質標準で引き渡しを実現します」


787納入停止はパンデミックの広がりの中でさらに打撃となり、同時にボーイングは787生産をサウスカロライナ州チャールストンに全面移転する途中で発生した。これまでの主力工場、ワシントン州エヴァレットは今年中に生産を終了する。


737 Max未納入分が400機を超える中、ボーイングには引渡し前の787が80機超加わっていた。737 Maxの引き渡しは2020年12月に再開した。


今月初めに連邦航空局は4機分の耐空証明発出に責任を感じ787事業への監督を強化すると発表していた。■


2021年2月20日土曜日

ボーイングはマクダネル・ダグラスと同じ道をたどるのか

 Opinion: Will Boeing Become The Next McDonnell Douglas?

Richard Aboulafia February 16, 2021

 

AW&ST covers

 

グラス航空機は1967年にマクダネルと合併し、消滅に向かう30年の歴史をスタートした。マクダネル経営陣は軍用機事業を優先し、民間ジェット旅客機事業に必要な投資に消極的だった。ボーイングに吸収された時点でダグラスのジェット旅客機は商品力を失っていた。

 

ボーイングとマクダネル・ダグラス合併から25年になる。ボーイングの技術力低下、事業執行上で抱える問題、株主配当の重視、今後の製品ロードマップが不明確な点、さらに低下傾向の市場シェアから、ボーイング商用機(BCA)もダグラスと同じ運命をたどるのか考えるべき段階に入ったようだ。以下3つが鍵となる。

 

1. 技術開発予算。ボーイングはBCAの自社負担研究開発費 (IR&D)を約25%削減すると発表しており、2020年実績でほぼこの通り前年より下がっている。

とはいえ直近の10年間でBCAはIR&Dに223億ドルを支出しており、同時期の同社収益比で平均4.8%に相当する。これに対しマクダネルダグラスは1993年から96年にかけ、IR&Dへ毎年3億ドルを支出していた。ただし、ここには国防及び宇宙関連を含む。マクダネルのIR&D3分の2が民間機向けだったと仮定すれば、BCAの支出規模は10倍の規模に相当する。.

ただし、BCAの研究開発予算は大部分が787と737MAXの欠陥対策で、ボーイングは2004年以来は完全新型機を投入していない。ダグラスは30年間新型機を投入しなかったが、ボーイングは17年間だ。

 

2. 市場占有率。ダグラスは全方位の商品ぞろえができず、双通路機など新しい分野で対応が遅れ、単通路機でもMD-90はファミリー構成に発展できなかった。BCAはそれよりは広範な品揃えでエアバスに大きく劣らない。だが、中型機セグメントが大きな問題になってきた。A321neoは737 MAX 9/10に5対1と大きく差をつけている。つまり、今後市場シェアで差が開いてくる。

 

 

 

3. 製品開発。マクダネル・ダグラスは市場投入を狙った機体数例を開発中止した。MD-XX高性能3発機、MD-XX双発機、MD-12四発機などだ。MD-90は単通路機としてファミリー構成に発展を期待されたが、150席の−30型のみ生産され、-10、-40、-50/55型は結局実現しなかった。

ボーイングで中止例は少ないものの、影響はずっと大きい。ここ5年にわたり、新型中型機(NMA)に相当の技術資源を投じている。ここにきてNMAが再び実現に向かう兆しが出てきた。だが、筆者は双通路機で単通路機に対抗するのは健全な策ではないとかねてから主張しており、既存機種の手直しとして737 MAX拡大版、787縮小版あるいは再設計767をあてるのはもっと悪い選択だ。ボーイングには新型大型単通路機の新規開発が必要だ。

 

上記三点から見るかぎり、BCAの前途は多難だ。とはいえ、新型機開発に乗り出さなくてもBCAは当面残存する、あるいは消滅が先送りされよう。ダグラス航空機のゆるやかな消滅に30年かかった。当時のダグラスには強力な競争企業二社があり、それぞれ積極的に未来投資していた。エアバスが新型機投入をせず、60-65%の市場シェアで十分と考えた場合、ボーイングは新型機を投入しなくても現在の地位を数十年維持できよう。ただし、この場合は新規企業の参入が著しく困難な市場が生まれる。

だが、新規企業が登場すれば、BCAの生彩を欠く商品構成が格好の標的となる。逆に、エアバスは737 MAX 8をねらいA220のストレッチ型を、787を狙い完全新型機で開発投資してくるかもしれない。

 

ボーイングがひとりよがりな考え方をとれば、未来をにらんだ戦略や投資のかわりとしてひどく程度が低くなる。同社がダグラスと同じ運命をたどれば航空産業界全体の悲劇となる。■

 

Richard Aboulafia

Contributing columnist Richard Aboulafia is vice president of analysis at Teal Group. He is based in Washington.


2021年2月11日木曜日

ボーイングの逆襲が始まるのか。エアバスのヒット商品A321XLRに対抗し、いよいよ中型新型機の開発がスタートする模様。

 

エアバス321XLRが長距離路線用に高い人気を集めていますが、キャリアには効率がよい機体でも、単通路で狭苦しいキャビンでは旅客が不満を出すのは時間の問題でしょう。これに対しボーイングは双通路機で経済性を実現するという欲張りな構想です。対応は大幅に遅れましたが、デジタルエンジニアリングの威力で意外に早く姿を表す可能性もあります。ただ、10年近く対抗機種がないのはボーイングにとって痛いところで、エアバスからリードを奪い返すのは困難となるでしょうね。

 

building

Credit: Boeing

 

ーイングエアバスA321XLRに対抗する完全新型旅客機実現にむけ第一歩を進めることとした。ただし、財務、市場動向両面で同社に向かい風の状況だ。

 

新型機には-5Xの呼称といわれ、棚上げされていた新型中韓市場機材(NMA)として2クラス仕様で250-275席規模の双通路機となる。757-200/300後継機として5千カイリ程度の航続距離で、2020年代末の路線就航をめざす。

 

業界筋は設計の簡素化と低コストが目標と見ている。開発費用を最小限にし最短で路線就航するべく、既存の各種システムや推進手段を活用するとあり、すでに多くがNMAで検討済みだ。ボーイングは仕様について論評を避けているが、1月27日に同社CEOデイヴ・キャルホーンが2020年第4四半期営業報告でA321程度の機体の競合機種について開発が順調に進んでおり、時がくれば差別化商品として投入できると述べていた。

 

CEO発言からボーイングが想定する重点対象が中距離市場に特化した機種だと裏付けされた格好で、噂された737MAX後継機の新型小型機材(NSA)ではないことがわかった。同社はA321XLRの需要を追う機材としてNMAの実現を目指していたが、需要家の反応がいまいちのため開発工程を一時棚上げしていた。

 

NMAファミリーの基本形は当初757後継機を狙い、その後767後継機の想定も加わった。2019年に入るとNMAは225席のNMA-6X、275席のNMA-7Xの2型式に絞られ、-7Xを先に開発するとしていた。だが、エアライン各社に打診中に737 MAX事故が発生し、同機は世界各地で運行停止となってしまった。

 

NMAの中心はA321XLRを狙い、双通路で5千カイリ飛べる機体を単通路機と同じ生産コストで実現することにある。ただし、COVID-19の世界的流行で当初の大日程は完全に変わってしまった。当初はNMA大型版を社内呼称7K7-7Xとして2025年就航を想定していた。現在の新日程では-5Xを2020年代末の就航を目指すが、2022年ないし2023年の正式開始を前提としている。

 

当初の構想同様に新型機も複合材の主翼、機体構造とし、50千ポンド高バイパス比エンジンをジェネラルエレクトリック-サフランCFM共同事業体およびプラット&ホイットニーが提案済みのエンジンから採用する。就航時期が先送りになったのでロールスロイスのアルトラファンにも参入チャンスが生まれた。同社は当初の日提案では対応が難しいと断念していたが、再考するのではないか。アルトラファン初号基が組み立てに入っており、2022年はじめに運転可能となる。

 

2020年にボーイングは120億ドル近くの記録的な赤字を計上したが、業界筋は新型機の研究開発経費は年間負担が20-30億ドル程度なら十分負担できると見ている。

 

MAXの生産、納品が今後拡大すれば、ボーイングのキャッシュ状況は好転し、新型機開発費用を捻出できるキャッシュフローが生まれると予想される。■

 

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Boeing Makes Moves On Airbus A321XLR Competitor Plan

Guy Norris February 02, 2021


2020年12月12日土曜日

777Xと787の失速で737に期待せざるを得ないボーイングの苦しい事情、敵失でエアバスがますます優位になるのか

 Widebody Softness Triggers Boeing 787 Production Cut, Adds More Pressure To 737

 

Sean Broderick December 04, 2020

 

777X wingSource: Boeing

 

ーイングのワイドボディ機二型式が厳しい逆風にさらされており、787の製造数は2021年にさらに削減され、777X型式証明は時間をかけて進みそうだ。

 

787生産はサウスカロライナへ移転中で、2021年央に月産5機と以前の発表より少なくなり、現在のペースの半分となる。同社CFOグレッグ・スミスが12月4日明らかにした。

 

「冬季は厳しい状況で[COVID-19の] 感染が世界各地に広がっています。今後さらに増えれば旅行制限も変更となり、回復への道はさらに遠のき、状況は各地で異なるだろう」とスミスはクレディスイス主催イベントで述べた。「その結果、787減産も妥当な範囲で調整する」

 

長距離路線需要が低下しており、787納入に生産関連の問題が影を落としている。11月の納入はゼロだったとスミスは述べ、今年の累計は53機だという。787は5月にも納入ゼロとなったが、その際はCOVID-19のためチャールストン、エヴァレット両工場が数週間閉鎖されていた。スミスは11月の納入ゼロは品質問題も原因と認めた。

 

「追加点検で納入前機材の状況を確認していますが予想以上に時間がかかっているのです」「その結果、11月は787納入が皆無になり、12月も納入はスローペースになると見ています」

 

777Xについてスミスは「規制当局と型式証明で連携しており、737再審査の結果も反映している」と述べ、ボーイングの最新EIS(路線就航)タイミングは納入一号機を2022年目標にしているが、スミスはこれについて追加コメントしなかった。

 

「開発中のためリスクがあり、日程に影響が出ます」「EISのタイミングは最終的に型式証明に規制当局により左右されます」

 

 

FAAが777Xを厳しく見ているのは737MAXの飛行停止措置が大きい。FAAは技術諮問委員会を設け777Xの設計内容を点検している。

 

777X型式証明は2019年に数か月遅延している。これはGEエイビエーションGE90エンジンの問題が原因だった。MAX騒動で規制当局が追加措置をとっており、同機がめざす市場の状況もあり今後目が離せない。

 

「今後規制当局と作業を進め状況が見えてくると期待している」「同時に当社は777Xの顧客各社と連携し各社のフリート構成案と納入タイミングを照らし合わせ検討しているところ」

 

ウィアドボディ二型式で不確実性があるため737MAXファミリーにもプレッシャーとなっている。ボーイングは20か月に及ぶ飛行停止を終え、納入開始の承認を得て、まず駐機中の機材と新規生産の450機の引き渡しに入る。

 

駐機中機材の点検に通常より大量の人員を投入する必要があるが、スミスはあくまでも顧客ニーズを中心に進めると述べた。「制約は当社の納入状況ではなく、むしろ顧客の側の受け入れ体制だ」

 

エアライン各社は国内規制当局の了承を得ないとMAX運航ができず、これに数か月かかる国もある。一方で需要低下でナロウボディ機運航も影響を受けている。ただし、ワイドボディ機への影響と比べれば軽い。

 

納入日程を遅らせるエアラインが多いが、新型機の導入は速まっている。ライアンエアは737-8200を75機発注していたが、12月3日に前倒し受領を発表した。同社は2025年までに新型ボーイング機210機を運航するとしている。スミスは納入先送りなど変更は増えると見ている。

 

「受注の動きが出てくると見ています」「ただし、顧客で事情が異なります。ライアンエアが発注していますよね。これから同じ動きが増えると思いますよ」(スミス)

 

MAXの受注残を解消し、引き渡しを進めることがボーイングのキャッシュフローに最大の影響を与える。787、777Xがともに失速するなか、737生産が一層重要になっている。ボーイングは737生産を「超低速」で進めており、2022年初めに月産31機に持っていきたいとスミスは語った。

 

「737生産を元に戻すことが最大の原動力になります。ただし、状況は20年21年ともに変わりません」とし、787納入の復帰もキャッシュフロー上で重要だとする。「2022年に737が元通りになっていれば、つまり在庫一掃し生産数を増加させていればということですが、その先は市場の状況次第ですが、生産数も呼応して変更していきます」■


2020年12月8日火曜日

ボーイングのシェア低下を見てエアバス取引に走るべきか、サプライヤー各社の判断は....

 

Should Boeing Suppliers Shift Toward Airbus?

Michael Bruno November 26, 2020

https://aviationweek.com/aerospace/manufacturing-supply-chain/should-boeing-suppliers-shift-toward-airbus

 

Spirit AeroSystems's composite center fuselage sectionスピリットエアロシステムズではエアバス取引の拡大の一環でA350XWBの胴体中央部を複合材で製作している。

Credit: Spirit AeroSystems

 

ささか遅い観はあるが、ボーイングCEOデイヴ・キャルホーンが10月に同社が民間航空機市場でヨーロッパのライバルに差をつけられていると認めた。

COVID-19の大量流行の前から737 MAXの飛行停止措置並びに生産中断があり、業界の中にはこのままだと6対4いやもっと差がつくとエアバス、ボーイング両社のナローボディー機の動向で警句を出す向きがあった。

これまでの5対5の互角勝負から大幅な推移だが、背後に大きな変化がある。「ボーイングが737 MAXで足踏みしている状況はエアバスに千歳一隅のチャンスでナローボディー分野でシェアを一気にふやせる」とモーガンスタンレーのクリスティン・リワグ、マシュー・シャープが11月9日に記していた。「サイクルが長くかつ競争相手や新規事業が限られているのが航空宇宙産業で...マーケットシェアを戦略的にふやした効果は今後長く残る」

航空宇宙産業のサプライヤー各社も歴史的な不況に直面する中、マーケットシェアの大変動を見てエアバスに切り替えるべきか疑問に思っているはずだ。

確かに誘惑は強い。「ここ18か月でエアバスが完全にリードを奪い、ボーイングは抵抗できなくなるほどの勢いだ」とエージェンシー・パートナーズのアナリスト、サッシュ・ツーサがAviation Week 主催のウェビナーで11月に発言していた。「エアバス関連サプライヤー各社のほうがボーイングと取引中の各社より企業価値が増えている。これは収益でも明らかで受注の6割がエアバスだ」

事情はサプライヤーにより異なるが、考えていることは同じだ。もしエアバスがA320ファミリー機材の引き渡しを順調に進めれば、MAXを注文した顧客は先送りあるいは取り消しに走るのではないか。とくにMAXの飛行停止措置は注文変更の絶好のチャンスだ。

モーガンスタンレーのデータを見てみよう。ボーイングのMAX受注は2,717機あり、2025年までの分だ。うち29%はA320発注もしているリース会社あるいはエアラインによる発注だ。

COVID-19とMAX飛行停止措置前はサプライチェーンがボトルネックで両社合わせ月産120機の生産計画構想が強いプレッシャーだった。

専門家には両社のうち先に月産60機以上のペースをサプライヤーベースで維持できる方が勝者となるとの見方がある。エアバスは各サプライヤーに47機体制を2021年10月までに整備するよう求めているが、ボーイングはわずか31機しかも2022年「早期」までとあり、それでもサプライヤー側にはこの目標を怪しむ向きがある。

ボーイングのティア1サプライヤーで少なくとも一社、スピリットエアロシステムズがエアバス陣営に移行しようとしており、その背景にはMAX問題やCOVID-19以前の戦略企画がある。737ファミリーがスピリットの売り上げ50%を2019年まで占めており、ボーイング全部合わせると8割近くになる。

スピリットがエアバス向け取引で多角化を図るのは理に適っているといえるのか、アナリスト、コンサルタントには間違いとみる向きがある。

「正しい判断ではないでしょう」とバーンステインのアナリスト、ダグ・ハーネッドがAviation Week 主催ウェビナーで述べていた。「シェアは変動するもので、一般の皆さんが考えるより大きく動いています」

PwCのコンサルタント、スコット・トンプソンは「二社寡占状態で市場は50-50の互角勝負に戻るはず」という。だがもちろんバランスをどう回復できるかが問題と本人もいう。

ハーネッドも下位のサプライヤー企業でボーイング依存が高すぎる会社に影響が出ると見ており、あるいはボーイングがシェア回復を狙いサプライヤーに圧力をかけてくるかもしれないという。だが実際にはそうならないと本人はみている。「小規模サプライヤーに影響が出ても、大方でこれ以上悪化する可能性は少なく、よい方向になるのではないか」

乗り換えを無効にするその他の要素もある。「ボーイングとエアバスのシェア争いがどうなるかは不明だが、見ものなのは確かだ。シェア争いで勝者はない」とリワグ-シャープは口をそろえる。

航空宇宙製造業は変化への適応が遅く、動きも鈍い業界といわれる。しかし今回はあえて変化を選択せず、マーケットシェアの混乱を受け流し、サプライヤー構図に手を付けないのが一番と見る外部筋が多い。■

 


2020年12月5日土曜日

ボーイング777X事業は航空不況でどんな影響を受ける?

 日本の航空製造業界にも多大な影響が出そうですね。それにしてもエアバスA350はボーイングにとって面倒な存在になりましたね。

Could The Boeing 777X Program Be Terminated?

Jens Flottau November 27, 2020

https://aviationweek.com/aerospace/aircraft-propulsion/could-boeing-777x-program-be-terminated

 

parked aircraft

Credit: David Ryder/Getty Images

 

ボーイング777X事業が中止になる可能性はあるのだろうか。

Aviation Week民間航空部門主筆のジェン・フロトーはこう見ています。

ーイングは現時点でワイドボディで747-8、777X、787と三機種そろえている。このうち747-8は段階的に消えるが、787が活況を呈すのはCOVID-19流行で比較的小型でありながら効率が良いためだ。一方で777Xは面倒な立ち位置にある。とはいえボーイングが同機事業をすぐにでも中止する可能性は極めて低い。

理由として同機の型式証明取得が長期化し相当の経費がかかっているが、開発予算は大部分支出済みだ。747がなくなれば、787-10がボーイング最大のワイドボディ機になるが、エアバスA350とは機体サイズ、航続距離双方で勝負にならない。既存型777の生産継続は選択肢にならない。運航経済性がA350に及ばないし、選定に残らない可能性が高いが、エアバスに価格値下げさせ収益性を損なわせる効果は期待できる。

同じ理屈がA330neoにあてはまり、エアバスは同機発注が低迷中でも7同機を残している。

ただし777Xの見通しは現時点のトラブル続きの航空市場で不安を残す。ボーイングは型式証明工程を小型の777-8で遅らせ、市場回復まで時間稼ぎをねらう。また737 MAXの飛行再開後初のボーイング機となれば当局が厳しく審査するのは当然だろう。

777Xの受注残の大半はエミレイツエアラインズカタールエアウェイズエティハドエアウェイズが350機中240機と大半を占めている。このうちエミレイツ(156機確定発注)が小型の787やA350に関心を移しており、パンデミック後の路線網再編への投入を検討しているようだ。

エティハドも発注したものの湾岸地域のライバル各社と規模の競争を放棄する路線変更をしている。その他の777X発注エアラインのキャセイパシフィックブリティッシュエアウェイズルフトハンザもそれぞれ大変な状況になっており、国際路線が運航停止し運航再開しても回復は国内線より時間がかかりそうだ。

777Xは大型機であり高需要の長距離路線運航に最適化した機体だが、その路線が今は存在しない。観測筋の大部分も時間が経てば特にアジアでこうした路線の復活を予測するが、ヨーロッパ、北米では可能性は低い。大事なのはエアライン各社に地上待機で比較的機齢が低い従来型777多数があることで、新規製造機体の中短期的販売に影響を与えるかもしれない。■


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