2021年8月9日月曜日

米空軍の資金投入で極超音速旅客機開発が一気に進む期待。設立3年の新興企業にも大胆な投資を行う姿勢が技術の進展を進める。

 A concept image of the Hermeus Quarterhorse hypersonic aircraft.

ハーミウスのクォーターホース極超音速機の想像図. HERMEUS

 

  • 今回はターミナル1 ターミナル2共通記事です

空軍はベンチャーキャピタルファンド数社と60百万ドルをジョージアの新興企業に投じ、極超音速旅客機の軍用版の実現を狙う。

 

空軍はハーミウス Hermeus に7月30日に60百万ドルの契約を交付した。空軍で民生技術の軍事利用を実現すべく設立したAFWERXが仲介する事業としては最大規模になった。

 

空軍の研究開発トップ、ヘザー・プリングル少将は「極超音速機の推進システムには画期的な意義があり、前世紀に自動車がもたらしたように移動形態が大きく変わる」と述べた。

 

ハーミウスが製造するのは再利用可能な極超音速機で、従来の極超音速試験機はすべて使い捨てだったため大きく異なる機体となる。

 

空軍との契約によりハーミウスは技術開発を加速化しマッハ5飛行可能な旅客型の実現をめざす。完成すればニューヨーク=ロンドン間を90分で移動可能となる。

 

「当社の技術開発に資金を投じることで空軍が実用に耐える装備の実現を目指していることは明らか」と同社CEOにして設立者AJ・ピプリカが発言している。

 

今回の戦略的な資金投入合意によりハーミウスが軍とのつながりがさらに深まった。同社へは昨年1.5百万ドル相当の契約が空軍から交付されており、政府高官を世界各地に運ぶ研究がはじまっている。

 

ハーミウスは2018年に元ジェネレーション・オービットの技術者4名が設立し、まず無人実証機クォータホースの完成をめざしている。

 

今回の空軍からの契約金で同社はクォーターホースの試験飛行を18カ月後に実現できる見通しがついた。契約で同社はテスト要員を20201年中に50名にまで増やすことになっており、テスト日程を約1年短縮させる。

 

「人員投入を増やし加速化させつつ垂直統合も進めていく」とピプリカは語り、「これで内製化が進み、日程管理、コスト管理等を強化できる。全体ロードマップを大きく加速できる」としている。

 

今回の空軍契約の交付でハーミウスに今後3年間の戦略的目標が定まり、そのひとつにクォーターホース3機を完成させテスト飛行を開始することがある。テスト飛行には目標がふたつある。マッハ5飛行および機体を繰り返し飛行させることだ。

 

同社設立者でCOOのスカイラー・シュフォードは「機体を完成させエンジン技術のテストを全飛行域で行うのが目標だ」とする。

 

クォーターホースにはジェネラルエレクトリックJ85エンジン一基を搭載する。これはT-38練習機と同じエンジンでさらに高速域用のエンジンをハーミウスが開発中だ。

 

「エンジンと機体の一体化が社内でできることでシステム統合が迅速に進められる」と同社の内情に詳しい筋が開設する。

 

クォーターホースは「今後登場する機体へのつなぎの役目」とシュフォードは述べており、同社は「より大型の旅客機」の実現をめざしている。■

 


US Air Force, Venture Firms Make $60 Million Bet on Hypersonic Aircraft Startup

BY MARCUS WEISGERBER

GLOBAL BUSINESS EDITOR

AUGUST 5, 2021

 

参考:ハーミウスのウェブサイトhttps://www.hermeus.com/

 


2021年8月7日土曜日

良い前兆が見えても不確定さが消えない民生航空業界。ボーイングが新型機開発の決断に踏み切れない理由とは...エアバスとの差がさらに広がるのか。

  

ボーイング737-10は6月に初飛行し、2023年路線就航の予定だ。Credit: Boeing

 

間航空宇宙分野に生気が戻りつつある。エアラインの発注が増え、利益が復活し、航空機メーカー、サプライヤー各社で増産が再び話題となっている。だがよい兆候の前にふさがるのが長期展望での不確実さだ。

 

次世代機やエンジンがいつ登場するか、またその形状についてはむしろCOVID-19危機前より今のほうがはっきりしないほどだ。

 

ボーイング社長兼CEOのデイヴィッド・カルホーンは737-10および777Xの型式証明取得に焦点をあてつつ、777X貨物型が次の新事業になると述べている。

 

だがボーイングではR&D資金の減少を隠しようもない。2020年の25億ドル程度は2019年の2割減で、減少は2021年も続き、上半期は9.96億ドルにとどまっている。うち民生機用のR&Dは5.24億ドルにすぎない。

 

ボーイングの次の事業では資金減が課題だが、根本的な疑問が残る。エアバスが単通路機増産に向かう中でボーイングは新型機開発に乗り出さなくていいのか。このままではエアバスが数年のうちにマーケットシェアを6割まで増やしボーイングは守りとおせなくなる。

 

もう一つがジェネラルエレクトリックサフランの合弁事業CFMがRISEオープンファン推進方式の実証機開発を決定したことだ。ボーイングも次世代機の開発決定をするのかしないのか迫られる。カルホーンも新型推進技術の重要性をここにきて強調しはじめた。

 

GEエイビエーションは新型エンジンをRISEの技術研究開発をもとに開発しても姿をあらわすのは2035年以降としており、RISEの技術要素が現行のLeapエンジンに代わる新型エンジンに応用され新型ボーイング機に採用されるのは2020年代末まで待たされることになりそうだ。

 

ナローボディー機分野でエアバスが優位だが同社の状況も複雑だ。同社は2023年に月産64機に移行するが、パンデミック前の生産計画を下回る水準の生産が三年続き、ここ18カ月はいかなる犠牲を払っても発注取り消しを回避しつつ、納入先送りへの柔軟対応に専念してきた。このため数百機相当の生産予定が発注エアラインやリース会社の合意をもとに後年度に変更となっている。月産64機になっても受注残は8年分となり、しかも増産の実現は2年先のことだ。

 

エアバスで問題となるのは生産スロットの空きが2026年まで非常に少ないことだ。A320neoを追加生産したいが、スロットがない。そのため、早く機体が欲しい顧客はリース会社あるいはボーイングに向かうことになる。どちらもエアバスには朗報とならない。

 

そこでエアバスは予定通りの拡大を実現すべく、サプライチェーン各社に増産に向け設備投資しても安全だと納得させる必要に迫られている。ボーイングも同様に財務状況が大きく改善し、ナローボディ機増産に目を向け始めた。ただし、同社の増産規模はそこまで大きくない。

 

ボーイングは納入を停止して積みあがっていた787完成機100機近くの引き渡しを急ぐ。ワイドボディ機全体への需要は国際渡航制限とともに低迷しており、ボーイングはこの機会に787事業の立て直しを期待している。■

 

Why Is Boeing Slowing Down All New Aircraft Plans?

August 04, 2021

https://aviationweek.com/mro/why-boeing-slowing-down-all-new-aircraft-plans

 by Sean Broderick, Michael Bruno, Guy Norris, Jens Flottau


2021年8月5日木曜日

DHLは輸送機を全機電動タイプにするビジョンで、支線用に電動リージョナル機アリスを導入、ローンチカスタマーになる。

 日本が遅れているのか、欧米では電動航空機が急速に存在感を増しているようです。しかもその主役は誰も聞いたことのない新興企業ということで、航空業界に大きなチャンスがやってくるのでしょうか。

 

DHL

Credit: Eviation


 

界規模で活動を展開するDHLエキスプレスイーヴィエーションEviationのアリス電動リージョナル機の貨物型のローンチカスタマーとなり、2024年から路線投入する。

 

12機発注はワシントン州アーリントンに本社を置くイーヴィエーションに大きな突破口となる。同社はバッテリー推進式アリスの大幅設計変更を6月に発表し、前方と後方にアクセスドアをつけた貨物スペースは450 ft.3のでペイロードは2,600-lb.、最大440カイリを巡航速度220ノットで飛ぶ。

 

パイロット一人の操縦で飛行時間当たり30分未満の充電が必要となるアリスは支線に投入される。DHLエキスプレスのグローバルネットワーク運行・航空貨物輸送担当の執行副社長トラビス・コッブは一号機を「米南東部や西海岸での運行を想定」と述べており、着陸後に貨物を積み下ろしする間に充電する想定だ。

 

「実際の路線はこれから検討するが、アリスのペイロードと航続距離から支線投入がふさわしい」とDHLエキスプレスのグローバル航空機材管理部門長ジェフ・ケールがAviation Weekに伝えてきた。「つまり800マイル未満でアリスの貨物搭載量にふさわしい需要がある路線となろう」

 

親会社のドイツ郵便DHLグループは70億ユーロ(83億ドル)を2030年までに投じCO2排出を削減すると2021年初頭に発表した。機材の電動化やサステナブル航空燃料、さらに温暖化を招かないビル建築に資金を投じる。

 

DHLが固定翼機を全て電動式に置き換えようとしているが、その他の貨物輸送大手にはUPSのように電動垂直離着陸(eVTOL) の導入を企画するむきもある。4月にUPSフライトフォーワードがベータテクノロジーズBeta Technologiesのエイリアス10機を発注し、支線運用に投入するとした。さらにオプションで上限150機を設定した。

 

ケールは「当社はイーヴィエーションで第一歩を踏み出し、2024年からの運用実績を見て電動機あるいはハイブリッド電動機など別の手段で2050年までにゼロエミッションをめざします」

 

「アリスの貨物機型は内装以外はコミューター機と同様です」とイーヴィエーションCEOオマー・バーヨハイがAviaiton Weekに語っている。「アリスは貨物を短時間で積み下ろしできる設計で、キャビン内にハードポイントを各所に設け貨物ネットで小型貨物の荷崩れを防ぎます。温度管理コンパートメントで温度に敏感な貨物も安全に移動できます」

 

アリスの設計変更は今年末に予定される初飛行につながる。三点式降着装置で当初より荷物積み下ろしが楽になった。当初はV字尾翼だったが新設計でT字になり、胴体上部に推進用プロペラを付けたナセルを乗せる。推進用に640-kW マグニ650電動推進ユニット二基を使う。関係会社のマグニXMagniXが開発したものだ。

 

最大機体重量は14,700 lbと当初の14,000 lb. から増え、アスペクト比が大きい主翼は59.1フィートに延長された。バッテリー重量は8,200 lb.のまま容量は820 kWhに下がるが、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト酸化物セルで構成する。■

 

DHL Launches All-Electric Alice Cargo Version

Guy Norris August 03, 2021


C919は無事開発・型式証明を完了できるのか。Comacが予定通りに進めれば、西側大手メーカー並みの実力を短期間で習得することになるのだが....





Comac’s C919

Credit: AFP/Getty Images

 

新型航空機の開発では技術課題や設計不備のため型式証明取得が遅れるのが通例だ。路線就航や低率生産開始も課題となる。中国商用航空機(Comac)C919ナローボディ機も例外ではない。

ComacはC919開発を2011年に発表し、2015年後半に試作機1号機を完成させ、2017年には2号機を製造した。Comacは試験用に6機を完成させ、今年の珠海航空ショーで低率生産段階に入ると公表した。比較すると、長年にわたる航空機生産の経験を有するボーイングでは787の路線就航開始から量産開始まで9年かかっている。

C919開発開始から10年経過したが、話題の中心は果たして同機が中国以外で買い手が見つかるかだった。さらに二つの疑問が生まれている。ComacはC919量産ができるのか、いつ量産段階に移行できるのか、という点だ。

C919はまもなく生産前審査と製品ライフサイクル検討を受ける。ここでC919の生産体制、仕様設定やサプライチェーンの課題が検討される。フライトテストを行い中国民生航空局が型式証明を出すのが次の段階で、その後路線就航が始まり低率生産の準備が整う。

機体を移動しながら生産するため各所に生産治工具の設置が必要となる。これまでのC919は固定位置で生産されたようだ。今後の増産を見越し、生産ラインを複数設置する、あるいは移動式生産ラインが必要となるはずだ。増産には生産サイクル時間の短縮が必須だ。そこで生産治工具をあらたに設計し調達ししかるべき位置に設置する必要がある。

さらに生産仕様を管理しつつ変化点制御を行うシステムの確立が必要だ。Comacは同機生産ラインの管理で多様な仕様の管理をこなす実力が求められる。サプライチェーンで発生した品質問題を追跡し、管理しつつ解決する能力が必要だ。また設計面の不備や製造性の問題が浮上すれば生産に支障が発生する。航空機生産は多様な素材を使用し、サプライヤー各社のリードタイムが長くなる傾向があり、製造にはパーツ全点数が正しい仕様で必要な時にそろう管理体制が必要となる。実効性を上げるには堅固な管理体制を整える必要がある。

さらに、C919の初期生産ではComac社内外のサプライチェーンが課題となる。C919の主要サプライヤー82社のうち6割が米国、3割が欧州、1割が中国と外資の合弁事業となっている。サプライヤー各社の位置が重要で、C919用部品の9割を国外から搬入するため、増産に移す際に障害になりかねない。

初期開発・型式証明取得段階でComacは部品を単純に調達したのみだった。生産段階では各種部品の数量が増え、サプライヤーとの取引契約は再交渉の必要がある。部品の約60パーセントが米国関連サプライヤーからの供給となるため輸出コンプライアンスで米政府による規制への対応が必要となる。C919試作機製造中には現状のような厳しい規制はなかった。こうしたサプライチェーン関連の課題により、計画の精度が不十分だったり、在庫やリードタイムを考慮しなければ、生産が遅延する可能性は十分ある。

C919が低率生産段階に入るのは時間の問題といえるが、通例の生産上の難関に加え、対外貿易上の課題に直面しそうだ。Comacにはボーイングやエアバスに匹敵する年間150機量産の実施経験が欠如している。だが、生産計画を念入りに行えば、Comacにも生産のこつを急速に習得する可能性があり、業界を驚かすような成果が生まれてもおかしくない。■

Opinion: Can Comac’s C919 Ever Reach Full-Rate Production?

Alex Krutz July 30, 2021

https://aviationweek.com/aerospace/manufacturing-supply-chain/opinion-can-comacs-c919-ever-reach-full-rate-production

Alex Krutz is the managing director at Patriot Industrial Partners, an aerospace and defense advisory firm that focuses on manufacturing strategy and supply chain optimization.

The views expressed are not necessarily those of Aviation Week


 

2021年8月1日日曜日

エアバスが月産70機超に向け強気の生産体制整備へ。現在は月産40機なのだが、このまま順調に推移するのか見ものだ。原動力はA321neoファミリーの好調な受注状況。

 Aviation Week記事からのご紹介です。

 

エアバスは顧客企業の需要増加傾向、サプライチェーンからの調達増から、増産への環境が整ってきたと判断している。

 

「一部パートナー企業が増産に抵抗を示しているのは残念」とエアバスCEOジローム・フォーリはアナリスト向け2021年上半期プレゼンテーションで7月29日発言した。「受注残は6千機ある」「月間40機だと15年分の生産になる。60機なら10年分だ。顧客企業側は長く待てない。60機体制に引き上げる必要がある」

 

フォーリは顧客企業側が引渡し前支払い(PDPs)を予定通り履行していることから機材引き渡しへの高い期待がわかるとした。

 

エアバスはナローボディ機生産を2021年当初の月産40機を同年第4四半期に45機に増やし、2023年第2四半期に64機にするべく準備を進めている。サプライヤー各社へは2024年第1四半期の70機想定で準備を求めており、さらに2025年の75機体制の調査を始めている。

 

「当社としてはサプライチェーンには早期増産を期待したい」とフォーリは発言し、パンデミックによる減産以前に生産設備投資を終えていおり、実施は可能と見ている。


A321XLRエアバスはA321XLRの引き渡しを2023年に開始する。

Credit: Airbus / S. Verger

 

増産への自信を高めているのがA321neoの好調さで、現在3千機の受注残となっている。エアバスはA321neo生産の比率を「50%超」に引き上げ、好調な需要に応え、さらに60%近くにするのも「間違いとは言えない」とフォーリは含みを持たせた。A321neo各型に加え、A321XLRの引き渡しが2023年から始まる。同社はA321neo用の最終組み立てラインをツールーズに建設中で増産に備える。

 

エアバスが単通路機生産増加を急ぐ背景には2021年上半期に完成機引き渡しが好調で結果として利益が高まっていることがある。エアバスは昨年同期の196機に対し、今年上半期に297機を引き渡した。商用機の収益は42%増の178億ユーロ(210億ドル)になった。また営業利益は24億ユーロと昨年同期の赤字18億ドルから好転した。

 

エアバスは今年の通年業績も上方修正した。600機の引き渡しを目指し、以前の予測を34機上乗せする。そのため営業利益は40億ユーロと以前の予測の二倍としている。また20億ユーロのフリーキャッシュフローを想定しているが、以前は収支トントンとの予測だった。

 

上半期の財務上の業績が強含みだが下半期もそのまま推移するとは思えない。同社CFOドミニク・アサムは直近の実績は「完璧な状態」と表現している。機体引き渡しのペースは増加しているが、エアバスは費用負担を可能な限り先送りしており、下半期中のどこかで処理を迫られる。

 

また同社は顧客企業が引き渡しを先送りしてもPDPsをそのまま計上している。相当数の引き渡しが近づく中で、相当部分の支払いが終わっているため、今後の収益が減少することに覚悟が必要だ。単通路機の増産体制構築が進むと財務上の負担が下半期に現れる。エアバスは2025年就航をめざすA350貨物型開発にも予算が必要だ。■


As Profits Recover, Airbus Argues For Fast Narrowbody Ramp-Up

Jens Flottau July 29, 2021


2021年7月26日月曜日

米国、中国、欧州のエアラインビジネスの回復は渡航制限のない国内移動に助けられた格好だ。日本は自粛をしすぎたのではないか。

 前回の記事の続きです。グラフがすべてを語ってくれますね。

アジア太平洋の弱点は変化への対応スピードでしょうかね。

 

 

国際線には利用客がまだ戻っていないが、米国系エアラインの利用率は世界最上位にある。COVID-19前の8割程度にまで回復しているが、大部分は国内線によるものだ。ヨーロッパは5割程度にとどまっているが、一時の閑古鳥が鳴く状況からここまで回復してきた。両地区は今年夏の旅行シーズンでさらに拡大を示すと期待されている。

中東、ラテンアメリカも回復基調だが、ここ数カ月の回復は微増にとどまっている。

他方で中国やアジア太平洋地区の回復ぶりは症例の急増、渡航制限の再開で大打撃を受けている。それでも中国は唯一パンデミック前水準に復帰した国で、ここも国内路線の活況に助けられている。■

 

U.S., Europe Leading Utilization Recovery

July 22, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/us-europe-leading-utilization-recovery

 


2021年7月23日金曜日

2021年夏の状況。北米、欧州の回復ぶりに対してアジア太平洋が落ち込んだままの状況が航空業界の心配のたね。中国国内は堅調だが国際路線は依然として制限したまま。

 数カ月にわたる米国内の進展ぶりに業界は安堵の感を強めている。

他地区より早い回復が北米で発生している。米国国内線の実績がかなり良好になってきた。6月の運行座席数は2019年実績の12パーセント減だったが、今後は差が縮まる。

大型発注の動きが楽観的な見通しを後押ししている。ユナイテッドエアラインズボーイングエアバス両社からナローボディ機270機を発注したが、サウスウェストエアラインズも737-700の後継機に737 MAX発注を増やしている。2020年3月から運行停止中のポーターエアラインズでさえエンブラエル195-E2を大量発注しようとしている。

業界では北米はもはや問題地区ではないことが忘れられがちだ。ヨーロッパも同様で米国より回復のペースは遅れるが、落ち込んだ利用客も夏の休暇シーズンを機に増えつつある。COVID-19ワクチン接種の動きがヨーロッパで勢いをつけて望ましい効果を上げているようだ。ただし感染力が高いデルタ変種のCOVID-19が勢いをつけている。

parked aircraft

Credit: Steve Strike/Getty Images


エアライン業界、航空機業界ともに現実の問題はアジアの状況で、望ましくない要因の複合が強く働いている。ワクチン接種率が低い、あるいは極めて低い中で国際航空移動の制限が残ったままだ。

エアバスの確定発注機数でアジア太平洋は37パーセントを占め、ボーイングでは31パーセントになっている。これに対し北米はそれぞれ16パーセント、18パーセントだ。予想外の回復が突如として現実とならない限り、両社の受注残で相当の部分がリスクにさらされたままとなる。

アナリスト陣、国際航空運輸協会(IATA)はともに中国の状況に注目している。ダグラス・ハーネド(バーンステインリサーチ)は中国国内路線の運航座席数は2020年9月に2019年実績を超え、成長モードに入ったが例外は2021年2月で政府が中国新年の休暇中に旅行自粛をもとめたためだ。関係者にはうれしいニュースだ。

だがアジア圏内の運行実績は中国国内線を勘定に入れないと異なる様相を示している。2020年4月は73.6パーセント減となり、一時的に縮小幅が減ったものの、今年6月実績は2019年より72パーセント減で、7月は69パーセント減となる。ハーネドは2022年2月冬季オリンピックより以前に中国が国境を解放するとは予測していない。

アジア内の移動需要は2021年8月は2019年実績の54.4%減、9月は46.9%減となる予想が現在の運行予定から見える。

アジアを出発点、到着点とする長距離路線でも状況は似ており、2021年6月のヨーロッパアジア間路線は66%、アジア北米間は77%減となっている。北米ヨーロッパも71%減で、ロードファクターとなると悲惨な実績になっている。

現在の交通量のまま回復が最重要市場で見られないと機材引き渡しはさらに減速しそうだ。アジア系エアラインはすでに大規模な負債に直面しており、政府援助を受ける会社も多いが、借入返済に資金を回す必要がある。各国政府がどこまで財政支援をするのか、できるのかも不透明だ。

すでに影響が表れている。ハーネドはエアバスのナローボディ機部門では2019年並み引き渡し数に回復するのは2024年、上回るのは2025年と見ている。ボーイングは2018年ナローボディ機引き渡し実績に並ぶのは2022年と予想しているが、そもそも2019年実績は737 MAXの飛行停止措置の影響を受けていた。

ワイドボディ機となると状況は一変する。エアバスは2019年に173機を引き渡しており、2025年はこれが116機に減る予想が出ている。ボーイングは2019年の254機引き渡しが2025年に178機になる。それぞれ危機前の67%、70%の水準だ。ただし、見通しは機種により異なる。エアバスは2025年にA330neoはわずか26機になるが、A350は88機引き渡しする。ボーイングでは787は96機、777Xは36機との予想になっている。■

 

Opinion: Asia-Pacific Region Is Slowing Global Air Transport Recovery

Jens Flottau July 21, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/airlines-lessors/opinion-asia-pacific-region-slowing-global-air-transport-recovery


エアバスがA321XLRの第2生産施設として旧A380組立ラインを転用―320neoファミリーの受注残は1万機で、321neoが中心

  Photo: Photofex_AUT | Shutterstock エ アバスはフランスのトゥールーズにある最終組立ライン(FAL)でA321XLRの組立てを開始した。 フランスでのA321XLRの組み立て トゥールーズを拠点とするLa Dépêche紙記事によると、エアバ...