エアライン、民間航空、新技術、宇宙開発を主に扱うブログです。2008年スタートし、2019年3月からBloggerに移転しました。軍事航空はターミナル2、航空事故はターミナル4で扱っています。
2020年12月19日土曜日
2020年12月14日月曜日
小型衛星打ち上げを画期的に変える手段になるか。スタートアップ企業エイヴァムの大胆な挑戦
こうした新興企業が次々と現れ技術革新が進むのが米国のすごいところで根っこには失敗を恐れない、失敗しても自分の財産が差し押さえられないメンタリティとシステムの違いがあるのでしょう。民間航空部門などは出来上がったシステムを汲々と守り利益を最大化することしか眼中にない観があります。航空不況で大打撃を受けてもシステムそのものを打破する発想は民間航空部門に出てくる気配がありません。だから制約がないわけではありませんが、どんどん新発想が出てくる軍事航空部門に魅力を感じるのですが、皆さんはどうでしょうか。
*ターミナル1-2共通記事
AEVUM/YOUTUBE SCREENCAP
米国の新興企業エイヴァムAevumがオンラインでロールアウト式典を開きレイヴンX自律発進無人機をお披露目した。式典には実寸大のモックアップも登場した。同社は2016年設立で本社をアラバマ州ハンツヴィルに置き、再利用可能な無人機にロケットを搭載し、小型衛星等を低地球周回軌道に乗せる。
レイヴンX無人機は双発で同社によれば打ち上げの第一段に相当し、機体重量55千ポンド、全長80フィート、翼幅60フィートと往年のA-5ヴィジランテに相当するサイズだ。二段目ロケットの母機として1,000ポンド程度のペイロード運搬を狙う。エイヴァムはレイヴンXを三段式打ち上げシステムとして構想している。
同社によれば打ち上げシステムの第一段目に無人機を使えば、ロケットモーター作動を切り離し0.5秒から1秒後に開始できるメリットが生まれるという。ここまで短時間で機体下部から切り離しできれば、ロケットモーターのエナジーブリードを最小限にできる、つまり切り離し直後の慣性損失を最小限にできるという。同社はこの切り離し方法を有人機で行うのは危険が伴うとする。これまでの空中発射では有人機からロケットを落下させ時間をおいてからロケット点火して乗員の安全を確保していたが、ロケットの運動エナジーがその分犠牲になっていた。
報道によればロケット切り離し高度は33千から66千フィートの間で可能という。二段目の推力は5千ポンドと同社CEOジェイ・スカイラスはArs Technica ブログで搭載エンジンは「高温運転テストを長時間行い」「認証テストを完了」したという。
第一段に再利用可能宇宙機を活用する構想は前にもあったが、再利用可能無人自律型の母機が通常の航空機同様に離着陸するのは新規構想で少なくとも民生分野では初めてだ。レイヴンXは従来型ロケット打ち上げより経済的、簡素かつ柔軟性にとんだ手段になると見ている。また同社は自社方式をその他の空中発射方式のノースロップ・グラマンのスターゲイザーやヴァージンのオービットロンチャーワンと異なると主張しており、レイヴンX第一段は大気圏内で加速させてからロケットを急速切り離し点火させるのが違いとする。ただし実際の効果でどこまで違いがあるか不明だ。
レイヴンXの大日程はかなり野心的でまず「機体レベルのテスト」で耐空証明を取得し、打ち上げ許可を得るとある。後者は通常18ヶ月かかる工程とスカイラスは説明。その後、同社は第一段で耐空証明を連邦航空局から取得する。
そして軌道打ち上げテストをセシル宇宙港(フロリダ州ジャクソンビル)で2021年末に開始する。ここまで極めて野心的な内容に聞こえ、システムの工程表もまだ完成していない。ロールアウト式典で公開されたモックアップ機はタクシーテストに投入可能に見えるが、鋭い観察眼を持つ外部専門家は必要な機能がついていないことに気づいている。スカイラスはレイヴンXを18ヶ月で稼働開始にするというが、疑問が残るのは事業の実施可能性であり、資金の確保先だ。
AEVUM/YOUTUBE SCREENCAP
Aevum CEO Jay Skylus explains the launch profile during the rollout event.
この種の打ち上げ機で型式証明は前例がないが、エイヴァムでは無人機を使うのが今後の顧客ニーズに合うと見ており、既存の有人機のインフラや支援装備をそのまま使える利点があるとする。同機は通常のジェットエンジン用の燃料を使う。今は数年を要する打ち上げ準備を大幅に短縮するためと同社は述べる。
AEVUM/YOUTUBE SCREENCAP
レイヴンXの顧客候補に米宇宙軍があり、第一回目ミッションとして490万ドル契約を昨年受けている。迅速小型打ち上げ運用ノーマライザーASLON-45の打ち上げが2021年末に予定されている。
デジタルのロールアウト式典にはライアン・ローズ中佐(宇宙ミサイルシステムズセンターの小型打ち上げ部門長)がニューメキシコ州カートランド空軍基地から参加し、軍がレイヴンXへ関心を示していると挨拶した。
同社は年間8回ないし10回の打ち上げを予定しており、ミッション費用は5-7百万ドルの範囲だという。
この以外に米空軍の小規模ビジネスイノベーション研究事業から5万ドル、さらに名称非公開のペンタゴン契約も取得している。同社はオービタル・サービシズ事業-4で9.86億ドルで同契約を獲得しており、打ち上げ20回を行うとの報道が一箇所から出ている。
米政府資金を確保しているがエイヴァムは民間資金の確保にも向かっている。ただし、規模は非公表だ。同社ウェブサイトでは民間顧客が一社あるとなっているが社名は「非公開」でミッション実施時でも公開しないという。最終的に同社は資金の85%を民間顧客から確保し、残りを国防関連機関に期待する。
同社公表のコストではライバル他社と大きな差がないが、エイヴァムはレイヴンXの利点は迅速かつ簡易な方法でペイロードを軌道に載せられるのは従来のロケット打ち上げ施設の利用が不要となったためと説明している。「低地球周回軌道にペイロードを届けたあと地上に戻り自律的に安全に滑走路に着陸し、格納庫まで戻ってきます」
ASLON-45ミッションはセシル宇宙港から打ち上げるが、同社は適切な長さの飛行施設ならどこでも使えるとし、ペイロード打ち上げは「最短180分、24時間毎日」可能になるという。
この打ち上げ方法ではペイロード重量の制約がついてまわるが、宇宙軍、ミサイル防衛庁が小型衛星の打ち上げを意図する限り問題ではない。極超音速ミサイルなど空中発射式装備にも応用できそうだ。実用化に成功すれば、低地球周回軌道に簡単にペイロードを送る魅力的な選択になる。大型衛星は大国間戦では脆弱な目標とペンタゴンは危惧している。このため小型で簡易な衛星を大量に打ち上げ大型衛星喪失の穴を埋めることが高優先順位になっている。いいかえれば短時間で軌道打ち上げする必要がある。
この事業には未回答の疑問点も数々あるとはいえ、エイヴァムは興味深い打ち上げコンセプトを提示した。時間が経てば、同社の大胆な構想が言葉どおり成果をあげるかわかるはずだ。■
この記事は以下を再構成したものです。
Aevum's Space Launch Plane Is A-5 Vigilante Sized, Its Claims Are Even Bigger
BYTHOMAS NEWDICKDECEMBER 4, 2020
2020年12月13日日曜日
航空不況、米旅客エアライン業界の雇用総数が30年で最低水準にまで低下している
Source: Pilar Wolfsteller/FlightGlobal
Covid-19大量流行でほぼ無人になったサンフランシスコ国際空港。2020年12月8日撮影。
US passenger airlines’ employment dips to lowest level in at least 30 years
By Jon Hemmerdinger12 December 2020
米定期旅客エアライン全体で10月中旬までの一か月で37千名近くの雇用が削減され、雇用規模は過去三十年で最低水準になった。
給与支払いに充てていた米政府の資金支援策が9月末に終わったことによる削減だ。
10月中旬時点で米系エアライン22社で368,162名が正社員で、9月中旬の404,869名から9%が削減された。(米運輸省調べ)10月の前年同期の雇用総数は454,070名だった。
運輸省が数字を公表開始した1990年1月以来でここまで少ない雇用規模はない。
9月から10月にかけての雇用削減は米大手エアラインが32千名を削減した効果が表れている格好だ。
LCC各社で同時期に1,400名分の雇用が消えており、リージョナルエアライン各社では3,100名が削減された。
連邦政府によるパンデミック救済策は3月に成立し、290億ドルをエアライン各社の給与支払いに投入していたが、9月末日をもって失効した。■
2020年12月12日土曜日
777Xと787の失速で737に期待せざるを得ないボーイングの苦しい事情、敵失でエアバスがますます優位になるのか
Widebody Softness Triggers Boeing 787 Production Cut, Adds More Pressure To 737
Sean Broderick December 04, 2020
Source: Boeing
ボーイングのワイドボディ機二型式が厳しい逆風にさらされており、787の製造数は2021年にさらに削減され、777X型式証明は時間をかけて進みそうだ。
787生産はサウスカロライナへ移転中で、2021年央に月産5機と以前の発表より少なくなり、現在のペースの半分となる。同社CFOグレッグ・スミスが12月4日明らかにした。
「冬季は厳しい状況で[COVID-19の] 感染が世界各地に広がっています。今後さらに増えれば旅行制限も変更となり、回復への道はさらに遠のき、状況は各地で異なるだろう」とスミスはクレディスイス主催イベントで述べた。「その結果、787減産も妥当な範囲で調整する」
長距離路線需要が低下しており、787納入に生産関連の問題が影を落としている。11月の納入はゼロだったとスミスは述べ、今年の累計は53機だという。787は5月にも納入ゼロとなったが、その際はCOVID-19のためチャールストン、エヴァレット両工場が数週間閉鎖されていた。スミスは11月の納入ゼロは品質問題も原因と認めた。
「追加点検で納入前機材の状況を確認していますが予想以上に時間がかかっているのです」「その結果、11月は787納入が皆無になり、12月も納入はスローペースになると見ています」
777Xについてスミスは「規制当局と型式証明で連携しており、737再審査の結果も反映している」と述べ、ボーイングの最新EIS(路線就航)タイミングは納入一号機を2022年目標にしているが、スミスはこれについて追加コメントしなかった。
「開発中のためリスクがあり、日程に影響が出ます」「EISのタイミングは最終的に型式証明に規制当局により左右されます」
FAAが777Xを厳しく見ているのは737MAXの飛行停止措置が大きい。FAAは技術諮問委員会を設け777Xの設計内容を点検している。
777X型式証明は2019年に数か月遅延している。これはGEエイビエーションGE90エンジンの問題が原因だった。MAX騒動で規制当局が追加措置をとっており、同機がめざす市場の状況もあり今後目が離せない。
「今後規制当局と作業を進め状況が見えてくると期待している」「同時に当社は777Xの顧客各社と連携し各社のフリート構成案と納入タイミングを照らし合わせ検討しているところ」
ウィアドボディ二型式で不確実性があるため737MAXファミリーにもプレッシャーとなっている。ボーイングは20か月に及ぶ飛行停止を終え、納入開始の承認を得て、まず駐機中の機材と新規生産の450機の引き渡しに入る。
駐機中機材の点検に通常より大量の人員を投入する必要があるが、スミスはあくまでも顧客ニーズを中心に進めると述べた。「制約は当社の納入状況ではなく、むしろ顧客の側の受け入れ体制だ」
エアライン各社は国内規制当局の了承を得ないとMAX運航ができず、これに数か月かかる国もある。一方で需要低下でナロウボディ機運航も影響を受けている。ただし、ワイドボディ機への影響と比べれば軽い。
納入日程を遅らせるエアラインが多いが、新型機の導入は速まっている。ライアンエアは737-8200を75機発注していたが、12月3日に前倒し受領を発表した。同社は2025年までに新型ボーイング機210機を運航するとしている。スミスは納入先送りなど変更は増えると見ている。
「受注の動きが出てくると見ています」「ただし、顧客で事情が異なります。ライアンエアが発注していますよね。これから同じ動きが増えると思いますよ」(スミス)
MAXの受注残を解消し、引き渡しを進めることがボーイングのキャッシュフローに最大の影響を与える。787、777Xがともに失速するなか、737生産が一層重要になっている。ボーイングは737生産を「超低速」で進めており、2022年初めに月産31機に持っていきたいとスミスは語った。
「737生産を元に戻すことが最大の原動力になります。ただし、状況は20年21年ともに変わりません」とし、787納入の復帰もキャッシュフロー上で重要だとする。「2022年に737が元通りになっていれば、つまり在庫一掃し生産数を増加させていればということですが、その先は市場の状況次第ですが、生産数も呼応して変更していきます」■
2020年12月9日水曜日
2021年パリ航空ショー中止へ。COVID-19で揺れる航空宇宙産業界
Organizers Cancel Paris Air Show 2021 On COVID-19 Uncertainty
Helen Massy-Beresford December 07, 2020
Credit: Paris Air Show
世界最大の航空展示会パリ航空ショーは2021年は開催されないことになった。COVID-19大量流行の関連で先が見通せないのが理由と主催者が発表した。
パリ航空ショーおよびフランス航空工業団体GIFASの理事会は全会一致でこの決定を12月7日に下した。
「前例のない事態の中で航空宇宙産業への影響が予測つかない中では、妥当として理事会で全会一致決断した。今回の危機的状況では避けがたい」との声明が出ている。
コロナウィルスの影響で旅行産業が大打撃を受け、エアライン各社で機材を地上待機させ、政府支援で生き残りを図る状況だ。IATA予測では2019年実績水準に戻るのは2024年以降とある。
パリ航空ショーはルブールジェ空港を会場としてきた。前回2019年の来場者は316千名を超え、民間軍用双方の業界関係者、一般観客が集まり、世界最大の航空ショーとなった。同年に会場での受注総額は1400億ドルだった。
第一回は1909年に開かれ、隔年開催だが、世界大戦で中断されている。2021年ショーは第54回になるはずだった。
「2021年ショーが開催できず残念。ここにきて展示会多数が世界各地で中止されており、国際航空宇宙防衛産業界として次回開催に期待したい」とパリ航空ショー会頭のパトリック・ダヘル(ダヘルグループ会長)が声明発表した。「2023年ショーで航空宇宙産業の復活を国際レベルで祝えるよう準備作業を開始した」
中止となったショーは2021年6月21日から27日に開催予定だった。主催者側は2023年6月の次回ショー日程をのちほど発表するという。■
2020年12月8日火曜日
ボーイングのシェア低下を見てエアバス取引に走るべきか、サプライヤー各社の判断は....
Should Boeing Suppliers Shift Toward Airbus?
Michael Bruno November 26, 2020
スピリットエアロシステムズではエアバス取引の拡大の一環でA350XWBの胴体中央部を複合材で製作している。
Credit: Spirit AeroSystems
いささか遅い観はあるが、ボーイングCEOデイヴ・キャルホーンが10月に同社が民間航空機市場でヨーロッパのライバルに差をつけられていると認めた。
COVID-19の大量流行の前から737 MAXの飛行停止措置並びに生産中断があり、業界の中にはこのままだと6対4いやもっと差がつくとエアバス、ボーイング両社のナローボディー機の動向で警句を出す向きがあった。
これまでの5対5の互角勝負から大幅な推移だが、背後に大きな変化がある。「ボーイングが737 MAXで足踏みしている状況はエアバスに千歳一隅のチャンスでナローボディー分野でシェアを一気にふやせる」とモーガンスタンレーのクリスティン・リワグ、マシュー・シャープが11月9日に記していた。「サイクルが長くかつ競争相手や新規事業が限られているのが航空宇宙産業で...マーケットシェアを戦略的にふやした効果は今後長く残る」
航空宇宙産業のサプライヤー各社も歴史的な不況に直面する中、マーケットシェアの大変動を見てエアバスに切り替えるべきか疑問に思っているはずだ。
確かに誘惑は強い。「ここ18か月でエアバスが完全にリードを奪い、ボーイングは抵抗できなくなるほどの勢いだ」とエージェンシー・パートナーズのアナリスト、サッシュ・ツーサがAviation Week 主催のウェビナーで11月に発言していた。「エアバス関連サプライヤー各社のほうがボーイングと取引中の各社より企業価値が増えている。これは収益でも明らかで受注の6割がエアバスだ」
事情はサプライヤーにより異なるが、考えていることは同じだ。もしエアバスがA320ファミリー機材の引き渡しを順調に進めれば、MAXを注文した顧客は先送りあるいは取り消しに走るのではないか。とくにMAXの飛行停止措置は注文変更の絶好のチャンスだ。
モーガンスタンレーのデータを見てみよう。ボーイングのMAX受注は2,717機あり、2025年までの分だ。うち29%はA320発注もしているリース会社あるいはエアラインによる発注だ。
COVID-19とMAX飛行停止措置前はサプライチェーンがボトルネックで両社合わせ月産120機の生産計画構想が強いプレッシャーだった。
専門家には両社のうち先に月産60機以上のペースをサプライヤーベースで維持できる方が勝者となるとの見方がある。エアバスは各サプライヤーに47機体制を2021年10月までに整備するよう求めているが、ボーイングはわずか31機しかも2022年「早期」までとあり、それでもサプライヤー側にはこの目標を怪しむ向きがある。
ボーイングのティア1サプライヤーで少なくとも一社、スピリットエアロシステムズがエアバス陣営に移行しようとしており、その背景にはMAX問題やCOVID-19以前の戦略企画がある。737ファミリーがスピリットの売り上げ50%を2019年まで占めており、ボーイング全部合わせると8割近くになる。
スピリットがエアバス向け取引で多角化を図るのは理に適っているといえるのか、アナリスト、コンサルタントには間違いとみる向きがある。
「正しい判断ではないでしょう」とバーンステインのアナリスト、ダグ・ハーネッドがAviation Week 主催ウェビナーで述べていた。「シェアは変動するもので、一般の皆さんが考えるより大きく動いています」
PwCのコンサルタント、スコット・トンプソンは「二社寡占状態で市場は50-50の互角勝負に戻るはず」という。だがもちろんバランスをどう回復できるかが問題と本人もいう。
ハーネッドも下位のサプライヤー企業でボーイング依存が高すぎる会社に影響が出ると見ており、あるいはボーイングがシェア回復を狙いサプライヤーに圧力をかけてくるかもしれないという。だが実際にはそうならないと本人はみている。「小規模サプライヤーに影響が出ても、大方でこれ以上悪化する可能性は少なく、よい方向になるのではないか」
乗り換えを無効にするその他の要素もある。「ボーイングとエアバスのシェア争いがどうなるかは不明だが、見ものなのは確かだ。シェア争いで勝者はない」とリワグ-シャープは口をそろえる。
航空宇宙製造業は変化への適応が遅く、動きも鈍い業界といわれる。しかし今回はあえて変化を選択せず、マーケットシェアの混乱を受け流し、サプライヤー構図に手を付けないのが一番と見る外部筋が多い。■
2020年12月5日土曜日
ボーイング777X事業は航空不況でどんな影響を受ける?
日本の航空製造業界にも多大な影響が出そうですね。それにしてもエアバスA350はボーイングにとって面倒な存在になりましたね。
Could The Boeing 777X Program Be Terminated?
Jens Flottau November 27, 2020
https://aviationweek.com/aerospace/aircraft-propulsion/could-boeing-777x-program-be-terminated
Credit: David Ryder/Getty Images
ボーイング777X事業が中止になる可能性はあるのだろうか。
Aviation Week民間航空部門主筆のジェン・フロトーはこう見ています。
ボーイングは現時点でワイドボディで747-8、777X、787と三機種そろえている。このうち747-8は段階的に消えるが、787が活況を呈すのはCOVID-19流行で比較的小型でありながら効率が良いためだ。一方で777Xは面倒な立ち位置にある。とはいえボーイングが同機事業をすぐにでも中止する可能性は極めて低い。
理由として同機の型式証明取得が長期化し相当の経費がかかっているが、開発予算は大部分支出済みだ。747がなくなれば、787-10がボーイング最大のワイドボディ機になるが、エアバスA350とは機体サイズ、航続距離双方で勝負にならない。既存型777の生産継続は選択肢にならない。運航経済性がA350に及ばないし、選定に残らない可能性が高いが、エアバスに価格値下げさせ収益性を損なわせる効果は期待できる。
同じ理屈がA330neoにあてはまり、エアバスは同機発注が低迷中でも7同機を残している。
ただし777Xの見通しは現時点のトラブル続きの航空市場で不安を残す。ボーイングは型式証明工程を小型の777-8で遅らせ、市場回復まで時間稼ぎをねらう。また737 MAXの飛行再開後初のボーイング機となれば当局が厳しく審査するのは当然だろう。
777Xの受注残の大半はエミレイツエアラインズ、カタールエアウェイズ、エティハドエアウェイズが350機中240機と大半を占めている。このうちエミレイツ(156機確定発注)が小型の787やA350に関心を移しており、パンデミック後の路線網再編への投入を検討しているようだ。
エティハドも発注したものの湾岸地域のライバル各社と規模の競争を放棄する路線変更をしている。その他の777X発注エアラインのキャセイパシフィック、ブリティッシュエアウェイズ、ルフトハンザもそれぞれ大変な状況になっており、国際路線が運航停止し運航再開しても回復は国内線より時間がかかりそうだ。
777Xは大型機であり高需要の長距離路線運航に最適化した機体だが、その路線が今は存在しない。観測筋の大部分も時間が経てば特にアジアでこうした路線の復活を予測するが、ヨーロッパ、北米では可能性は低い。大事なのはエアライン各社に地上待機で比較的機齢が低い従来型777多数があることで、新規製造機体の中短期的販売に影響を与えるかもしれない。■
エアバスがA321XLRの第2生産施設として旧A380組立ラインを転用―320neoファミリーの受注残は1万機で、321neoが中心
Photo: Photofex_AUT | Shutterstock エ アバスはフランスのトゥールーズにある最終組立ライン(FAL)でA321XLRの組立てを開始した。 フランスでのA321XLRの組み立て トゥールーズを拠点とするLa Dépêche紙記事によると、エアバ...
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AIRBUS エ アバス A380の最終号機が納入され、世界最大のエアライナーの製造が「スーパージャンボ」の当初の期待を裏切る形で終焉を迎えた。つまるところ、エアライン業界の変化によりA380生産は想定より早く終了し、251機製造で終わった。これはロッキードのL-10...
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2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。
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Organizers Cancel Paris Air Show 2021 On COVID-19 Uncertainty Helen Massy-Beresford December 07, 2020 https://aviationweek.com/air-transp...