2021年11月10日水曜日

ボーイング、エアバスの現況:受注残は着実に減少する中、中国からの発注へ期待できないものの、業績は改善中

  

 

ボーイング 737 MAXの型式証明再取得が実現しても、中国エアライン各社の受注急増は期待できない Credit: Greg Baker/AFP/Getty Images

 

中国向け受注残が減少の中、新規案件がないボーイング、エアバス両社の現況

  • 中国向け受注残が減少の中、新規案件がない

  • エアバス天津工場はA321neo製造に対応

  • ボーイングは737 MAX再型式証明を年末まで取得を期待

ここ数年、ボーイングエアバス両社が前途有望な将来は東にあると指さしてきた。中国で中産階級の旅行需要が拡大する中で同国エアライン各社が旺盛に機体購入してきた。中国市場の成長で機体需要の中心地は東に移動すると見られていた。

2010年代の航空好況で旅客機の五機に一機は中国向けだったが、各社がCOVID-19パンデミック余波に対応する中で機材引き渡しは実質ゼロのまま、発注も減少している。両社の受注残も急速に減少しつつある。

ボーイング、エアバス両社が現在の引き渡し停止状況を抜け出そうとしているが、これまでとちがい中国には期待できない。

ボーイングの現状認識はこうだ。「中国は今後10年の世界規模の需要増加の25%を占める存在だが、中国向け引き渡しが進まないと当社の世界市場での地位が揺らぐ」とCEOデイヴ・カルフーンが6月にAviation Weekに述べていた。

政治も「大きな要素だ」とある幹部がもらしている。米中両国の緊張状態のため、「ボーイングがすぐにでも受注する見込みはない。ヨーロッパにも同様だ。中国は西側の政治発言で動揺している」というのだ。C919が今年末にも中国東方航空に引き渡しとなるが、当面は心配にさせる要因とならない。生産規模が数年は低いままで、中国国内エアライン各社にも同機を積極的に導入する様子がない。

ボーイング民生機部門は営業損失693百万ドルを計上したが、2020年第三四半期の損失の四分の三程度に相当する。民生機の収益が24%増加し45億ドルになるのは、737 MAX 引き渡しによるところが大きい。

短期財務状態では777で貨物機型生産の加速による変化が期待できる。「貨物機需要が底堅いためサプライチェーンと調整し777貨物型を増産することにした」とカルフーンは述べた。「2022年の777引き渡し数は2021年並みと見ている」とし、今年は9月まで777を20機納入した。

777の月産製造数は2機で、型式証明未取得の777-9もここに入る。今後は貨物型の追加で製造数が増えることになる。一方で777-9の型式証明取得と増産対応を進める。カルフーンによれば777新型の引き渡し開始は2023年末。

エアバスは今年9月までに424機を引き渡しし、昨年同期の24%増となった。内訳ではA220(34機)、A320ファミリー(341機)、A330(11機)、A350(36機)、A380(2機)だ。年間目標達成のため同社は残る三カ月であと180機を納入する必要がある。

同社の民生機部門では収益が21%増の246億ユーロになり、2020年の1-9月期の営業損失24億ユーロが今年は29億ドルの営業利益になった。■

Airbus, Boeing China Airline Orders Backlog Shrinking

November 04, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/airbus-boeing-china-airline-orders-backlog-shrinking


2021年11月7日日曜日

NASAが2040年までにらんだ次世代の環境にやさしい航空機構想に積極的に展開中。今後登場するXプレーン各機に期待。

 

NASAが2040年代以降を目指すコンセプト研究では単通路ターボエレクトリックと層界制御機能を搭載する機体を想定している。

Credit: NASA

 

NASAは将来のエアライナー用に実質で環境負荷ゼロをめざす新技術構想をうちだす。

Sustainability logo

2040年以降の路線就航(EIS)を視野に入れたターゲットコンセプトは形成段階で、業界向けに提案書を出す準備に取り掛かっており、超効率を誇るXプレーンとして持続可能なエアライナー技術の実証を2020年代後半に開始したいとする。

 

「業界とは話を始めており、情報開示を今年度末に行いたい」と高性能航空輸送技術(AATT)を取りまとめるNASAグレン研究センター(クリーヴランド)のジム・ハイドマンが述べている。「提案要求は2023年度の予定で、2040年代の機体の技術要素に何が必要か、ゼロカーボン排出なのかゼロ環境負荷なのかを見極めたい」としている。

 

長期構想では単なる持続可能飛行実証機(SFD)のXプレーン(初飛行を2026年に想定)をさらに進め、中核機体技術の成熟化を図り2035年までに就航する単通路機の実現をめざす。XプレーンはNASAの持続可能航空技術国家パートナーシップ(SFNP)構想として他省庁、業界、学界横断の亜音速輸送機研究を開始した2000年代中ごろの研究が源だ。

 

新構想研究ではNASAの亜音速固定翼(SFW)プロジェクトが2005年から2020年まで展開しており、この成果を利用する。N+と通称がつくコンセプトにより騒音、排気ガス、燃料消費で画期的な技術革新を並行して進めた。このうち登場時期を早期に想定したN+1研究は通常のチュープ+主翼形状のエアライナーに2015年時点ですぐ応用できる技術を採用するコンセプトとした。

 

N+2では目標を2020年代中の就航とし、GE90搭載のボーイング777を比較対象とした。騒音ではステージ4以下で-42 dBとし、離着陸時のNOx排出量はCAEP6上限から75%減にし、燃料消費は40%減にした。さらに大胆な目標を設定したのがN+3で2030年代中の路線就航を想定した高性能エアライナーだ。

 

AATTプロジェクトになったSFWは環境責任を果たす航空技術(ERA)から生まれたもので、2010年にN+2の路線就航に合わせ統合実証機能を想定した。ERAでは実力のある企業や研究者に厳しい要求の騒音、排出、燃料消費の目標を同時並行で与えるもので、これまでは最終排出目標を優先して他の要素を犠牲にした以前のプロジェクトと異なる。

N+4の実現がNASAの長期亜音速コンセプトの目標だ。ここにERAが2009年から15年にかけ加わっていた。写真は構想モデルのひとつ。Credit: NASA

 

「N+4は2040年以降のEISを想定したコンセプト研究事業です」「燃料消費を抑えるだけの目標ではなく、より大きな姿を想定しています」とハイドマンは述べており、新発想の機体、推進方法、システム構想として水素他の持続可能な航空燃料も想定する。「義務化されているわけではありませんが、さらに上を行く環境目標の実現で必要となります」

 

2040年以降の路線就航を想定するコンセプト研究では「全く別の動きの舞台を用意する」とハイドマンは述べており、SFW/AATTならびにERAの研究が最新のXプレーンに道を開いたと説明した。「さらにもう一度実施します。良好なモデルです」とした。

 

現時点で具体的な性能や排出量削減効果の目標は公開されていないが、ハイドマンによればNASAの戦略実施案(SIP)が亜音速輸送機の2040年時点の目標を設定しているという。例としてステージ4では騒音合計で52dBの削減、離着陸時のNOx排出はCAEP 6より80%以上の削減、巡航時のNOx排出は2005年時点の最優秀機材より80%以上削減し、燃料/エナジー消費も2005年標準の80%以上削減とする。

 

「これについて業界に必要とされる内容を求めていきたい。単純に要求内容に従うことはしたくない」とし、「2040年代に必要となる内容を吟味し、業界からニーズ対応の工程表に必要な情報をいただきたい。業界全体の対応方針が決まれば各社別の工程表ができます」とハイドマンは述べている。

 

この方法により出力、燃料、維新系の技術を統合しコンセプト研究に盛り込む。「水素やその他技術で突破口となる要素が生まれるでしょう。バッテリーの大幅性能向上もそのひとつです」「そうなるとカーボン排出量や環境負荷の大幅な削減に向け利用可能な技術への対応準備が必要ですね」

 

ボーイングは持続可能機としてのXプレーン構想をTTBWとしてNASAに提案し、2026年までに飛行開始となるとしている。Credit: Boeing

 

水素燃料他電力系の技術は2040年代でも研究対象の想定だが、NASAはこの分野での研究アプローチを定めていない。「関心は特にヨーロッパで高いのですが、こちらはどの手段が有望なのか評価中というのが現状で、エアバスの各種コンセプトを参考にしています」「NASAでは宇宙分野で低温技術の利用を図っていますが、当方でも関心があり応用できそうな分野があります。水素では社会インフラの問題もありますね。今後こうした課題に取り組んでいきます」(ハイドマン)

 

研究では電動化やハイブリッドコンセプトの大型機応用もあり、SFDのXプレーン構想ではらせん状に進化する技術要素も対象にしている。ハイドマンは「とはいえ大型機は難易度が高いです」「現時点は単通路機に注力していますが、次は機体サイズについてオープンに検討しなおします」「大型機になるのか、小型機になるのか。市場動向が決めることです。そのため機体については柔軟な態度をとっています」とした。

 

次のN+4研究ではNASAの大学リーダシップ事業で研究資金を受けている米国内大学数校の研究者で専用研究チームを構成し、NASAの研究内容を補完する研究課題を設定する。

 

新規研究ではNASAで評価済みのさらに未来的な技術各種も再検討対象とする。NASAはボーイング他とSFWのN+3先端コンセプト研究を2008年にさかのぼり実施している。その一部として多機能軽量機体構造、電動高茎推進システム各種のほか高アスペクト比の遷音速トラスブレイスウィング(TTBW)コンセプトがあり、これはボーイングと共同研究した。ボーイングは同技術を応用した構想をXプレーン契約で提案するとみられる。

 

ボーイングはN+4技術の検討を2011年にNASA共同研究の遷音速超軽量グリーン航空機研究(SUGAR)として行った。その際の研究対象として2040年代のエアライナー設計に高度空気力学推進技術を取り入れるとしていた。さらに液化天然ガス、水素、燃料電池、バッテリー方式の電気ハイブリッド、低出力原子力、層面桐生制御、アンダクテッドファン他高性能プロペラ技術も含む。

 

SFD研究は2026年の初飛行のあと6カ月継続し、2027年に終了するとNASAは発表しており、SFDの地上テスト飛行テストのデータを活用し、採用事業者の性能水準をNASAが定めた中期性能目標に照らし合わせ評価する。これはNASAが2025-35年に登場する亜音速機の性能目標として定めたものだ。

 

それによれば技術登場レベルを5から6、つまり生産開発に移る準備ができた状態)として機体は騒音でステージ4より32から42dB下にするとある。その他NOx排出量、h燃料消費効率はSIP目標に準拠する。

 

NASAはボーイングの高効率TTBW構想の詳細検討を行う準備もできており、SFNPの目標に照らしあわせるとしているが、持続可能技術の実証機の仕様は業界からの提案書に左右されるとしている。SFNPではNASAも高出力ハイブリッド電気推進システムの大型輸送機応用を実証するとしており、複合材機体構造を現行より4-6倍早く製造し、小型コアのタービンエンジンに高温効率を盛り込む。Xプレーンがこうした技術の効果を実証する。

 

2040年以降の機体コンセプトと持続可能飛行実証機はともにNASAが新推進技術や超音速技術の飛行テスト実施を加速化する中で出てきた構想だ。持続可能Xプレーン構想とともにNASAは業界チームと電動パワートレイン飛行実証事業に取り組んでおり、2022年からX-59低ソニックブーム超音速飛行実証機ならびにX-57分散電動推進技術実証機の飛行を開始する。■

 

NASA Reveals Study Plan For 2040 Eco-Airliner

https://aviationweek.com/aerospace/emerging-technologies/nasa-reveals-study-plan-2040-eco-airliner

Guy Norris October 25, 2021

Guy Norris

Guy is a Senior Editor for Aviation Week, covering technology and propulsion. He is based in Colorado Springs.


2021年11月3日水曜日

パンデミック後で黒字復帰したルフトハンザグループ。欧州の需要回復に助けられ、米国路線再開となればさらに収益増加を見込む。

 ルフトハンザがパンデミック後で初の黒字化を達成し、今年第4四半期のキャッシュ不足も回避できる見通しがついた。


9月30日までの三カ月の修正ずみEBITは17百万ユーロで、リストラ費用を除くと272百万ユーロとなった。黒字復帰の背景には貨物運輸を担当するルフトハンザカーゴが記録的な利益を計上したことならびにユーロウィングの黒字化が貢献した。


Lufthansa Airbus A321neo wing

Source: Lufthansa


ルフトハンザグループを率いるカーステン・スポールは「ビジネス客の需要増並びにルフトハンザカーゴの業績が記録更新したことで、危機を脱するめどがついた。黒字復帰を遂げた」と述べた。


ルフトハンザカーゴの修正後EBITは301百万ユーロ、ユーロウィングスは108百万ユーロを計上し黒字復帰したのは観光客出張客の利用再開が大きな理由だ。



ただし、同グループの路線運航は赤字のままで、450百万ユーロの欠損だった。ただし、昨年同時期の赤字12億ユーロから大幅回復となった。


グループとして黒字化しMRO業務も黒字になった。とはいえ第3四半期は72百万ユーロの当期純損失となった。



ルフトハンザのAKSは危機前の50%近くまで第3四半期になっており、19.6百万人の旅客を運んでいる。今後大きな米国市場が再開すればさらに需要増が見込まれる。


「第3四半期末で新規予約が2019年の8割程度になっていた」と同社は述べている。「上級クラスチケットの人気が高い。ビジネス利用客がすべてのクラスで共通して大きく伸びている」


第4四半期では危機前の6割程度で運航し、80百万ドルのリストラ費用を入れてもEBITDAの黒字化を想定する。


「グループは例年厳しくなる第4四半期でもキャッシュ不足を回避できる見込みがついた。このため2021年は通年でグループは増収となり調整後のEBIT損失も昨年の半分程度に減ると見ている」■


Lufthansa sees positive trend after returning to profit in third quarter

By Graham Dunn3 November 2021

https://www.flightglobal.com/strategy/lufthansa-sees-positive-trend-after-returning-to-profit-in-third-quarter/146218.article





2021年11月1日月曜日

中古旅客機の貨物機転用工事が活況を呈している。世界のエアライン業界の最新動向。コロナパンデミック後のエアライン業界の変化。

 

Credit: IAI

 

こ一年半で旅客機の貨物機転用作業がMRO業界で大きな存在となってきた。余剰旅客機の再利用ではいつまで好況が続くのだろうか。

かなり長く続くと見るのはロバート・コンヴェイAeronautical Engineers Inc. (AEI)の営業担当上席副社長およびジョナサン・マクドナルド(IBAの民間機担当部長)で用途変更についてウェビナーで語った。

AEIには改装センターが五か所あり、さらに二か所追加を2022年央までにめざす。改装ラインも現在の13が来年に15になる。「2023年末までの予約が埋まっている。とくにボーイング737-800が多い」「当社だけの話ではない。競合他社も忙しくなっている」(コンヴェイ)

マクドナルドは根本原因を解説している。世界規模の旅客便運航は9月に回復基調とは言うもののCOVID前の実績の半分にも満たない。だがeコマースの伸びが高く、航空便需要が増えている。コンヴェイはCOVID-19による不況で改装用の機体価格が下がったとし、737、A320のみならず大型機も同様だという。

ボーイング単通路機でみると作業需要は737-800が中心となってきており、2021年に35機、来年には50機の予約が入っているという。ボーイング737クラシックは母体が少なくなってきた。

より大型では757-200は依然人気があり、30機の工事が予定に入っている。だがA321-200がその次に控え、20機が作業待ちだ。「757は貨物機として完璧で今後も人気が続くだろう」(コンヴェイ) ただし、コンヴェイはA321-200が757の代わりとして最適とみる。A330は767の代替だという。これまではボーイング機が転用機材として人気があったが、エアバス機が台頭してきた。

ているとはいうものの、作業費用は安定しており、ナローボディで3-6百万ドル、ワイドボディは16-18百万ドルが相場で、今後入ってくる777-300ERだと34-37百万ドルとIBAは推定している。

同時にIBAでは改装後のボーイングナローボディ機の残存価値を18-20百万ドルとみているので、この工事が人気なのがわかる。

IBAではそのうちに757-200の改造母機がなくなるとみており、A321-220価格も機体年数とともに下るので、今後はエアバスのナローボディ機が増えると見ている。

ワイドボディ部門ではトルクメニスタンがA330-200の改修工事を発注していることにマクドナルドが注目しており、そのほかにも同様の需要を期待している。さらにA330の母体価格が下がっており、COVID危機前の25百万ドルが今や15百万ドルまで下がっている。つまり運航会社は機齢が若い機体を探しやすくなっており、貨物機として運行できれば改装工事経費の回収は容易となる。

MRO各社は改修工事の課題に向け準備を怠っていない。エアバス専用の大規模改修施設が数十か所あり、さらに増える。米国と中国に多くが集まっていたが、今やヨーロッパ、韓国、シンガポール、メキシコ、台湾、南アフリカ、カナダと各地に広がっている。

支線運用の速達運送会社がネットワークを拡充しており、小型機でも同様の改修工事の需要がありそうだ。ATR72-500では32機が貨物機にされており、さらに増えるとマクドナルドは見ている。CRJ200が次に多いが30件に満たない。

だが大きな需要は依然ナローボディ機にある。737-800の転用への関心がこれまで以上に増えているとマクドナルドは強調し、その次がA321-200だという。■

 

Cargo Conversion Boom Expected To Roll On

Henry Canaday October 26, 2021

https://aviationweek.com/mro/cargo-conversion-boom-expected-roll



2021年10月27日水曜日

エアバス サービス部門でも首位の座を狙う。デジタル化を武器にMROや訓練の様相を一変させる。

  

aircraft in MRO hangar

各地ですでに10,000機がエアバスのSkywiseデジタルプラットフォームに接続されている。

Credit: Exm Company/H. Gousse/Airbus


  • デジタル化がカギとなる

  • 定期点検の全廃が目標

 

エアバスはデジタルサービス内容を拡げ、データ活用の強化を図る。デジタル化により新しい可能性が特にメンテナンスと訓練で開けており、同社はこの傾向により持続可能なビジネスに弾みがつくと期待している。

 

COVID-19の影響は完全に把握できていないが、一つコンセンサスがある。デジタルツールの採用が業界で広がったことだ。

 

 

この動きを受け、データ分析とエアバスの持つ運航効率化のノウハウの利用拡大も加わり、同社は機体整備、補修、完全点検(MRO)で中心的な存在となるのをめざし、ルフトハンザ・テクニークSTエンジニアリングの地位を奪おうとしている。

 

航空業界はまだ完全なデジタル産業になっていない。にもかかわらず転換が進んでおり、2025年には様相を一変するとエアバスでカスタマーサービスを統括するクラウス・ローウィが解説している。

 

「ビジネスモデルが一変する」とエアバスでカスタマーサービスのイノベーション並びにデジタルソリューションを統括する上席副社長ライオネル・ラウビーが述べている。「コロナ危機で心理的ハードルが取り除かれ、デジタルツールを日常業務に使えるようになった」

 

新技術、新構想の登場の背後で業績がパンデミック危機から回復しつつある。整備需要は2020年に40パーセント縮小し、機材更新はさらに大きく減り、業務は三分の二消えた。訓練も同様でフライトシミュレーター利用は半減した。

 

訓練の増加はまだこれからだが、予測以上のスピードで発生しているとローウィは見ている。機材の路線復帰が需要を生んでいる。さらにエアライン各社の計画からパイロットや整備要員の定年退職や離職が読み取れる。今後5年でパイロット10万名、整備員17.5万名が必要となるとエアバスは見ている。

 

仮想現実(VR)を定型的な訓練に大規模に使うことになりそうだ。「パイロット向けには移動型地上訓練をソリューションとして提供する」とエアバスの訓練・運航サービス担当上席副社長ヴァレリー・マニングが述べている。

 

その狙いは訓練手法の向上と経費削減だ。エアバスは市販部材のVRゴーグルなどを使い仮想環境を実現している。

 

パイロットは一人での訓練も可能となる。他の乗務員もシミュレーションで再現し、教官もシミュレーションで可能となる。あるいはパイロット二名が別々の場所からリモート訓練を受けることも可能だ。

 

VRによる定型的訓練の導入時期は不明だが、開発は着実に進んでいる。

 

この考えは整備士のエンジン点検にも応用できる。整備士はエンジン始動、地上走行、エンジンの静止テストの資格取得が前提だ。マニングによればこの発想はエールフランスインダストリーズが出したもので、エアバスがA320に応用しており、まもなくA350にも適用する。

 

年間420億ドルが非効率な業務のため無駄になっているというのがエアバスによる2019年グローバルマーケット予測の内容だ。デジタル化がこの解決となり、100億ドルの節減が可能となる。そのうち30億ドルが燃料消費の改善で、エアバスの「descent profile optimization」コックピット改良がこの助けとなる。

 

Skywiseデータ共有分析プラットフォームがエアバスの目指すデジタルトランスフォーメーションの柱だ。各国のエアライン140社がSkywiseの基本合意に賛同し、1万機が接続されている。(ラウビー)データ共有が増えれば、分析の質が高まる。当然データの匿名化が前提だ。

 

エアラインあるいはMROサービス提供企業や部品サプライヤー企業は参加レベルを選択できる。レベル2以上で予知保全が可能となる。

 

レベル3からエアラインの情報技術システムで「パートナー企業」認証が使えるようになる。Skywiseでは各社にあわせたサービスが提供される。その他にSkywiseアプリケーションストアがある。ICAOの国際航空運輸カーボンオフセット削減スキーム(Corsia)アプリでエアラインはCO2排出報告に仮想ツールが利用可能となる。

 

MROでは想定外の発生があるが、エアバスはデルタエアラインズとデジタルアライアンスを二年前に立ち上げ、ここにきてGEデジタルも巻き込んでいる。計画外の整備を一掃するのが狙いだ。

 

このスキームではエアバス以外の機体も対象とする。各社が開発するデジタルソリューション、分析技術、予測モデルを統合するのがねらいだ。「失敗モデルをこれまでより迅速かつ多彩に対象にできる」とラウビーは述べる。エアバス以外の機体の分析はデルタとGEデジタルから提供され、予知保全ソリューション統合が可能となる。デルタは今年末に同システム利用を開始する。■


Airbus Covets Central Role In Services

Thierry Dubois October 19, 2021

https://aviationweek.com/aerospace/airbus-covets-central-role-services


2021年10月17日日曜日

787納入部品にボーイング基準不適合部品が見つかる。イタリア下請け企業の品質問題。レオナルドが納入しており、エアバスにも波及する可能性。

  

 

Boeing 787 Charleston facilityBoeing 787 Charleston facility

Credit: Sean Broderick/AWST

 

ボーイング787向けに下部協力企業が製造しレオナルド経由で納品されたチタン製部品がボーイング設計基準に適合せず、再加工が必要となっている。ボーイングが10月14日に発表した。

 

問題の部品は床面のビームとフレイムをつなぐ部分、ブラケット、クリップ等で、内部に詳しい筋がAviationweekに明らかにしてくれた。すべてイタリアのManufacturing Processes Specification S.r.l. (MPS)社が製造しており、レオナルドの契約企業だ。レオナルドは787中央部セクション44、46のほか水平安定板部品を担当する。問題はレオナルドが見つけ、ボーイングに通報してきた。

 

「サプライヤーから連絡を受け、787部品の製造が正しくないと知らされた」とボーイングは発表、「社内調査を続け、稼働中の機材の運行上で今直ちに安全の障害となることはないと判明した。今後納入する機体では引渡し前に再加工を行う。運用中の機材の処置については社内審査手続きおよびFAAと確認の上可否を決定する」

 

レオナルドも問題を認識し、MPSとの契約を解消した。

 

「レオナルドからは問題はMPS社が原因であると連絡が入った。同社はボーイングが協力企業として認定したものである」「同社には検察が捜査を入れている。レオナルドが損害を受けた形で、今回の事態で発生する損害費用の責は負わない」

 

現時点でMPSが他社にも不適合部品を供給していたかは明らかではない。エアバスに問い合わせをしたが、まだ回答がない。■

 


Non-Conforming 787 Titanium Parts Flagged By Leonardo

Sean Broderick October 14, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/non-conforming-787-titanium-parts-flagged-leonardo

 


2021年10月11日月曜日

米軍支援に動員される予備航空輸送隊民間エアライン機の活動範囲が変わる。米軍の中東からの活動軸足変更に伴う変化か。

 

アフガニスタンを脱出した人々がドイツのラムスタイン航空基地に民間予備航空輸送隊として投入されたデルタ航空機材で到着した。Aug. 30, 2021.U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Donald Darnec

 

国の軍事活動支援に民間エアライン企業が協力してきたが、今後は送り込まれる範囲で変更が生まれそうだ。米輸送司令部が10月7日に報道陣に変更の可能性を示した。

 

民間予備航空輸送隊(CRAF)とは米エアライン機材を契約ベースで国防総省が利用する事業で、軍用輸送機では足りなくなる事態に民間機を借り上げる仕組みだ。2021年8月時点でエアライン24社の450機がCRAFに登録されている。(米空軍調べ)

 

 Civil Reserve Air Fleet

 

ただ、米国の脅威環境の重点が中東から離れつつあり、米輸送司令部のコーリー・マーティン少将は軍が民間機を送り込む対象地も変わると述べている。

 

「脅威の強さが場所により変わるので軍民関係にも変化がついてくる。民間エアライン機材を派遣する仕向け地も変わる」

 

 マーティン少将はCRAFは低脅威度地区に投入されることに変わりはないと強調している。民間機材を投入する場所の決定では該当地が米本土からどれだけ遠いのか、また軍用機並みの防御装備がない民間機で輸送効果がどこで活用できるかを検討して決まるとした。

 

同少将は最終決定にはエアライン各社も関与するとし、各社は安全が確保できないと判断すれば決定を拒否する余地が認められているという。

 

今年8月、CRAFが発動され、国務省による米市民や高リスク住民をアフガニスタンからの脱出作戦を支援した。マーティン少将は軍民の強固な関係の延長線で実施できたと称賛している。同作戦では民間協力企業が18機を提供し米輸送本部のカブール空港からの人員搬送を支援した。■

Changing Threats Could Alter Civilian Aircraft Operations

10/7/2021

By Mikayla Easley


記事はどこが変わるのか明示していませんが、アジア太平洋をにらんだ文脈であることは明らかですね。

お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。