2021年11月7日日曜日

NASAが2040年までにらんだ次世代の環境にやさしい航空機構想に積極的に展開中。今後登場するXプレーン各機に期待。

 

NASAが2040年代以降を目指すコンセプト研究では単通路ターボエレクトリックと層界制御機能を搭載する機体を想定している。

Credit: NASA

 

NASAは将来のエアライナー用に実質で環境負荷ゼロをめざす新技術構想をうちだす。

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2040年以降の路線就航(EIS)を視野に入れたターゲットコンセプトは形成段階で、業界向けに提案書を出す準備に取り掛かっており、超効率を誇るXプレーンとして持続可能なエアライナー技術の実証を2020年代後半に開始したいとする。

 

「業界とは話を始めており、情報開示を今年度末に行いたい」と高性能航空輸送技術(AATT)を取りまとめるNASAグレン研究センター(クリーヴランド)のジム・ハイドマンが述べている。「提案要求は2023年度の予定で、2040年代の機体の技術要素に何が必要か、ゼロカーボン排出なのかゼロ環境負荷なのかを見極めたい」としている。

 

長期構想では単なる持続可能飛行実証機(SFD)のXプレーン(初飛行を2026年に想定)をさらに進め、中核機体技術の成熟化を図り2035年までに就航する単通路機の実現をめざす。XプレーンはNASAの持続可能航空技術国家パートナーシップ(SFNP)構想として他省庁、業界、学界横断の亜音速輸送機研究を開始した2000年代中ごろの研究が源だ。

 

新構想研究ではNASAの亜音速固定翼(SFW)プロジェクトが2005年から2020年まで展開しており、この成果を利用する。N+と通称がつくコンセプトにより騒音、排気ガス、燃料消費で画期的な技術革新を並行して進めた。このうち登場時期を早期に想定したN+1研究は通常のチュープ+主翼形状のエアライナーに2015年時点ですぐ応用できる技術を採用するコンセプトとした。

 

N+2では目標を2020年代中の就航とし、GE90搭載のボーイング777を比較対象とした。騒音ではステージ4以下で-42 dBとし、離着陸時のNOx排出量はCAEP6上限から75%減にし、燃料消費は40%減にした。さらに大胆な目標を設定したのがN+3で2030年代中の路線就航を想定した高性能エアライナーだ。

 

AATTプロジェクトになったSFWは環境責任を果たす航空技術(ERA)から生まれたもので、2010年にN+2の路線就航に合わせ統合実証機能を想定した。ERAでは実力のある企業や研究者に厳しい要求の騒音、排出、燃料消費の目標を同時並行で与えるもので、これまでは最終排出目標を優先して他の要素を犠牲にした以前のプロジェクトと異なる。

N+4の実現がNASAの長期亜音速コンセプトの目標だ。ここにERAが2009年から15年にかけ加わっていた。写真は構想モデルのひとつ。Credit: NASA

 

「N+4は2040年以降のEISを想定したコンセプト研究事業です」「燃料消費を抑えるだけの目標ではなく、より大きな姿を想定しています」とハイドマンは述べており、新発想の機体、推進方法、システム構想として水素他の持続可能な航空燃料も想定する。「義務化されているわけではありませんが、さらに上を行く環境目標の実現で必要となります」

 

2040年以降の路線就航を想定するコンセプト研究では「全く別の動きの舞台を用意する」とハイドマンは述べており、SFW/AATTならびにERAの研究が最新のXプレーンに道を開いたと説明した。「さらにもう一度実施します。良好なモデルです」とした。

 

現時点で具体的な性能や排出量削減効果の目標は公開されていないが、ハイドマンによればNASAの戦略実施案(SIP)が亜音速輸送機の2040年時点の目標を設定しているという。例としてステージ4では騒音合計で52dBの削減、離着陸時のNOx排出はCAEP 6より80%以上の削減、巡航時のNOx排出は2005年時点の最優秀機材より80%以上削減し、燃料/エナジー消費も2005年標準の80%以上削減とする。

 

「これについて業界に必要とされる内容を求めていきたい。単純に要求内容に従うことはしたくない」とし、「2040年代に必要となる内容を吟味し、業界からニーズ対応の工程表に必要な情報をいただきたい。業界全体の対応方針が決まれば各社別の工程表ができます」とハイドマンは述べている。

 

この方法により出力、燃料、維新系の技術を統合しコンセプト研究に盛り込む。「水素やその他技術で突破口となる要素が生まれるでしょう。バッテリーの大幅性能向上もそのひとつです」「そうなるとカーボン排出量や環境負荷の大幅な削減に向け利用可能な技術への対応準備が必要ですね」

 

ボーイングは持続可能機としてのXプレーン構想をTTBWとしてNASAに提案し、2026年までに飛行開始となるとしている。Credit: Boeing

 

水素燃料他電力系の技術は2040年代でも研究対象の想定だが、NASAはこの分野での研究アプローチを定めていない。「関心は特にヨーロッパで高いのですが、こちらはどの手段が有望なのか評価中というのが現状で、エアバスの各種コンセプトを参考にしています」「NASAでは宇宙分野で低温技術の利用を図っていますが、当方でも関心があり応用できそうな分野があります。水素では社会インフラの問題もありますね。今後こうした課題に取り組んでいきます」(ハイドマン)

 

研究では電動化やハイブリッドコンセプトの大型機応用もあり、SFDのXプレーン構想ではらせん状に進化する技術要素も対象にしている。ハイドマンは「とはいえ大型機は難易度が高いです」「現時点は単通路機に注力していますが、次は機体サイズについてオープンに検討しなおします」「大型機になるのか、小型機になるのか。市場動向が決めることです。そのため機体については柔軟な態度をとっています」とした。

 

次のN+4研究ではNASAの大学リーダシップ事業で研究資金を受けている米国内大学数校の研究者で専用研究チームを構成し、NASAの研究内容を補完する研究課題を設定する。

 

新規研究ではNASAで評価済みのさらに未来的な技術各種も再検討対象とする。NASAはボーイング他とSFWのN+3先端コンセプト研究を2008年にさかのぼり実施している。その一部として多機能軽量機体構造、電動高茎推進システム各種のほか高アスペクト比の遷音速トラスブレイスウィング(TTBW)コンセプトがあり、これはボーイングと共同研究した。ボーイングは同技術を応用した構想をXプレーン契約で提案するとみられる。

 

ボーイングはN+4技術の検討を2011年にNASA共同研究の遷音速超軽量グリーン航空機研究(SUGAR)として行った。その際の研究対象として2040年代のエアライナー設計に高度空気力学推進技術を取り入れるとしていた。さらに液化天然ガス、水素、燃料電池、バッテリー方式の電気ハイブリッド、低出力原子力、層面桐生制御、アンダクテッドファン他高性能プロペラ技術も含む。

 

SFD研究は2026年の初飛行のあと6カ月継続し、2027年に終了するとNASAは発表しており、SFDの地上テスト飛行テストのデータを活用し、採用事業者の性能水準をNASAが定めた中期性能目標に照らし合わせ評価する。これはNASAが2025-35年に登場する亜音速機の性能目標として定めたものだ。

 

それによれば技術登場レベルを5から6、つまり生産開発に移る準備ができた状態)として機体は騒音でステージ4より32から42dB下にするとある。その他NOx排出量、h燃料消費効率はSIP目標に準拠する。

 

NASAはボーイングの高効率TTBW構想の詳細検討を行う準備もできており、SFNPの目標に照らしあわせるとしているが、持続可能技術の実証機の仕様は業界からの提案書に左右されるとしている。SFNPではNASAも高出力ハイブリッド電気推進システムの大型輸送機応用を実証するとしており、複合材機体構造を現行より4-6倍早く製造し、小型コアのタービンエンジンに高温効率を盛り込む。Xプレーンがこうした技術の効果を実証する。

 

2040年以降の機体コンセプトと持続可能飛行実証機はともにNASAが新推進技術や超音速技術の飛行テスト実施を加速化する中で出てきた構想だ。持続可能Xプレーン構想とともにNASAは業界チームと電動パワートレイン飛行実証事業に取り組んでおり、2022年からX-59低ソニックブーム超音速飛行実証機ならびにX-57分散電動推進技術実証機の飛行を開始する。■

 

NASA Reveals Study Plan For 2040 Eco-Airliner

https://aviationweek.com/aerospace/emerging-technologies/nasa-reveals-study-plan-2040-eco-airliner

Guy Norris October 25, 2021

Guy Norris

Guy is a Senior Editor for Aviation Week, covering technology and propulsion. He is based in Colorado Springs.


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