2021年12月10日金曜日

737の貨物機改装を急ピッチで進めるボーイングは中国等に改装ラインを多数確保している。需要規模は大きいとの計算から。

 Aviation Week の記事からです。

737といえば手ごろな貨物機というイメージが今後定着するのでしょうか。それまでにボーイングは新型機を市場に導入できるでしょうか。それにしても737-800はまだまだ第一線で活躍中の機体だと思っていましたが。

 

STAECO はボーイング737-800BCF改装ライン7本を整備する。

Credit: Boeing

 

空貨物輸送の需要がいまだかつてない規模に拡大しつつあり、ボーイング山东太古飞机工程有限公司Taikoo (Shandong) Aircraft Engineering (STAECO)と737-800を貨物型へ改装するボーイング貨物機転換Boeing Converted Freighter (BCF) 専用ラインを二基増設する。

両社の合意内容が12月7日北京で発表されたのは中国民間航空局が 737 MAX の耐空証明を発行し、2018年から19に年にかけ発生した人身事故を受けて運行停止措置となっていた。同型機の運行再開が可能となった直後のことだ。

今回の追加ラインは2022年にSTAECOの山東省斎南市に完成し、うちひとつは2022年第一四半期、のこるひとつも同年中ごろに稼働開始する。すべてそろうとSTAECOには合計7ラインを稼働し、737-800BCFへの改装が実現するとボーイングが発表した。

中国のライン増設発表に先立ち、ボーイングはその他の拠点でも737-800BCF改装能力の増強を公表しており、広州の广州飞机维修工程有限公司Guangzhou Aircraft Maintenance Engineering Company (GAMECO)以外にコスタリカのCooperativa Autogestionaria de Servicios Aeroindustrialesが新しく加わり、カナダのKFエアロスペースKF Aerospaceとボーイング自身のロンドン・ガトウィック空港の整備補修施設に加わる。

ボーイングはこれから20年で合計1,720機が旅客型から貨物型へ改装されるとみており、うち1,200機は標準的な機体改装を受けると予測。アジアの需要が全体の4割を占めるとボーイングは試算している。■

 

Boeing Adds 737 Freighter Conversion Lines With China’s STAECO To Meet Cargo Boom

Guy Norris December 07, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/boeing-adds-737-freighter-conversion-lines-chinas-staeco-meet


2021年12月6日月曜日

予知保全で機体整備費用が大幅に下がる可能性。日本航空、ZIPAIRが利用するSTエンジニアリングの技術サービス。

  

 

ローバル展開するMRO企業の新規契約獲得に予知保全技術が必須になってきた。その中でSTエンジニアリングST EngineeringルフトハンザテクニクAFI-KLM E&Mと並び、部品の作動状況に異常を見つけ残る作動時間を予測し整備上の判断を助けるサービスを開始した。

 

同社は新サービスをコンポネント健康状態管理Component Health Managementと呼び、時間制整備maintenance-by the-hour (MBH)の5年契約を2021年9月より開始し、日本航空及び同社LCC子会社のZIPAIR Tokyoボーイング787全機を対象に統合コンポネントサポートを提供している。 STエンジニアリングは日本航空の737-800でも同様のMBH契約を以前から成約させている。

 

今回のJAL/ZIPAIR向け契約ではコンポネント検討管理を初めて応用する。同社広報は「その他2社とも予知技術を応用したコンポネント健康信頼性管理で契約ができている」とした。

 

同社はコンポネント健康管理の開発を2019年に解

開始し現在も個別分野で開発を進めている。「分析モデルの精度は向上しており、データ収集が進むことでより多くのお客様ユーザーが利用に関心を示している」(同社広報)

 

コンポネント健康管理はSTエンジニアリングが社内開発したもので、市販ソフトやツールを利用し、C#をプログラミング言語とし、マイクロソフトアジュールのSQL、UiPath(手順の自動化用)、やパイソンの公開ライブラリーにあるコードも多数利用した。またTableau Softwareも利用してユーザーは予知内容に加え背後にあるデータパターンも確認できる。

 

開発陣はエアライン顧客のほか、社内専門家と密接に作業し航空機技術、データ分析技術、信頼性工学やサプライチェーン管理まで取り込んだ。

 

予知保全の実施で鍵となるはコンポネントの故障データと関連するセンサーのデータだ。STエンジニアリングでは顧客と連携して故障データ・センサーデータが利用できるコンポネントを選択し、さらに運航に支障を与える程度が大きいコンポネントに絞り込んだ。コンポネント健康管理の対象部品は機種により異なる。健康管理は統合ドライブジェネレーター、表皮のエアバルブ、エアタービンのスターター、その他バルブやエンジンんで作動する油圧ポンプを対象としている。

 

STエンジニアリング広報は対象部品で鍵となるデータは関連センサーから入手し、不良記録、整備中に見つかった問題点レポート、突発交換の平均期間、故障平均時間その他信頼性関連データを利用していると説明。

 

同社によればコンポネント健康管理により不良による遅延や運航取り消しが減り、収益を逃すことがなくなるという。さらに突発の交換整備を定期整備に切り替えるて整備コストを最終的に60%削れるという。

 

STエンジニアリングにとって今回の契約成立は出発点に過ぎない。「対象機種を増やし、顧客層を広げる予定です。参加企業が増えれば解析対象のコンポネントが多様になります」「利用事例が増えれば当社サービスは堅実かつ成熟し、かつMRO業務の貴重な知見を有効活用できます」

 

長期的にはSTエンジニアリングは今回の予知モデルをエンジンサポート事業に応用したいとする。■

 

 

ST Engineering Launches Predictive Maintenance Tool With Japanese Airlines

Henry Canaday December 01, 2021


2021年12月4日土曜日

737MAX運航再開へ一歩近づく。中国CAACがAD発行。ただし、中国、欧州の考えとFAAの見解で一部相違がみられる中、ボーイングは22年からの月産31機体制実現に期待。

  

 

Credit: Boeing

 

国民用航空局Civil Aviation Administration of China (CAAC)がボーイング737 MAXの運行再開につながる機体特定型の耐空証明(AD)を発出した。基本的に米航空規制当局、ヨーロッパ、カナダの規制部門と並んだ。

 

改修を求めているのは飛行制御コンピュータとエイビオニクス表示画面で、あわせて水平安定板のトリムワイヤーの改修もボーイングが行った737 MAXの全般的点検で規制基準に合わせる必要が見つかっていた。

 

CAACではヨーロッパ連合航空安全庁、カナダ運輸省が認めた失速警告を与える操縦桿振動機能を切るためサーキットブレイカーの操作を許容する選択肢を加えた。CAACのフライトマニュアル追補にこの指令が入っており、手順詳細として緊急時対応として注意力を分散すると判断すれば切ることを同局は容認している。ただし、FAAはこの手順を認めておらず、737 MAX向け運用ではパイロットがブレイカーを切るリスクのほうが大きいことを理由としている。

 

CAACが求める運航再開条件リストには関連するサーキットブレイカーにカラーキャップをつけてパイロットが簡単に識別できるようにするとあり、手順改訂を反映している。

 

「十分な評価作業を経てCAACは修正作業で安全上体を確保できると思料した」とADにある。

 

指令内容には失速警報関連の手順が入っているが、基本となるパイロット養成の必要内容に触れていない。その他の規制当局の姿勢を反映するものと思われ、737 MAX専用のシミュレーターによる訓練とともにコンピュータで再現した座学をパイロット全員に求めるはずだ。

 

機体の改修とパイロット訓練には数週間がかかると見られ、CAACの12月2日付け発令では運航再開日程には触れていない。

 

中国は2019年3月のエチオピア航空302便事故を受けてまっさきに737 MAX運航を停止させていた。世界各地で合計385機が地上待機とされてきた。CAACは運航再開の条件として三つを上げている。設計変更が耐空検査に合格すること、パイロットが適切な訓練を受けること、二回の墜落事故原因が解明され、改修により適切に対応されること。ボーイングはMax 7の一機を8月にシアトルから上海に飛ばし、一週間にわたる中国規制当局向け実証を展開していた。パイロット訓練の必要内容が公表されれば中国での規制が解け、エアライン各社が改修とパイロット訓練を行えば、世界第二位の規模となっている中国航空マーケットでの運行再開が実現する。

 

ボーイングは声明を発表し、CAACが737 MAXの中国国内での運航再開に重要な一歩を示したとし、今後も規制当局と協力の上、各顧客が世界各地で同型機の運行再開に向かうべく作業を続ける、とした。

 

中国が737 MAXの引き渡し再開を容認したことでボーイングが目論む737が目論む月産31機を2022年早々の実現に大きなはずみがついた。Aviation Week Intelligence Network Fleet and Data Servicesによれば中国各社のAの737MAXファミリー発注は444機に上り、さらに97機が現在飛行停止措置に入っている。■

 

China Green-Lights Boeing 737 MAX Modifications

Chen Chuanren Sean Broderick December 02, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/safety-ops-regulation/china-green-lights-boeing-737-max-modifications


2021年12月3日金曜日

Aviation Weekの主張 オミクロンの出現でエアラインが根拠のない政府規制の対象となっているが本末転倒ではないか。

  

ダレス国際空港を出発するフライトクルー。米国は南部アフリカ路線の乗り入れを禁止した。ただし、米国永住権を持つ利用客はこの対象ではない。Credit: Photo by Jim WATSON/AFP via Getty Images


 

新のCOVID-19変異種でひとつだけ朗報がある。エアラインを想起させる名称になっていないことだ。

 

オミクロンと命名され、デルタ他の変異種とは異なるようだが、人間社会の対応ぶりにこれまでと大きな差はない。パニックとなり国境を閉鎖し、航空路線を止めた。これまで23カ月に及ぶパンデミックからの学習効果はないようだ。

 

世界各国がオミクロン発生地といわれる南アフリカからの渡航を急いで停止、あるいはやっとはじまったばかりの渡航制限解除を中止している。

 

航空移動の制限でCOVID流行を止めようとする政府の動きはデータや科学的根拠に基づいていない。いかにも政府が「何かしている」印象を与えるための気休めであり、目に見える形のメカニズムに過ぎない。

 

一番効果のあるウィルス対策にもっと厳しい政治判断が必要だ。欧米のワクチン接種率は今年に失速気味になっている。各国政府はワクチン接種の効果を国民に説得できず、デルタ変異種が出現し死亡例がワクチン未接種層に急増してもこのありさまだ。

 

ヨーロッパでマスク着用義務化、ソーシャルディスタンス、夜間外出制限が再度登場する動きがでるや街頭デモが狂暴化した。ワクチンに手が届かない途上国向けの支援に各国政府が及び腰なのは自国内に反発の動きが広がるのを恐れてのことだ。

 

南部アフリカ諸国路線を閉鎖する急な動きにより利用客に混乱が生じている。だがそれにとどまらずその他各国にも科学的データに基づかない措置がメッセージとして伝わってしまった。

 

ワクチン接種と検査こそ航空移動での伝染を食い止める最も効果的な手段であり、経済活動を維持し、利用者は希望通りに移動できる。ワクチンと検査はパンデミック出現後に驚くべき短期間で利用可能となったが、その効果が高いことは科学的に証明済みだ。グローバル規模の医療危機に呼応するグローバル規模の解答となる。航空移動の禁止では対応とならない。

 

 だが各国政府はグローバルどころか地域単位のモグラたたきの解決に走っており、航空便利用者が不必要な標的にされているのである。■

 

EDITORIAL: Air travel isn't the virus problem

Karen Walker November 29, 2021

Karen Walker

Karen Walker is Air Transport World Editor-in-Chief and Aviation Week Network Group Air Transport Editor-in-Chief. She joined ATW in 2011 and oversees the editorial content and direction of ATW, Routes and Aviation Week Group air transport content.


2021年11月23日火曜日

737MAX:悲惨な事故二例のもととなったAOA迎角誤表示問題の解決のためボーイングはフライトテストを継続中。ストレッチ型737-10から順次新型センサー構成に切り替え。

 時間がかかりましたが、貴重な犠牲のもとにより安全な運航が実現すれば、

進歩となります。ボーイングにはあと一歩頑張ってもらいたいところです。

 

Enhanced angle-of-attack system tests will take place on a Boeing 737-10 in 2022.

Credit: Boeing

 

ーイングは ストレッチ型737-10で迎角 (AOA) 増大システムを搭載した 737 MAXのフライトテストを2022年に開始する。

 

737-8墜落事故でAOAデータの誤りが見つかり、MAXの運航は2019年3月から停止された。2020年末に運航再開が認められたものの、既存機のAOAシステム改修並びに長期にわたる性能改修作業の実施が条件だ。

 

墜落事故二件は機体制御機能増強システム(MCAS)のソフトウェアに原因があったとされ、MCASの作動にはAOAデータが元となり、MAXも先に出た737NGと同様の機体操縦性の実現が目的だった。

 

墜落事件のうちライオンエア610便が2018年10月、エチオピア航空302便が2019年3月ともにMCASがAOAデータをもとに離陸後から機首が上を向きすぎていると伝えていた。両機のパイロットはボーイングが想定していた緊急時対応通りの行動をせず、ともに機体は制御不可能な急降下に陥り墜落した。MCASが繰り返し作動したことが引き金となった。

 

FAAが求めた変更要求でボーイングはMCASではAOAデータをセンサー二基から得て比較対照させることとし、かつ差が5.5度以内となってから機首下げスタビライザーの入力が可能となるようにした。欧州連合航空安全局(EASA)は三基目のセンサー搭載を主張して、さらなるデータ補正効果を期待したが、その後、ボーイングが「合成」センサーAOAデータを別手段で実現すると述べたため、主張を取り下げた。

 

「モニターを増設し、AOAの誤データを早期発見できるようにし、スイッチ操作も可能とします」とマイク・フレミング Mike Fleming上席副社長(民生顧客サポート・民間派生型事業担当)が737 MAX運航再開に際し語っていた。「追加搭載したモニター全部が仮にAOAデータを誤表示したとしても、失速警報器が失速が近いことを教えてくれるのでパイロットはスイッチをオフにできます」

 

改装後のシステムではデータが正しいのか誤っているのかの判断につながるパラメータ5種類を見守る設計だと部レミングはドバイ航空ショー会場で説明し、ボーイングの進展ぶりを紹介した。「データが誤りとわかれば、その部分を使わず、問題は起こりません」

 

改良後のシステムは737-10で2022年にフライトテストする。また完成済みのMAXにもストレッチ型の型式証明が2023年に交付され次第、後付け装着する。基本形となる737-10のフライトテストは6月18日初飛行の後に開始されており、今のところ順調に進んでいるとフレミングは紹介。テスト用3号機は客室内のシステム類を主眼とし、完成済み2機に加わるという。

 

ボーイングは機体短縮型の737-7でもフライトテストを完了しており、「FAAによる新規型式証明に必要な書類作成を完了しており、当社としては準備が整ったが、判断するのは規制当局の側であり、さらなる情報開示を求めらえる場合もある。当社としては型式証明取得と機体引き渡しを2022年という当初予定どおり実現したいと考えています」と語った。■

 

Enhanced Angle-Of-Attack System Set For 737-10 Flight Tests

Guy Norris November 18, 2021

https://aviationweek.com/shownews/dubai-airshow/enhanced-angle-attack-system-set-737-10-flight-tests


2021年11月20日土曜日

ドバイ航空ショーの注目は貨物機新世代型。A350Fが初受注獲得した一方、ボーイングはまだ明確な姿を打ち出せない。一方、777-9型式証明は遅れたままだ。

  

A350Fはボーイングの人気機種777Fとまともに競合するサイズになった。Credit: Airbus concept

 

物機が高価格体の旅客型より注目されるとはまれなことだが、ワイドボディ機市場はパンデミックで一変しており、COVID-19発生後初の大規模航空ショーとなったドバイで新規貨物型の開発案件がを見出しを飾っている。

 

 

双通路機の新規発注が事実上停止している中で貨物部門は記録的な高需要を集めており、エアバスボーイング両社の新世代大型貨物機へ関心が集まっている。需要面の変化を反映した新型機構想がドバイ航空ショーに展示されており、エアバスはさっそく新規案件のA350Fへ初受注を集めた一方、ボーイングも777Xの貨物型で追いつこうとしている。

 

  • Air Lease Corp. がA350F発注に踏み切った

  • 777XFは777-8原型に方向転換

A350Fの初受注はエアリースCorp(ALC)によるもので、エアバス機各型109機の一斉発注の一部として7機受注に成功した。ALCはA220-300(23機)、A321neo(55機)、A321-XLR(20機)、A330-900(4機)も合わせて発注した。このうちA350FはALCで初導入となるが、ALCの執行会長スティーヴン・アドヴァーヘイジーは新型貨物型の需要が高いとし、この型式の機材にも手を広げることにしたと述べている。

 

A350FはA350-1000が原型で機体はフレーム5個分短縮したが、それでもA350-900より長く、ボーイングの777F(777-200LR派生型)に競合する。エアバスが発表した新情報ではA350Fの最大ペイロードを240,300ポンドで飛行距離を4,700nmとある。さらに急送便仕様では貨物209,400 lb、6,000nmになる。

 

ただし、A350Fが明確な姿を発表した一方で、ボーイング777XFはあいまいなままだ。少なくとも社外に対しては。ドバイショー前は、777XFは777-8と777-9の中間サイズになるとの観測があったが、同社は777-8旅客型の派生機種にするようだ。この変更は各社にヒアリングしてみたところ大キャパシティの777-8のほうが貨物機として最適サイズとの意見が多いと判明したためだ。

 

大型の777-8を原型とする方針は製造コストの観点では意味があるが、同時に短い方の777X二型式への関心も高める効果もある。777-8は全長229 ft.、777-9は252 ft.になるが、機体長はこれまでの想定より長くなり、最大離陸重量(MTOW)もこれまでの775,000 lb、788,000 lb想定より増え、777XFではさらに大きなキャパシティが実現しそうだ。業界筋にはMTOWは805,000 lbが目標との声もあり、現行の777Fの766,800lbより増えるという。

 

「実機製造まではスペックに縛られたくない」とボーイングの製品マーケティング担当重役トム・サンダーソンが述べている。「貨物型での課題はペイロードと容積のバランスに尽きる。高密度路線では高付加価値になりそうだが、長距離貨物便では重量が重宝がられる。この場合は機体全長はそこまで問題にならない。その前に機体重量の限界が立ちふさがるから」

 

さらにサンダーソンはeコマース市場の成長で逆に低密度貨物輸送がカギになると述べている。「貨物容積がもっと重要になります。またこの方向で業績が伸びます。現在はこうした検討を行っており、双方の間のどこかで合理的な結論を出したいです」

 

とはいえ、カタールを除けば777-8を発注している唯一のエアライン、エミレイツからボーイングが777XFと777-8の機体長を共通化して当初より大型化する動きに懸念の声が出ている。エミレイツ社長ティム・クラークは「これは問題になる。-9に近いサイズの別の機体をだれが買うのか」と一石を投じている。

 

エミレイツは777Xを2013年に大量発注し、777-9(115機)、777-8(35機)を導入するとしたが、ボーイングから777-9型式証明取得が2023年7月目標と聞かされ、エミレイツは777-8発注をこのまま続けることに疑問を感じ、16機に下方修正し、かわりに787-9を30機導入することにした。

 

エミレイツが777-8発注をゼロにした場合、同型の将来は一気に不安定になる。同社の姿勢が一気に消えれば、ボーイングに残るのはカタールエアウェイズの10機のみとなり、エミレイツの動きからカタールも何らかの対応を示してもおかしくない。

 

他方でエミレイツは機材構成を再考中で、「777Xの納入遅れ三年の影響は大きい。各機の路線就航開始日に合わせすべて計画している」とクラークは述べており、777-9の就航が一年遅れる場合も考慮している。クラークはしっかりした予定表を早期に示すようボーイングに求めたという。他方で「座して待っているわけにはいかない」とも述べている。

 

ボーイングは777-9では規制当局から要求された飛行制御系の変更が未搭載だが、あと2年間あれば型式証明取得できると自信たっぷりで、2023年第四四半期に引き渡し開始できるとボーイングは見ている。

 

エミレイツの見方より保守的な見通しで777-9初飛行(ボーイングは2020年1月)から数えて44カ月の2023年10月に型式証明が下りるとみている。

 

ただし、実際の型式証明取得のタイミングは規制当局次第だ。四機ある試験機のひとつがドバイで展示されており、各機合計で1700時間のフライトテストを実施している。最終的に3,500時間程度のフライトテストになる見込みだ。ボーイングは2023年中の型式証明取得と引き渡し開始の見込みを堅持している。■

 

New-Generation Large Freighters Form Focus At Dubai Airshow

https://aviationweek.com/shownews/dubai-airshow/new-generation-large-freighters-form-focus-dubai-airshow


Guy Norris Jens Flottau November 19, 2021


2021年11月18日木曜日

オットーエイビエーションのセレラ500Lが空の世界に革命を巻き起こす? 2025年量産開始を狙う同機は低コスト運用で排出量も格段に低い画期的な性能をめざす。

 


  • ターミナル1、2共通記事です。これだけの画期的な性能がピストンエンジン一基で実現するのなら本当に革命的です。米国民のエアライン、空港への不満ぶりは相当のようで、手が届く料金なら各地へ直行するエアタクシーになるのではないでしょうか。軍用となると連絡機、それとも特殊作戦の移動用でしょうか。

Otto Aviation's prototype Celera 500L aircraft.OTTO AVIATION

 

 

ットーエイビエーションOtto Aviationはセレラ500Lのフライトテストで野心的な目標達成のめどがついたとする。

オットーエイビエーションによればセレラ500Lのフライトテスト第一段階が完了し、革命的といえるほどの高性能を発揮したという。同機は昨年発表されていた。試作機は計51時間のフライトを実施し、時速250マイル、高度15千フィートを記録したという。

同機は涙滴型形状、推進式プロペラ構造が特徴的で、2017年にカリフォーニア州ヴィクターヴィル空港で同機の姿が流出して以来注目されてきた。

「テストフライト第一段階で得たデータから目指す性能達成に向け順調に向かっていることがわかる」とオットーエイビエーションCEOウィリアム・オットーJrが声明文を発表した。「2025年の量産機製造目標に近づいており、これ以上の興奮はない。次のフライト段階では飛行高度、速度を上げていく」

オットーはセレラ500Lの設計の特徴である涙滴型の「層流」を最適化した形状、長い主翼、高効率複数燃料使用エンジンはすべて革命的な低コスト航空移動の実現にむけたものとする。同機ウェブサイトでは「エアタクシーモデル」を提唱している。

OTTO AVIATION CAPTURE

 

「フライトテストでは層流の状況をチェイス機の赤外線カメラで記録したが、機体表面の空気の流れの制御機能を確認できた。主翼と機体上の層流はしっかりしており、追加テストデータを得られたので、生産仕様機の実現に役立てる」

なお同機にはレイフリンエアクラフトエンジンディベロップメント(RED)のA03V12ピストンエンジンが搭載される。

「フライトでは高度15千フィートで250mph超の速力に達し、めざすのは50千フィート、460mphだ」と同社発表にある。これまで同社は最低でも4,500マイルの航続距離、航空燃料ガロンあたり18から25マイル、飛行時間コスト目標を328ドルと現在飛行中のターボプロップ機やビジネスジェットの数分の一の水準にしたいとしてきた。

OTTO AVIATION

セレラ500Lと同サイズのビジネスジェットを比較している

 

「これまでの航空機の世界は0.5%の改良をあちこちに加えてきたようなものだ」とオットーエイビエーションの最高技術責任者デイヴィッド・ボーグが今年はじめ Air & Space Magazine に語っていた。ボーグはボーイングで737-700の実現に尽力した人物だ。「だがこの機体では400%の改良をねらう。まさしく驚異的な結果となる」

効率化を狙った革命的な性能ながら利用者にやさしい機体にするのがねらいだ。「フライトテスト結果を見るとセレラ500Lは同サイズの機体より排出量を80%減らせることが分かった」(同社による2020年12月報道資料)

OTTO AVIATION

 

セレラ500Lは試作機だが、オットーエイビエーションでは大型のセレラ1000Lの企画を進めており、貨物機並びに軍用機への発展を話題にしている。同社ウェブサイトでは無人型やハイブリッド電動機の構想も紹介している。

同社は今もセレラ500Lの量産型を実現することを最初に目指しており、小型ターボプロップ旅客機やビジネスジェットの代替需要を狙う。

OTTO AVIATION

セレラ500L量産型の想像図.

OTTO AVIATION

量産型セレラ500Lの客室内はビジネスジェット並みになる。

「キャビン高は6'2"(188センチ) あり、機内をそのまま歩ける。ラバトリーもつける。中型ビジネスジェットと全く同じレベルになる」とオットーはCNNで語っている。機体外観は「ガルフストリームに慣れた企業幹部の目には魅力的に映らないかもしれないが、エアラインでの移動で空港や保安検査で列を作り延々と待たされるのに閉口している人は多い」

オットーエイビエーションがここまで野心的な目標を達成できるか注目される。同社の目標の実現は不可能ではないもの難易度が高いと見る専門家もいる。

実現できれば、セレラ500Lさらにその後続く後継モデル各機は一夜にして空の利用を一変させる存在になる。■

 

BY JOSEPH TREVITHICK NOVEMBER 17, 2021



エアバスがA321XLRの第2生産施設として旧A380組立ラインを転用―320neoファミリーの受注残は1万機で、321neoが中心

  Photo: Photofex_AUT | Shutterstock エ アバスはフランスのトゥールーズにある最終組立ライン(FAL)でA321XLRの組立てを開始した。 フランスでのA321XLRの組み立て トゥールーズを拠点とするLa Dépêche紙記事によると、エアバ...