2021年11月13日土曜日

中型長距離機新開発の開始に踏み切れないボーイング。一方でA320XLRがナローボディ長距離線機材需要を独占して今いそうな勢い。ボーイングは新技術の熟成まで待つ気なのか。

  

エアライン、リース元はボーイングに「新しい757」を開発し、エアバスA321XLRへの対抗機種とするよう求めている。Credit: Joepriesaviation.net

 

ボーイングは新型ナローボディ機開発に踏み切るべきか、この質問をエアラインに向ければ、「すぐ始めて欲しい」というのが答えだ。これは Aviation Week Network/Bank of America Global Researchの共同調査で900社から回答を得た結果で、エアラインやリース会社多数を含む。業界はシンガポールの2020年ショー以来久しぶりの本格的航空ショーのあるドバイに集結しつつある。

 

「ボーイングが何らかの動きを示すべきだろう」とバンクオブアメリカのアナリスト、ロン・エプスタインが解説している。「だが同社はバランスシートを改善してから次に移る構えだ」新型中型機(NMA)の検討は2020年初めまで続いていたが、ボーイングは既存機種の生産安定化を優先し、COVID-19による歴史的規模の影響、さらに20カ月続いた 737 MAXの飛行停止措置、787引き渡し中断による影響からの回復が2022年第一四半期まで続くとしている。

 

ボーイング社内のNMA研究の一環として-5Xコンセプトが2020年末に流出しており、エアバスA321XLRに対抗しつつ757後継機がないニッチを埋めるとしていたが、同社はその後787引き渡し再開、777X型式証明へ注力し始めた。新型機投入の大日程を示す兆候は出ていない。

 

社内の新型機立ち上げへ向けた準備が低調なまま、ボーイングはタイミングを見定めようというのだろう。新型機開発業務には専門部署立ち上げから新技術の飛行実証等があり、統合製品チーム(IPT)でデジタルデザイン製造へ道を開き新型機の実現をめざすだろう。近年の軍用機事業で得た知見を投入するはずだ。

 

顧客側の回答でIPTでボーイングは次期機体の実現をきたいしており、73%はボーイングに高性能長距離性能があり座席数が多いナローボディー機でコスト削減の実現を期待している。顧客が期待する新型機は現行の737 MAXより大型の想定で、29%は座席数180から250のファミリー構成を希望。回答の半数以上が4,500カイリ以上とエアバスA321XLRを除けば、現行機のいずれよりも長い航続距離を望んでいる。

 

各社の要望は極めて高く、とはいえ必ずしも非現実的でもなく、運航経費低下を望んでおり、60%は15%削減で十分としつつ、20%削減が望ましいと85%が回答している。

 

調査結果で明らかになったのはエアラインやリース会社がボーイングにエアバスA321XLRの対抗機種の実現を望んでいることで、長距離型A321neoの納入開始が2023年に迫っており、確定発注がすでに500機になっているとの予測がある。エアバスは正確な受注数を公表していない。

 

ボーイング757と同様にXLRはエアライン多数が長距離路線用として大西洋横断あるいはラテンアメリカ路線に投入するだろう。ユナイテッドエアラインズCEOスコット・カービーScott KirbyはAviation Weekに対しXLRをニューアーク、ニュージャージー、ワシントンの参加者で運用すると述べ、北アフリカ路線も視野に入れる。

 

A320neoファミリー生産の半数がA321neoに間もなく切り替えれると、長距離単通路機市場でエアバスの優位性が確立される。この分野がエアバス収益の大きな柱になっており、ボーイングの737-9や-10では競争力が発揮できず苦戦となりそうだ。

 

対照的にに737-8販売がA320neo相手に善戦し、ボーイングに新型機開発の余裕が生まれると見る向きがエプスタインはじめアナリストに多い。

 

環境持続性が今回の回答で重要な視点となったのは驚くに当たらない。71%がこの問題をとても重要あるいは重要と回答した。またボーイングに迅速な対応を期待していることが明白となった。2026年の新型機引き渡しを期待し、29%が2027年、22%が2028年、19%が2030年だった。各社ともボーイングに時間を無駄にする余裕はないと見ている。

 

一つ問題がある。新型エンジン技術だ。回答のほぼ三分の二が新型オープンローター、水素あるいはハイブリッドエンジンの実用化を待つとし、多数がオープンローターに期待している。CFMインターナショナルが画期的イノベーション技術持続可能エンジン(RISE)の研究が進展しており、次世代機への採用が期待される。

 

このRISEでCFMはオープンファン実証を行う。克服すべき騒音と性能の課題がオープンファンにあり、技術設計上でどう解決するかが問題だ。

 

今年に出た同社発表では目標を燃料消費、CO2排出量で20%削減に置き、ベンチマーク対象のLeap 1ターボファンの20-35千ポンド推力クラスに置く。実証で一段式ギア駆動ファンにアクティブステーターをつけ2024年から25年にフライトテスト実施をめざす。

 

これに対しボーイングの製品開発担当副社長マイク・シネットMike SinnettはRISEにより同社の考える次期新型機の実現時期や方向性が左右されることなないとし、「あくまでも技術実証であり、CFMにはその他の検討対象となる別の技術もあるし、一つにまとめたテストもある」「同社はまだRISEを事業としておらず、ソリューションとしても認識していないが、各種の技術を試すチャンスとなる」と述べている。

 

「自分の視点並びにチームの視点では機体設計に投入可能なツールに映る。興味深い技術もある。タイミングが合う技術もあるが、合わないものもある。最終的なソリューションにつながるかに関心がある」

 

回答の58%がボーイング新型機のエンジンメーカーは一社限定が望ましいとしたが、737MAXでボーイングはエンジンの選択肢は提供していない。

 

ボーイング社内でNMAや派生型-5Xの検討が進んでいた時点で同社にはナローボディあるいは小型ワイドボディの選択があった。回答の四分の三が小型ワイドボディ機を望ましいとしたが、機体構造から抗力が増えてもいいとしたのには二つ理由がある。乗客の乗降時間が短くなる。また折り返し時間も大型ナローボディ機で問題となっており、757-300では前後のドアを使って乗客を移動させている。もう一つの理由として貨物輸送の収入が重要になっている。貨物収入は一程度必要だ。A321XLRの弱点は長距離路線運航で客席が満席となると貨物用スペースが実質的になくなることだ。

 

ボーイング社内ではコンセプト検討が続いている。ボーイングは業界の意見を集め、NASA向け提案として単通路持続可能飛行実証機(SFD)に盛り込むべき内容を把握しようとしている。Xプレーンの70年に及ぶ歴史でも最大規模となる専用試験機事業は各社競合となるが、NASAは持続可能飛行国家連携に政府機関、業界、学界の英知を集める。

 

将来の単通路機として2035年登場を想定する機体の中核技術の実証、成熟化を狙うNASAのXプレーンは2026年に飛行開始の予想で、低排出高効率のエアライナーとして2030年代に現行737の後継機となることが期待される。ただし、これはボーイングが事業化に成功した場合だ。ボーイング案は遷音速トラス構造主翼機で画期的な高アスペクト比の主翼を特徴にし、同社はこの構造を十年以上かけて研究している。

 

2026年末にXプレーンを飛行開始させ、NASAはSFDにより将来の亜音速機の性能目標の実現をめざすべく、地上テスト、飛行試験でデータを集めたいとする。■


Survey Shows Airlines Want New Boeing Aircraft

Survey Shows Airlines Want New Boeing Aircraft


Jens Flottau Guy Norris November 12, 2021


2021年11月12日金曜日

遠心力で小型衛星を地球周回軌道に打ち上げる画期的な技術を米新興企業が公開。実用化されれば宇宙利用の構図が大きく変わりそう。

 Spin

SPINLAUNCH

 

運動エナジーだけで小型衛星を安く迅速に打ち上げ可能とする新興企業SpinLaunchにペンタゴンも関心を寄せている。

 

新興企業が運動エネルギーによる宇宙機の軌道打ち上げシステムを公開した。SpinLaunch社の構想では真空密閉した遠心機を回転させ、音速の数倍まで加速してから上方に放出し、大気圏上層部に到達させるものっで、究極的には地球周回軌道に乗せる。同社はカリフォーニア州ロングビーチにあり、従来からのロケットによるペイロード宇宙打ち上げ方式に真っ向から挑戦する構えだ。

 

試作型の初飛行はニューメキシコの宇宙港アメリカで10月22日に実施されたが、同社は昨日になりやっとこれを発表した。

 

同社システムでは真空容器を使い、内部に回転部分があり、対象を超高速に加速し、抗力を打ち消す。その後「1ミリ秒以内に」扉を解放し空中に放出する。バランスを取るため錘が反対方向に回転する。真空密閉は打ち上げ対象が発射管上部の膜を破るまで維持する。

 

SPINLAUNCH.

準周回軌道を目指す発射体が加速器から飛び出した瞬間を捉えた写真

 

 

コンセプトは至極簡単に聞こえるが、作動させるためには課題が多く、しかも連続して作動させるのが最大の難関だったという。

 

「画期的な加速方法で発射体や打ち上げ機を超音速に加速させるため地上システムを作った」とSpinLaunchのCEOジョナサン・イエニーJonathan YaneyがCNBCに述べている。

 

ヤンリーは同社を2014年に創業したが、これまで同社は目立たない存在で同CEOによればこれが効果を上げて

「大胆かつ尋常でない」宇宙打ち上げ方式の開発に功を奏したという。

 

 

準周回軌道を目指す加速器がSpinLaunchの初回テストで使われたが、最終的なハードウェアは全高300フィートとなる見込みでこの3分の1の縮小版だとイエニーは述べた。

 

初回テストに使った準周回軌道用の発射体は全長10フィートで「時速数千マイル」まで加速されたが、加速器の能力の約20%を使っただけだという。

 

同社によれば10月のテストは基本コンセプトの正しさを証明することが主眼で航空力学と放出機構を確認したという。まだテストとしては開始段階のため、発射体は「数万フィート」に放出されたに過ぎない。

 

SPINLAUNCH

加速器の全体像

 

 

発射体はその後回収されたといわれる。再利用可能な構造がSpinLaunch社のコンセプトの重要部分だ。だが、発射シークエンスでは発射体をどうやって回収するのか明らかにしていない。とくに打ち上げ時の解説ビデオでは発射体が2つに分離する様子が見られる。回収システムを加えれば重量がかさみ機構が複雑になるが、超高速かつ摩擦熱に耐える素材の価格を考えると回収する価値があるのだろう。

 

同社の今後の予定ではロケットモーターを発射体につけて軌道飛行を実現するとある。その場合はロケットブースターが発射体と打ち上げ体の分離直後に点火する。以前の報道では発射体は無動力で約1分間移動してからロケットが点火で高度200,000フィートに到達するとあった。

 

ロケットは軌道に乗せるため不可欠ではないと同社は説明している。「運動エナジーで打ち上げた衛星は大ロケットなしで気圏脱出が可能で、SpinLaunchは衛星多数ほか宇宙ペイロードを排出ガスゼロで大気圏に悪影響を与えずに打ち上げる」

 

同社の説明によればこうした飛行は今すぐにも実行可能で、今後六カ月から八カ月で合計30回程度の準周回軌道テスト飛行を行う。その後、同社は軌道打ち上げに挑む。

 

現時点で同社によれば実寸大システムのリスク低減策を90%まで実施済みで最終設計に向かっているという。

 

同社の構想はたしかに「大胆かつ尋常でない」が、成熟化すれば従来の宇宙打ち上げ方法を一変させる可能性を秘めている。今日のロケットによるペイロード運搬では大量の燃料が必要でペイロードのサイズを小さくしている。

 

これに対しSpinLaunchでははるかに小型ロケットを使い、燃料搭載量が少なくなるものの比較上は大きなペイロードを運搬できる。同社はペイロード400ポンド程度までの打ち上げが将来実現すると見ている。

 

SPINLAUNCH

加速器につながる発射管を上から見たところ。高さは300フィートに達する。

 

 

軌道打ち上げ体が完成すれば宇宙港アメリカを離れ、海岸沿いに打ち上げ施設を確保し、「一日数十回」の打ち上げを可能にするとイエニーは述べている。大型で複雑なロケットが不要のためここまで迅速に打ち上げが実施できれば、打ち上げ費用の低下が実現する。加速器で実現する速度により軌道打ち上げ用燃料は四分の一、コストは十分の一に下がるという。

 

これと同じ発想の打ち上げ方法がGreen Launch 社の構想で、地上に「インパルス打ち上げ機」を置き、従来のロケット一段目の代わりとする別のアプローチを採用している。今夏に同社は米陸軍のユマ試験場(アリゾナ)で1960年代の高高度研究プロジェクト(HARP)の残り物も使い、実証実験を行った。

 

SpinLaunchはこれまで110百万ドルを投資機関から集めており、商用運航を目指しているが、技術が本当に成熟化すれば軍用にも使えそうだ。すでにペンタゴンが同社に関心を寄せており、国防イノベーション部が2019年に同社と契約を結んでいる。

 

SPINLAUNCH

.SpinLaunchは沿岸部に施設を確保し、軌道打ち上げを恒常的に行なう

とする

 

 

同システムで運用可能な重量に制限があることからSpinLaunchは大型ペイロードの打ち上げには限度がある。従来型のロケット打ち上げがトン単位の打ち上げを可能にしている。にもかかわらずSpinLaunchは米空軍の要望に多く答えられそうだし、宇宙軍やミサイル防衛庁も同様で、従来より小型化した衛星の宇宙打ち上げがここにきて必要になっているからだ。

 

加えて、短時間に多くの打ち上げが可能となれば軍にとって魅力的となる。大型衛星が各種脅威にさらされ脆弱になっているためで、超大国同士の武力衝突となればSpinLaunchの構想は小型でそこまで複雑でない衛星を迅速に軌道打ち上げするのに理想的な選択肢となる。供用中の衛星多数が機能不全になったり破壊される事態が想定されている。また数千機もの小型衛星で地球全体を網の目のように覆うのがDoDの考えるこれからの衛星運用の姿に合致する。同じことは民生用の宇宙利用にもあてはまる。

 

DIA

国防情報局の公開資料で衛星が一回の運動エナジー攻撃で使用不能あるいは破壊される各種場合が示されている

 

また同社コンセプトには別の軍用用途が考えられる。超長距離砲撃や攻撃任務で遠距離から短時間で標的に命中させる必要が米軍の優先事項トップになっている。この実現に同社技術が利用できることは容易に想像できる。弾頭部分を長距離移動させることだ。SpinLaunchがこの用途をそのまま構想しているかは定かではないが、武器に転用できることは非常に魅力的に映るはずだ。

 

国防総省内関心が高まり軍事装備を軌道へ送り込む画期的な方法として可能性を検分しているが、SpinLaunch意外にも新規企業が存在する。たとえばエーヴァムがオンラインでロールアウト式典を行ったレイヴンX自律打ち上げ機がある。これは再利用可能無人機で衛星など小型ペイロードを軌道上に運ぶ構想だ。

 

だがS;inLaunch、エーヴァム両社のコンセプトはともに簡易、安価かつ柔軟度において従来型ロケット打ち上げより優れると両社は主張している。あきらかに両社は空中打ち上げ方式のノースロップ・グラマンのスターゲイザーやヴァージンオービットのローンチャーワンよりも打ち上げ費用が安くなる。空中発射式では改装旅客機が母機で小型衛星の打ち上げを目指す。ペンタゴンはスターゲイザーをすでに利用しており、実験用あるいは極秘のペイロードを打ち上げている。もちろんSpinLaunchでは打ち上げ施設が地上にある点で、従来型の打ち上げ施設と変わらないが、空中発射式の機動性や柔軟度にはかなわない。SppinLaunchによれば初の顧客向け発射実施を2024年末に行うとある。

 

突然出現し、あたかもSFの世界のような技術コンセプトを持ちだしたSpinLaunchの実行力には疑念も残るが、同社は画期的コンセプトを用いて小型衛星を低コストで軌道に乗せようとしている。

 

果たして同社の巨大な円盤状施設がこれからの宇宙移動手段の中心になるのか近くわかりそうだ。■

 

Space Launch Start-Up Just Used A Giant Centrifuge To Fling A Projectile Into The Upper Atmosphere

BY THOMAS NEWDICK AND TYLER ROGOWAY NOVEMBER 10, 2021

  • THE WAR ZONE

  • この記事はターミナル2で先に公開しました。


2021年11月10日水曜日

ボーイング、エアバスの現況:受注残は着実に減少する中、中国からの発注へ期待できないものの、業績は改善中

  

 

ボーイング 737 MAXの型式証明再取得が実現しても、中国エアライン各社の受注急増は期待できない Credit: Greg Baker/AFP/Getty Images

 

中国向け受注残が減少の中、新規案件がないボーイング、エアバス両社の現況

  • 中国向け受注残が減少の中、新規案件がない

  • エアバス天津工場はA321neo製造に対応

  • ボーイングは737 MAX再型式証明を年末まで取得を期待

ここ数年、ボーイングエアバス両社が前途有望な将来は東にあると指さしてきた。中国で中産階級の旅行需要が拡大する中で同国エアライン各社が旺盛に機体購入してきた。中国市場の成長で機体需要の中心地は東に移動すると見られていた。

2010年代の航空好況で旅客機の五機に一機は中国向けだったが、各社がCOVID-19パンデミック余波に対応する中で機材引き渡しは実質ゼロのまま、発注も減少している。両社の受注残も急速に減少しつつある。

ボーイング、エアバス両社が現在の引き渡し停止状況を抜け出そうとしているが、これまでとちがい中国には期待できない。

ボーイングの現状認識はこうだ。「中国は今後10年の世界規模の需要増加の25%を占める存在だが、中国向け引き渡しが進まないと当社の世界市場での地位が揺らぐ」とCEOデイヴ・カルフーンが6月にAviation Weekに述べていた。

政治も「大きな要素だ」とある幹部がもらしている。米中両国の緊張状態のため、「ボーイングがすぐにでも受注する見込みはない。ヨーロッパにも同様だ。中国は西側の政治発言で動揺している」というのだ。C919が今年末にも中国東方航空に引き渡しとなるが、当面は心配にさせる要因とならない。生産規模が数年は低いままで、中国国内エアライン各社にも同機を積極的に導入する様子がない。

ボーイング民生機部門は営業損失693百万ドルを計上したが、2020年第三四半期の損失の四分の三程度に相当する。民生機の収益が24%増加し45億ドルになるのは、737 MAX 引き渡しによるところが大きい。

短期財務状態では777で貨物機型生産の加速による変化が期待できる。「貨物機需要が底堅いためサプライチェーンと調整し777貨物型を増産することにした」とカルフーンは述べた。「2022年の777引き渡し数は2021年並みと見ている」とし、今年は9月まで777を20機納入した。

777の月産製造数は2機で、型式証明未取得の777-9もここに入る。今後は貨物型の追加で製造数が増えることになる。一方で777-9の型式証明取得と増産対応を進める。カルフーンによれば777新型の引き渡し開始は2023年末。

エアバスは今年9月までに424機を引き渡しし、昨年同期の24%増となった。内訳ではA220(34機)、A320ファミリー(341機)、A330(11機)、A350(36機)、A380(2機)だ。年間目標達成のため同社は残る三カ月であと180機を納入する必要がある。

同社の民生機部門では収益が21%増の246億ユーロになり、2020年の1-9月期の営業損失24億ユーロが今年は29億ドルの営業利益になった。■

Airbus, Boeing China Airline Orders Backlog Shrinking

November 04, 2021

https://aviationweek.com/air-transport/aircraft-propulsion/airbus-boeing-china-airline-orders-backlog-shrinking


2021年11月7日日曜日

NASAが2040年までにらんだ次世代の環境にやさしい航空機構想に積極的に展開中。今後登場するXプレーン各機に期待。

 

NASAが2040年代以降を目指すコンセプト研究では単通路ターボエレクトリックと層界制御機能を搭載する機体を想定している。

Credit: NASA

 

NASAは将来のエアライナー用に実質で環境負荷ゼロをめざす新技術構想をうちだす。

Sustainability logo

2040年以降の路線就航(EIS)を視野に入れたターゲットコンセプトは形成段階で、業界向けに提案書を出す準備に取り掛かっており、超効率を誇るXプレーンとして持続可能なエアライナー技術の実証を2020年代後半に開始したいとする。

 

「業界とは話を始めており、情報開示を今年度末に行いたい」と高性能航空輸送技術(AATT)を取りまとめるNASAグレン研究センター(クリーヴランド)のジム・ハイドマンが述べている。「提案要求は2023年度の予定で、2040年代の機体の技術要素に何が必要か、ゼロカーボン排出なのかゼロ環境負荷なのかを見極めたい」としている。

 

長期構想では単なる持続可能飛行実証機(SFD)のXプレーン(初飛行を2026年に想定)をさらに進め、中核機体技術の成熟化を図り2035年までに就航する単通路機の実現をめざす。XプレーンはNASAの持続可能航空技術国家パートナーシップ(SFNP)構想として他省庁、業界、学界横断の亜音速輸送機研究を開始した2000年代中ごろの研究が源だ。

 

新構想研究ではNASAの亜音速固定翼(SFW)プロジェクトが2005年から2020年まで展開しており、この成果を利用する。N+と通称がつくコンセプトにより騒音、排気ガス、燃料消費で画期的な技術革新を並行して進めた。このうち登場時期を早期に想定したN+1研究は通常のチュープ+主翼形状のエアライナーに2015年時点ですぐ応用できる技術を採用するコンセプトとした。

 

N+2では目標を2020年代中の就航とし、GE90搭載のボーイング777を比較対象とした。騒音ではステージ4以下で-42 dBとし、離着陸時のNOx排出量はCAEP6上限から75%減にし、燃料消費は40%減にした。さらに大胆な目標を設定したのがN+3で2030年代中の路線就航を想定した高性能エアライナーだ。

 

AATTプロジェクトになったSFWは環境責任を果たす航空技術(ERA)から生まれたもので、2010年にN+2の路線就航に合わせ統合実証機能を想定した。ERAでは実力のある企業や研究者に厳しい要求の騒音、排出、燃料消費の目標を同時並行で与えるもので、これまでは最終排出目標を優先して他の要素を犠牲にした以前のプロジェクトと異なる。

N+4の実現がNASAの長期亜音速コンセプトの目標だ。ここにERAが2009年から15年にかけ加わっていた。写真は構想モデルのひとつ。Credit: NASA

 

「N+4は2040年以降のEISを想定したコンセプト研究事業です」「燃料消費を抑えるだけの目標ではなく、より大きな姿を想定しています」とハイドマンは述べており、新発想の機体、推進方法、システム構想として水素他の持続可能な航空燃料も想定する。「義務化されているわけではありませんが、さらに上を行く環境目標の実現で必要となります」

 

2040年以降の路線就航を想定するコンセプト研究では「全く別の動きの舞台を用意する」とハイドマンは述べており、SFW/AATTならびにERAの研究が最新のXプレーンに道を開いたと説明した。「さらにもう一度実施します。良好なモデルです」とした。

 

現時点で具体的な性能や排出量削減効果の目標は公開されていないが、ハイドマンによればNASAの戦略実施案(SIP)が亜音速輸送機の2040年時点の目標を設定しているという。例としてステージ4では騒音合計で52dBの削減、離着陸時のNOx排出はCAEP 6より80%以上の削減、巡航時のNOx排出は2005年時点の最優秀機材より80%以上削減し、燃料/エナジー消費も2005年標準の80%以上削減とする。

 

「これについて業界に必要とされる内容を求めていきたい。単純に要求内容に従うことはしたくない」とし、「2040年代に必要となる内容を吟味し、業界からニーズ対応の工程表に必要な情報をいただきたい。業界全体の対応方針が決まれば各社別の工程表ができます」とハイドマンは述べている。

 

この方法により出力、燃料、維新系の技術を統合しコンセプト研究に盛り込む。「水素やその他技術で突破口となる要素が生まれるでしょう。バッテリーの大幅性能向上もそのひとつです」「そうなるとカーボン排出量や環境負荷の大幅な削減に向け利用可能な技術への対応準備が必要ですね」

 

ボーイングは持続可能機としてのXプレーン構想をTTBWとしてNASAに提案し、2026年までに飛行開始となるとしている。Credit: Boeing

 

水素燃料他電力系の技術は2040年代でも研究対象の想定だが、NASAはこの分野での研究アプローチを定めていない。「関心は特にヨーロッパで高いのですが、こちらはどの手段が有望なのか評価中というのが現状で、エアバスの各種コンセプトを参考にしています」「NASAでは宇宙分野で低温技術の利用を図っていますが、当方でも関心があり応用できそうな分野があります。水素では社会インフラの問題もありますね。今後こうした課題に取り組んでいきます」(ハイドマン)

 

研究では電動化やハイブリッドコンセプトの大型機応用もあり、SFDのXプレーン構想ではらせん状に進化する技術要素も対象にしている。ハイドマンは「とはいえ大型機は難易度が高いです」「現時点は単通路機に注力していますが、次は機体サイズについてオープンに検討しなおします」「大型機になるのか、小型機になるのか。市場動向が決めることです。そのため機体については柔軟な態度をとっています」とした。

 

次のN+4研究ではNASAの大学リーダシップ事業で研究資金を受けている米国内大学数校の研究者で専用研究チームを構成し、NASAの研究内容を補完する研究課題を設定する。

 

新規研究ではNASAで評価済みのさらに未来的な技術各種も再検討対象とする。NASAはボーイング他とSFWのN+3先端コンセプト研究を2008年にさかのぼり実施している。その一部として多機能軽量機体構造、電動高茎推進システム各種のほか高アスペクト比の遷音速トラスブレイスウィング(TTBW)コンセプトがあり、これはボーイングと共同研究した。ボーイングは同技術を応用した構想をXプレーン契約で提案するとみられる。

 

ボーイングはN+4技術の検討を2011年にNASA共同研究の遷音速超軽量グリーン航空機研究(SUGAR)として行った。その際の研究対象として2040年代のエアライナー設計に高度空気力学推進技術を取り入れるとしていた。さらに液化天然ガス、水素、燃料電池、バッテリー方式の電気ハイブリッド、低出力原子力、層面桐生制御、アンダクテッドファン他高性能プロペラ技術も含む。

 

SFD研究は2026年の初飛行のあと6カ月継続し、2027年に終了するとNASAは発表しており、SFDの地上テスト飛行テストのデータを活用し、採用事業者の性能水準をNASAが定めた中期性能目標に照らし合わせ評価する。これはNASAが2025-35年に登場する亜音速機の性能目標として定めたものだ。

 

それによれば技術登場レベルを5から6、つまり生産開発に移る準備ができた状態)として機体は騒音でステージ4より32から42dB下にするとある。その他NOx排出量、h燃料消費効率はSIP目標に準拠する。

 

NASAはボーイングの高効率TTBW構想の詳細検討を行う準備もできており、SFNPの目標に照らしあわせるとしているが、持続可能技術の実証機の仕様は業界からの提案書に左右されるとしている。SFNPではNASAも高出力ハイブリッド電気推進システムの大型輸送機応用を実証するとしており、複合材機体構造を現行より4-6倍早く製造し、小型コアのタービンエンジンに高温効率を盛り込む。Xプレーンがこうした技術の効果を実証する。

 

2040年以降の機体コンセプトと持続可能飛行実証機はともにNASAが新推進技術や超音速技術の飛行テスト実施を加速化する中で出てきた構想だ。持続可能Xプレーン構想とともにNASAは業界チームと電動パワートレイン飛行実証事業に取り組んでおり、2022年からX-59低ソニックブーム超音速飛行実証機ならびにX-57分散電動推進技術実証機の飛行を開始する。■

 

NASA Reveals Study Plan For 2040 Eco-Airliner

https://aviationweek.com/aerospace/emerging-technologies/nasa-reveals-study-plan-2040-eco-airliner

Guy Norris October 25, 2021

Guy Norris

Guy is a Senior Editor for Aviation Week, covering technology and propulsion. He is based in Colorado Springs.


2021年11月3日水曜日

パンデミック後で黒字復帰したルフトハンザグループ。欧州の需要回復に助けられ、米国路線再開となればさらに収益増加を見込む。

 ルフトハンザがパンデミック後で初の黒字化を達成し、今年第4四半期のキャッシュ不足も回避できる見通しがついた。


9月30日までの三カ月の修正ずみEBITは17百万ユーロで、リストラ費用を除くと272百万ユーロとなった。黒字復帰の背景には貨物運輸を担当するルフトハンザカーゴが記録的な利益を計上したことならびにユーロウィングの黒字化が貢献した。


Lufthansa Airbus A321neo wing

Source: Lufthansa


ルフトハンザグループを率いるカーステン・スポールは「ビジネス客の需要増並びにルフトハンザカーゴの業績が記録更新したことで、危機を脱するめどがついた。黒字復帰を遂げた」と述べた。


ルフトハンザカーゴの修正後EBITは301百万ユーロ、ユーロウィングスは108百万ユーロを計上し黒字復帰したのは観光客出張客の利用再開が大きな理由だ。



ただし、同グループの路線運航は赤字のままで、450百万ユーロの欠損だった。ただし、昨年同時期の赤字12億ユーロから大幅回復となった。


グループとして黒字化しMRO業務も黒字になった。とはいえ第3四半期は72百万ユーロの当期純損失となった。



ルフトハンザのAKSは危機前の50%近くまで第3四半期になっており、19.6百万人の旅客を運んでいる。今後大きな米国市場が再開すればさらに需要増が見込まれる。


「第3四半期末で新規予約が2019年の8割程度になっていた」と同社は述べている。「上級クラスチケットの人気が高い。ビジネス利用客がすべてのクラスで共通して大きく伸びている」


第4四半期では危機前の6割程度で運航し、80百万ドルのリストラ費用を入れてもEBITDAの黒字化を想定する。


「グループは例年厳しくなる第4四半期でもキャッシュ不足を回避できる見込みがついた。このため2021年は通年でグループは増収となり調整後のEBIT損失も昨年の半分程度に減ると見ている」■


Lufthansa sees positive trend after returning to profit in third quarter

By Graham Dunn3 November 2021

https://www.flightglobal.com/strategy/lufthansa-sees-positive-trend-after-returning-to-profit-in-third-quarter/146218.article





2021年11月1日月曜日

中古旅客機の貨物機転用工事が活況を呈している。世界のエアライン業界の最新動向。コロナパンデミック後のエアライン業界の変化。

 

Credit: IAI

 

こ一年半で旅客機の貨物機転用作業がMRO業界で大きな存在となってきた。余剰旅客機の再利用ではいつまで好況が続くのだろうか。

かなり長く続くと見るのはロバート・コンヴェイAeronautical Engineers Inc. (AEI)の営業担当上席副社長およびジョナサン・マクドナルド(IBAの民間機担当部長)で用途変更についてウェビナーで語った。

AEIには改装センターが五か所あり、さらに二か所追加を2022年央までにめざす。改装ラインも現在の13が来年に15になる。「2023年末までの予約が埋まっている。とくにボーイング737-800が多い」「当社だけの話ではない。競合他社も忙しくなっている」(コンヴェイ)

マクドナルドは根本原因を解説している。世界規模の旅客便運航は9月に回復基調とは言うもののCOVID前の実績の半分にも満たない。だがeコマースの伸びが高く、航空便需要が増えている。コンヴェイはCOVID-19による不況で改装用の機体価格が下がったとし、737、A320のみならず大型機も同様だという。

ボーイング単通路機でみると作業需要は737-800が中心となってきており、2021年に35機、来年には50機の予約が入っているという。ボーイング737クラシックは母体が少なくなってきた。

より大型では757-200は依然人気があり、30機の工事が予定に入っている。だがA321-200がその次に控え、20機が作業待ちだ。「757は貨物機として完璧で今後も人気が続くだろう」(コンヴェイ) ただし、コンヴェイはA321-200が757の代わりとして最適とみる。A330は767の代替だという。これまではボーイング機が転用機材として人気があったが、エアバス機が台頭してきた。

ているとはいうものの、作業費用は安定しており、ナローボディで3-6百万ドル、ワイドボディは16-18百万ドルが相場で、今後入ってくる777-300ERだと34-37百万ドルとIBAは推定している。

同時にIBAでは改装後のボーイングナローボディ機の残存価値を18-20百万ドルとみているので、この工事が人気なのがわかる。

IBAではそのうちに757-200の改造母機がなくなるとみており、A321-220価格も機体年数とともに下るので、今後はエアバスのナローボディ機が増えると見ている。

ワイドボディ部門ではトルクメニスタンがA330-200の改修工事を発注していることにマクドナルドが注目しており、そのほかにも同様の需要を期待している。さらにA330の母体価格が下がっており、COVID危機前の25百万ドルが今や15百万ドルまで下がっている。つまり運航会社は機齢が若い機体を探しやすくなっており、貨物機として運行できれば改装工事経費の回収は容易となる。

MRO各社は改修工事の課題に向け準備を怠っていない。エアバス専用の大規模改修施設が数十か所あり、さらに増える。米国と中国に多くが集まっていたが、今やヨーロッパ、韓国、シンガポール、メキシコ、台湾、南アフリカ、カナダと各地に広がっている。

支線運用の速達運送会社がネットワークを拡充しており、小型機でも同様の改修工事の需要がありそうだ。ATR72-500では32機が貨物機にされており、さらに増えるとマクドナルドは見ている。CRJ200が次に多いが30件に満たない。

だが大きな需要は依然ナローボディ機にある。737-800の転用への関心がこれまで以上に増えているとマクドナルドは強調し、その次がA321-200だという。■

 

Cargo Conversion Boom Expected To Roll On

Henry Canaday October 26, 2021

https://aviationweek.com/mro/cargo-conversion-boom-expected-roll



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