2020年12月5日土曜日

ボーイング777X事業は航空不況でどんな影響を受ける?

 日本の航空製造業界にも多大な影響が出そうですね。それにしてもエアバスA350はボーイングにとって面倒な存在になりましたね。

Could The Boeing 777X Program Be Terminated?

Jens Flottau November 27, 2020

https://aviationweek.com/aerospace/aircraft-propulsion/could-boeing-777x-program-be-terminated

 

parked aircraft

Credit: David Ryder/Getty Images

 

ボーイング777X事業が中止になる可能性はあるのだろうか。

Aviation Week民間航空部門主筆のジェン・フロトーはこう見ています。

ーイングは現時点でワイドボディで747-8、777X、787と三機種そろえている。このうち747-8は段階的に消えるが、787が活況を呈すのはCOVID-19流行で比較的小型でありながら効率が良いためだ。一方で777Xは面倒な立ち位置にある。とはいえボーイングが同機事業をすぐにでも中止する可能性は極めて低い。

理由として同機の型式証明取得が長期化し相当の経費がかかっているが、開発予算は大部分支出済みだ。747がなくなれば、787-10がボーイング最大のワイドボディ機になるが、エアバスA350とは機体サイズ、航続距離双方で勝負にならない。既存型777の生産継続は選択肢にならない。運航経済性がA350に及ばないし、選定に残らない可能性が高いが、エアバスに価格値下げさせ収益性を損なわせる効果は期待できる。

同じ理屈がA330neoにあてはまり、エアバスは同機発注が低迷中でも7同機を残している。

ただし777Xの見通しは現時点のトラブル続きの航空市場で不安を残す。ボーイングは型式証明工程を小型の777-8で遅らせ、市場回復まで時間稼ぎをねらう。また737 MAXの飛行再開後初のボーイング機となれば当局が厳しく審査するのは当然だろう。

777Xの受注残の大半はエミレイツエアラインズカタールエアウェイズエティハドエアウェイズが350機中240機と大半を占めている。このうちエミレイツ(156機確定発注)が小型の787やA350に関心を移しており、パンデミック後の路線網再編への投入を検討しているようだ。

エティハドも発注したものの湾岸地域のライバル各社と規模の競争を放棄する路線変更をしている。その他の777X発注エアラインのキャセイパシフィックブリティッシュエアウェイズルフトハンザもそれぞれ大変な状況になっており、国際路線が運航停止し運航再開しても回復は国内線より時間がかかりそうだ。

777Xは大型機であり高需要の長距離路線運航に最適化した機体だが、その路線が今は存在しない。観測筋の大部分も時間が経てば特にアジアでこうした路線の復活を予測するが、ヨーロッパ、北米では可能性は低い。大事なのはエアライン各社に地上待機で比較的機齢が低い従来型777多数があることで、新規製造機体の中短期的販売に影響を与えるかもしれない。■


2020年11月28日土曜日

大韓航空がアシアナを吸収すれば韓国にメガキャリアが出現する...のか

 

Korean Air-Asiana Merger Would Create Asia-Pacific Giant

Aviationweek

Adrian Schofield November 24, 2020

Korean Air and Asiana Airlines Airbus A380 aircraft大韓航空とアシアナ合わせA380は16機あるが、ほぼ全機がCOVID-19のため運航停止中だ。Credit: joepriesaviation.net

 

韓航空アシアナエアラインズを買収するとグローバル市場で最上位のキャリアの仲間入りとなる。大韓航空の運航規模が劇的に拡大する可能性が出てきた。

 

韓国政府、アシアナの債権団がともに買収案を了承しており、アシアナの路線運航継続には最良の選択としている。アシアナはcovId-19流行前から業績が悪化しており、さらにパンデミックで苦境に追い込まれていた。両社統合で競争状態が低下するが、これ以外にアシアナの存続策はないのが現状だ。

 

大韓航空役員会は11月16日にアシアナ株式を1.8兆ウォン(16億ドル)で買収する案を承認した。国営の韓国産業銀行(KDB)が8千億ウォンを投入し買収を成立させる。大韓航空も来年に新株発行で2.5兆ウォンを調達し買収に備える。

 

大韓航空CEOのウォルター・チョーは社員の雇用維持が最優先と強調するが、アシアナの現有機材と路線網の処置は未定だ。

 

同社は買収が完了すれば世界トップ10社入りできると期待する。路線網拡大、機材拡充で同社は「世界メガキャリアと競合できる」立場を強化できるとする。韓国にフルサービスキャリア大手が二社あることが「競争面で不利」とし、大手一社体制のドイツ、フランス、シンガポールの例をあげている。

 

大韓航空は2019年に国際線旅客数で18位、アシアナは32位であったとIATA統計にある。両社合わせると10位で、アジア太平洋でトップとなる。有償旅客キロでは世界11位になる。

 

両社で共通する貨物の強みが統合でさらに強くなる。大韓航空は国際定期貨物トンキロで世界5位、アシアナは23位だ。統合で3位になる。上にはカタールエアウェイズとエミレイツがあるだけだ。韓国国内路線では大韓航空シェアがさらに高まる。また路線網整備で乗り継ぎの便が向上すればインチョン国際空港はアジアのハブ空港として地位を固めると大韓航空は見ている。

 

2019年12月2日の週時点で大韓航空は韓国国際線販売シェアが22.4%だったとCAPAとOAGデータでわかる。アシアナが第二位で15.4%だった。合計37.8%となり、さらにLCC子会社もあわせると48.1%になる。

 

同時期データでインチョン空港では大韓が25.3%、アシアナが17.9%のシェアでLCC合わせ50%となる。CAPAデータでキャセイパシフィック、SIAグルーぷ、ルフトハンザグループも本拠地で高いシェアがあることがわかる。

 

ソウル-チェジュ線では両社で67%のシェアとなる。同路線は韓国内で最重要の位置づけであり、同時に利用が一番盛んな路線でもある。

 

両社統合の話題は以前からあったが、今回の危機状況で待ったなしとなった。「韓国航空市場はパンデミック以前から飽和状態にあり、COVID-19後の状況が見えにくくなっている」と大韓社長のKee Hong Wooは述べる。「統合後は路線、機材ともに柔軟運用が可能となり、効率運用が可能となる。シナジー効果を最大にでき、貨物ターミナル、訓練センターや整備拠点といったインフラを合理化できる」

 

機材統合が課題となる。大韓航空は170機を主要機材とし、ここに地上保管機材30機を含む。アシアナは総75機で7機を保管中だ。両社機材で共通するのはエアバスA380、A330、ボーイング777、747貨物型だが、ナローボディ機はちがう。大韓航空は737中心でアシアナはA320/321を運用中だ。大韓航空は737MAXを発注しているがA220も10機発注し、両社がA321neoを発注している。

 

ワイドボディ機材更新の動きでも相違点があり、大韓はボーイング787、アシアナはA350を選択した。大韓で787-9の10機が運航中で、-9は10機、-10の20機を発注中。アシアナはA350-900を11機運航中で、-900を10機、-1000を9機発注している。

 

統合後は機材型式が増えるが、大韓航空はこれまでもA380、747-8、MAXやneoのように各メーカーから多数機種を運航してきた。

 

大韓航空は財務面で苦しく多額の借入がある。これだけでも大変だが、さらにコロナウィルスによる大幅減収の回復にも努めなければならない。アシアナもパンデミック前から財務面で苦境にあった。親会社のクムホグループはアシアナ支配権を現代開発に売却すると合意したものの、COVID-19危機で同社価値が下がったため9月に暗礁に乗り上げた。このためアシアナはKDB含む債権団の実質管理下に入っていた。

 

買収は2021年に完了する見込みと大韓航空はみている。政府当局の承認が必要で一定の時間が必要となる。さらにハードルとなるのが法廷判断だ。

 

大韓航空はAviation Weekに当面はアシアナは大韓航空子会社として運行を続けると明らかにしたが、数年かけてアシアナブランドは消滅させる。アシアナがスターアライアンスに残るかは未定だ。大韓航空はスカイチームに加盟している。

 

アシアナ傘下のLCCエアソウル、同社が支配するエアブサンは統合対象だ。ただし、両社がそのまま残るか大韓航空のLCCブランド、ジンエアと統合されるかは未定だ。

 

両社統合にKDBは8千億ウォンを大韓航空の親会社ハンジンKALに貸し付けとして投入する。大韓航空は3千億ウォンをアシアナ取得の前金とする。

 

これでアシアナは年末までの運航費用を手当てでき、財務状況も改善できる。ハンジンKALはKDB資金受け入れで借入にするより新株発行を選んだのは「安定財務構造」の維持を狙ったためと説明している。「KDBは議決権を得て、ハンジンKAL及び大韓航空が企業取得案を予定通り進める野を監督する」と大韓航空は説明している。■


2020年11月22日日曜日

縮むエアラインに長距離ナローボディ機が期待を与える。ボーイングはエアバスに大きく水をあけられている。

 

ANALYSIS: Long-Haul Narrowbodies Will Help Bridge Gaps As Airlines Shrink

Jens Flottau November 17, 2020

https://aviationweek.com/special-topics/crossover-narrowbody-jets/analysis-long-haul-narrowbodies-will-help-bridge-gaps


空業界、主要機材メーカーのエアバスボーイングエンブラエルは生き残りを最重視し、冬がすぎ、COVID-19ワクチンが出回り世界がもとの状況へ復帰するのを待っている。

エアライン各社が運航を大幅に減らす中、一部の機種が注目を集めており、新型コロナウィルス流行が下火になり需要が復活してもこのトレンドは続きそうだ。

業界では小型ワイドボディ機、長距離ナローボディ機が民間航空の再成長段階でいちはやく効果を発揮するとの見方が強い。こうした機材ならリスクを最小にしながら機体価格は訴求力があるというのだ。エアバスのA321XLRは4,700nmの航続距離があり、2023年に路線就航するが、受注はすでに400機を超えている。

だが長期的にはA321XLRのような機体があればエアラインは運航回数を増やすか、座席数を増やすか、あるいは旅客数が少ない路線を思い切ってノンストップ運航し、ワイドボディ機でも最少のエアバスA330-200あるいはボーイング787-8では持て余す路線に投入する選択肢も生まれる。

また機材の大規模更新の時期が近付いており、北米ではボーイング757や767の退役がパンデミックで加速されつつある。

短期的にはエアライン各社の規模縮小は不可避だ。IATA最新予測では有償旅客キロは2020年に前年比で66%減少するとあるが、2019年は737MAXの運航停止などそもそも需要にブレーキがかかった年だった。

パンデミック終息後のエアライン各社はどのように保有機材を活用するだろうか。地域、企業戦略、投入可能な機材構成など各種要素により左右される。ただし、パンデミックにより余剰機材の退役が加速しており、とくにエアバスA380、A340、ボーイング747-400は需要が低下した長距離路線で持て余し気味だ。

そこで長距離路線でナローボディ機が成功すれば機体メーカーにもろ刃の剣になる。ワイドボディ機の需要は弱いまま新鋭機材が長距離路線に投入可能となれば選択肢が広がる。ただし、ワイドボディすべてが悪影響を受けるわけではない。2020年春のパンデミック最高潮時でもエアライン各社はボーイング787、エアバスA350を路線投入しており、小型ワイドボディならではの効率性をとくに787で生かしていた。だがその他の機種は重宝されていない。ボーイング777では9月末時点で合計353機が運航停止となり、前年の58機から急増した。787で運航停止保存状態に入っているのは189機(前年25機)。エアバスではA330で402機(前年56機)で、A350は比較的少なく58機(6機)にとどまっている。

長期的に見れば、機材選択では性能を重視する方向に進むだろう。現在も787、A350が欧州と米東海岸間路線に投入されているが、両機種の航続距離からいえば性能を十分活用しているとは言えない。そこでやや短い長距離路線をねらってボーイングは新型中間市場機(NMA)構想を立てていたが、今年に入りこれを中止してしまった。

A321neoの長距離版LR、XLRが成功すればエアバスはナローボディ機市場でシェアを伸ばせる。現時点の受注残でも同社は60%超のシェアを占めている。ボーイングが競争面で不利な状況を受忍する状況は普段は考えられないが、737MAXの発注取り消しが1,000機を超え運航停止措置が伸びたこと、同社の民生機材部門の赤字が組み合わさる状況では中短期的に新型機開発に乗り出し、ナローボディ機のハイエンド部門で解決策を提示するのは不可能だ。■


2020年11月8日日曜日

T1で先行発表。地球上いかなる地点にも一時間以内に輸送完了できる宇宙貨物便が実現しそう。

 軍は世界いかなる場所へも補給物資を送れる「ロケット貨物便」の活用に注目している。

 

こんなシナリオだ。戦闘部隊が世界のはての地点に展開し、弾薬糧食が必要だ。そこで特別航空補給を要請する。米輸送本部が承認し、貨物は低地球周回軌道にロケットが打ち上げられる。一時間足らずで5.56mm弾、おいしそうなピザのMREが届き、部隊は気分を一新し士気が高まる。

 

補給ポッドを宇宙から送り込む構想はSFのようだが、真剣に検討していると米陸軍は認めている。

 

「80トンの貨物となるとC-17一機分だが、世界中いかなる地点に一時間未満で送り届けられる」と輸送本部司令のスティーブン・R・リヨンズ大将が空輸給油協会開催の10月のリモート会議で発言した。「これからの兵力投射に従来の方法を打ち破る形で挑戦したい。ロケット貨物輸送もその一部だ」

 

リヨンズ大将はこれ以前に全国国防輸送協会のイベントでペンタゴンが航空宇宙企業のスペースXと協同研究開発契約を締結し、外宇宙に輸送経路が確立できるか検討すると発表していた。

 

輸送本部は「商用の地点間宇宙輸送手段を利用し、まず部品部材、さらにゆくゆくは人員を世界中いかなる地点に迅速輸送することで緊急事態や自然災害に対応できると着目」しているとニラフ・ラッド空軍中佐が述べている。中佐は宇宙輸送の主任研究員である。

 

国防企業間で「宇宙空間を介しての輸送について利用可能性、技術・事業面での実施可能性の検討が進行中で、輸送本部には国防総省のグローバル輸送部隊として役割が与えられる」と同本部は発表している。「貨物人員輸送ではスピードが重要だ。ここに大きな可能性が秘められている」とリヨンズ大将は発言。

 

Senior Airman Ian Dudley, 30th Space Wing Public Affairs photojournalist, photographs an unarmed Minuteman III intercontinental ballistic missile during an operational test at 2:10 a.m. Pacific Daylight Time Wednesday, Aug. 2, 2017, at Vandenberg Air Force Base, Calif.

非武装のミットマンIII大陸間弾道ミサイルがヴァンデンバーグ空軍基地から試射された。

Senior Airman Ian Dudley, 30th Space Wing Public Affairs photojournalist, Wednesday, Aug. 2, 2017,Photo via DoD

 

 

宇宙空間利用の輸送手段の評価で次の段階は来年に予定され、輸送本部は「産業界や戦闘部隊と協力し長距離地点間輸送構想を2021年に実施する」と米陸軍が公表している。

 

「民間宇宙輸送手段提供企業がこれまでの常識を一変させる手段を開発中でその進展は実に早い。2021年の実証では人道救難物資を送り届けることになるだろう。ロケット輸送ミッションは現実となる」(リヨンズ大将)

 

長期目標は宇宙輸送手段の試作型を製造し、輸送本部に空中、海上、陸上の輸送を補完する手段を今後5年から10年以内に実現することにある。スペースXとの研究契約でこの目標が実現できるかが注目される。

 

「スペースXの最新情報では開発は非常に進んでいるとだけお伝えしておく」とリヨン大将は以前述べていた。

 

一つ確かなのはロケット貨物輸送は「宇宙の歩兵」構想につながることで筆者は構想を支持する。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

US Army Developing 'Rocket Cargo' To Transport Gear To Troops Via Space

JARED KELLER16 HOURS AGO


TAGSSPACEXROCKETSOUTER SPACENEWSMILITARY TECHRESUPPLY INBOUNDU.S. TRANSPORTATION COMMANDU.S. SPACE FORCEU.S. ARMYRESUPPLY


2020年10月24日土曜日

三菱重工のスペースジェット開発凍結正式発表は10月30日の模様。残念ですが.....

 

MHI denies reports of SpaceJet development freeze

By Greg Waldron23 October 2020

https://www.flightglobal.com/aerospace/mhi-denies-reports-of-spacejet-development-freeze/140761.article


SpaceJet-c-MitsubishiAircaft

Source: Mitsubishi Aircraft

One of the M90 development aircraft

 

菱重工業(MHI)は三菱航空機スペースジェット開発の凍結を伝える報道記事を否定した。


「MHIは新型インフルエンザ流行も考慮しスペースジェット事業の詳細日程を検討中で、適正な資金投入をもって開発を進めており、MHIグループに逆風の金融環境も考慮している」と同社は発表。「様々な可能性を検討したのは事実だが、今回の記事で開発凍結を決定したとあるのは間違いだ」


MHIは第2四半期営業実績に合わせスペースジェット含む中期事業計画を10月30日に発表する。


報道では開発を大幅縮小し、世界的な航空不況に合わせ凍結するとある。今年初めにMHIは事業縮小の手始めに海外拠点の閉鎖としてワシントン州モーゼスレイクの飛行テスト拠点の名をあげていた。2020年中ごろまで続いたフライトテストはM90(旧MRJ90)を中心にモーゼスレイク周辺で展開していた。同社は令和2年度の同機関連事業予算を600億円に半減させた。


フライトテストは停止中だが三菱航空機は「当社チームはテストデータを解析中。テストは合計3900時間に上る」と発表。


スペースジェットは遅延の繰り返しで、テコ入れ策として2019年のパリ航空ショーでMRJから改称された。


これによりMRJ70開発は取り消され、あらたに76席型がスペースジェットM100になったが、今年はじめに開発は停止されている。■


2020年10月17日土曜日

コロナウィルス発生地の中国で国内エアライン利用客が初めて前年を上回る実績を計上。他国から見れば複雑な気持ちになるのでは。


China’s ‘Big Three’ see full domestic traffic recovery in September

By Alfred Chua17 October 2020

https://www.flightglobal.com/airlines/chinas-big-three-see-full-domestic-traffic-recovery-in-september/140665.article



airbus 50 a350 air china

Source: Airbus.

中国国際の9月国内利用は778万人で対前年比で1.3%増だった。

 

国のエアライン大手三社はコロナウィルス流行後で初めて前年を上回る乗客数になった。


9月実績を発表した中国国際中国南方中国東方の各社で前年同期を上回る利用客が搭乗した。国内ASK、RPKともに対前年比増になった。国内路線はパンデミック前の状況に戻ったが、国際線需要は渡航制限のため依然として低水準だ。 


「ビッグスリー」が間もなく発表する9月30日締めの四半期財務実績は赤字の見込みで黒字基調に戻る予測に反する結果になりそうだ。


9月だけ見ると中国国際は国内線で778万名を運び、対前年比1.3%増だった。今年8月からは7%増となった。路線網全体では782万名で8月比較では6.9%増だが年間では16.6%減に終わった。


スターアライアンス加盟の同社国内ASKは年率5.6%増で、8月比較で4.6%増だった。一方RPKは年率0.1%増、8月比較では9.2%増だった。


中国南方航空国内線は1110万名年率2.5%増とまずまずの実績で8月から8%増となった。路線網全体で1120万名を運び、年率12%減となった。国内ASKは年率6.6%増、8月比較は6.3%増だった。


中国東方航空の9月実績は国内路線890万名、年率1.2%増、8月比で5.1%増だったが路線全体では900万名で対前年比14%減に終わった。スカイチーム加盟の同社は国内ASKの年間伸び率がビッグスリーで最高の8.5%になった。前月からのASK増加は2.5%だった。同月のRPKは年間8.5%増、月間比較でASKは7.6%増加した。


9月の旅客実績は中国国内移動の順調な回復を示しているが、そもそも中国が今回のウィルスの発生地であり、当局は大量発生の事実が判明し移動制限を課してきた。


中国系エアライン各社は10月初めのゴールデンウィークに1300万名の輸送実績を記録し、運航便数はパンデミック前水準に近づいた。■

2020年10月10日土曜日

新世代の民間超音速エアライナーを目指すブームのXB-1がロールアウトしました。

 (ターミナル1・2共通記事)エアライン業界は大変保守的で既存機種を最大限に使うビジネスモデルにしがみついています。その結果、半世紀で機種の変更こそありましたが、基本的に性能は進化していません。ここに果敢に挑戦する新興企業数社が米国に生まれています。はたしてその試みが成功するか注目です。機体が登場する3年後に現在の航空不況が克服されているかもありますが、ビジネスジェット分野なら可能性はありますね。超音速性能をいかんなく発揮できるのが海洋上空など限られるのが制約ですが、もともとコンコードを警戒した米議会が陸上上空の超音速飛行を禁止したのでは。軍用用途にした場合、大統領専用機もいいですが、ISR機材はどうでしょう。


 

ーム・スーパーソニック(本社コロラド州)がXB-1超音速実証機をロールアウトした。同機は開発を目指す実機の縮小版で「ベイビーブーム」と呼ばれる。飛行開始は来年の予定で、55席の超音速旅客機「オーヴァチュア」Overtureの実現を目指す。

 

同機には民間機登録番号N990XBがつき、COVID-19流行のためヴァーチャル発表式典で2020年10月7日に執り行われた。

 

XB-1は全長71フィートで長く伸びたデルタ翼の全幅は17フィートあり、「離着陸時の低速安定性と高速飛行時の効率性を両立させた」とブームは報道資料で説明。機体は炭素複合材料を大量に使い、「超音速飛行時の高温ストレス環境でも強度と剛性を確保した」という。実証機はオーヴァチュアの三分の一の大きさだ。

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ジェネラルエレクトリックJ85-15ターボジェット三基で推力合計12千ポンドを発生する。最高速度マッハ2.2程度をめざす。同エンジンは米空軍で供用中のT-35タロン練習機に搭載されている。

 

BOOM SUPERSONIC

 

空気取り入れ口、排気口はともに可動式でオーヴァチュアでは「コンコードの三十分の一の騒音」になるという。また空力学的に洗練された機体形状でソニックブーム発生も変わるという。

 

XB-1の胴体部分は細長く、機首を延長しているため操縦時に視野が制限されるが、英仏合作のコンコードでは着陸時には機首を下げる複雑な機構を採用していた。ベイビーブームでは遠隔画像システムによりパイロットが機首の先を「見る」ことが可能。これはロッキード・マーティンがNASA向けに製造したX-59静かな超音速輸送 (QueSST)実証機に採用したのと同じ機構だ。

 

ブームはオーヴァチュア投入で民間航空に一石を投じるとする。マッハ2.2は最高速度で巡航飛行時はマッハ2未満となるが、最大航続距離は4,500カイリで、同社は運航効果が見込める路線は500を超えると見る。その一つがニューヨーク=ロンドン線でかつてコンコードも飛行していた。ソニックブームによる騒音問題はまだ未解決だが、同社は高人口密度地帯上空はコンコード同様に亜音速飛行するとしている。

 

この方法でオーヴァチュアは既存亜音速機種に代わる低コストかつ高信頼性の選択肢となる。「シートマイル費用で見ればオーヴァチュアは亜音速ワイドボディ機より低水準です」と同社ウェブサイトにあるが、フライト時間当たりの経費では数字を出していない。ブームは既存機種のビジネスクラス並みの料金を実現するのが目標としている。

 

BOOM SUPERSONIC

オーヴァチュアをエアライナーにした場合の想像図

 

 

ブームは機体価格を200百万ドル程度にするとしており、ここには内装他オプション部分は含んでいない。このとおりなら既存ワイドボディ機より低価格となるが、一方で既存機種の輸送力は大きい。2018年にエアバスは売れ筋のA330-200の平均価格は238.5百万ドルと発表していたが、同機は最大406席の輸送力がある。ボーイングも767-300ERの平均価格を217.9百万ドルと発表しており、300席の旅客を収容できる。

 

それでもオーヴァチュアは各方面から関心を集めており、ブームによればヴァージン日本航空も含めエアライン業界から76機の導入意向が寄せられている。ヴァージングループはブームの大株主でもあり、傘下のスペースシップカンパニーが機体製造テストを支援するとの報道が前に出ていた。

現実にプライベートジェット部門ではオーヴァチュアのような機体に大きな需要がありそうだ。大企業や大富豪など文字通り時が金につながる層には高速移動で時間を稼ぐのは当たり前になっている。マッハ2移動は当然関心を呼ぶ。ブームの提示価格が現状のビジネスジェットの二倍近くになっても同機を求める流れは変わらないだろう。同機が究極のステータスシンボルになる可能性もある。

 

超音速旅客機は軍用転用も可能で、The War Zone はブームの競合相手になるエアリオンAS2超音速ビジネスジェットの話題を前からお伝えしている。ブームは米空軍から契約交付を9月に受けている。これは超音速大統領専用機構想の検討がないようだ。空軍は同じく極超音速分野の新興企業ハーミウスコーポレーションHermeus CorporationエグゾソニックExosonicにも同様の研究を委託している。

 

BOOM SUPERSONIC

ブーム・オーヴァチュアを米空軍で供用する構想の想像図では機体に747原型のVC-25Aエアフォースワンと同じ塗装が施され、超音速大統領専用機となっている。

 

 

ブームはXB-1のテストとオーヴァチュア開発を並行実施すると発表している。まずベイビーブームの地上テストを完了し、飛行テストを2021年に開始する。同社の新工場が2022年に完成し、オーヴァチュア生産を開始し、3年後にロールアウトする。

 

ただし、XB-1、オーヴァチュア双方で遅延が発生している。XB-1の飛行テストは今年末開始の予定だったが、機体安定性強化システムで離着陸時の安全確保で対策が必要となり先送りされた。オーヴァチュアでも2017年時点で路線就航は2023年とされていた。

 

とひえ、XB-1実証機が完成し、テストも数か月後に実際に始まると思うと興奮してくる。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Boom Rolls Out Its XB-1 "Baby Boom" Supersonic Demonstrator Jet

BY JOSEPH TREVITHICK, THOMAS NEWDICK, TYLER ROGOWAY

OCTOBER 7, 2020


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