2020年6月13日土曜日

中国国内線は供給増加中だが、需要は呼応していない模様


Daily Memo: Chinese Domestic Capacity Near 90% Of 2019 Level

Bradley Perrett June 10, 2020

国国内のエアライン各社で利用率が前年の9割近くに回復しており、来週は96%に上昇しそうだ。
ただし、需要は低いままだ。各社は需要に先立ち運航力を再編しているが、従業員の有効活用の意図もあると業界筋は見ている。
直近の国内便の運用力増は4月に始まり、5月に入り安定したとOAG及びCAPA航空センターのデータでわかる。
5月11日に始まる3週間で国内線の定期運行は前年比で80%に達し、3月・4月平均の63%から増加した。
先週は90%になり、今週は88%で推移している。来週の運行予定は前年比96%と最高水準となる。
2019年実績の9割は通常時の9割と意味が異なる。エアライン各社はコロナウィルスの大量流行がなければ大幅な供給増を予定していたためだ。1月に緊急事態の宣言前の8週間は国内便の供給量は前年比で約6%増えていた。
国内線利用客のロードファクターは弱含みだ。5月は平均65.2%で、見かけ上は増加していたと中国データ企業Variflightが説明している。原因は規制ではなかった。国内便で感染予防のためロードファクターの制限を撤廃しており、一方で国際線は75%を上限としていた。
エアラインの大多数が国営企業で従業員削減や出勤停止ができない事情もある。社会安定を最優先とする方針はどこにも書かれていないが、共産党の統治にかかわることなので暗黙の了解がある。
そのため他国のエアラインと比べると中国各社の運航力活用コストは低くなる。西側では従業員のレイオフがあり、業務再開を待って給与手取りは増える。中国系エアラインでも多数の未利用機材がある。
路線運航能力の再開が早まる背景に業務をなるべく通常通りとし利用客を呼び戻したい意向がある。キャンセルをどこまで減らせるかが重要だ。
中国国内の利用率は不明だが、エコノミー席の平日料金を利用が最大の北京上海線で見れば傾向がつかめる。6月中旬はCNY400-500(5,600円-8,000円)だが、3週間前はCNY500-600、さらにパンデミック前はCNY1,000だった。このことから業界は実需要より先に対応していることがわかる。

一方で中国系エアラインの国際線利用状況は4月以来は前年比で5-7%になっている。その後増加、減少いずれの動きもないとOAG、CAPAのデータから読み取れる。■

2020年6月6日土曜日

自社生き残りが課題のボーイング、エアバスにサプライヤー支援の余力なし---航空業界の不況は今後数年続く

Airbus And Boeing Focus On Own Survival

June 04, 2020

aircraft
Credit: Next143/Getty Images

COVID-19パンデミックの余波で、今後数年に渡り民間航空部門では苦痛と不安定性が続く。
エアラインの多くが存続の危機に立つ中、メーカー側も同様だ。機体完成メーカーや大手サプライヤーで財務が苦しくなり、自社の存続に集中せざるを得ず、顧客の支払い条件やサプライヤー支援まで配慮する余裕がなくなっている。
エアバスは4月8日に3割減産を発表していた。今度はボーイングで、各種削減策を打ち出した。民間機生産の削減、開発研究の規模縮小だ。ボーイングにはCOVID-19関連の余波とともにMAXの飛行停止措置継続のダブルパンチとなっている。
エアバスは顧客の機体受領先送りに対応しもう一段の削減が必要と見るアナリストがある。ただし、同社はまだ決定を下していない。
ボーイングはボーイングサウスカロライナ(BSC)で787生産を再開し、5月に入り社員多数が職場復帰している。
エアバス、ボーイングの4月引き渡しは合計12機のみで、前年同月比で87%減となった。■

2020年5月31日日曜日

スペースジェットに未来はない? そんなことはないという証拠

SpaceJet waiting game plays on at Mitsubishi

By Flight International30 May 2020

え難きを耐えてこそ真の忍耐力、とのことわざが日本にある。


三菱航空機の親会社三菱重工業(MHI)はこれを体現してきたといってよいだろう。


MITSUBISHI MRJ-SPACEJET c AirTeamImages
Source: AirTeamImages

当初計画からの遅延7年がさらに伸びる兆候がある中、スペースジェットの野心的な事業は弱小企業ならとっくに倒産につながる規模だ。▶だが、さすがのMHIも忍耐の限界に来ているのだろうか。▶昨年のパリ航空ショーで名称が変わったスペースジェットM90は型式証明取得と路線就航という課題に三菱航空機は問題解決にかかりきりだ。


販売も低迷している。米系キャリアが「スコープ条項」による制限の解除にこぎつけるという楽観的見方があったが、パイロット組合は依然強硬なままM90はリージョナル路線への就航できなくなっている。▶2019年に76席型スペースジェットM100の開発開始を発表したのはスコープ条項撤廃は無理との見通しのためだったのだろう。▶ただし、一年たちMHIは同型の開発作業を中止した。またM90の予算も削減し、米国内のフライトテストセンターも閉鎖した。▶すべてコロナウィルス危機後の新経済を反映している。


航空利用客の減少でキャッシュフローが弱いエアライン各社は発注を減らす受領の先送りをしている。▶これはスペースジェットだけではなく、ボーイング787で見られる現象だが、MHIの場合は収益を押し下げる効果になっている。▶一方でスペースジェット事業費は昨年度だけで13億ドルと膨れ上がっており、コスト削減対象で目立つ存在になっている。


市場動向がスペースジェットに不利なのは明らかだ。▶ライバルのエンブラエルもボーイングとの合併をご破算にし、やはりスコープ条項対応の新世代機投入ができていない。(E175は販売好調だが。)


新型機需要の崩壊でMHIもM90の型式証明や路線就航に余裕が出てきた。▶エンブラエルによるリージョナル機独占を歓迎するエアラインはなく、米パイロット組合が弱体化すればスコープ条項の変更あるいは廃止も視野に入る。航空旅行の需要もゆくゆく復活するはずだ。

スペースジェットは新規参入機種になるが、三菱重工には第二次大戦前までさかのぼる航空機製造の実績がある。同社には忍耐の意味がわかっているはずだ。■

2020年5月30日土曜日

地磁気の減少で衛星に重大な損傷が発生する?

大西洋上の問題だからと安閑としていられません。この惑星上の生命を守っているのは放射線から守るシールドがあってこそで、地磁気の減少でこのシールドが弱まれば、まずガンの発症が増えたり、地震が増えるでしょう。あるいは磁極逆転になるのか。人類の存続があやうくなるのでは

大西洋上空に地磁気が弱い箇所があり、ここ50年で規模を拡大しながら年間12マイル西に移動している。

南大西洋上空異常現象と呼ばれ、地球を守る磁場が消えれば、危険な太陽放射線にさらされる危険事態が発生しかねない。▶欧州宇宙局ESAは異常現象がここ5年で二方向に分離したと報告。一つがアフリカ南西の洋上で、もうひとつは南アメリカ方面だ。▶「南大西洋上空異常現象の東側部分は10年前に登場し、最近は大きく発達している」とドイツ地球科学研究所が指摘している。▶地磁気全体は200年でおよそ9%減少しているとESAはまとめている。▶異常現象が二分化した理由は科学陣でも解明していない。地球内部の核の動きとの関係の解明が急務という。

磁場の衰弱は衛星や宇宙機にも影響を与える。▶太陽光中の高電荷粒子が増えれば地球を守るシールドを通過しやすくなる。▶低地球軌道上の宇宙機や衛星が粒子を浴びればハードウェアの損傷や故障発生につながる。また内部の電子装備の機能が低下し、重要なデータ収集機能が遮断されたりコンピュータ部品の劣化が進む原因となる。

さらに国際宇宙ステーションの問題がある。2018年度の研究報告によれば異常現象部分を通過するとステーション内部の人員は「強度の放射線に数分間被爆する」とある。

地球の磁場は地表1800マイル下にある外核の流体状の鉄の渦巻移動が生んでいる。▶変化を正確に観測するためESAはSwarm衛星3機を利用している。■

この記事は以下を再構成したものです。
May 29, 2020  Topic: Space  Region: Space  Blog Brand: Techland  Tags: SatellitesSpaceSpace ForceMagnetic FieldEarthOrbit


Ethen Kim Lieser is a Science and Tech Editor who has held posts at Google, The Korea Herald, Lincoln Journal Star, AsianWeek and Arirang TV. He currently resides in Minneapolis.

2020年5月22日金曜日

エールフランスがA380全機を運行終了

Air France Brings Forward A380 Retirements

Helen Massy-Beresford May 20, 2020

A380
エールフランスのA380は運行を終了した。
Credit: Joe Pries

エールフランスエアバスA380運航を完全終了した。コロナウィルスの大量流行を受けスーパージャンボ機退役を前倒しした。
「COVID-19の危機状態のため、ならびに運行規模への影響のため、エールフランス=KLMグループは本日をもってエールフランス保有のA380運行を完全終了します」と同社は5月20日に発表。
同グループのA380は2022年末までに段階的に運航終了の予定だった。機材の合理化、簡素化で企業競争力と利益力を確保する。
エールフランスのA380は、同社保有、またはファイナンス・リース中の機体は5機で、別の4機がオペレーティング・リースだ。
Aviation Week NetworkのFleetDiscoveryデータベースを見ると、この9機は全部飛行停止状態だ。5機がシャルル・ド・ゴール空港、2機がフランス南部のタルブ・ルルド・ピレネー空港、2機がスペインのテルエル空港に駐機中だ。
A380運行終了で同グループは評価損5億ユーロ(5.5億ドル)の計上を迫られ、2020年第2四半期で償却する。 
エールフランスはA380にかわりA350、ボーイング787を運行する。フランスのフラッグキャリアである同社は昨年12月にA350を10機追加発注し、A380とA340の処分後に対応するためとしていた。

ルフトハンザも同社14機のA380のうち6機を退役させる発表をしている。コロナウィルス危機で大きく落ち込んだ航空需要の回復に時間がかかるためだ。■

2020年5月16日土曜日

原子力推進航空機は実用化される? 


aircraft in flight
Credit: U.S. Air Force


Aviation Week Networkでは読者からの質問を随時受け付けており、編集者アナリストが回答している。更に回答が困難な場合には専門家ネットワークにアドバイスを求めている。
「原子力推進航空機の可能性はあるのか。実現すれば航続距離無制限の無人機が生まれるのではないか。」
技術担当の主幹グラハム・ウォーウィックが回答しました。
ロシアが原子力推進式巡航ミサイルのブレヴェスニクの試射に成功したと主張している。NASAも無人回転翼機を土星の衛星タイタンの探査用に開発中だが、放射性同位体の応用で熱電素子発電を使う構想だ。このように原子力推進は現実になっている。
米空軍は核分裂反応炉を改修したコンベアB-36爆撃機のNB-36Hに搭載し、1955年に飛行させている。(上写真参照) この事業は打ち切りとなったが、研究者間では繰り返し原子力推進による無限大飛行距離と炭化水素排出ゼロのフライト構想が取り沙汰されている。
2014年にNASAは低出力原子炉を搭載した航空機構想を発表している。この原子炉は常温核融合炉でロッキード・マーティンのスカンクワークスでは小型融合炉を開発中でC-5程度の航空機で必要な電源を確保するのが目標だ。
航空機に核出力を応用する方法は他にもある。ひとつが高性能小型モジュラー反応炉(SMR)で開発中だが空軍基地や空港単位で必要な電源が確保できる。移動式の小型炉は電気飛行機の充電にも応用できよう。それとは別にSMRで水から水素を取り出し、大気中の二酸化炭素と結合させ液体燃料を生成する方法がある。この電力で液体燃料を作る技術があればジェット燃料のかわりになる。

読者のコメントです


EDWARDFRANCIS
Thu, 05/14/2020 - 13:32

原子力発電所には相当の抵抗感があるので「はいそうですか」と行かない話だ。原子炉が頭上を飛び、広大な立ち入り禁止区域ができるのを一般社会が受け入れる可能性はない。この構想は取り下げてもらいたい。

他方で民間航空分野でもカーボン・オフセットの導入を組織的に始めるべきときに来ている。全世界の温暖化効果ガス排出の3%が航空業界によるものだ。この費用は航空運賃に転嫁しつつ、オフセットの努力を目に見える形で航空業界は進めるべきだ。

航空運賃が上がれば太陽光発電のマイクロ配電網がアフリカに生まれ、大量の森林喪失も防止できる。樹木はCO2吸収効果があるがアフリカで樹木が消失しつつあるのは調理や暖房のため伐採されているからだ。カーボン・オフセットを協調実施すれば森林消失に歯止めがかかり、森林再生の費用を拠出する新規企業も生まれる。であればアフリカ女性も薪集めから解放される。浮いた時間は教育や家族計画に使える。 

民間航空には明るい将来があるが、現在の危機を今後進むべき道に反映させるべきであり、その道がカーボンニュートラルにあることは自明の理だ。

JGODSTON
Thu, 05/14/2020 - 14:42

プラット&ホイットニー社員です。当社では1960年代から1970年代初期に『原子力推進機」を検討したものの、意味がないと判断しました。あまりにも複雑で、大重量で、高価格となるとためです。今回はどこが違うのでしょうか。

この記事は以下を再構成したものです。

What Are Prospects For Nuclear-Propelled Aircraft?


Graham Warwick May 14, 2020

2020年5月9日土曜日

アジアで国内線需要に回復の兆し、日本はいつ?

Asian Markets Start Domestic Travel Rebound

Adrian Schofield May 06, 2020

domestic route flight capacity
Vietnam Airlines is adding flights on domestic routes as restrictions ease.
Credit: Airbus

完全復活はまだ先としても、期待できる兆候がアジアのエアラインに見えてきた。
国内路線再開は中国が先行し、韓国、ヴィエトナムが続く。ただし、インドネシアや日本などでは国内運行が削減されたままで、回復は一様とは言えない。
  • 国内需要の復活は中国、韓国、ヴィエトナムで顕著
  • 海外旅行ができず国内観光が増える
COVID-19で航空便は大幅削減され需要が減少している。最も大きな被害を受けた国が最も大きな回復を見せる一方で、その他の国では大量発生が峠を越したとは言えない状態だ。
国内航空需要は国際線より先に回復の予想がある。国内で旅行制限が解除されれば国内路線網を多く持つエアラインが有利となる。
【中国】COVID-19が最初に発生した中国がこの傾向を実証し、国内輸送容量が増加中だ。北京への国内旅行制限が解除された4月30日から旅行需要も加速している。また全国人民代表会議が5月22日開催と正式に決まったのも朗報となる。
【韓国】韓国は最大のウィルス被害を初期に受けたが、以後はウィルス封じ込めと感染予防に成功している。国際線は各国の政策で打撃を受け、国内路線も大幅削減された。
大韓航空の国内路線は4月に対前年比60%減だったが、5月は52%減に転じた。同社は4月28日まで国内17路線中6路線のみ一日36便を運行していた。だが5月18日までに15路線で59便を毎日運行する。
LCCのチェジュ航空は50%もの減便をしていたが今後は運行再開を増やすと発表。
【ヴィエトナム】ヴィエトナムも国内路線運行再開に向かっている。政府の措置によりヴィエトナム航空はハノイ-ホーチミン線で一日一便のみ運行となった。
ヴィエトナムも公衆衛生で成果を上げ、政府は国内路線を順次再開させる。CAPAとOAGのデータではヴィエトナム航空の国内線輸送容量は4月初めが底で以後増加に転じている。4月23日から同社はハノイ-ホーチミン線をデイリーで4-6便に増やし、5月に11便とする。その他幹線も増便する。
【マレーシア】エアエイジアマリンドエア両社もCOVID-19の影響で国内運行を停止していたが、4月27日から限定付きで再開した。だがマレーシアでロックダウン措置が5月12日まで延長されたせいもあり初日の利用は低調だった。
マレーシアの国内需要は今年末までに2019年実績の8割までに回復するとPwCが予測している。国内旅行で海外旅行であいた穴を埋める期待があるためという。
【日本】その他国の短期的見通しは暗いままだ。日本の国内運輸容量はまだ増加に転じておらず、日本航空は4月初期の運休37%が5月10日は68%に増える。全日空も国内便は4月28日時点で7割を運休していた。日本政府は緊急事態を5月31日まで延長し、国内移動を制限している。
【インドネシア】インドネシアの国内路線への影響は他国よりは軽かったが、4月24日に状況が大きく変わった。同日に政府が定期旅客便運行を6月1日まで停止すると決めたためだ。大量の国民移動で感染の広がりをを恐れラマダン、エイド期間の里帰りを制約した。

総合するとアジア各国のエアライン業界は低調な状態のままで、当面はこれが続く。ただし、朗報が少ない中で、成長の兆しをうかがわせる事例からトンネルも先が見えてきた。■

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