2019年12月29日日曜日

ボーイングの危機状況でもエアバスの商機につながっていない事情とは


Airbus Not Benefiting From Boeing’s MAX Crisis, Exec Says


Helen Massy-Beresford December 18, 2019

ーイングが737 MAXの苦境から脱しない中、状況はエアバスにとって有利ではないと同社の民生部門最高責任者クリスティアン・シュレアChristian Schererが語っている。 
「ボーイングの苦戦でエアバスが有利になっているのかとの質問ですが、あきらかに否です。当社は成長産業の一角ですが、2社独占状態の中で一方が傾くと業界全体に極めて大きな影響が生まれるのです」とシュレアは12月18日フランスの航空宇宙報道記者会合で語った。
シュレアによればA320ファミリーの受注状況が好調とはいえ、エアバスはボーイング発注分を「棚ぼた」で獲得できていないという。またボーイングの苦境で業界全体が利益を増やしているともいえず、逆にこれだけ売れている機種で問題が起こると業界全体に悪影響が出ていると社会は受け止めるという。
エアバス自身もA320neoファミリーで納期遅れの問題に直面中だが、シュレアは同社が 最終組立ライン(FAL)一本の追加を検討中と明らかにした。「とくにA321で若干の納期遅れが発生しており、新型ACFキャビン搭載のA321で顕著だ。現在遅れを最小限にすべく全力をあげている。(A321での)FAL追加の噂があるが現実に検討はしているものの決定はまだだ」
エアバスはA320ファミリーの生産問題は2年間以内に解決したいと考えているという。
また今年の業績見込みとして11月末で940機受注となっており、いよいよ1,000機が視野に入り、好調だったと総括。2019年のエアバスは創業以来総計2万機という大台も達成している。
シュレアによれば輸入関税引き上げが業界に悪いニュースだという。「米国の輸入税が深刻な問題で当社の顧客各社に影響が大きい。極度に競争が激しい業界で10%の関税引き上げは大きな障害だし、破滅的効果となる」
関税戦争が進んで保護主義の動きが強まると業界に何もよい話にならないとエアバスは見ているという。「米国欧州双方に関税戦争がこれ以上進まないよう求めたい。双方の当局には協議の上合意に進んでもらいたいものです」。■


2019年12月21日土曜日

エアラインの構造変化:ワイドボディ機需要は低下、ナローボディ機の長距離路線投入が主流になる


Widebody Market Weakness Shows Signs Of Permanent Structural Change

ワイドボディ機需要の弱さは恒久的構造変化の印だ
Jens Flottau Michael Bruno December 11, 2019

ーイングからワイドボディ機をドバイ航空ショーで大規模受注したと発表があったが、実は大規模でも新規でもなかったことに注目すべきだ。
以前受注した777Xの150機受注の一部が787-9など小型機に変更された。エアバスユナイテッドエアラインズがA321XLRを50機発注したと発表し、ボーイングにショックを与えたが、同様に手痛い結果も受けた。同じユナイテッドがA350発注を5年間先送りすると発表したのだ。
ふたつの事象から今後の動向悪化につながる兆候を両社は見ている。ワイドボディ機の需要が弱い。影響は両社の最新製品A350、787、777Xに直結する。両社にはこの傾向が一時的と受け止める時間の余裕があるものの、構造的転換を進め、調整期間に備える必要は避けられそうもない。
複数の事態が同時進行中だ。エアライン側はナローボディのA321XLRで小規模設備投資でリスクも低いまま長距離路線の運行が可能と気づいた。エアバスによれば2019年パリ航空ショーでの発表以来の同機受注は予定も含め400機を超えている。これに対しエアバス、ボーイングの合計ワイドボディ機受注は407機、ただしこれは2年間の合計で、エアバス122機、ボーイング285機だ。
湾岸三大キャリアが市場の低調さを補うシェルターの役目を果たしていない。ボーイングは2014年に777X確定受注277機を記録したが以後この規模は超えていない。さらにエミレイツ発注分を除くと127機になり、カタールエティハド両社も除けば42機しかないる。
ここ五年間で航空運輸は大幅な成長をとげたが、拡大基調に減速が現れており、成長分も短距離路線やLCCによるものだ。貿易戦争から国際ビジネス出張に悪影響が出ている。短中期的に見ると不確実性しかない。さらにA330からA330neoへ、777から777Xへの移行はエアバス、ボーイングの予想よりずっと遅い。
エアバスではワイドボディ機の売れ筋のはずのA350-900で純受注は5年間で157機だ。大型の-1000型は同時期でわずか18機が実質受注分だ。エアバスでA330neoがこの五年間でワイドボディ機の最大の売れ筋で2014年1月から2019年11月にかけ299機を受注した。第1世代のA330がこれに続き178機受注。A380は受注が全てキャンセルされており、同機は2021年に生産終了となる。
ボーイングでも事情はさして変わらない。747-8FではUPS発注分で数年間生き延びているに過ぎない。事態を反転させるだけの引き合いも期待できない。一方でベテランの767にまとまった発注があり、ボーイングは同機でエンジン換装の可能性を検討し始めたところだ。
777と787が大口顧客特に湾岸各社の戦略変更の犠牲だ。エティハドは2013年ドバイ航空ショーでの発注分をほぼ全機キャンセルし、キャンセルできなかったA350-1000は長期間保存機材とする。エミレイツは787発注分をやっと確定したが、2013年に発注した777Xの一部をキャンセルしている。同社は受領機数を2割減らす意向でエティハドは発注済み25機をすべてキャンセルしたいとする。すでに同社は787の発注残を51機から20機減らしており、A350では今年はじめに62機だったが今や20機に減らしている。
2019年に発注取り消しが新規受注を上回った。2018年には77新規受注はゼロで2015年から2017年合わせて30機しか無い。777-9の185機、777-8の35機という2014年実績はすべて湾岸キャリア各社の発注だった。
787がボーイングのワイドボディ機の中心だが、よく見ると全体としての成功の中心は787-9だとわかる。787-8では5年間で19機減で、2014年からでは787-10は55機、787-9が371機受注となっている。
不確実性はさらに拡大している。 Agency Partners の試算ではA350受注残の三分の一は不安定で、イランエアやリビアンエアラインズは機体を受領しないかもしれない。「ユナイテッドがA350発注を取り消す可能性が増えてきた」とする。同社の発注は9年前のものでその後数回に渡り内容を変更している。ユナイテッドは長距離路線にナローボディ機を投入する好機がきたと見るエアラインの一画で、A321XLRは757-200の後継機とみなしている。
この結果はメーカー側に厳しく響く。ボーイングは787を月産14機から12機に減らす。777から777Xへの転換は予想以上に時間がかかる見込みなのはエンジン開発などの問題のせいだが、ルフトハンザ、エミレイツへの引き渡し開始は2021年に延期となった。777X採用を決めたのは9社にすぎず、その後が続かないのはエアライン側が大型機の747-8やA380で苦労していることも影響している。
今年の夏に入りボーイングからサプライヤー各社、投資機関その他に対し米中貿易の悪化で航空機販売の行方に悪影響が出るとし、とくに777、787で顕著と伝えるメッセージが出た。
Jefferiesの12月レポートではワイドボデイは中国市場でのシェアは29%で国内長距離路線に投入されているとある。実際にアジア各地では短距離路線にナローボディ、ワイドボディーがともに投入されることが多く、東京札幌線、東京福岡線ではボーイング777と737NGが運行されている。Jefferiesによればワイドボディ機投入のトップ25路線の平均距離は917カイリだという。
だが世界第一位第二位の経済大国が「フェーズ1」の貿易休戦に向かおうと苦戦する中、中国からの発注の復活は未だ先の話のようだ。ボーイングは10月に787月産を12機に減らすと発表したが、その実施は「2020年後半」とし早くとも2021年と見ていたアナリスト予測を裏切った。
エアバスはA350の初期増産体制を月産10機にしたが、市場の不確実性を理由に当面これ以上増やさないとしている。「A350で現れつつあるギャップはボーイング787でも同様で新規発注分の単価が低下しA350の収益性が圧縮される」とAgency Partnersパートナーのサッシュ・チューサが記している。それによるとA350月産規模は2022年末に減産を余儀なくされ、このまま状況に変化が無いと2024年には7機にまで減るという。
A321XLRの成功が現行ワイドボディ機のみならずボーイングが構想中の新型中間規模機(NMA)にも影響を与えている。NMAは小型ワイドボディ機となるといわれる。「A321XLRの販売好調でNMAは実現の芽を奪われそうだ」とBloomberg Intelligenceが12月レポートで記している。
「ナローボディ機は小型のため小規模都市間路線に適す一方、大型機は経費利益ともに不利になる」「また路線組み合わせの柔軟性につながりエアラインの機動性が高まる」(Bloomberg)
今後登場するボーイングのナローボディ機は現在より席数が増え200席程度が中心となり、A321XLRより長い航続距離を実現するだろう。Bloombergはその実現時期を最短で2020年代後半、開発費用は100億ドル規模と見積もる。「NMAはナローボディに変更されMAXの飛行停止で実現時期が先送りになるのではないか」という。
Jefferiesも同じ見方だ。「ボーイングはNMAの最終決断を下していないが、737MAXの飛行停止で決断を先送りしながら目標価格の実現に必要な条件も同時に先送りできる」■

Based in Frankfurt, Germany, Jens leads Aviation Week’s global commercial coverage. He covers program updates and developments at Airbus, and as a frequent long-haul traveler, he often writes in-depth airline profiles worldwide.
Based in Washington, Michael Bruno is Aviation Week Network’s Senior Business Editor and Community and Conference Content Manager. He covers aviation, aerospace and defense businesses, their supply chains and related issues.

2019年12月16日月曜日

ユナイテッドがA321XLR発注に走り、ボーイングNMAの行方に暗雲?

Boeing NMA future doubted after United orders 50 Airbus A321XLRs

By Jon Hemmerdinger, Boston11 December 2019
nma-ga
Source: FlightGlobal
ーイングが提案中の新型中間規模機(NMA)の今後が見えなくなってきた。ユナイテッドエアラインズエアバスの競合機種A321XLRを発注したためだ。
今回の発注でNMAへの影響は専門家で見方が割れており、ボーイングがNMA投入を断念するとの意見もある。
「ユナイテッドのA321XLR採用でボーイングからの新型機登場の可能性は潰れた」とブルームバーグは12月5日に伝えた。
ただ航空宇宙コンサルタント企業AIRのアナリスト、マイケル・メルゾーはA321XLRが成功していることこそボーイングにNMAが必要な理由と述べ、開発開始につながると見る。
「NMAについては肯定的に見ている。ボーイングの新型中型機の存在意義が確認された」
「機体製造の戦略を見るとNMAがないままだとボーイング社の重要顧客を失うのはほぼ確実だ」とし、デルタエアラインズが念頭にあるようだ。
NMAには業界で「797」の名称がついているが、ボーイングは数年前から構想をねっているもののその実現ははっきりしていない。
説明通りなら同機はワイドボディ機で270名、4千から5千カイリ(7,400-9,300km)の性能で737 Maxと787の中間機種となり、大西洋横断路線に最適な機体となる。別の言い方をすれば同機は旧型757や767の後継機種となる。
ボーイングはかねてからNMAの市場投入を2020年代中ごろとしており、機材更新が必要なエアラインにギリギリで間に合うとしてきた。
米国のレガシー3社のアメリカンエアラインズ、デルタ、ユナイテッドが大口需要客とアナリスト陣は見ており、この三社で757・767が383機が運行中だ。
三社はそれぞれNMAに関心を示しており、特にデルタが目立つ。
737 Maxで二件目の墜落事故が発生するまではNMA立ち上げは時間の問題と見る向きが強かった。
だがMaxが状況を変え、ボーイングは同機の運行再開に注力せざるを得なかった。Maxは現在も飛行再開が許されていない。
当社は737 Maxの復帰に全力を投入していますが、NMAの事業化検討も続けており、Maxで目処がつけばNMA開発の可否を決定します」とボーイングはFlightGlobalに伝えてきた。「以前の機種での事業化決定のプロセスと何ら変わるものではありません」

エアバスがA321XLRで受注をさらう 

NMAが先に進まない間にエアバスが受注を集めており、A321XLRは6月のパリ航空ショーで発表した。244名を4,700カイリ運び、路線就航は2023年と同社は発表。
A321XLRは早速受注を集めており、450機の確定発注、発注意向となっている。
これはエアライン側が中間規模機材を求めている証拠であり、180席程度のナローボディ機需要から200席超の規模へのシフトも明示しているとアナリスト陣は指摘する。
「生産機種の大規模変更が発生しています。市場の中心が321です」(メルゾー)
アメリカンA321XLRを50機パリで発注した。ただし、これは以前の購入権で機種変更したもので想定内のものだった。
業界筋ではユナイテッドがA321XLRの50機発注を12月3日に発表したことのほうがNMAへの影響が大きいと見る。ユナイテッドは737 Maxを発注しておりA320neoファミリー発注は皆無だった。
「ユナイテッドはNMAの有望な顧客と見られており、A321neo発注は今後に有望な証とは言えません」とTeal グループの航空宇宙アナリストのリチャード・アブラフィアが12月6日のForbesに寄稿している。「ボーイングの新型中型機提案に暗雲です」
A321XLR United Airlines (artists impression)
Source: Airbus
United signaled an alignment with Airbus when it ordered 50 A321XLRs, a type represented in this digital rendering
アブラフィアはかねてからワイドボディ機は製造コスト、座席あたり運行経費がナローボディより高くなると指摘しており、NMAがA321XLRより優位になるか不明としてきた。
アメリカン、ユナイテッドの発注で757旅客型運用三大エアライン中2社がエアバスに鞍替えしたことになる。
ただボーイングが中型機市場を放棄すると考えるアナリストはいない。ボーイングがNMAを737後継機種に位置づけ、まず757に匹敵する機種を立ち上げると見ている。
「最終的にボーイングにとってこの規模の機種の投入が最適な選択となるのではないか」とアブラフィアは述べている。
ブルームバーグは「NMAは既存設計を手直ししたナローボディになると見ていたが...新型機は大型ナローボディで200席が中心になりそうだ」という。

NMAはボーイングにやはり重要な存在だ 

メルゾーはこれまでの経緯を違う読み方をしておりNMAはボーイングの今後重要な存在と見ている。
ただ737 Maxの次の機種に進む準備が同社にできているとは見ておらず、Maxの販売、整備で得る資金が今後の機体開発の原資になるという。
またNMAはかねてから737後継機種の立ち上げに先だち生産機種を近代化するための「つなぎ」と言われてきた。「今もその位置づけに変化はない」「NMAは変革の一部にすぎない」
またA321XLRで中間市場需要全部への対応は無理とも指摘している。757後継機にはなっても767と同等の機能はなく、米国中部・西部からヨーロッパ、アジアへの直行便運用はできないという。
NMAは「西海岸からヨーロッパ各地を結べる機体」と想定しているという。
このためレガシーキャリアで唯一A321XRL発注に動いていないデルタがNMAを選択肢として望ましいとするとメルゾーはいう。
デルタは767を77機、757を127機運行中だ。767はアトランタからヨーロッパに飛ばし、西部各地からアジア路線にも投入している。

「NMAがないとデルタ発注を逸します」「機体価格が上昇しても中間市場で標準型の機体になるでしょう」とメルゾーは述べている。■

2019年12月15日日曜日

視点 環境負荷で非難の的のエアライン業界が取るべき正しい対応とは

How are airlines handling scrutiny of their environmental impact? 

環境負荷への批判にエアライン業界の対応とは

By Lewis Harper13 December 2019
Extinction rebellion
の一年で突如としてエアライン各社は環境負荷緩和の圧力にさらされ、対応を迫られている。
エアライン各社による環境影響が驚くべきペースで関心事となったのが2019年であった。
環境団体等が勢いを強める背景には「空を飛ぶのは恥」との意識やこのままでは人類の存続が危ういと公然と反旗を翻すグレタ・ツゥンバーグの様な存在がある。
特にヨーロッパで環境議論が強まっており、次代の利用客や政策決定層が航空事業に全く違う視点をとる見通しが強まってきた。
だが人類の存続をかけたともいわれる議論に業界は正しく対応しているだろうか。

一番目立つ対応に環境負荷緩和への努力の説明がある。
「乗客一人あたりCO2排出量は1990年比較で50%超削減された」とIATAが12月12日発表したのはこの動きを念頭においている。「業界が燃料消費効率向上に努めた結果で2009年以来に2.3%改良したが目標より0.8ポイント高い」
「乗客一人あたりCO2排出量」が業界で流行表現になっており、たしかに朗報である。ただし、利用客が増えればCO2排出総量が増える点は関係者も無視できない。交通量は今後も増加の見通しだからだ。外部はこの点をついてくるはずだ。
IATAは新型機や持続可能な航空燃料の肯定的効果を取り上げる。ICAOがすすめるCORSIA(グローバル相殺対策)や運行の改善効果もある。
だが航空業界全体の環境戦略の売り込みとしては成約がつく。
燃料効率を引き上げた機体を運用するのは確かにいいのだが、「新世代」機の多くは運用開始して数年経過しており、効率改善効果は目新しくなく、更に業界努力を求める勢力に訴求力がない。持続可能燃料も穀物生産への影響など規模拡大が可能か疑問が解消しておらず、メリットがはっきりしない。
CORSIAは大きな成果を残したが排出量増加を相殺するのが狙いで、根本削減ではない。こうしてみるとCORSIAをより大きなパッケージの一部と見る関係者多数の意見は正しいのだろう。

不公平な負担感?

IATA、域内業界団体やエアライン各社は環境対策が適正と世間に見られるにはどうしたらよいかとの難問に取り組んでおり、一方で不当な負担につながると判断される措置には反対している。
「各国政府が炭素税を追加してCORSIAの効果が削がれている」とIATAは主張。「航空旅行税導入の決定や提言が現れており、フランス、ドイツ、オランダ、スイスで現実になっている」
同様の課税措置の導入阻止に向け今後数年に渡りロビー活動が必要だろう。しっかりした理由がある。航空旅行が一部富裕層限定に戻る危険があるからだ。また航空業界が環境負荷対策に及び腰との印象がつくのは絶対に避けなければならない。
その他、一部関係者からエアライン業界は世界全体のCO2排出量の「わずか」2-3%にすぎないとの意見がある。
こうした主張には民間航空輸送の恩恵が世界に拡散する中で社会経済効果を強調する点では正しい。だがこの論調に頼りすぎると緩和努力は十分と業界が考えているとの印象が生まれかねない。
海運セクターのCO2排出量が航空業界を上回っているとの主張も業界にあるが、反証はうけていないようだ。
こうした主張は「そっちこそどうなんだ」の域を超えない。同様あるいは少し悪い現象を非難することで批判をかわそうというものだ。
また個別エアラインには「環境対応」証明を取得して自らの立場を守ろうとする動きがあり、他力本願と言わざるを得ない。
このやり方だとこの手の環境対策を業界全体で取り組んでいると受け止められかねない。あるエアラインが「優れた」対応をして他社は悪者扱いにしようとしていると一般に映るはずだ。

短所をしっかり把握する

2019年を通じ環境圧力に効果が一番高い対応をしたキャリアー各社は業界の欠点を認識しつつ現実的かつ前向きな対応で解決を求めた。
オランダのKLMと同社の「空を飛ぶ責任」広報は今年一番大きな変化となった。自社利用客の願う姿をエアラインが真剣に考え、かつ航空旅行の長所を取り上げつつ環境負荷の緩和に向け業界の目指す方向性を好意的に示した。
カンタスなどもよく練り上げられた環境方針を公表している。
つきつめれば、利用客が伸び続けるエアライン業界に向けられている厳しい圧力では解決策はかんたんに見つからないだろう。電動推進方式など画期的な解決策の登場はかなり先になりそうだ。

このため、各社・業界団体は有効な対策とそうでないものを区別すべきだし、将来に対する前向きな視点を提示しつつ防御にまわりたくなる誘惑に打ち勝つべきだ。■

2019年12月8日日曜日

とりあえず運行継続が決まった香港航空





Hong Kong Airlines escapes further sanction for now


07 DECEMBER, 2019
 SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
 BY: DAVID KAMINSKI-MORROW
香港航空が運行継続に伴う条件を課した認可当局による追加制裁措置を逃れた。
香港の航空運輸免許機構は同社に対し十分な資金投入により法令上が求める手元現金水準を増額・維持するよう求めている。
財務状況の悪化で同社は12月7日をもち運行停止になると見られていた。
同機構によれば同社提出の最新の財務資料を見るかぎりキャッシュの要求水準は満たしており、今後も維持するとの同社の姿勢を容認しているという。
「同社提出資料から当面香港航空に対する追加措置は取らないこととする」(同機構発表)
一方で運行免許に付随する条件を守る点では更に詳細な資料の提出が必要というのが同機構から同社に対する警告でもある。
同社関連では複雑な要件があり、公益性とともに香港を引き続き国際航空運輸上のハブとして維持を図る政策との関連もあると同機構は説明。
「今後も注意深く香港航空の運行全般を見守り、運行効率の向上継続を求め、長期運行戦略の修正を求めていく」とあり、必要に応じ「適切な処置を取る」と釘をさしている。■

香港の場合はデモで利用者が急減した事情もあるのですが、今年はLCCの台頭の裏で既存エアラインの業績に警戒信号が出た年になりましたね。では韓国系エアライン各社は大丈夫でしょうか。キャッシュが足りないエアラインは一気に機体整備など安全面で不安が生まれ、一気に利用客が減る悪循環に陥りますね。

2019年11月30日土曜日

航空業界を引っ張る737、A320二強体制は強化する一方だ

Aviation Daily

Commercial Aero Suppliers Should Focus on Larger Narrowbodies

Commentary
Nov 25, 2019Michael Bruno | Aviation Daily

昔々と言っても今年2月3月のことだが、ボーイング737MAXが飛行停止措置となる前、米国が中国や欧州と貿易戦争に入る前、Teal グループのコンサルタント、リチャード・アブラフィアが航空宇宙メーカー会合でプレゼンしていた。
その表題に『サラブレッド2頭とロバの群れ』とあった。
アブラフィアのプレゼンは航空機需要全体を包括し、737とエアバスA320に代表されるナローボディー旅客機が航空機製造部門の成長の大部分を占める傾向が続いている。これに対してビジネス機、リージョナル機、ヘリコプターの需要で大きな変化がない。また西側諸国の軍用機需要はあと数年でピークを過ぎそうだ。
「つきつめれば2機の事業が全体を引っ張っている。業界でここまではっきりかつ少数の事業が推進役になった例はない」
今月のドバイ航空ショーでもこの傾向が改めて確認された。メーカー各社にはっきりと見えてきた。航空宇宙ビジネスの成長はナローボディ機を製造する2社が牽引役なのだ。
「ドバイ航空ショーで中規模機材への傾向という見方が強まった」とブルームバーグ・インテリジェンスのアナリスト、ジョージ・ファーガソン、フランソワ・ダフロの両名が述べている。「大型ワイドボディの訴求力が減退しているのはエミレイツが777発注を小型長距離期に切り替えたのが象徴的だ。これからのナローボディーは大型化をめざすはずでエアバスのXLRが受注を伸ばしていることでも明らかだ」
これまで航空ショーといえば、湾岸諸国のエアライン各社が競って大型ワイドボディ機を発注する場だったが、アナリスト陣は方向の変化を感じている。
「一番目立つのがMAXに飛行停止措置後初の受注が来たことだ」とジェフリーズのアナリスト、シーラ・カヤオグルも指摘している。「エミレイツの発注変更も小型ワイドボディ機も視野に入れたバランスの取れた機材需要の象徴だ」
カナコード・ジェヌインティのアナリスト、ケン・ハーバートも大型ナローボディ、小型ワイドボディーが今回の航空ショーで中心だったと見ている。「ボーイング737MAXの受注(30機)は積極的な動きです。今年3月の飛行停止措置後で初の確定発注です。ただしエアバスはA320ファミリーで150機超受注していますのでナローボディー機でリードを徐々に広げていますね」
中型機が市場の中心になってきたのが明白だ。エアライン各社は大型ナローボディーあるいはナローボディー機並の経済性を有する小型ワイドボディー機材を求めている。そのこともありボーイングは11月21日に従業員だけで737 MAX 10のロールアウトをレントン(ワシントン州)で行い、エアバスA321neoの勢いを減速させようとしている。同時に苦戦するボーイングでは新型中型機NMAを757後継機として開発すべきか検討中だ。
ドバイ航空ショー後も大型ワイドボディー機の需要は限定的と見るアナリストが多い。「ワイドボディー機ではボーイングが数年かけて787を月産14機に戻すと見る向きは少ない。これは現状の需要傾向を見てのことで、月産規模が再度縮小すれば業界の収益性と現金流動性が悪化スルのは間違いない」とヴァーティカルリサーチパートナーが11月22日解説した。
サプライチェーン内部からはどこまで多様化すべきかで異なる見解が聞こえてくる。トップの中には売上強化がないと事業の持続はままならないとの声がある一方で専門化した生産体制の効果に期待する向きもある。とは言え実際には企業幹部はサプライヤーとして適正な事業に集中すべきであり、誰でも対応可能な汎用部品メーカーのままではだめだとの認識で一致している。

そこでアブラフィアによれば大型旅客機や軍用戦闘機の複数年成長率が問題で、(上表参照)737とA320は問題があるとはいえ、人気機種であり、その他機種との差を広げてく。

「こうした機種相手のビジネスに従事していれば幸せなサプライヤー」とアブラフィアは説明している。「サラブレッド2頭以外は数周遅れといったところでしょう」■

2019年11月24日日曜日

アリタリア経営再建に暗雲



アリタリア航空の再建が難航


Alitalia unions demand urgent resolution as bid deadline passes


22 NOVEMBER, 2019
 SOURCE: FLIGHTGLOBAL.COM
 BY: DAVID KAMINSKI-MORROW
 LONDON
https://www.flightglobal.com/news/articles/alitalia-unions-demand-urgent-resolution-as-bid-dead-462479/


イタリアの航空従業員組合が政府に対しアリタリア再建でしっかりした条件を求めている。苦境に立つフラッグキャリアーに買い手がついていないまま期日が過ぎた。

国営鉄道企業FSイタリアンとローマ空港の株主アトランティアからは11月21日の期限を前に両社の共同事業体によるアリタリア買収は実現の可能性がないと発表があった。

全国航空運輸労組連合FNTA(イタリアのパイロット、客室乗務員組合3個の集合体)によればFSイタリアンとアトランティアはその他の企業が手を挙げず今回の応札には参加しないことを決めたのだという。

同連合によればアリタリアでのストは「緊急を要す」とし、イタリア政府が「救済策の実施を保証し、『堅実かつ継続した』実施を行うことで『有効な再出発』を実現すべき」としている。
その他の組合にもFILT-CG、Uiltrasporti 、UGLのように政府にFSイタリアン主導の事業体との「膠着状態に終止符を打つ」よう求める動きもある。

各組合は共同声明でこのまま解決策が見つからずいたずらに期限を延ばしていく様子は見るに耐えられないとしている。「このまま何もできないままとアリタリアでさらに被害が増え、企業再建はおろか存続もあやうくなる」というのだ。

アリタリア経営陣にはコスト削減とともに機材削減を食い止める策が求められており、現有機材が路線運行を停止している。

各組合には12月13日に24時間ストの動きがあり、アリタリア再建で政府に「必要な策を取らせる」べく「じわじわと苦悩」を与え、航空輸送分野の改変と競争規制を求めるという。

予定通り労働ストを実施した場合、「納得できる解決策が生まれなくても、従業員の利益を守る方策は必要」と各組合は主張している。■

お知らせ

 2022年以降こちらでは新しい投稿はしておりません。引越し先は 「航空宇宙ビジネス短信T1(新)」です。 こちらへお越しください。 https://aviationspacebusiness-civilaviation.blogspot.com/ お待ちしております。