2019年8月18日日曜日

737MAX問題の負担から777-X開発にも影響が出ているボーイング

Aviation Daily

Boeing Delays Development Of Longer-Range 777X Variant

Aug 15, 2019Guy Norris and Adrian Schofield | Aviation Daily

ーイングが777-8開発のペースを落とすと認めた。777-9のフライトテストが遅れ型式証明取得に影響がでているためだ。さらに737 MAXの緊急事態に技術資源をつぎ込んでいることもあり、777-8派生型の長距離機材の引き渡し開始が2023年以降にずれ込むのはほぼ確実だ。
「開発日程を見直し、777Xの顧客ニーズも再検討し日程変更することにした」と同社は述べ、「この調整により開発作業のリスクが減る一方で777-8への切り替えがスムーズに進む」としている。
777-8は乗客365名を8,690カイリまで運ぶ性能があるが受注はわずか45機に留まっている。(エミレイツ30機、カタールエアウェイズ10機)一方で大型版の777-9(414席)には325機の発注があるが、エンジン問題のため初飛行は2020年初頭に先送りされている。ボーイングは777-9の引き渡し開始を2020年末にできるとまだ希望を持っている。
777-8の派生型は超長距離用でカンタスの要望に答えるものだ。カンタスはオーストラリア東海岸からロンドンやニューヨークへのノンストップ便運用が可能な機材を選定したいとする。777-8の遅延についてボーイングは「現在の顧客今後の顧客ともに当社は各社の機材需要に答えていく。カンタスは大事なお客様だ」としている。
カンタスは2022年に引き渡し可能な機材を選ぶとしており、エアバスからは超長距離型A350ファミリーの提案が出ていた。今回のボーイング発表で777-8運用開始が遅れるとわかり、カンタスは「エアバス、ボーイング両社と協力し新機材調達を進めていく。両社から最終提案内容を頂いており、社内検討で精査していく」とし、同社としては今年末に決定する方針を堅持しているという。
777-8遅延があってもカンタスはボーイングを有力視しているようだ。業界筋によればボーイングは採用を期待しており競合から降りるつもりはなく、納期変更を考慮し「魅力溢れたオプション」を提示しているという。
777-8が成功作になる保証はない。また以前の長距離型の777-200LRや747SPのような特殊機材より多く売れるかも不明だ。777-200LRが原型の777F貨物機に代わる新型機が今すぐに必要とは言えない。777Fは依然として好調な売上を記録し、むしろ増産に向かっている。■

. – Guy Norris, guy.norris@aviationweek.com, and Adrian Schofield, adrian.schofield@informa.com

2019年8月11日日曜日

リチウム硫黄は電機飛行機のバッテリー問題の解決策になれるか

Aviation Week & Space Technology

Is Lithium-Sulfur The Answer To Electric Aviation’s Battery Limits?

Aug 7, 2019Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology
リチウム硫黄バッテリーはリチウムイオンの2倍のエナジー密度を実現するが、出力と耐久性で改善の余地がある。
空機メーカーに実用に耐える全電動航空機実現の機運が強まっている。だがバッテリーが障害となり、寸法、性能で現行の制約の解消が不可欠だ。
次世代バッテリーが商業化の初期段階にありエナジー密度でリチウム-イオン(Li-ion)を上回り航空機への応用が期待されている。.
まず半導体バッテリーがあり、Li-ionに使われている電解液に変わり固体電解物として安全が向上しエナジー密度も高くなるとその分バッテリー寸法を小型化できる。またリチウム-金属型ではLi-ionの黒鉛陰極のかわりにリチウム金属を用い、これもエナジー密度が高くなる。
もう一つ有望なのがリチウム硫黄(Li-S)で注目を集めているのは英バッテリー新規企業オキシスエナジー Oxis Energy と米電動航空機メーカー、バイエアロスペース Bye Aerospace が航空機応用で協力関係を締結したことだ。バイは二人乗り練習機eFlyer 2の開発に取り掛かっており、Li-ionバッテリーを使用するが大型機用にLi-Sへ注目している。
オキシスは2004年創業でLi-Sのエナジー密度を400 Wh/kg以上に刷るのに成功し、来年早々には500 Wh/kg達成を目指す。Li-ionでは最高性能でも 250 Wh/kgだ。

この性能はサイオンパワーが2015年にキネティック(現エアバス)の太陽光高度無人機ゼファーで達成した 350 Wh/kgを超える。ゼファーは11日間飛行して長時間飛行記録を樹立した。またその後25日間の連続飛行を達成したが別のバッテリー技術を使っていた。
だがエナジー密度だけがバッテリー性能の重要要素ではない。出力、放電充電回数、安全性、寿命も重要要素だ。
リチウム硫黄バッテリーは確かに高エナジーだが高出力ではない。つまりエナジー貯蔵量と放電量の問題だ。高高度疑似衛星となるゼファーのような機体では高出力が必要だが放電率(C)は極めて低くする必要がる。電動の垂直離着陸 (eVTOL) では高いエナジー密度、高出力が必要だが離着陸で放電率は高くなる。
従来型の固定翼機としてジェネラルエイビエーション分野で運用すると高出力が必要となるの離着陸時のみで比較的短時間だが、放電率の制御が必要となる。
リチウム硫黄で懸念されるのは寿命で、これが理由となり開発が進んでこなかった。オキシスのLi-Sは200サイクル程度しかない。一方でLi-ionは数千サイクルとなっている。ウーバーは自社eVTOLsをLi-ionを容量が85%になる1,300サイクルで交換し地上発電需要向けに売却している。


この点は改良が必要とオキシスも認める。エナジー密度にこれまで開発の中心が置かれてきたが、高性能は達成できたので次は寿命の延長をとりあげ、最低500サイクルの実現を2年以内に目指すという。
Li-Sは Li-ionに対しコストでも有利だ。その理由として硫黄はコバルト他のレアメタル素材よりはるかに安価に入手できる。さらにWh/kgが高い。同じ容量なら必要な素材量が少なくてすむ。密度が二倍なのでセル数が半分で済む。
安全面でも有利だ。Li-ionセル内でリチウムが樹状に伸びるとショートが発生し熱暴走が始まるためバッテリー全体で慎重な設計が必要だ。
これに対してリチウム硫黄では樹状成長はなく、一旦形成された小さなくぼみも次回のサイクルでリチウムが使うことで消える。 Li-ionでは陰極陽極間を埋めるスパイクができショートが発生する。だがリチウム硫黄ではこのような望ましくない問題は発生しないという。
オキシスは国連が定めたUN/DOT 38.3試験標準でリチウムバッテリーの輸送を実施したがリチウム硫黄は良好な成績を示したという。.
同社は増産に入っており、ウェールズのポートタルボットに新工場を設け、陰極陽極を製造する他、ブラジルにセル製造工場を置く。民生用途の第一陣は2022年開始予定で年間数百万セルの量産体制に入るという。一方で試作用は1万しか製造していない。.
それにより同社はリチウム硫黄バッテリーの強みを享受する目論見だ。さらにエナジー密度を生かした用途として電動バスがあり、バッテリー集合体で数トンになるほか、携帯型ウェラブル型の電源として軍用用途や航空宇宙用途を想定。.
Li-Sの航空用途としてオキシスは社名非公開の欧州航空機メーカーと性能実証をしている。Li-ionバッテリーによる飛行プロファイルを確認中だ。

リチウム硫黄は軽量なため機内に多数搭載できると同社は見ており、大型バッテリーでは離陸時の放電率は低くできる。Li-Sの高エナジー密度により巡航飛行時間が伸び長いフライトが可能となるという。■

2019年8月10日土曜日

解説 ボンバルディアの民間機事業はどこに誤りがあったのか

Aviation Week & Space Technology

Opinion: The Mistakes Behind Bombardier’s Commercial Aircraft Failures

Aug 6, 2019Antoine Gelain | Aviation Week & Space Technology

CRJの三菱への売却を6月に発表したボンバルディアは33年前にカナデアをカナダ政府から購入して参入した事業から撤退するが、CRJで2千機、Qシリーズで1,300機が製造販売されており、さらに新型Cシリーズの開発まで行ったがボンバルディアの民間航空宇宙産業での実績は財務と戦略面での失敗事例として記憶に残るのは間違いない。
まず、1990年代末に戦略面でジレンマがあった。ボンバルディアはCRJファミリーの機体で大きな成功を収め、50席、70席、86席と次々にストレッチし、ついにリージョナル機の限界まで達してしまった。
ボンバルディア幹部は100-150席規模の分野はエアバスA318/319およびボーイング737-600-700が先乗りしいるもののこのセグメントの需要に最適化しているわけではないことに気づく。そこからボンバルディアに同セグメントのニーズに直接答える機体を一から作る機会を活用すれば既存機種に対して圧倒的に有利になるとの望みが開けた。


紆余曲折はあったものの完全新型機の開発には抵抗できない魅力がありCシリーズが2008年立ち上げられ、野心的なロードマップが広げられた。ねらいは市場の50%を手にすることで、100-150席規模の機体需要は20年で6千機超規模と見積もり、「クラス最高」の性能を燃料消費率で実行し、運行経費、CO2排出量ともに有利な状況を生むと期待できたのは画期的な技術として樹脂流し込みやギアードターボファンが有利に働くとの目算があった。少なくとも大胆なプロジェクトであったといえる。
そしてこの挑戦は同社には大規模すぎると判明した。55億ドルを投じた開発(当初予想の2倍以上になった)、さらに途中で数十億ドルを失い、ボンバルディア社のトップ経営層はこのまま実施を続ければ会社がもたないと見た。Cシリーズの将来はかぼそい糸でつながり、CRJとQシリーズが製品寿命の終わりに近づく中で同社は撤退を決めたのだ。
結局、ボンバルディア経営陣は戦略面でいくつかの誤りをおかしたあげく、市場動向や業界の力関係をもっとはっきりと認識していればこれを避けられたのではないか。
最初の誤りはCシリーズで狙うべきセグメントは同社が親しんできた市場の延長線にはないのを認識できなかったことだ。全く別の市場で要求事項も成功の尺度もこれまでと異なっていた。つまりCシリーズはカナダの小企業が世界を二分する巨大企業に挑戦してしまった事例だ。
二番目の誤りはボンバルディアの従来機種での知見により有利にスタートでき、急速に習熟度がCシリーズで上がると考えてしまったことだ。だがこれだけ多くの技術革新を5年間という短期間に実用化しようとしたことのは都合のよい発想で同社は事実上すべての点で現実に直面させられたのだ。
三番目にはサプライチェーンで規格通りの部品を予定通りかつ目標コスト内で実現する課題を過小評価したことだ。外注化を大胆に進める決定をサプライチェーンの適正な管理がないままにすすめたことで同社はサプライヤーの動向に左右される存在になり、コストは管理不能な状態に陥った。エアバスがここで介入し利益が出るようにA220のサプライチェーンを再構築したのは当然である。 
そうなるとボンバルディア経営陣は最も基本的な社内決定に失敗し、業界の動向の把握にも失敗し、分析をもとに戦略決定刷ることにも失敗している。参入障壁が高い市場に参入していなければ、ボンバルディアは今でも中核事業を守り今より良い状態を保っていただろう。また市場シェアも新規参入組の三菱、Comac、スホイから守っていただろう。またエンブラエルやATRににらみもきかしていたはずだ。Cシリーズのエアバスやボーイングへの売却もなかったはずだ。Cシリーズの売却でエアバスは同社に形式として1ドルを支払ったが、別のケースでは売却価格も異なっていたはずだ。■

2019年7月8日月曜日

経営難のマレーシア航空再検索を巡る動き

Ex-AirAsia chairman eyes Malaysia Airlines turnaround 

元エアエイジア会長がマレーシア航空再建に意欲



08 JULY, 2019
 SOURCE: FLIGHT DASHBOARD
 BY: FIRDAUS HASHIM
 SINGAPORE
アエイジアグループ元会長パハミン・アブドゥル・ラジャブ以下ビジネスマン5名がマレーシアのマハティール・モハマド首相と7月3日に会見し自らの率いるナジャエアNajah Airを使うマレーシア航空の再建策を協議したといわれる。
マレーシア国内報道では訪問団はマハティールに検討を求めたという。改善策の効果は六ないし九ヶ月で現れるという。
ナジャエアの活用案では、マレーシア航空は引き続きプレミアムフルサービスキャリアとして残し、ターボプロップ機運用の子会社ファイヤフライを「超低運賃キャリア」に変えるという。
別のインタビューでアブドル・ラジャブは国営ファンド・ハザナ・ナシオナルからマレーシア航空社の49%株式取得を希望していると語っているが、マレーシア航空のみなのか親会社マレーシアエイビエーショングループ(MAG)まで手を広げるのかは不明だ。
Ex-AirAsia chairman eyes Malaysia Airlines turnaround  元エアエイジア会長がマレーシア航空再建に意欲示す 08 JULY, 2019 SOURCE: FLIGHT DASHBOARD BY: FIRDAUS HASHIM SINGAPORE https://www.flightglobal.com/news/articles/ex-airasia-chairman-eyes-malaysia-airlines-turnaroun-459507/
アエイジアグループ元会長パハミン・アブドゥル・ラジャブ以下ビジネスマン5名がマレーシアのマハティール・モハマド首相と7月3日に会見し自らの率いるナジャエアNajah Airを使うマレーシア航空の再建策を協議したといわれる。
  • マレーシア国内報道では訪問団はマハティールに検討を求めたという。改善策の効果は六ないし九ヶ月で現れるという。
  • ナジャエアの活用案では、マレーシア航空は引き続きプレミアムフルサービスキャリアとして残し、ターボプロップ機運用の子会社ファイヤフライを「超低運賃キャリア」に変えるという。
  • 別のインタビューでアブドル・ラジャブは国営ファンド・ハザナ・ナシオナルからマレーシア航空社の49%株式取得を希望していると語っているが、マレーシア航空のみなのか親会社マレーシアエイビエーショングループ(MAG)まで手を広げるのかは不明だ。
  • さらにいかなる雇用削減もおこなわないと首相に改めて保証し、ハザナの財政支援を求めると述べている。かわりにグループは経営支配権と政府の干渉排除を求める。
  • エアエイジアをトニー・フェルナンデスがパートナーのカマルディン・メラヌンとアジズ・バカーと同社をコングロマリットDRB-HICOMから2001年12月に買収してアブドル・ラジャブは会長の座についた。ただエアエイジアはナジャエアと無関係という。「フェルナンデスには話していない。今回の提案には同人は無関係だ。マレーシア航空再建に成功すれば逆に競争相手になる」とアブドゥル・ラジャブは新聞に語っている。
  • マレーシア航空再建策にはこれ以外の提案もあると言われ、同社自身も以前の五カ年復興案の継続を提案している。マレーシア航空はFlightGlobalに6月にMAGが独自再建案をハザナに2月提示しており、エアライン部門と非エアライン部門を合わせて対象にしていると述べていた。ハザナは今年第三四半期に決断する。
  • ハザナはFlightGlobalの照会に対してアブドゥル・ラジャブの首相会見についてコメントを返していない。首相は同ファンド会長も務めている。■


2019年6月30日日曜日

ロッキードも超音速民間市場に参入、ただし実現は規制の動向に左右されそう

Lockheed Martin adds momentum for supersonic travel


27 JUNE, 2019
 SOURCE: FLIGHT DASHBOARD
 BY: TOM RISEN
 WASHINGTON DC
https://www.flightglobal.com/news/articles/lockheed-martin-adds-momentum-for-supersonic-travel-459352/


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ロッキードの低騒音超音速旅客機の構想図

ッキード・マーティンがNASAと共同開発の騒音低下技術を導入し民間超音速機の開発を検討中で実現すれば超音速機開発を目指す企業に加わる。

ロッキードは低騒音超音速機(QSTA)コンセプトを6月19日米国航空宇宙技術学会主催のフォーラムで発表し、初期設計段階にあると明らかにした。

同社スカンクワークス部門がカリフォーニア州パームデールで製造中のX-59試験機はNASA向けで別事業。QSTAは40席で全長69メートル、翼幅22メートルとXプレーンより大きくなる。

現在の亜音速民間フライトは巡航速度がマッハ0.85程度だがQSTAは陸上上空でマッハ1.6、洋上ではM1.8で巡航する設計とX-59の主任エンジニアを務めるマイケル・ブロナノは言う。

低騒音超音速技術が今後の民生旅客需要の実現で鍵となる。米国では陸上上空の速度制限をM1.0としており騒音対策が目的で、ソニックブームは25マイル(40キロ)以内で聞き取れるという。

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Lockheed Martin

超音速旅客機製造に取り出した他社も2020年代中の路線就航を目指しており、ロッキードも他社同様に亜音速フライトより早く目的地につくのであれば「喜んで追加料金を払う客層」があると述べる。各社は需要拡大を見込みつつ初期費用の削減を狙う。

有償飛行に耐える規模の客席規模の機体づくりをねらうのはブームスーパーソニック一社のみだ。残るエアリオンスーパーソニックスパイクエアロスペースは小型ビジネス機に特化している。

マーケットはある
「需要は間違いなく存在する」とブオナオは断言する。「実現していないのは将来の規制像が見えないためだ」

NASAのX-59は衝撃波によるソニックブーム発生を防ぐ設計だがQSTAではさらに離着陸時の騒音軽減策としてエンジンの消音化も採用する。X-59は連続生産や民生運用を想定せず、GEエイビエーションF414エンジンを搭載する。これはF/A-18E/Fスーパーホーネットと同じエンジンだ

「超音速飛行で離着陸時の静粛化は難題です」とブオナノは認める。「離着陸時の飛行方法を変更すれば騒音は下がります」

.ロッキードのスカンクワークスがX-59をカリフォーニア州パームデールで製造中

QSTA、X-59ともに操縦はヴィデオ画面で行い、従来型のコックピット窓は空力特性を強めた機体にはない。

飛行中の騒音がどうであれブオナノによれば音速の壁を破ってもQSTA機内の乗客には「体感はできない」という。また「高速飛行のため振動もわずかながら改善される」という。

QSTAはじめ各機は高度50千から60千フィートと通常の民間機より高高度を飛行する設計。「そこまで高く飛べば機体から発生する排出物の影響は無視できません」ので高高度飛行中の大気汚染の最小化が必要だ。

X-59が実際に飛べば騒音は受容可能か一般社会の意見が出てくる。XプレーンはM1.5で米国各地を2023年から2025年にかけ飛行しNASAが住民に騒音レベルの調査を進める。

NASAフライトの調査結果とデータで連邦航空局とICAOが超音速旅客機でどこまでの騒音と速度が許容可能化を決定する。

ブームスーパーソニックを創設したブレイク・ショールによれば「海上超音速飛行の需要は十分あり、陸地上空でM1.0以上の飛行を認めるのに数年かかっても変わりない」という。

ブーム(本社コロラド州)はXB-1実証機を製造中で2020年中のフライトテストを目指す。日本航空が10百万ドルを同社に投資しており、有償飛行をM2.2で実現し、最大20機の調達を狙っている。■

2019年6月23日日曜日

注目の民間エアライン機材の最新動向

Aviation Week & Space Technology

Commercial Airliner Programs To Watch

Jun 14, 2019Jens Flottau, Guy Norris, Bradley Perrett and Maxim Pyadushkin | Aviation Week & Space Technology


んと言っても注目されるのはボーイング737 MAXがいつどんな条件で路線運行を再開するのかだ。だがその他にも注目すべき機体がある。ボーイングは777Xの遅延にどう対応するか。エアバスはA321XLRの立ち上げに向かいつつあり、A321neoの長距離版だ。A220は販売を伸ばしているがコスト削減が課題だ。エンブラエルはE2の販売強化が必要だ。C919やMC21といった新型機はフライトテスト中だが今後が課題だ。

ボーイング737 MAX
ボーイングの最高優先事項が737 MAXの運行再開で、3月以来370機ほどが地上に残ったままだ。
問題のMCAS機体制御補強装置のソフトウェアおよび訓練過程の承認がまだ下りておらず機体製造はピークの月産52機を42機におよそ2割削減しているが同社には今後の生産増加で追加費用支出がのしかかるはずだ。飛行禁止措置がいつまで続くかによるが影響を受ける機体は夏までに600機に増える可能性もある。飛行停止措置が長引けば受注残はさらに深刻になる。
飛行停止措置でボーイングが想定していたMAX三型式の投入にも遅れが生じている。座席数を増やした737-8、短胴体の737-7、ストレッチ版の737-10だ。まず737-8 200が1月13日に初飛行したがローンチオペレーターのライアンエアへの引き渡しは延期されたままだ。同様に737-7も初飛行は2018年3月に成功しているものの型式証明がまだ下りていない。737-7一号機にMCASソフトウェア改良版が搭載されテスト飛行に供される。
Boeing 737 MAX

ボーイング新型中間市場機材 New Midmarket Airplane (NMA)
ボーイングのめざす新型中規模機材NMAで新規情報が極めて少ない。2017年のパリショーで同構想が登場したのだが、2025年の路線就航の目標も737 MAXの危機状況の中で存在感が霞んだ格好だ。同社は年末までに同機開発の了解を取り付けたいとする。発注数が充分そろえば2020年はじめに正式開発がスタートする。
ボーイングはエンジンメーカー各社と接触を開始しており、737-10と787-8の間となる220席-270席で5千カイリの性能を想定。同社はエンジンは単一型式にしたいとしておりロールスロイスがRB.3059アルトラファンでの参入を日程がきつすぎると取り下げたので実現は容易になりそうだ。
そうなるとNMAはCFMジェネラル・エレクトリックサフランの共同事業体)かプラット&ホイットニーのいずれかを採用することになる。両社とも推力50千ポンドの性能を提示しており、CFMはLeapエンジンの発展型を、プラットはPW1100Gギアードターボファンの発展型を提示している。
Boeing New Midmarket  Airplane (NMA)

ボーイングは画期的な生産設計システムでNMAは合計6年間以内に製造型式証明取得が可能としている。これは同社の秘密部門「ブラックダイヤモンド」の開発した手法で777Xの折りたたみ式翼端機構や米空軍向けT-X練習機開発で効果が実証されている。

エアバス A321XLR
エアバスはA321neo派生型の最初のモデルを発表すると見られ、長距離路線市場を狙う。A321XlRは機体中央部の燃料容量を増やし、最大離陸重量は101トンになると業界筋が解説している。CFM Leap 1Aエンジン、プラット&ホイットニーPW1100Gで出力増加になるのか不明だが、同社筋によれば機体はストレッチされず主翼も新設計の必要はないという。
早めに立ち上がれば2023年ないし2024年に路線就航できるとエアバス最高営業責任者クリスティアン・シェーラーが述べている。
Airbus A321XLR

A321XLRは航続距離が600カイリ延長され4,600カイリまでの路線に就航可能となる。中央ヨーロッパから米東海岸まで、米国からラテンアメリカまで飛べる。カンタスの低運賃部門ジェットスターのCEOギャレス・エバンスによれば同社は現行のボーイング787にかわり同機でケアンズから日本路線を運行したいという。
A321XLRは仮称で今後変更の可能性があるが、ボーイングがNMAを立ち上げた場合の対抗策として開発費用を最小限に抑える武器となる。また改良型が生まれそうでストレッチ型や新設計の複合材主翼のほか、より強力なエンジンを採用する可能性がある。

エアバスA220
昨年のファンボロ航空ショーではエアバスA220が注目を集めたのは新鋭のモキシジェットブルーエアウェイズの2社ががエンブラエルのE2ファミリーを抑えて同機を大口発注したためあった。エアバスは同機用の生産ライン追加をアラバマ州モービルで建設開始しており、米国内向け需要には将来同工場が対応する。ただしその後は同機の受注は伸び悩んでいる。
明らかに受注数の増加が必要でモントリオール近郊のミラベル最終組立工場の能力を下回っており、従業員もモービル工場に受注分の生産が移転されると不安を強めている。エアバスはA220-300で確定発注451機、小型版の-100で85機としているが、-300で49機、-100で19機が4月末までに引き渡されている
Airbus A220

ルブールジェはその他の点でも同機の進展を占う点で重要だ。エアバスにはサプライヤー各社との価格交渉で何らかの進展が必要で、同機がCシリーズと呼ばれていたころのボンバルディアが不利な条件で買い取りをしていたのだ。エアバスとの統合により世界規模のサポート体制を実現することも優先順位が高い課題だ。

エンブラエル E2
最新E-ジェットの受注が期待より低調になのは、エアバスがA220として品揃えを強化していることやボーイング-ブラジル-コマーシャルと改名した共同事業体の認証が未完了なことも理由だ。エンブラエル-コマーシャルエイビエーションCEOのジョン・スラッテリーはエアライン業界の収益が低下する中でE2の様な小型機に商機が有ると信じている。E190-E2の路線就航が始まっている。
Embraer E2


A330neo
エアバスは今年はA330、A330neoを合計50機納入する予定で、ロールスロイスのトレント7000エンジンも納品が予定通りに戻ってきた。今後はA330を減産しA330neoを増産するとエアバス民間機部門最高業務責任者クリスティアン・シェーラーは述べている。受注残は240機で納入はまだ8機だ。A330-800はわずか10機にとどまっている。エアラインは大型の-900型を好むためだ。今年はエミレイツがA330-900を40機一括発注したことで活況を呈した。これはA380発注の取消に伴う発注だったが確定発注になっていない。まだ機齢が若いA330機材の更新機材のサイクルがいつ具体化するかが注目される

A330neo


ボーイング 777X
ジェネラル・エレクトリックGE9Xエンジンの耐久性問題が6月に浮上して777-9初飛行は延期になった。このためテスト日程も今年夏にかけ遅れることとなりただでさえ厳しい型式証明および納入が厳しくなる。ローンチオペレーターのエミレイツ、ルフトハンザ両社は2020年5月-6月に一号機の受領を期待していたが、すでに遅延を覚悟した代替案の準備に入った。
777-9は777Xでまず市場投入する型で競合機種はエアバスA350-1000で、747-400に匹敵する経済性を強調する。777Xは現行777-300ERの胴体に完全新設計の複合材主翼とジェネラル・エレクトリック開発のGE9Xエンジンを組み合わせせ、開発は2013年に始まった。
Boeing 777X

開発は2018年初頭までは概ね順調だったがGE9Xと生産工程で問題が起こり、自社設計製造の複合材主翼でも躓いた。3月に控えめにロールアウトを敢行したが、これも当初予定より4ヶ月遅れとなりフライトテストも遅れている。とくにフライトテストについては具体的な説明が遅れについてなされておらず、ボーイングはFAAと折りたたみ式主翼端など新趣向技術について事前協議をしていると見られる。

Comac C919
ロールアウトから3.5年、初飛行から2年が経過しているがComacはC919試作型三機を飛行させており4機目が2019年に加わる。同社は2020年に型式証明取得という予定を変えておらず、フライトテスト完了まで残された時間は18ヶ月しかないのに動きが鈍い。初号機引渡しは2021年の予定だ。
.開発開始は2008年だが2017年はじめから進展がない。同機は158席のナロウボディ機だ。
Comac C919

C919フライトテスト用4号機は2019年第二四半期中に進空すると関係筋が述べている。更に5号機、6号機が続く。ただフライトテストには3.5年は長すぎるとの見方もある。同機はCFM Leap 1Cエンジンを搭載。

Craic CR929
中露合弁企業CraicコンソーシアムはCR929ワイドボディ機のエンジン選定を9月に予定している。Comacと合同航空機企業(UAC)の共同事業体の同社は調整に手間取っていると関係筋が解説。
Craic CR929

CR929はエアバスA350と同等の機体長翼端の機体だが後続距離は12,000キロと短い。当初はジェネラル・エレクトリックまたはロールスロイス製エンジンを搭載するといわれていた。初飛行2023年引き渡し介し2025年の想定で開発期間を8年としていた。ただし開発期間については業界内では信憑性が薄いとの声が多い。

三菱スペースジェット
三菱航空機から予想通りMRJの立て直し案がパリ航空ショー前日に発表があった。以前のMRJ70をスペースジェットM100と呼び、ストレッチ化で米マーケットの事情により良く適合させる。また客室は3クラス編成で76席とし以前の69席より拡大された。
全長は113.2フィートと109.6フィートより伸びるが翼幅は4フィート減らし91.3フィートになる。米委託運行会社に課せられた制約の範囲内で客室容積を最大化している。
Mitsubishi MRJ

三菱は大型MRJ90をスペースジェットM90と改称し優先順位上はこちらを重視するとしている。2020年中頃に引き渡し開始したいとの目標を同社は再表明している。MRJ70開発はMRJ90の一年後となるがギャップを最短にすbるべく再設計は最小限にするという。

イルクートMC-21
パリ航空ショーではロシアの新型MC-21は公開されない。8月末のモスクワ近郊のMAKS航空ショーで公開される。メーカーのイルクートは合同航空機子会社で試作三号機に客室を装備して公開する。
MC-21はロシアを再び民間航空機に復帰させようといねらいであるが、同国と西側の関係が悪化し、当初国際協力事業との触れ込みだったのが変更されロシア国内の作業量が増えた。2018年末に米制裁措置がイルクートの主要取引先に課せられたのが打撃となり、外国製部品の入手が困難となった
Irkut MC-21


ロシア関係者は国内での複合材取得により型式証明が6ヶ月遅れており、現在の目標は2020年末取得だと明かす。当初はエアバス、ボーイングのエンジン換装ナロウボディ機より先に市場投入の目論見だった。
制裁措置が解除されないままイルクート、UACは代替製品を国内調達せざるを得ずAviadvigatel PD-14エンジンがその第一歩となる。PD-14搭載のMC-21のフライトテストは2020年スタートの予定。

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