2021年4月18日日曜日

デルタの今年第1四半期赤字は12億ドル、第3四半期に黒字回復を目指す原動力は国内線の需要回復だ。

 Delta A350

Source: Delta Air Lines

Delta says it will return to profitability in the third quarter of 2021


内需要がコロナウィルスによる減少を脱し増加に転じる中、デルタエアラインズ(本社アトランタ)は今年第3四半期の黒字復帰をめざす。同社は2021年第1四半期で12億ドルの赤字だったとCEOエド・バスティアンが4月15日発表した。


第1四半期は当初こそ「2020年の延長のように感じた」ものの、Covid-19症例が減少し、ワクチン注射が加速すると需要が上向き、最後の数週間は変化の「感触を得た」という。


2019年の第1四半期にデルタは730百万ドルの黒字を計上し、2020年の同期はコロナウィルスが航空業界に影響を与え始めており、534百万ドルの赤字だった。2020年の通年では120億ドルの赤字だった。「大流行開始後一年で利用客は自信を取り戻している」とバスティアンは評した。


「3月はキャッシュフローがプラスになり、三席中真ん中シートを使用不可にしておりビジネス需要国際線利用が低迷する中でこれが実現できた意義は大きい」(バスティアン)

「回復がこのまま続けば、第2四半期も着実にキャッシュが残り、第3四半期の黒字回復にめどがつく」


第1四半期のデルタ実績では毎日11百万ドルのキャッシュが減少していた。この数字がプラスに転じたのは3月で、毎日4百万ドルが残るようになった。


第1四半期の収益は42億ドルと2019年同期の104億ドルと比べ6割減になった。なお、2020年の同期収益は86億ドルだった。


デルタは第1四半期で「通常の予約が増えてきた」とし、「3月の1日当たりキャッシュセールスは1月の2倍になった」(バスティアン)という。


同社社長グレン・ハウエンステインは平均利用客数は5月に75%に上昇するとみており、その時点で中間座席の販売を開始するという。


パンデミックを受けて中間座席を使用不可とする措置を取る米エアラインではデルタが一番遅い実施になった。同社はまず5月1日に同措置を停止し、6月にはロードファクターが70パーセント台から80パーセント台へ増えるとみる。


国内実績は2019年の85%ほどに回復しているとデルタは発表したが、利用客はパンデミック前と異なる目的地に移動している。ハブ空港を回避し直行便を増やし、大型空港を避けたい傾向の観光客需要を取りこもうとしているエアラインは多い。


国際路線回復は遅れる


第1四半期のビジネス需要は2019年比で8割減だが、デルタは期待できるトレンドを注視している。


「企業業績の回復で需要回復の兆候が示されており、3月は2月より通常の月間変化の二倍で増えている」とデルタは分析。業界でも国際線、ビジネス需要の回復には国内線観光需要より長時間かかるとの見方が強い。


医療専門家の中には今年初夏に米国でいわゆる集団免疫が形成されるとの見方がある。人口の大部分がワクチン接種をうけ、あるいは免疫を確立し、通常に近い形に復帰する期待がある。ただ海外諸国では回復の道どりが異なり、米国からの国際路線需要が回復するかで不確定要素が残る。


「国際線ルート再開に取り組んでいる」とバスティアンは述べ、米英路線を皮切りに展開するという。「ただし疑問点が多く残ったままだ」


地中海路線がその後続くが、米国で夏季需要が高いヨーロッパ大陸線は旅行の高需要期後に再開に向かうとバスティアンは述べた。


「ヨーロッパ大陸各地への運行回復は今年後半以降になるのではないか。今夏はヨーロッパ各地向け需要に対応できない」(バスティアン)


アジア太平洋路線で意味のある回復が実現するには「一年以上」かかるという。「南アメリカが中間となる。すべてはウイルス制圧にかかってくるが」とバスティアンは述べる。南米で人気のブラジルでは症例が急増しており、ワクチン入手でトラブルが続く中死亡数も増えている。■


コメント 規模こそ違いますが、米中ともに国内路線がまず回復を示しています。国際線の回復には異なる事情が働きますが、やはり遅れそうですね。




2021年4月10日土曜日

貨物輸送強化とチャーター運航でコロナ不況を乗り切るチャイナエアラインズの大胆な生き残り策

 

China Airlines eyes continued growth in profitable cargo market

By Alfred Chua8 April 2021



ロナウィルスの大量流行が世界各地のエアラインに混乱を巻き起こしていた2020年3月ごろ、チャイナエアラインズは生き残りをかけ迅速な行動を開始していた。


台湾のフラッグキャリアとして同社は貨物輸送需要での強みを生かし、18機保有するボーイング747-400貨物型でマーケットシェアを高め、燃料価格の下降の中で収益を確保しようとした。


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Source: Wikimedia Commons

China Airlines operates a fleet of 18 747-400 freighters.


旅客輸送は壊滅的な減少となったが、これにより同社は2020年6月末までの三カ月間の収益の9割近くを貨物輸送で確保できた。


このことから同社はさらに貨物部門に特化することで存続をかけ、旅客部門は鳴かず飛ばずでも利益を確保でき、アジア太平洋地区で年間で黒字業績を記録した数少ないエアラインとなった。


チャイナエアラインの2020年12月末日締めの年間営業利益は21.8億台湾ドル(76.3百万ドル)で、対前年比18パーセント減となった。旅客収入は年率77%減だが、貨物売り上げは87%増で、総収益の1,150億台湾ドルに貢献した。


同社は貨物部門の実績により救われたことを認識している。「貨物優先の運営により当社は黒字を確保し、業績で新たな一歩を示せた」と Su-Chien Hsieh会長が総括している。


同社の広報担当副社長Marian Lu は貨物便運航を「正しく計画し、実行したこと」を成功の秘訣とFlightGlobalのオンライン取材に答えた。「パンデミックがはじまるや当社は貨物運航中心の方針をうちたて、段階的に運航スケジュールを調整し、各地で柔軟に対応し、専用チャーター便、特別優先便、eコマース、郵便輸送、温度管理貨物などの需要に対応しました」


素早い対応として、通常の貨物スペース以外に客室も貨物輸送に使用した。2020年4月以降の同社は旅客仕様機材の毎月1千便を貨物便として運行した。


今年も貨物重視の姿勢は変わっておらず、同社は動きが取れない貨物需要の取り込みを狙う。


LuはFlightGlobalに対し、「ヨーロッパ、北米では港湾が混雑しており、急ぐ貨物が航空便に切り替わる状況が2021年にあらわれており、貨物便は市場の状況から今後も利益を生む」と述べている。


同社はヨーロッパ線で貨物便追加を検討しており、短期間のうちに輸送能力増を時限したいとする。


北米路線の貨物便は適正な水準で、アジア太平洋でもオーストラリア・ニュ-ジーランド向け貨物定期便の運行を検討している。


貨物需要が当面は堅調だが、世界各地で移動制限がかかっている間は旅客需要は今後も低迷のままとチャイナエアラインは見ている。Luは2020年第二四半期の旅客輸送実績はパンデミック前の4-6パーセント程度だったと述べた。


Luはパンデミック以前の水準に戻るのは2024年以降とみている。


スカイチーム加盟の同社はほかの収益源を求める一方で、経費節減に目を配り、流動性と安定性の維持を狙う。


「チャイナエアラインズは積極的にチャーター需要を模索しており、留学生の帰国便、ビジネス再開、自国民退避などをのがさないようにしております。企業向け専用便やキャビンチャーター、短期貸出などで収益確保しています」


Luは「コロナ後はチャーター運航が大きな収益源になりました」と述べた。また他社同様にeコマース売上の強化をめざしている。


その一環でeメールによるeコマース基盤を拡大し、商品開発で「ステイホームの中での小売り需要をつかみたい」とする。これによりeコマース売上は2020年に5倍増になった。


コロナウィルス流行の中で同社は画期的なイノベーションを行うことで生き残りを狙う。


LuはFlightGlobalに「さらに多角化したモデルで付加価値を増やしたいし、サービス内容も多様にそろえて収益を拡大したい」と述べ、「チャイナエアラインズは今後も台湾のユニークなイメージを前面に、お客様にやさしいエアラインとしてローカルブランドを打ち立て、よき企業市民となりたい。旅客業務で市場の動向と外交政策を注視し、適正な時期に主要路線運航を再開したい」と述べた。■



2021年3月27日土曜日

ボーイングが787引き渡しを5カ月ぶりに再開。一方、先に再開したものの737Maxは400機超が社内に滞留していた。

 

Boeing 787 deliveries restart after five-month pause

By Jon Hemmerdinger27 March 2021

https://www.flightglobal.com/airframers/boeing-787-deliveries-restart-after-five-month-pause/143073.article


United Dreamliner1

Source: United Airlines

United Airlines 787


ーイングは3月26日、787-9をユナイテッドエアラインズに納入し、胴体部分で見つかった問題のため2020年10月以降停止していた機体引き渡しを再開した。


ボーイングは同日に、「787引き渡しを再開した。技術解析と点検作業をこれまで続けていた」と発表した。

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同社は胴体部分の問題を「表面の平坦度」とし、機体後部で見つかったと述べた。


同社は機体点検で許容範囲内にあるか確かめるべく、一部機体では客室部分の分解まで行っていた。


「安全と設計順守への姿勢からあらゆる角度を完全に点検し、機体引き渡しを続けることとし、規制上の要求をすべて満たすとともに最高水準のボーイング品質標準で引き渡しを実現します」


787納入停止はパンデミックの広がりの中でさらに打撃となり、同時にボーイングは787生産をサウスカロライナ州チャールストンに全面移転する途中で発生した。これまでの主力工場、ワシントン州エヴァレットは今年中に生産を終了する。


737 Max未納入分が400機を超える中、ボーイングには引渡し前の787が80機超加わっていた。737 Maxの引き渡しは2020年12月に再開した。


今月初めに連邦航空局は4機分の耐空証明発出に責任を感じ787事業への監督を強化すると発表していた。■


2021年3月7日日曜日

フェデックスは20億ドル超を投じ、20年以内にカーボンニュートラル運行の実現を目指す。

 

FedEx invests $2bn in sustainable technologies

By Pilar Wolfsteller6 March 2021

https://www.flightglobal.com/strategy/fedex-invests-2bn-in-sustainable-technologies/142751.article


貨物航空会社フェデックス(本社テネシー州メンフィス)は20億ドル超を投入しカーボンニュートラルでの運行を20年以内に同社の世界ネットワークで実現する。



3月3日、同社はこの目標達成のため三分野に注力すると発表した。車輛の電動化、代替燃料ならびに炭素隔離carbon sequestrationである。


Fedex 777F

Source: FedEx

FedEx invests $2 billion in sustainable technologies


「当社は気候変動への解決策として大胆なアクションを取る責任があります」と同社CEOフレデリック・スミスが語っている。「この目標のため長期に渡る取り組みとして社の運行全体で持続可能性の実現に取り組みます。同時に長期的投資によりフェデックスの見ならず業界全体の変革を実現していきます」


ゼロエミッションの電動トラックを集荷配達用に追加導入する他、イエール大の炭素隔離研究を支援し、代替ジェット燃料、機材近代化にも投資する。


同社は2040年までにカーボンニュートラル実現を狙い、2005年以来機材の排出ガスを24%削減していると発表。また、2012年以来の合計で54億リットルのジェット燃料消費を減らし、二酸化炭素排出は13.5百万トン減らした。


今年1月、ボーイングは100%「持続可能」燃料で飛ぶ機体を2030年までに完成させると発表し、業界全体で2050年までの削減目標に必須の機材となるとした。


航空宇宙業界全体としてもエアラインの排出量を2050年までに2005年実績の半分に削減する目標を掲げている。持続可能航空燃料(SAF)がこの目標達成には不可欠とされる。■


2021年2月24日水曜日

ユナイテッド328便インシデントを受け、FAAによる新点検手順制定までPW4000エンジン搭載機の運行は停止中。一方でプラット社内の検査工程の妥当性に疑問が発生。

 Engine Failure Prompts Immediate Action For Pratt-Powered 777s

Sean Broderick Guy Norris February 22, 2021

United Airlines 777

Credit: Hayden Smith

 

国の規制当局ならびに運行会社がプラット・アンド・ホイットニーエンジンを搭載したボーイング777で再度インシデントが発生したのを受け、迅速にリスク低減策を実行に移し、運行停止命令または自主的運行停止を出し、FAA、ボーイング、プラットは緊急点検手順を作成中だ。

 

2月20日に発生したインシデントはユナイテッドエアラインズ328便でデンバー国際空港を離陸直後に右(第2)エンジンで発生した。同機はPW4077を搭載の 777-200 でデンバー国際空港に緊急着陸を迫られた。米国家運輸安全委員会(NTSB) は翌日にファンブレード二枚の破損を発見したほか、その他の損傷を調査すべく公式調査を開始した。

 

「初期段階の情報から点検間隔を狭め同型エンジン特有の中空構造のファンブレードを点検することにした」とFAA長官スティーブ・ディクソンが発表した。その前に発生した、やはりこれもユナイテッドの777-200のインシデントを受けて点検手順が2019年に改定された。

 

70機ほどの同型機があり、規制当局ならびに運行会社はさっそく対策を展開している。米国で同型機を運行するのはユナイテッドのみだが、ただちに同型機24機の運航を停止した。残る機材を運航するアジア太平洋のエアライン各社も同じ措置をとった。

 

運行停止措置を発した規制当局には日本の国土交通省、英国の民間航空局も含まれる。EASAは同型機はヨーロッパではすでに運航を停止しているか、「一時的に定期運行を中止しており、今後の耐空指示が出るのを待っている」とする。

 

ボーイングもこうした流れに賛成しており、PW4000を搭載した777の-200型、-200ER型、-300型は米当局の次の動きまで路線から外すべきとする。「NTSB調査はまだ終わっていないが、当社は運航中69機、保管中59機のプラット・アンド・ホイットニー4000-112エンジン搭載の777機材の運航は当面中止することを勧奨する。これはFAAが適正な点検手順を発表するまでの措置」と同社は2月21日に発表した。

 

ボーイングの声明文の前に唯一の米運行会社ユナイテッドエアラインズは保有する24機を路線運航から外し、日本の規制当局も国内エアライン各社に運行停止を指示した。

 

今回のインシデントが発生した機材は1994年製造で、インシデントは上昇段階で発生した。第2エンジンのデブリはコロラド州ブルームフィールドに落下した。

 

NTSBは2月21日の追加情報でファンブレード二枚に損傷がみつかったとした。一枚は「根本近く」で破断し、「隣のファンブレードは半ばで破断していた」とある。調査ではブレードの一枚がエンジン格納リングに突き刺さっており、「残りのブレードは先端等に損傷が見つかった」とある。機体の損傷は「軽微」だという。地元テレビ局CBS4 Denverが撮った映像ではウィングボックスや主翼胴体接合部から機体下部右側に損傷が見られる。

 

今回のインシデントはコロラドで発生したが、おどろくほど似通った事例がPW4077のファンブレード関連で見つかっている。2018年2月13日のインシデントでカウリング部分が脱落している。これもユナイテッドの777-200で第2エンジンが着陸30分前で異常となった。

 

2018年事案ではNTSBはプラット社内の熱聴音画像化 (TAI) 点検工程の不備を指摘しており、プラットはPW4000の112インチファンブレード破断が過去二件あったと報告している。2008年10月と2010年4月で、ブレード5枚に亀裂を見つけており、このうち一枚は目視で、残り4枚はTAIで検知した。

 

2018年のインシデントを受けて、FAAは2019年3月の耐空指示で112インチのPW4000ファンブレードの緊急点検とその後継続検査を求めた。PW4000のその他型ではチタン合金の中空構造はなく、同じ112インチサイズのシュラウドレスファンブレードを採用した747、767、エアバスA330に影響はない。今回のユナイテッド328便の機材が同様の検査を受けていたかは不明だ。

 

もっと最近では2020年12月4日に日本航空777-200の第一エンジンでファンブレード一枚が離陸直後に脱落している。同機は沖縄から東京へ向かっていた。日本の運輸安全委員会が本件を調査中である。■

 

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2021年2月20日土曜日

ボーイングはマクダネル・ダグラスと同じ道をたどるのか

 Opinion: Will Boeing Become The Next McDonnell Douglas?

Richard Aboulafia February 16, 2021

 

AW&ST covers

 

グラス航空機は1967年にマクダネルと合併し、消滅に向かう30年の歴史をスタートした。マクダネル経営陣は軍用機事業を優先し、民間ジェット旅客機事業に必要な投資に消極的だった。ボーイングに吸収された時点でダグラスのジェット旅客機は商品力を失っていた。

 

ボーイングとマクダネル・ダグラス合併から25年になる。ボーイングの技術力低下、事業執行上で抱える問題、株主配当の重視、今後の製品ロードマップが不明確な点、さらに低下傾向の市場シェアから、ボーイング商用機(BCA)もダグラスと同じ運命をたどるのか考えるべき段階に入ったようだ。以下3つが鍵となる。

 

1. 技術開発予算。ボーイングはBCAの自社負担研究開発費 (IR&D)を約25%削減すると発表しており、2020年実績でほぼこの通り前年より下がっている。

とはいえ直近の10年間でBCAはIR&Dに223億ドルを支出しており、同時期の同社収益比で平均4.8%に相当する。これに対しマクダネルダグラスは1993年から96年にかけ、IR&Dへ毎年3億ドルを支出していた。ただし、ここには国防及び宇宙関連を含む。マクダネルのIR&D3分の2が民間機向けだったと仮定すれば、BCAの支出規模は10倍の規模に相当する。.

ただし、BCAの研究開発予算は大部分が787と737MAXの欠陥対策で、ボーイングは2004年以来は完全新型機を投入していない。ダグラスは30年間新型機を投入しなかったが、ボーイングは17年間だ。

 

2. 市場占有率。ダグラスは全方位の商品ぞろえができず、双通路機など新しい分野で対応が遅れ、単通路機でもMD-90はファミリー構成に発展できなかった。BCAはそれよりは広範な品揃えでエアバスに大きく劣らない。だが、中型機セグメントが大きな問題になってきた。A321neoは737 MAX 9/10に5対1と大きく差をつけている。つまり、今後市場シェアで差が開いてくる。

 

 

 

3. 製品開発。マクダネル・ダグラスは市場投入を狙った機体数例を開発中止した。MD-XX高性能3発機、MD-XX双発機、MD-12四発機などだ。MD-90は単通路機としてファミリー構成に発展を期待されたが、150席の−30型のみ生産され、-10、-40、-50/55型は結局実現しなかった。

ボーイングで中止例は少ないものの、影響はずっと大きい。ここ5年にわたり、新型中型機(NMA)に相当の技術資源を投じている。ここにきてNMAが再び実現に向かう兆しが出てきた。だが、筆者は双通路機で単通路機に対抗するのは健全な策ではないとかねてから主張しており、既存機種の手直しとして737 MAX拡大版、787縮小版あるいは再設計767をあてるのはもっと悪い選択だ。ボーイングには新型大型単通路機の新規開発が必要だ。

 

上記三点から見るかぎり、BCAの前途は多難だ。とはいえ、新型機開発に乗り出さなくてもBCAは当面残存する、あるいは消滅が先送りされよう。ダグラス航空機のゆるやかな消滅に30年かかった。当時のダグラスには強力な競争企業二社があり、それぞれ積極的に未来投資していた。エアバスが新型機投入をせず、60-65%の市場シェアで十分と考えた場合、ボーイングは新型機を投入しなくても現在の地位を数十年維持できよう。ただし、この場合は新規企業の参入が著しく困難な市場が生まれる。

だが、新規企業が登場すれば、BCAの生彩を欠く商品構成が格好の標的となる。逆に、エアバスは737 MAX 8をねらいA220のストレッチ型を、787を狙い完全新型機で開発投資してくるかもしれない。

 

ボーイングがひとりよがりな考え方をとれば、未来をにらんだ戦略や投資のかわりとしてひどく程度が低くなる。同社がダグラスと同じ運命をたどれば航空産業界全体の悲劇となる。■

 

Richard Aboulafia

Contributing columnist Richard Aboulafia is vice president of analysis at Teal Group. He is based in Washington.


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