2020年4月26日日曜日

アエリオンの超音速ビジネスジェットはフロリダで生産へ 

Supersonic jet maker Aerion to build manufacturing site in Florida

By Jon Hemmerdinger25 April 2020

Aerion AS2アエリオンが開発中のAS2超音速ビジネスジェットの想像図
エリオンは超音速ビジネスジェットAS2をフロリダ州メルボルンで新設する工場で生産する。同市はフロリダの航空宇宙産業の集積地となっている。
同社はメルボルンに「グローバル本社ならびに研究開発・設計製造・整備機能を集積する」とフロリダ州知事ロン・デサンティスが4月24日に発表した。アエリオン広報も内容を認めた。
総額3億ドルを投じ「アエリオンパーク」施設が生まれると同知事は述べた。同社はAS2を同地で2023年に生産開始し、2026年までに現地雇用675名分が生まれる。
「各地の立地条件を検討のうえフロリダ州、メルボルン地域と組むことで超音速機の持続的発展が実現すると今から興奮しています」とアエリオン最高経営責任者トム・ヴァイスが述べている。
知事広報室からは「アエリオンが各種施設と長期的投資をメルボルンで展開するのはCOVID-19危機の経済苦境から脱却をめざす同地にとって大きな一歩となる」との声明が出ている。
AS2は12名乗りで2024年の初飛行を目指す。GEエイビエーション・アフィニティ製エンジンでマッハ1.4巡航飛行を実現し、ニューヨーク・ケープタウン間を9時間56分で飛行でき、3時間39分の時間短縮効果が生まれると同社は説明。■

2020年4月19日日曜日

空飛ぶ自動車で主導権を狙う米国で空軍向け小型版が3年以内に本格生産に入る

動垂直離着陸(eVTOL)技術による「飛行車」の本格生産が三年以内に始まると、米空軍で調達を統括するウィル・ローパーが述べている。
この性能で軍のミッションは「従来の二次元から三次元へ」拡大し、「機動性」も強化されるとローバーは述べ、空軍は民間企業への資金提供で「最高度機動車両」 “Agility Prime” と呼ぶeVTOL装備の実現を目指している。▶今月末にも各社の構想案が空軍に披露される。現在想定中のeVTOL車両は小型で輸送能力は数名程度。▶eVTOL車両の性能でミッション実施が可能か見極めてから今後の調達規模を決めるとローパーは述べており、「兵站任務に投入可能となれば大量購入するが、保安救難用途なら小規模調達になる」
ローパーは空軍の安全認証を民間企業に付与し、最高度機動車両の飛行時間を計上させることで「新型車両の利用を後押しし、FAA型式証明の取得が早まる」と見ている。
空軍ライフサイクル管理センター(AFLCMC)の発表では最高度機動車両について4月27日に「仮想立ち上げ式典」を行い、各社の構想発表とともに、官民の投資機関を模索する。ローパーが基調講演を行うが、COVID-19のパンデミックにより予定を変更し仮想イベントとして実施すると説明。「イベントでは空軍と業界のつながりを強め、組織横断で新しい航空宇宙分野の立ち上げをめざす」(AFLCMCによる説明)
最高度機動車両構想ではeVTOL車両メーカーの競作から本生産委託先を決める。同構想のウェブサイトで公表中の文書では空軍は12月17日までに飛行試験の実施を求め、第1段階で以下の性能諸元の実現を各社に求めている。
  • 3-8名の搭載
  • 航続距離100マイル以上
  • 時速100マイル以上
  • 連続使用60分以上
第二段階で大型の貨物人員車両を目指す、とローパーは述べている。
最高度機動車両構想は軍の各種組織が共同推進する点で他に例を見ない。AFLCMC以外に空軍研究本部(AFRL)、空軍戦闘統合性能実現部門(AFWIC)、AFWERX、AFVenturesが関与する。後者はヴェンチャーキャピタルと各社を結ぶ機能を果たす。
ローパーはこの動きにより有望な市場で米国の立場が有利になる以外に米空軍が期待する「イノベーションパートナー」として民生部門が機能できるか実証する狙いもあると解説。▶ローパーにより民生部門の研究開発成果を活用し中国に差をつける効果がDoDに生まれており、今や技術革新が新しい戦場になっている。■
この記事は以下を再構成したものです。

Roper Sees Air Force ‘Flying Cars’ In Production By 2023

"We are going to accelerate this market for domestic use in a way that also helps our military," Roper stressed. "The Air Force is all in."

on April 16, 2020 at 7:15 PM

2020年4月18日土曜日

ボーイングの生産再開は4月20日以降に


Boeing Announces Phased-In Return To Commercial Production

Guy Norris April 16, 2020

Boeing Puget
Credit: Boeing

ボーイングは早ければ4月20日よりワイドボディ機生産をピュージェットサウンド地区で再開する。COVID-19のパンデミック流行で生産は一ヶ月近く止まっていた。
また4月20日よりレントン工場も737 MAXの生産再開の準備に入る。
ボーイングは3月25日より2週間に渡り航空機製造を中断していたが、ワシントン州でのコロナウィルス流行により対応が遅れた。同社は施設内の消毒を徹底的に行い、4月20日の第三シフト以降に段階的に生産を再開すると発表。
ピュージェットサウンド地区の社員27千名が747、767、777、787の各機生産を再開する。737生産ライン再開の準備にも入っており、レントンで4月20日以降の対応に入る。747、767、777の各ラインでは必要な人員を4月21日までに確保し、787ラインは4月23日再開となる。
またサウスカロライナ州の787施設は「今のところ操業中止状態のまま」と同社は発表。なお、軍用機生産は今週初めにピュージェットサウンド地区で再開した。
社員の健康とともに物理的に距離を維持する策を連邦、州双方のガイドラインに基づき行うと同社は発表。対策としてシフト開始時間をずらし、出退社時の混雑を緩和する、非接触のための表示、フェイスカバー、どうしても接近が必要な職場では防護手段、各シフト開始時に健康状態のチェック、手洗いの励行以外にビデオ会議は今後も続ける。

生産再開の発表と同日にボーイングは3月の引き渡し実績はわずか30機だったと発表している。2008年以降では最低の水準で、前年同期は149機だった。■

2020年4月4日土曜日

主張:航空業界は今後の回復を見据えどんな行動をとるべきか。

Editorial: A Code Of Conduct For Aviation’s Recovery

April 03, 2020

絶望的な状況だからこそ対策は大胆であるべきだ。米議会を通過しドナルド・トランプ大統領がサインした総額2.2兆ドルの中国ウィルス経済救済策はこの基準に合格だ。エアライン業界・貨物航空会社向け580億ドル巨額対策のうち290億ドルが助成金で、今後6ヶ月は従業員の給与支払いにあてられ、利用客がいなくてもフライトを維持できる。ボーイングが望んでいた航空宇宙産業向け支援600億ドルはそのままでは実現しなかったが、同社やその他サプライヤー各社には救済資金貸付や保証の道が残されている 
国連事務総長はCOVID-19を第二次大戦後で最悪の危機と表現し、前例のないパンデミックで必要不可欠な産業構造が消えないよう各国政府は対策を打つ必要がある。だが救済策で資金投入すると望ましくない効果が発生する可能性もあるし、危機が落ち着いた段階で各国政府は前面から退くべきだ。
政府支援から市場の歪みがエアライン業界で顕著になってきた。各国政府の協調がないまま、競争環境が不平等になっている。ボーイングが政府支援を受ける中でエアバスが支援は不要と主張したらどうなるのか。
パンデミックが沈静化すれば、業務回復に向けた長い登り坂が航空業界に立ちふさがる。単純にもとに戻るとの期待は無理だ。業界は今後を見つめて、可及的速やかな回復へ向け努力を積むべきだ。こんな行動規範はいかがだろうか。
従業員を大切にする。回復段階に入れば従業員の優れた仕事が必要だ。従業員の健康を維持し、必要な情報を提供すべきだ。当面は経費のやりくりで、出勤停止、給与凍結、雇用凍結が避けられないかもしれない。だが従業員を差し置き株主や経営者を重視すれば、労使問題を巻き起こしかねず、回復への道が遠のく。
顧客を大切にする。顧客の回復がなければ業績も回復しない。危機中は顧客に柔軟対応すべきだ。厳しい時期に関係が深まれば、あとで良い結果を生む。だが関係が悪化すれば長期的な損害は計り知れない。 
サプライヤーを大切にする。航空メーカー各社はこれまでリスクをサプライヤーへ押し付けながら、サプライヤーによるコストダウン成果に十分報いてこなかった。サプライヤーが潰れれば、あるいは業績回復が遅れればリスクはメーカーに帰ってくる。
産業基盤を大切にする。ペンタゴンは納税者の負担で巨大な調達力を発揮している。その力を短期での供給基盤の維持に使うべきであり、装備能力の開発が長期的に遅れても看過すべきだ。
自社業務を大切にする。業務回復の課題に対して従来以上に機敏かつ柔軟な対応で臨むべきだ。今回のウィルス以外にも気候変動などの課題があり、同様に対応すべきだ。
では株主にどう対応すべきか。ボーイングは株式買い戻しと配当金を通じ研究開発費用の6倍もの金額を株主に提供した。米エアライン各社は過去5年間で自由に使えるキャッシュフローの96%を株主還流した。今や納税者が産業界維持の負担を求められている。株主には健全なエアライン各社、健全なメーカーが必要だ。株主は自分の番が来るまで待つべきだ。■

2020年3月28日土曜日

民間航空の2020年は最悪の年になりそう。V字回復は期待薄。

IATAが2,500億ドルの売上減少を予測。2020年の運用容量は38%減少。

IATA Expects $250B Industry Revenue Shortfall

Jens Flottau March 24, 2020


IATAは世界規模でのエアラインの運賃収入減少を2,500億ドル近くと予測し、一刻も早い各国政府による救援策を求めている。
今回IATAはわずか二週間前に発表した最悪シナリオを書き換えた。2020年の運賃収入減少を1,130億ドルと見積もっていた。前回発表の直後から旅行制限措置に踏み切る国が続き、「事実上国際航空移動が停止された」とIATAは表現。IATAは損益見込みは公表していない。
運行容量は2020年に38%減少するとも発表。
【ヨーロッパ、中東】欧州、中東の各社では第2四半期でそれぞれ90%、80%に及ぶ。第3四半期もマイナス45%となる。第4四半期では対前年比マイナス10%になる。
【アジア太平洋と北米】第2四半期にマイナス50%、第3四半期に25%減、第4四半期はマイナス10%との予測だ。
【ラテンアメリカ、アフリカ】ラテンアメリカでは-80%から-40%が第2第3四半期で続き、アフリカは-60%から-30%になる。
民間航空全体では-65%(第2四半期)から-33%(第3四半期)となる。
【V字回復は期待できない】以前の危機脱却を敷衍した大方の期待と異なり、IATAは早期のV字回復を予測していない。今回のパンデミック状況はグローバルかつ地域により別の局面が同時並行で発生しているためだ。航空業界の復興にグローバル経済不況が立ちふさがり、エアライン各社は以前の交通量への復帰が見通しにくくなっている。そのためIATAはV字ではなく、U字回復と見ており、復興に長時間がかかるものの、需要そのものが消えるわけではないのでどこまで短時間で今後の復興が実現するかが鍵という。
【2021年への期待】IATAも2021年に財政刺激策の効果から「力強い回復」を期待しており、一部国でGDP成長が20%に達すると見ている。
「中国国内で折返し地点を過ぎた兆候」があるとし、3月前半になり状況が安定してきたとする。ただし、これは業界全体には当てはまらない。
【政府の支援策を求める】IATAは2,000億ドル規模の支援策が世界で必要だという。「ここまで深い危機状態は初めて」とIATAトップのアレクサンドル・ドジュニアは述べている。「超大型のアクションの迅速実行が必要だ」■

2020年3月27日金曜日

アジア太平洋の各空港の収益減は総額239億ドルとの分析が出ています。


APAC airports could lose $23.9 billion revenue: trade association

By Cirium27 March 2020
国ウイルスによりアジア太平洋各地の空港は総額239億ドルの収入減との試算が国際空港協議会アジア太平洋支部から出た。中東地区では57億ドル減となり、ACIでは各国政府に空港支援を訴えている。▶ACIアジア太平洋支部には113会員の602空港が49カ国に分布しており、地域では中東地区とアジア太平洋地区にまたがる。▶流行が長引けば通年で15億人の旅客需要減になるという。▶第1四半期のアジア太平洋地区の収入減は56億ドルとなり、以前の予想の2倍に膨らんでいる。中東でも10億ドル減で、通年でこの2倍になるという。▶ACI世界本部は「通常通り」との予想を以前出し、アジア太平洋地区の各空港は第1四半期は124億ドルの収益を見込んでいた。▶ACIアジア太平洋の事務局長ステファーノ・バロンチは「最新予測では各空港に極めて厳しい状況」と語る。▶ACIによれば域内トップ12箇所のハブ空港で1月から実績がおちはじめ、3月第二週は平均80パーセント超の落ち込みだという。▶「今こそ航空業界の復帰力を後押しする救援策が必要で、雇用を守り、景気回復を待つべきだ」(バロンキ)▶ACIアジア太平洋支部が各国政府に求めているのはスロット使用条件の緩和であり、空港使用料の一時停止または先送り、空港収益の保全とともに財政支援をおこなうことで、特に地方空港が深刻という。▶「一部政府に対策の選択をまだ決意できていないところがある。ACIアジア太平洋支部は特定のエアラインを相手にするのではなく航空業界の誰もが息をつける救済策を強く求めたい」(バロンキ)■

2020年3月21日土曜日

ボーイングが中国ウィルス危機生き残り策を発表

Boeing executives to give up all pay

By Pilar Wolfsteller21 March 2020
boeing building
Source: Boeing

ーイングは中国ウィルス危機で苦境に立つ同社の生き残り策を発表した。
3月20日付けの同社声明文では最高経営責任者デイヴ・カルホーンとラリー・ケルナー会長が今年いっぱい役員報酬を返上するとある。
同社は株式配当も取りやめ、追って発表あるまで自社株買いも停止する。ただ同社では737Maxの墜落事故が重なり346名の犠牲者が発生したため同機運行を停止した昨年から自社株買いはしていない。
「当社はあらゆる資源を投入して事業継続を図り、従業員及び顧客を支援し、サプライチェーンを維持して長期化が危惧されるCOVID-19危機を乗り切る」(ボーイング)
今週はじめにはニッキ・ヘイリー取締役が同社が政府に600億ドルの航空宇宙産業の救済策を要望したことに異議を唱え辞任した。同社は雇用250万名分を守り、ウィルスの被害を抑えるためこの規模の救済策が業界に必要と主張していた。
ボーイングが支援策を求めたのと同日にドナルド・トランプ大統領がボーイングはじめ旅行関連業界の支援策を誓い、エアライン含む各社に税制優遇、交付金、貸付金など総額580億ドル規模だとした。
ところが20日になり、トランプ大統領は政府から救援策を受け取る企業に対しては株式買い戻し禁止措置を課すと述べた。エアライン各社やボーイングにはここ数年の株式市場の活況を受けて自社株買いを活発に行い批判を受けていた。
今回の中国ウィルス流行に先立ちボーイングは737Maxの運行停止で苦境に立たされていた。旅行禁止措置と需要減少でエアライン各社も機材多数の運行を取りやめたり、発注機材受け取りを先送りにしたり、解約する動きが出ている。引取予定の変更や解約は今後更に増えると見るアナリストも多い。■

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